「荒野の誓い」 [映画]
〔2017年/アメリカ〕
1892年。
西部開拓時代のアメリカ・ニューメキシコ州。
夫と、3人の子供とで、
幸せに暮らしていたロザリー(ロザムンド・パイク)は、
ある日、突然襲ってきた、
ネイティブアメリカンのコマンチ族に、
自分以外の家族全員を惨殺される。
一方、かつて戦争で名を上げた、
騎兵隊のジョー・ブロッカー大尉(クリスチャン・ベール)は、
シャイアン族の酋長と、その家族を、
モンタナ州まで護送する任務を命じられる。
ジョーたち一行は、
目的地へ向かう途中、
放心状態のロザリーに出会う。
ロザリーも彼らの仲間に加わるが、
コマンチ族がまた襲ってくる。
それを、何とかかわして、
先に進むも、
更なる困難が彼らを待ち受け・・・。
試写会で観た。
騎兵隊の一行と、
家族を惨殺された未亡人と、
ネイティブアメリカンの一家が、
まだ未開拓の西部を旅する物語だけど、
一難去ってまた一難。
RPGみたいだ。
まず、プロローグとして、
ロザムンド・パイク演じるロザリーの
家族全員が殺される場面の悲しみったら。
ハリウッド映画は、
どんな内容でも、
幼い子供を殺す事はないと聞いたことがあるけど、
この映画は、そんなお約束さえ関係ない。
コツコツ積み上げてきた幸せを、
一瞬にして失った、
ロザリーの気の狂いそうな悲しみは、
どう表現していいのかも分からない。
西部開拓時代のアメリカって、
本当にこうだったんだろうなぁ。
法律も、モラルもなく、
殺らなければ、殺られるだけ。
ネイティブアメリカンの描き方も、
極端な被害者でもなければ、
極端な悪者でもなく、
種族によって、
性質も異なるのだと、
公平な目で見られるようになっている。
それから、
当然、白人にもいい奴と悪い奴がいる。
白人同士だからと、
必ずしも助け合うわけでなく、
なぜそんな酷い事を、と、
思わされる場面もある。
見応えのある西部劇だった。
評価 ★★★★☆
「クロール 凶暴領域」 [映画]
〔2019年/アメリカ〕
大学で競泳をしている
ヘイリーは、
ハリケーンで避難命令が出ている中、
父と連絡が取れなくなり、
フロリダの実家に行く。
父の姿が見当たらず、
家中を探したヘイリーは、
地下で、父が血を流して倒れているのを発見。
何とか父を助けて、
避難しなければ、と、
思っている所に、
何かがおかしい。
巨大なワニがいる。
自分たちを狙っている・・・。
試写会で観た。
巨大なハリケーンが到来する中、
それはそれはでかいワニに襲われる父娘という
動物パニック物。
フロリダ辺りは、
湿地帯で、
ワニが沢山いると、
この手の映画を観ると、
それが本当なんだなぁ、と実感する。
よく、アメリカ南部で、
ゴルフ場にまで
ワニが闊歩している映像が
ニュースで流れたりもするものね。
それから、ワニとダブルでやって来るのが、
巨大ハリケーン。
日本も、最近の異常気象で、
各地で大きな洪水が起こっているけれど、
台風やハリケーンの被害は、
津波と何ら変わらない恐ろしさがあると、
そちらも実感。
そんなパニック状態の中、
次々襲い掛かるピンチを
父娘がどうやって切り抜けるのかが、
見どころなんだけど、
父は大変な怪我をしているというのに、
最初は辛そうだったのが、
いつのまにか、
普通に動けるようになっている(笑)。
娘も、
もちろん、無傷でなく、
ワニに引きずられたり、
色々あるんだけど、
それでも、決して死なない。
あぁ、
人は、こういう映画をしょっちゅう観ているおかげで、
主人公は決して死なないと、
刷り込まれていく。
自分が何か失敗したり、
不幸な目に遭ったりしたとき、
自分がこの世の主役でないのが駄目なんだろうなぁと
思ってしまいそうだよ(笑)。
評価 ★★★☆☆
「みとりし」 [映画]
〔2019年/日本〕
娘を亡くし、
生きる気力を失った柴久生(榎木孝明)が、
ある朝、出社すると、
上司が、同僚の死を軽く扱う様子に、
さらに失望、
柴は会社を辞める事を決める。
五年後。
柴は、岡山県のある町の、
看取りステーションに勤務していた。
「看取り」とは、
余命わずかな人のために、
不安を取り除き、
最後の瞬間まで面倒をみる仕事だ。
看取りステーションに、
新人・高村みのり(村上穂乃佳)が入ってくる。
真面目なみのりは、
懸命に看取りの仕事を向き合うが・・・。
試写会で観た。
「みとりし」とは「看取り士」という事で、
その仕事は、
あらすじに書いた通り。
主演は榎木孝明さんだけど、
実際は、現場で働く、
村上穂乃佳さん演じる、23歳のみのりが主人公のようだ。
みのりはとても一生懸命で、
こんな女の子が、
自分の最期の時に、
励ましてくれたらいいな、と思うんだけど、
問題も出てくる。
彼女が献身的にお世話をした老人の遺言書に、
「みのりに財産を譲る」みたいな事を書いてあり、
そこに、音信不通だった息子が現れて、
「親父をどうやってたぶらかしたんだ」みたいな事を言う。
ショックでみのりが泣きだすと、
「泣き落としかよ」だと。
金が絡むと、
人間、人が変わったようになるのは、
よく聞く話だけど、
こんな言われ方されたんじゃ、
対応に困るわ。
もちろん、赤の他人のみのりに、
相続なんてさせられない、という気持ちは分かるけど、
もう少し、お世話をした人の気持ちにも寄り添ってほしい。
榎木さんは、その遺書を焼き捨て、
「これでいいでしょう」と。
職員の女性に、
「添い寝をしてくれ」という老人もいる。
当然、断ると、
杖で激しく殴打され、
女性職員は、怪我をしてしまう。
年を重ねたかたの一部には、
怒りをコントロールできない人がいるというのは、
よく聞く。
自分の思う通りにならないと、
暴力(言葉も含め)で訴えるという。
「キレる老人」が問題にもなっているし。
なんとかならないのかなぁ。
本人は「認知症なんで」で済ませても、
された方は、めっちゃ傷つく。
自分も年を取ったら、
気を付けたいなぁ。
最期を、
誰もが納得する形で迎えるのは難しい。
まぁ、そんなこんな色々あっても、
自分の死後、50年も経っちゃえば、
憶えている人なんて誰もいなくなるわけだけど。
評価 ★★★☆☆
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「ヒンディー・ミディアム」 [映画]
〔2017年/インド〕
デリーに住む、ラージとミータ夫妻は、
衣料品店の経営で成功し、
あと、欲しいのは、
娘・ピアの学歴だけ。
夫妻は、超一流小学校・グラマー校に
ピアを入学させるため、
学校の近くの、高級住宅街に引っ越すが、
しかし、受験は全滅。
すると、グラマー校が、
低所得者層のために、
特別枠を設けている事を知り、
今度は、貧民街に引っ越し、
貧乏なフリをして、受験に臨むが・・・。
試写会で観た。
このポスターの大きな文字、
「英語が話せないなんて!」は、
ちょっと内容と違うかなぁ。
物語の象徴として、
英語が話せる、話せない、という、
エピソードは出てくるけど、
それほど大した意味はない。
インド人夫妻が、
自分の娘を、
とにかく何とかして、
有名校に入れたいと、
奮闘するわけだけど、
子供が主役のはずの受験なのに、
夫妻の娘・ピアの出番は本当に少ない。
とにかく、最初から最後まで
合格に向けて駆け回っているのは、親だけ。
特に、最初は、
母親が熱心。
この母、一流校に入れない子供は、
将来、うつ病になって、
薬物に手を出すようになる、というのが口癖。
んな馬鹿な。
そんな事で人生が決まるわけがない。
そんな風に決め付ける事の方が、
よほど、どうかしている。
おそらく、あまりに受験に夢中になっているので、
思考停止してしまっているように見受けられる。
もちろん、ラストは、
それは間違った考えだと、
流れるようになっているけれど。
この映画、
インド大使館で上映された。
持ち物チェックをされ、
自分の名前と連絡先を申告して、入館。
ロビーに綺麗なお花が飾られていました。
花を、花瓶でなく、
こんな風に飾るのがインドっぽい気がするのですが、
どうでしょう。
花一つ取っても、
国によって飾り方が違うのが、
興味深い所です。
評価 ★★★☆☆
「SHADOW 影武者」 [映画]
〔2018年/中国〕
戦国時代の中国。
弱小国・沛(ペイ)が、
敵の炎国に領土を奪われて20年。
国内は、
平和派の若き王(チェン・カイ)と、
開戦派の都督(ダン・チャオ)に二分されており、
ある日、都督は、王の許しを得ず、
炎国の楊蒼に手合わせを申し込む。
そんな都督に、
王は怒り狂うが、
実は王の前にいるのは、
本物の都督ではなく、
影武者であり・・・。
試写会で観た。
チャン・イーモウ監督作。
三国志をアレンジした物語だそうだ。
といっても、アレンジがすぎて、
もはや三国志ではない、という声を多いようだけど(笑)。
水墨画のような白と黒を基調にした
映像が美しい。
そこに、もう一色、
赤が加わる。
それは、血の色。
とにかく、残虐なシーンが多い。
銃でなく、
刃物で人を殺すって、
凄い現実感だよなぁと思いながら観る。
血を間近で感じる。
刃物と言ったって、
ナイフとか、そんなものじゃない。
現実に、あんな刃物があったら、
おそらく、重くて振り回せないんじゃかな、と
思う物ばかり。
振り上げただけで、
ヨロヨロしちゃいそうだ(笑)。
それから、
傘を使った武器の場面が壮観。
古い時代の物語という設定だけど、
あのような発想が、当時あったとも思えず、
テレビゲーム的だと思ってしまった。
影武者って、何なのだろう。
本物より、影武者の方が、
能力があったり、
機知に富んでいたりすると、
面倒くさい事になりそうだなぁ、
と思いながら観ていた。
さらに、影武者が野心家なら、
本物を亡き者にして、
自分がちゃっかり、その地位に就くなんて、
時代劇でも、よくある話。
何代も続く、〇〇家なんてのが、
日本にも、外国にもあるけれど、
本当に正しい血筋かどうかなんて、
誰にも分かりはしない。
評価 ★★★☆☆