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「“アイデンティティー”」 [映画]

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〔2003年/アメリカ〕


ある大雨の夜。
田舎道でパンクしたタイヤの取り換えをしていた、
ジョージとアリス夫妻、
そして車中には、幼い息子・ティミー。
そこへ、女優・カロライン(レベッカ・デモーネイ)を乗せ、
ハンドルを握っていたエド(ジョン・キューザック)が
アリスをはねてしまう。


早く医者に診せなければ。
しかし、携帯が繋がらず、
全員、近くのモーテルへ。


医者を呼びにいったエドだが、
道路が冠水し、車が立ち往生、
そこにいた娼婦・パリス(アマンダ・ピート)の車に乗り、
モーテルに引き返す。
さらに、新婚夫婦・ルーとジニーも
モーテルにやって来る。


そこへ、死刑囚と、その死刑囚を護送中の刑事(レイ・リオッタ)も
雨で進退きわまり、モーテルで一夜を過ごすためやって来る。
死刑囚は、トイレの配管に繋がれた。


雨はひどくなり、全員身動きが取れない状況の中、
人が、一人二人と惨殺されてゆき・・・。





アメリカのさびれたモーテルでの殺人事件といえば、
多くの方が、ヒッチコックの「サイコ」を思い出すだろうけれど、
この映画のモーテルの雰囲気も、
「サイコ」のベイツモーテルに似ている。


だから余計に怖い。
殺人事件そのものより、
モーテルが怖い。
「サイコ」のおかげで、
恐怖心がすっかり刷り込まれてしまったみたいだ。


一軒のモーテルで、
一夜を過ごさざるを得なくなった人々が、
次々と殺されるという、
「そして誰もいなくなった」的なお話だけれど、
実はそこにはオチがあって、
詳しくは書かない方がいいと思う。


ただ、私が書かなくても、
冒頭から、オチを仄めかすような場面があって、
ただのサスペンスではない事は、想像がつく。
次々起こる殺人事件には
ある人間の心の病というか、
特性が原因である事を前提にしながら観る事ができる。


犯人の母は娼婦で、幼い頃、あまりに酷い体験をし・・・という設定から、
私は猟奇殺人犯の
ヘンリー・リー・ルーカスがすぐに頭に浮かんだ。
ルーカスが大量に殺人を犯したのも、
育った環境もあるけど、
この映画のような心の状態もあったりして、と思ったり。


ラストのラストに、
さらなるどんでん返しがある。
それもこれも含めて楽しめる。


評価 ★★★☆☆

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「霧と影」 [映画]

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〔1961年/日本〕


能登半島の切り立った崖下の海岸で、
小学校の教師・笠原の遺体が見つかる。


笠原の幼馴染で新聞記者の小宮(丹波哲郎)は、
高所恐怖症の笠原が、
そんな場所に行くとは到底信じられず、
また、自殺をする理由もない事から、
その死について、調べ始める。


笠原は、自分の受け持ちの生徒・宇田清が
長期で学校を休んでいる事を心配し、
家庭訪問した帰りに死んでいる。
さらに、笠原が死んだ日、
彼が薬売りと歩いている姿を目撃したという
証言者が現れる。


宇田の家に行った小宮は、
そこが、家が4軒、12人の人間しか暮らしていない小さな集落である事を知る。
そして、数年前、
そんな集落を嫌って東京へ行き、
今はある会社の社長をしている
宇田甚平(安井昌二)という男の存在を突き止め・・・。





水上勉さんの原作小説の映画化。


水上さんの小説はいい。
殆どが、日本海側の地域が舞台で、
行った事がなくとも、
切り立った崖や、
荒々しい海や、
そこで暮らす人々の様子などが目に浮かぶような作風。


一番有名なのは「飢餓海峡」だろうか。
夢中で読んだし、映画も面白かった。
他に映画化された作品の中では、「雁の寺」と「越前竹人形」が特別に好き。
こんな面白い映画、
日本中のみんなが観ればいいのになぁと思うくらい。


で、この映画。
基本の流れは、
なんとなく「飢餓海峡」に似ている。
社会的な成功者となった男の過去にあるものは・・・
って部分が。


粗筋にも書いたように、
男の出身地である集落が、
なんとも小さくて、
さらに、そこで暮らす人々の人間関係に色々あって、
たしかにこれでは息が詰まるだろうと想像できる。
たった4軒しかないのに、
「本家」とか、「分家」とか。


「本家」「分家」という言葉は、
水上勉より、
横溝正史を連想させて、
脊髄反射しちゃうくらい(笑)、好きなテーマ。


俳優陣がちょっと地味かな。
丹波哲郎さんと、その弟分が梅宮辰夫さん。
お二人とも若い。
特に梅宮さんは、
最初は彼だとは気付かなかったくらい、
若くて、爽やか(笑)。


評価 ★★★☆☆

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「コンフィデンスマン ある詐欺師の男」 [映画]

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〔2012年/カナダ〕


サミュエル・L・ジャクソンは、
25年の刑期を終え、出所した。


かつて詐欺師だった彼は、
かつての相棒を殺した罪で服役していたのだ。


これからの人生を堅気として生きる決意をしていたジャクソンだったが、
殺した相棒の息子・ルーク・カービーが現れ、
一緒に組んで詐欺をしようと迫られる。


カービーから紹介された女・ルース・ネッガと、
本気で愛し合うようになったジャクソンだが、
カービーからある驚愕の事実を知らされ、
大きなショックを受ける。


さらにカービーの策略で、
詐欺をせざるを得ない状況に追い込まれたジャクソンは、
仕方なく協力する事になるが・・・。





ムショから出てきた詐欺師が、
痛快な詐欺の手口でも見せてくれるのかと思っていたけど、
詐欺の場面は、ラスト近くでほんの少し、
あとは、サミュエル・L・ジャクソンの
なんだか苦悩してばかりいるような映画。


彼は、かつての相棒を、
殺さざるを得ない状況に追い込まれて、
拳銃で撃ってしまった事を
ずっと悩んでいる。
そして、そんな罪悪感から、
相棒の息子・ルーク・カービーの存在を、
完全に無視する事ができない。


それから、
愛し合うようになったルース・ネッガの事。
詳しくは書けないけれど、
彼女の正体を知ったら、
彼でなくても驚くだろう。
私がジャクソンだったら、
二度と彼女とは関わらないと心に決めると思う。


ルーク・カービーに半ば脅かされて、
仕方なく、詐欺をする事になったジャクソンだけど、
詐欺って、他の犯罪と違って、
犯人がノリノリの気持ちじゃないと
上手くいかないんじゃないかなぁって気がするんだけど。


嫌々やってる詐欺が成功するとは思えない。
詐欺の醍醐味って
騙した相手から、大金をせしめるってのもあるけど、
その過程を楽しむってのもあるんじゃない?
(詐欺を肯定しているわけではないです)


そんなわけで、
ジャクソンが腕の立つ詐欺師に見えなかったのが残念。
彼の事は好きだから、まぁ、いいけど(笑)。


評価 ★★★☆☆

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「静かなる兇弾」 [映画]

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〔1959年/日本〕


深夜の路上で、
タクシーの運転手が、
頭部を撃ち抜かれるという事件が発生。


刑事・志村喬と高倉健のコンビが担当となり、
犯人の捜査がはじまった。


タクシーの運転手の身元が分かり、
人間関係を洗うと、
友人と友人の恋人との三角関係が浮上。
しかし、どうやらそれは事件とは無関係のようだ。


拳銃の不法所持者の線を探るため、
その方面に詳しい、
バー「テキサス」のダンサー・久保菜穂子に当たると、
1人の男が浮上する。
男はしょっちゅうバーにやって来ると言われ、
張り込みを続ける2人。


そして、志村は、
私生活では、娘・中原ひとみから、
結婚の報告を受け・・・。





志村喬さんと高倉健さんがコンビを組んで、
殺人事件の捜査に当たるお話。


可もなく不可もなく、
今なら、2時間ドラマの題材くらいにしかならない内容だけど、
このお二人がとってもいい感じだったので
それなりに観られる。


志村さんは、中原さんの恋人より、
高倉さんに娘婿になってほしい様子がありありで、
娘が結婚を決めたというのに、
あまり嬉しくなさそうで。


高倉さんもイメージそのままに、
無骨で、照れ屋で、
女に気の利いた事は言えないタイプ。
トンビに油揚げさらわれても、
まぁ、仕方ないかなって(笑)。


事件の捜査過程も普通。
現代と違うのは、
戦友の絆みたいなものが
まだ強くあった時代というくらい。


それから、ラスト近くに、
そんな偶然ってあり?と言いたくなるような人物が
事件に絡んでくる。
まぁ、絶対ないとは言えないけど、
すんごく低い確率だろうなぁ(笑)。


評価 ★★★☆☆

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「96時間 レクイエム」 [映画]

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〔2014年/フランス〕


元CIAのエージェント・リーアム・ニーソンは、
既に再婚している元妻・ファムケ・ヤンセンに未練たっぷり。
また、今は一人暮らしをしている娘・マギー・グレイスを
目の中に入れても痛くないような溺愛ぶり。


ヤンセンも、現在の夫と上手くいっていないようで、
ニーソンとの復縁を望んでいるように思えた矢先、
彼女が殺されているのが発見される。


状況から、
ニーソンは犯人だと断定され、
警察から追われる事に。


逃亡者となったニーソンは、
警察の目を欺きながら真犯人探しに奔走し、
核心に近づいてゆくが・・・。





「96時間」シリーズ3作目。


もはや邦題の「96時間」は、
内容となんら関係ないものになってしまった(笑)。
(そもそも原題は「TAKEN」)


色々なご意見があるようだけれど、
リーアム・ニーソンの無敵っぷりはやっぱり最高と思ってしまった私。
警察からも、悪人側からも、
散々な目に遭わされながらも、絶対へこたれない不死身の体(笑)。
追われて逃げてるだけじゃなくて、
相手の動きを先に読んでは、
先手を打つ能力にも長けているらしい。


しかも、こんな時代、
機械物にも詳しくなくてはならず、
GPSの情報やら、何やらを、
すぐにダウンロードして盗める知識。
「自分、オッサンだからPCは苦手」なんて言って憚らない
私の上司とはわけが違う(笑)。


ちょっと解せない場面もあったけどね。
ファムケ・ヤンセンが拉致される様子が、
スタンドの監視カメラに映っているのを、
ニーソンは警察より先に見るのだけれど、
それだったら、それを警察に見せて、
「これでも俺を犯人と言うか!」と言ってやれば、
それで事は収まるのにと思ったんだけど(笑)。


今回、捜査の指揮をとる刑事役を、
フォレスト・ウィテカーが演じているのが、
ちょっと嬉しかったな。
なんか好きなのよね、彼の事。
理由は特にないんだけど。


と、ここまで書いて、
検索してみたら、
ニーソンが、
「フォレスト・ウィテカーと、もう一度仕事してみたい」と言ったとか。
本当にそうなったらますます嬉しいわ。


評価 ★★★☆☆

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