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「怪しい彼女」 [映画]

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〔2014年/韓国〕


マルスン婆さん70歳。
口が達者で、周囲の迷惑も気にしない彼女は、
近所のトラブルメーカー。
彼女の自慢は、
女手一つで、国立大学の教授に育てた一人息子・ヒョンチョル。


しかし、ヒョンチョルの妻は、
マルスンの嫁いびりに耐えられず、
睡眠薬をオーバードーズ。
それをきっかけに家族は、
マルスンを施設に入れようと話し合う。


ショックを受けたマルスンがとぼとぼ歩いていると、
ある写真館に惹かれ、
写真を撮ってもらう。
すると、何という事か、
彼女は20歳の女の子に若返ってしまう。


昔の奉公人・パクさんの家に下宿し、
大好きなオードリー・ヘプバーンの名前から、
オ・ドゥリ(シム・ウンギョン)と名乗ったマルスンは、
その歌の上手さから、
孫のバンドのボーカルをする事に。


外見は20歳、
中身は70歳のドゥリの珍妙な言動に、
周囲は振り回されるが・・・。





昨日、
多部未華子主演の「あやしい彼女」の感想を書く時、
検索してみたら、
「あやしい彼女」は、
韓国映画「怪しい彼女」のリメイクなのだと知った。


そうなるともう、
韓国版の方が気になって仕方ない。
すぐにレンタル店に行って、
観てみた次第。


多部ちゃん版がとても可愛く、
面白かったけど、
こちらも負けてはいない、
というか、こちらが先だけど(笑)、
リメイクしたくなるのも、分かる気がする。


主演のシム・ウンギョンが、
めちゃくちゃ美人・・・というわけでないのがいい。
(それは多部ちゃんも同じ)
別に2人の事を馬鹿にしているわけではなく、
やっぱりこういったお話は、
美人より、愛嬌のある女の子の方が、
上手く役にハマる気がして。


韓国語から受ける
いつも怒っているようなキツい語感も、
この映画にピッタリだ。
なにせ、ドゥリは20歳の見た目に70歳の中身。
若いのに、年上の者に威張ったり、激励したり、
それをあの怒り口調でまくし立てるのだから、
笑ってしまう。


日本版と韓国版、設定は殆ど同じだけど、
婆ちゃんの子供が、
娘と息子という違いが、
この映画の印象を決定づけている気がする。


噂には聞くけど、
韓国の姑さんの、嫁に対するキツさったら、
それはすごいと言うし。


以前、韓国を旅行した時、
女性ガイドさんと世間話をしていて、
話題が彼女の姑さんの事になった途端、
表情が一変した事は、一生忘れない。


姑さんの事を「大嫌い」だと言い捨てた彼女に、
その関係の難しさが垣間見られた気がして、
名所旧跡巡りより、
貴重な瞬間だったと思う。
今でも、その時の旅行の話を友人とすると、
まず最初に、そのエピソードが出てくるくらい。


話が逸れてしまったけど、
何が言いたいかって、
日本版の方が多少マイルドな印象になっているって事で。


評価 ★★★☆☆

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「あやしい彼女」 [映画]

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〔2016年/日本〕


スカイツリーの足元で暮らす瀬山カツ(倍賞美津子)73歳は、
口が悪く、態度もでかく、
トラブルばかりの迷惑婆さん。
しかし彼女には、
娘の幸恵(小林聡美)を女手一つで立派に育てた自負がある。


ある日、幸恵と大喧嘩したカツは
家を飛び出すが、
ふと惹かれた写真館に入り、
オードリー・ヘプバーン風に写真を撮ってもらう。


すると不思議。
店を出たカツは、なんと20歳に若返っているではないか。
これでは家には帰れない。
オードリー・ヘプバーンを文字って、
大鳥節子(多部未華子)と名乗ったカツは
幼馴染で、風呂屋を経営する爺さん・中田次郎の家に
下宿する事にする。


町内会のカラオケ大会に出場した節子の
歌の上手さに皆が驚き、
それを聞いたカツの孫・翼(北村匠海)は
自分のバンドのボーカルにスカウトする。


さらに、有名音楽プロデューサー小林(要潤)が、
節子がボーカルをする翼のバンドに目を付け、
プロデビューの可能性まで出てくるが・・・。





会社の帰りに何か観ようと、
劇場のスケジュールを確認していたら、
この映画の時間がちょうど良かったうえに、
ネット上で大変な高評価だった事を思い出し、
予約した。


主演の多部未華子が素晴らしい。
見た目は20歳、
心は73歳という役を、
まったく違和感なくこなしている。


私は多部ちゃんを、
どちらかというと不器用な女優さんだと思い込んでいたんだけど、
全然そんな事ないじゃないか。
そして何より、
歌の上手さにも驚く。


多部ちゃん、
あなた、歌手デビューできるよ、
絶対売れるよ、と思ったくらい、
綺麗な声。
しかも歌いながら、
結構踊れてるし。
とっても可愛い。


それから、
嫌われ者の婆さんだと思っていた、
倍賞美津子さん演じるカツが、
実は、
大変な苦労をして娘を育ててきた事が分かって、涙。


そうだよね、
いい加減な気持ちで生きてる人なんて
誰もいない。
みんな一所懸命で、
みんな頑張ってて、
みんな偉いんだ。


それから、それから、
これは書かずにいられないんだけど、
要潤が素敵すぎてビックリ(笑)。


私は今まで彼の事を、
戦隊ものでデビューした、
ちょっとイケメン「風」の兄さんで、
取り立てて特徴のない人だと思ってきたのよ。
まぁ、ちょっとコメディが出来るってのは
分かってたけど。


それが、この映画ではどうでしょう。
多部ちゃんの歌の才能を見い出す、
音楽プロデューサー役で、
お兄さんでもない、おじさんでもない、
ギリギリの位置にいる素敵な大人の男を
しっかり演じているじゃないの。
ちょっとドキドキするシーンもあったりして、
一気にファンになってしまった(笑)。


笑えて、泣けて、可愛くて、
素敵な映画でした。


評価 ★★★★☆

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「アイアムアヒーロー」 [映画]

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〔2016年/日本〕


漫画家を目指し、作品を描き続けるも、
思うような結果が出せない鈴木英雄(大泉洋)35歳。
いい年をして、夢のような事ばかり話す彼に、
同棲相手の徹子(片瀬那奈)は、ついにキレて、
深夜、アパートから彼を追い出す。


けれど翌日、徹子から謝りの電話が入る。
ウキウキと部屋に戻った英雄だが、
なぜか徹子は化け物のような姿で
英雄に襲いかかり、
抵抗した彼は、徹子を殺してしまう。


慌てて逃げた英雄は、
街の様子に驚く。
ゾンビのようになった人間、
通称、「ZQN(ゾキュン)」が、
まだZQNなっていない人間を襲っているのだ。


見知らぬ女子高生・比呂美(有村架純)と共に
タクシーの乗った英雄は、
富士山近くの、ショッピングモールに辿り着く。
そこの屋上では、無事だった人々のコミューンがあった。


モールの別の棟には、
大量の食糧があるとの事で、
そこへ向かった英雄たちだが、
そんな彼らに、ZQNが襲いかかってくる・・・。





試写会で観た。


ここの所、本当に試写会に当たりまくっている気がする。
もちろん、数多く応募しているせいもあるけど、
やっぱり、今はそういう波が来ているのだろうか。
こんな事なら、もっと前から、
試写会に目を付ければ良かったと思うけど、
人には、その時その時の状況がある。
応募しなかったのには、
それなりの理由があるわけで、
まぁ、今は毎日、郵便受けを見るのが楽しみだ(笑)。


しかも、昨日のこの試写会、
なぜか、もう公開されている映画なのに行われたという、
初めてのパターン。
試写会のカラクリって一体どうなっているんだろう。


で、映画について。
かなりのスプラッターらしいとは、
一緒に行ったyonta*さんから
教えていただいてはいたのだけれど、
上映前にも、近くにいた観客の方が、
「なんか、凄く気持ち悪いらしいよ」と話しているのが、
耳に入ってきた。


そっか、そんなに凄いのか、
でも、大泉洋だよ、
「彼の映画にしては」ってくらいじゃないの?と思っていたのだけれど、


いやー、凄かった(笑)。
血だらけ、
脳味噌だらけ、
内臓だらけ(笑)。


大泉洋は、
かなりヘタレな男で、
観ていてもイライラするし、
本人もそれを自覚してる。
自分の駄目っぷりを、
涙ながらに悔悟する場面もある。


だけど、
スイッチが入ってからは凄い。
ラストのZQNとの死闘は壮絶。
日本の一般映画でここまでするって、
今まで、あまり観た事がない気がする。


これは、「人間」対「ZQN」の映画ではあるけれど、
「人間」対「人間」の映画でもある。


ショッピングモールの屋上で暮らす人々は、
若者が殆どなんだけど、
そこでの勢力争いの最低な事ったら。
結局、人は、どこへ行っても、
最後に苦しめられるのは人間関係。


私は、
DQNに支配されて暮らすくらいなら、
ZQNに噛まれて、ゾンビになった方がまだマシだわ。


それから、さして重要ではないシーンだけど、
冒頭の、大泉洋と片瀬那奈の同棲のシーンが、
個人的に面白かった。


女って愛情が冷めると、
ああいう風な態度取るよなぁ、って(笑)。
あの2人だって、
付き合い始めの頃は、
いちゃいちゃしていただろうに(笑)。


評価 ★★★★☆

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「64 ロクヨン 前編」 [映画]

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〔2016年/日本〕


昭和64年。
群馬県のある町で、
小学1年生の女の子が誘拐され、
身代金要求の電話が入る。


父親は、現金を持って、
犯人の指示で一日中奔走し、
警察はその後を追い、
なんとか逮捕に漕ぎつけようとする。


しかし、彼らの努力も空しく、
身代金だけが奪われ、
娘は遺体となって発見される。


平成14年。
当時、事件の捜査に当たっていた刑事・三上(佐藤浩市)は、
広報室に移動していた。


時効まであと1年に迫った今、
三上はあらためて、事件解決に動き出すが、
彼の知らなかった事実が露呈され、
また、記者室との確執や、
キャリアとの軋轢、
私生活での苦悩などが彼を悩ます・・・。





試写会で観た。


もう「試写会で観た」と書くのはやめようかと思ったのだけれど、
そうなると、
「公開前なのに、なぜもう観たんだ?」と思われる方が
出てくるかもしれない。
まぁ、こんな与太ブログで何を書こうが、
世間には全く影響のない事ではあるけれど、
やっぱり、一応書いた方がいいのかな、と思い、
これからも書きます(笑)。


この映画は「前編」ということで、
「つまりは、『後編』は自費で観ろと?」と、
一緒に行ったyonta*さんと大笑いしたのだけれど、
帰りにお土産として、
「とんかつ和幸」さんの500円分のお食事券をいただいたので、
「わかった、わかりました、後編もちゃんと観ます」と
誓った次第(笑)。


で、この映画。
タイトルの「ロクヨン」というのは、
昭和64年という意味だ。


昭和天皇が1月7日に崩御されたので、
たった1週間しかなかった昭和64年。
その1週間の間に起こった、
少女誘拐殺人事件を追う刑事と、
昭和64年から永遠に取り残されたように暮らす、
遺族の物語。


といっても、
「前編」では、事件の解決と直接結びつくような
話はなく、
警察内部の問題が、
大きくクローズアップされた内容。


特に、警察の隠蔽体質の実態が
大きく扱われて、
記者クラブに常駐する記者たちの苛立ちはハンパなく、
広報室の佐藤浩市は苦慮する。


佐藤浩市だって、好きで隠蔽しているわけではなく、
上からの圧力で仕方なく、なんだけど、
広報室にいる以上、
記者たちの怒りを受け止めるのは彼しかおらず、
痛し痒しな面がある。


その隠蔽は、
「ロクヨン」でも起こっていた事が分かる。
事件の真っ最中に、
ある出来事が起こり、
そんな事が世間に知れたら大事になると判断した上司が、
若い部下たちに箝口令を敷く。


部下たちは、
いまだにその事を引き摺り、
悩み、苦しんでいる。
昭和64年に取り残されているのは、
遺族だけでなく、彼らも同じだ。


佐藤浩市は私生活も、
大きな問題を抱えている。
当たり前の事だけど、
刑事だって一人の人間なんだと
あたらめて思い知る。


「後編」では、
それらの問題が、
解決してゆくのだろうか。
なんだか楽しみ。
6月まで内容を忘れないようにしなくちゃ(笑)。


評価 ★★★★☆

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「鰯雲」 [映画]

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〔1958年/日本〕


厚木の農村部。
八重(淡島千景)は戦争で夫を亡くすも、
まだ婚家で暮らし、
一人息子を育て、
姑の面倒をみている。


八重の兄・和助(中村鴈治郎)は、戦前は大地主だったが、
農地改革で、わずかな土地しかなくなってしまった。
しかし、過去の栄光が忘れられず、
いまだに本家風を吹かせている。


そんな和助の長男・初冶(小林桂樹)には、
嫁の来てがなかったが、
八重の計らいで見合いをし、
山奥の村の娘・みち子(司葉子)との縁談がまとまる。


見栄っ張りの和助は、
婚礼は盛大にと、金策に走るが、
「今時、借金してまで大きな結婚式をする奴はいない」と、
誰も金を貸さない。
和助だけが時代に取り残され、
人から相手にされていない事に気付いていない。


そんな中、八重は、新聞記者の大川(木村功)と
一線を越えてしまう。
その後も関係が続くが、
大川には妻子がおり、
それは苦しい恋だった・・・。





映画としては面白いんだけど、
なんだか嫌なストーリーで。


神奈川県の厚木市って、
そこまで田舎だと思った事はなかったけど、
1950年代はあんなものだったのだろうか。


中村鴈治郎演じる和助が、
私にはどうしても合わん。


彼は、分家の娘が大学に進学すると知るや、
飛んでいって、怒鳴り散らす。
「農家の跡取り娘が大学に行く必要はない!」と。
その考え方も嫌だけど、
それより何より、よその家の事に口を出す、
そのウザさが私には耐え難い。


長男の初冶の嫁が決まると、
「働き手が増えて良かった。こき使えばいい」と思っているのが
見え見えで。
最悪。


そんな舅がいたのでは、
嫁のみち子が可哀相だとばかりに、
初冶はさっさと部屋を借りて、
みち子と暮し始める。
さすが、実の息子だけあって分かってらっしゃる。
周囲の人がみんな、
和助の言う事を聞くと思ったら大間違いだ。


それ以外でも、
全ての出来事は、
和助の思惑から外れてゆく。
もう和助の考えが通用する場所など
どこにも有りはしない。


色々なご意見があろうが、
私は自分の経験からも、
力で人を支配しようとする男が嫌いだ、大嫌いだ。


実は和助にも、
横暴な彼の父親のせいで、
2度も離婚する事になった過去がある。
自分が辛い思いをしたのだから、
絶対に子供たちには同じ思いをさせまい、という発想が
なぜ浮かばないのか。
不思議でならない。


ただ、周囲の人間たちが、
そんな和助を諭す事ができるのが救い。
特に、淡島千景さん演じる八重は進歩的な女性で、
和助に強く意見する。


和助は、八重のおかげで、
最初の妻・杉村春子さんと再会する。
和助の父親が無理矢理追い出しただけで、
決して憎み合って別れたわけではない2人の再会はしみじみ。
良い場面だった。


とにかく人間関係が複雑で、
えーっと、この人はこの人の親で・・・とか、
整理しながらでないと混乱してくる(笑)。
和助は好きになれないけど、
演じる中村鴈治郎さんは大好きだし、
見応えは十分。


評価 ★★★★☆

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