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「おったまげ人魚物語」 [映画]

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〔1962年/日本〕


東京から、静かな海辺の村にやって来た高名な画家・伴淳三郎の所に、
派手なナリをした女・京みつ子が訪ねてきた。
彼女は肌を焼きたくてここに来たと言い、
村の青年・三上真一郎をお供に、
イルカ島へ行く。


村のバー「青空屋」には、ママの三原葉子を目的に
集まってくる男たち多数。
桂小金治もその一人で、
彼曰く、「三原は借金のカタに網本の田中春男にいいようにされている」
との事。


田中の舎弟・渥美清は大変な悪党で、
村の娘の殆どに手を付けている。
中でも水原ゆかりは、
渥美の子を妊娠しており、
彼に訴えるも、
「俺には関係ない」とばかりに突き放され、
泣いている。


三上は京の色香に惑い、
すっかりその気になってしまい、
京が帰ったあとを追いかけ東京へ行くと言う。
三上の婚約者・はるみは驚き、
激しく彼を責めるが・・・。





日本版「リトルマーメイド」・・・
なわけはなく、
小さな海辺の村で起こる、
ごちゃごちゃな人間関係の絡み合い。
タイトルの「人魚」とは、
村の女たち全体の指すのであろう。
女はみんな人魚のように可愛く、
そして怖ろしいものである、と(笑)。


ものすごく疲れている中、観たので、
「せっかく名画座まで来て、途中で眠っちゃったら勿体ないな」と
思っていたのだけれど、
そんな心配は杞憂だった。
人間関係は複雑だけど、
とっても面白い。
すぐに引き込まれる。


まずは大好きな伴淳三郎さん。
彼は高名な画家先生という役柄で、
描いた絵は、大変な高額で売れるらしいけれど、
驕り高ぶった様子は全くなく、
飄々としていて、
めっちゃ好感が持てる。


彼は途中で、ある人を庇って、
周囲の人を驚かせるような発言をする。
それは自分の人生をも左右させるような重大な事なのだけれど、
優しさから、それを口にする。
伴さんだからこそ説得力がある、
素晴らしい場面だった。


その一方で、
驚いたのが渥美清さん。


彼は、定職に就かないような、
フラフラした役で、
そこは「寅さん」と似ていなくもないけれど、
決定的に違うのは、そのキャラクター。


「寅さん」に、性の匂いも悪の匂いも全く感じないのと正反対に、
その女ったらしっぷりは、もう最悪。
彼の辞書に「責任」という言葉はないようで、
彼のせいで女たちがどんな目に遭っても、
全く気にする様子もない。
渥美さんって、こんな演技もできるのね、と、
変な所で感心。


希望が持てるようなラストもいい。
なかなか面白い映画だった。


評価 ★★★★☆

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