「ながやす巧 愛と誠の世界展」へ。 [美術]
7月某日。
旧尾崎テオドラ邸で開催された、
「ながやす巧 愛と誠の世界展」に行ってきました。
本当に「ぎゃー」と叫びたくなるような企画です。
私は、梶原一騎さん原作、ながやす巧さん作画の、
「愛と誠」が大大大大好き。
生涯の漫画ベスト5に常に入っている傑作で、
コミックスは全巻持っているし、
何度も読み直しています。
◆物語は、
財閥の令嬢で、
名門・青葉台学園の中等部3年生の早乙女愛が、
幼少期、自分のせいで額に怪我を負わせてしまった、
太賀誠と再会、
札付きの不良となっていた彼を、
青葉台学園に転校させるところから始まります。
しかし、青葉台学園の持て余し者になった誠は、
学園を退学し、
悪の巣窟である、花園実業高校に転校。
すると、愛も誠の後を追い、花園へ。
すると、愛に熱烈に片思いする、
青葉台一の秀才・岩清水弘も、
愛を追って、花園に・・・。
正直、
突っ込みどころ満載のストーリーでもあります(笑)。
コミックスを貸した友人たちも、
大爆笑。
愛や岩清水の親が、
花園実業への転校を、
許すはずがないとか、
その花園実業、
生徒全員もれなく、
不良とスケバンで(笑)、
あんな学校があったら近所から苦情が来るわ、とか、
岩清水が、
「早乙女愛よ、君のためなら死ねる!」という、
名台詞を言った(正確にはラブレターにしたためた)のが、
中学3年生だった、とか(笑)。
しかし、そんな、
「有り得ない」物語を、
全て納得させてしまうパワーが、
この漫画にはあるし、
だから、今でも、
語り継がれてもいるのだと思います。
邸内に入ると、
まず、入口のお部屋に案内されます。
テニス部だった愛が愛用していたラケットや、
劇中、何度も出てくる黒電話が展示されています。
学ランと、セーラー服があり、
「これに着替えれば、あなたも愛と誠に」
といった事が書かれていましたが、
さ、さすがにそれは(笑)。
2階の展示室に行くと、
等身大だというパネルが置かれていました。
漫画の中で、登場人物たちの身長について、
触れられる場面はないと記憶していますが、
スタッフさんと、
「誠は180センチ、
愛は165センチ、
そして、美人の高原由紀は、
170センチくらいでしょうか。
蔵王権太に至っては、2メートルはありそうですね」と、
想像し合い、盛り上がりました。
展示室には、多数の原画があり、
その1枚1枚に、ため息が出ます。
愛と由紀が、花園学園で、
ツルゲーネフの「初恋」について、
語り合う場面、
純粋だった愛が、
生まれて初めて、嫉妬という感情に苛まれ、
苦しむ場面、などなど、
忘れられないシーンの原画に、感動です。
心ゆくまで、原画を堪能したあとは、
カフェ室「窓」に行きます。
この「窓」がまた、洒落ています。
愛が誠の学費を工面するために、
誰にも内緒でバイトをするのが、
(超名門校なので、バイトなど許されない)
喫茶店「窓」で、
それを再現しています。
ながやす巧さんと、
こちらのシェフが考えたという、
昭和なプリンアラモードをいただきました。
シリアルキラー展2019 [美術]
6月某日。
銀座のヴァニラ画廊で開催されている、
「シリアルキラー展2019」に行ってきました。
これは、
シリアルキラー(殺人鬼)たちの、
絵画や手紙や持ち物などの蒐集されている、
Nakajimaさんという方の、
コレクションからの展示だそうで、
これだけの品を、どうやって集めたんだろうと思うと、
何事も、極めるというのは凄い事だと感心する。
このようなコレクターは、
世界中にいるそうだけれど、
中には、のめり込みすぎて、
精神のバランスを崩す方もいるのだそうだ。
私は、
絵や文字を見ただけで
その人の心理を分析したりはできないけど、
例えば、
ヘンリー・リー・ルーカスの
実際の彼の左目は失明しているのだけれど、
自画像では、両目がぱっちりと開いている。
これは目だけの問題でなく、
彼が、自分の理想の形、
さらにいうなら、
もっと別の人生だったら、
と思っているように思えてならない。
(私が今まで見てきたシリアルキラーの中でも、
彼は、最も劣悪な環境で育っていると思う)
シリアルキラーたちの多くは、
虐待された過去があるけれど、
必ずしもそうではなく、
幸せな家庭に育った人もいる。
彼らがモンスターになった原因が、
環境によるものなのか、
母親の胎内で細胞分裂している時から始まったものなのか、
それは、誰にも分からない。
ただ、最悪な環境で育ったシリアルキラーが、
もし、幼い頃、
愛に溢れた家庭の養子になっていたら、
どうなったのだろうと、
それをよく考える。
それでも、同じ道を辿ったのか、
まるで違う人生になっていたのかは、
神様しか分からないけれど。
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浦沢直樹 手塚治虫を語る [美術]
8月20日。
池袋の自由学園で行われた、
「浦沢直樹 手塚治虫を語る」の
講演会に行ってきました。
浦沢直樹さんといえば、
「20世紀少年」や
「YARAWA!」などで知られる、
当代きっての人気漫画家さんであり、
手塚治虫フリークとしても
知られているという事で、
20日をとても楽しみにしていました。
1時間半ほどの講演は、
会場から何度も笑いが起こるほど面白く、
その時私が取っていたメモを読み返してみても、
ここには書ききれないくらいの、
手塚治虫さんのエピソードでいっぱいです。
私が強く印象に残ったのは、
手塚治虫さんの、
それはもう、異様とも言えるような
負けず嫌いだったというエピソードの数々。
例えば、70年代、
手塚漫画が低調と言われるその時期に、
台頭してきたのが、
梶原一騎さんに代表されるような、
数々のスポ根もの。
手塚さんは、アシスタントさんの机にあった、
その類を本を見つけると、
目に涙を浮かべて、
床に叩きつけ、
「こんなものの、どこが面白いんだ!」と叫ばれたそうだ。
そして、スポーツで表現される根性なんて、
根性でもなんでもない、と言わんばかりに、
別の形で、
もっと壮絶な根性を
漫画にしてみせたのだという。
私が、以前に、
手塚さんの、負けず嫌いなご性格や、
激しい嫉妬心の持ち主だったと知った時は、
あのような神様とも言えるようなお方にも、
そのような黒い心があるのかと、
とても驚いた事を覚えているのですが、
そういう部分があったからこそ、
凄い作品が生み出されたのだと、
浦沢さんのお話から、
それを強く感じましたし、
手塚さんも人間だったのだなぁと、
この年になってみると、
少し安心したりもして(笑)。
ステージに置かれた机の上には、
浦沢さんの手元が、
そのままスクリーンに映し出される機械が設置されていたのですが、
手塚さんの絵の特徴を説明されるために、
マジックで紙に絵を描かれたことに、
「うわっ☆」と、私の中で衝撃が。
浦沢さんほどの人気漫画家さんが、
今、目の前で絵を描いておられる。
その、「点の1つ」「線の1本」から、
自分はリアルで見ているんだ思うと、
言いようのない感動で胸がいっぱいで。
それから、1つ。
私がこの講演に出席できましたのは、
お友達のAさんがお誘いくださったおかげなのを、
ここに記しておきたいと思います。
このような個人的なメッセージは、
いつもはメールでするようにしているのですが、
諸事情により、
Aさんは、ご参加が適わなくなってしまい、
「内容については、ブログに書きますね」と
約束していたので、
書かせていただきました。
Aさんが誘ってくださったおかげで、
貴重な体験ができた事、
感謝しています。
Aさん、本当にありがとうございました。
種村有菜 原画展 ~20th anniversary~ [美術]
現在、池袋の西武百貨店で開催されている、
漫画家・種村有菜さんの原画展に行ってきました。
誘ってくださった友人も、私も、
種村有菜さんの漫画は読んだことがなく、
知っている事といえば、
種村さん原作の「神風怪盗ジャンヌ」が
アニメになっているという事くらい。
でも、漫画を知らなくても、
友人も私も、
原画を見るのがとても好きなので、
喜んでお誘いをお受けしたというわけです。
会場に入ると、
お客様たちが、盛んに写真を撮っておられてビックリ。
知らなかったのですが、
この原画展は、
写真撮影OKなのだそうです。
それなら、と、
私も数枚撮らせていただきました。
漫画の原画展には何度か行っていますが、
毎回、その美しさには酔ってしまいます。
種村さんの絵も、
本当に綺麗でした。
全体的に、黒の服を着た女の子の絵が印象的。
今度、漫画を読んでみたいと思っています。
山岸凉子展「光-てらす-」メタモルフォーゼの世界 [美術]
先日、友人と、
弥生美術館で開催されている
「山岸凉子展」に行ってきました。
山岸さんの代表作といえば、
やはり「日出処の天子」。
ポスターにも、
「日出処の天子」の主人公・厩戸王子(のちの聖徳太子)が
描かれています。
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飛鳥時代。
天女と見紛うほどに美しい厩戸王子は、
人智を超えた不思議な能力を持っているが、
それ故、
実の母からも恐れられ、
深い孤独の中で生きている。
王子は、臣下・蘇我毛人を深く愛するが、
真面目な毛人は、
王子に尊敬の念を抱きながらも、
その気持ちを受け入れる事は出来ない。
毛人は、巫女の布都姫と愛し合うようになるが、
それを知った王子は、
激しい嫉妬に苛まれ・・・
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まったく、こんな粗筋しか書けない自分が
情けなくなりますが、
実際は、若い頃の聖徳太子の愛と苦悩を描いた、
傑作漫画です。
私は、この「日出処の天子」が
人生の漫画オールタイムベスト10に入るくらい大好きで、
何度読んでも、
そのストーリー構成と、
繊細な絵に引き込まれてしまいます。
(ちなみに他は、「愛と誠」と「こち亀」。
それから、「5愛のルール」と「ふたりの童話」。
あとの5本は決まっていない(笑))
展示されていたのは、
やはり「日出処の天子」が中心で、
さらにその中でも、
当然の事ながら、
美しい厩戸王子がメイン。
特に、
原画を壁一面に大きく引き伸ばしたものの
前に立った時は、
圧倒され、
涙ぐんでしまいました。
それは、
「賭弓の儀(のりゆみのぎ)」の際、
崇峻天皇から挑発された王子が、
群臣が固唾を飲んで見守る中、弓を射る場面。
王子の能力を示す場面は多々ありますが、
これも最大の見せ場の一つ。
その場にいた額田部女王の
「要 要をピシッと決めるところは、
さすが天才の名に恥じぬ」の言葉が
全てを表していると言っていい。
それからこれは、
壮絶な片思いの物語でもあります。
王子が、
焦がれて焦がれて、
心が壊れそうなほど恋する相手、蘇我毛人は
決して王子のものにはならず、
一番欲しいものが手に入らないのでは、
自分の能力など何の意味があろうかと。
なんて心の痛いお話なんだ。
なんだかすっかり「日出処の天子」の解説のように
なってしまいましたが、
展覧会は、
他にも山岸凉子さんの作品が
多数展示されていました。
私は山岸さんの漫画は、
短編集は結構読んでいるのすが、
長編は「日出処の天子」だけです。
これを機会に、色々読んでみようと思い、
早速図書館に「アラベスク」の予約を入れました。
漫画系の原画展に行ったのは、
今年に入って4度目ですが、
ブログに書いたのは「こち亀展」のみで、
「大和和紀原画展」と、
「LaLa原画展」は、
書きませんでした。
(なにせ気まぐれ、その日のノリだけで生きる女(笑))
上記の3回の原画展は、
デパートでの開催のせいか、
「ついでに」とか「とりあえず」のお客さんもおられるようで、
大変に混んでいたのですが、
この「山岸凉子展」は、
わざわざ行かなけばならない美術館のせいか、
人も少なく、ゆっくりとした気持ちで
展示物を観る事ができ、
満たされた思いがいたしました。
山岸さんのファンの方なら、
満足できる内容だと思います。