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有楽コンコース [できごと]

JR有楽町駅の新橋寄りに、
「有楽コンコース」という、
かなり古いガード下があります。

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この「有楽コンコース」を
日比谷側から銀座側に見た時、
右の壁に、
なんとも私の好きそうな
古い邦画のポスターがずらりと貼られていて、

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私は、もう、
ここを通る度に胸ときめいて、
知らないうちに、蟹歩きをしているような気がします。
人から見たら絶対不審者(笑)。


なぜこのようなポスターが貼られているのか、
ポスターの向かい側は飲み屋さんなので、
そのお店の演出なのか、とも思うけれど、
そのボロボロ具合は、
人の手で作れるものではないとも思います。


というのも、

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これらのように、保存状態が良い物も
ありますが、



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下半分が無くなってしまっている物や、



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殆ど原型をとどめておらず、
かろうじて壁に貼り付いている物もある。
この風合いは長い年月を経ないと、
出てこないものだと思うのですが。



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洋画も2枚ほどあります。
グレゴリー・ペックとソフィア・ローレンが
共演した映画があるなんて、
このポスターを見なければ知らなかった。
勉強になります(笑)。





なんとなく嬉しいのは、
ポスターの上からスプレーで落書きされたり、
故意に酷く破られたりせず、
ずっとその状態にある事。


たとえ映画を好きでなくても、
こういった物に手をかけるのを良しとしない
人々の心の表れではないかと、
勝手に良いように考えているのですが、
どうなんでしょう。


こんなガード下も、
いつかは整備され、
このポスターたちも無くなってしまうでしょう。
写真を撮りたいと思いつつ、
実行にうつした事はなかったけれど、
ブログに載せてみようと思い立ったのが
いい機会でした。
今日あるものが、明日もあるかは分からない。
せめて記録に残しておかないと。


35枚、全部を写真に収めた。
エクセルで一覧にもした。
あとは、これらの映画を全制覇するだけだ!などと
勝手に意気込んでいる私です(笑)。
(無理かなぁ)

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「リリーのすべて」 [映画]

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〔2015年/イギリス〕


1926年。
デンマークのコペンハーゲンで暮らす、
アイナー(エディ・レッドメイン)とゲルダ(アリシア・ヴィキャンデル)は、
仲睦まじい若い画家の夫婦。


ある日、ゲルダは、
肖像画のモデルが休んだため、
アイナーにタイツを穿いてもらい、
脚だけ、代役を頼むが、
その際、アイナーの中に何か目覚めるものがあった。


その後、アイナーは、
女装する楽しみを覚え、
ゲルダの従姉妹・リリーとして、
パーティなどに出掛けるようになる。


アイナーは次第に、
「女装」ではなく、
本物の「女」になりたいと思うようになる。
そんな彼を心配したゲルダは、
病院に診せるが、
その診断や治療は、
アイナーには納得のいかないものばかり。


その後、ついに、
男性から女性への性転換手術をしてくれるという
医者と出会う。
しかし、それは、
ゲルダの愛したアイナーが
永遠に消えてしまう事であり・・・。





悲しいなぁ・・・。
自分が心から愛している夫が、
女性になりたいと言い出して、
性転換手術を受けるなんて事になったら。


それも、最初から偽装結婚だったとか、
そんなんじゃなくて、
とっても仲が良くて、
幸せに暮らしていたというのに。


ゲルダが、それを、
もしかしたら、自分のせいではないかと
気に病んでいるのも、可哀相だ。
「あの時、絵のモデルなんかさせたから・・・」と。


ゲルダの凄い所は、
そんなアイナーを見捨てる事なく、
最後まで彼の望みを叶えてあげようと、
懸命になる所。
もう2人は、
男と女として愛し合う事はないけれど、
親友という言葉が一番近いような、
深い絆は変わらないまま。


アイナーを演じたエディ・レッドメインの
可愛い事。
男性だった頃から、
ちょっとナヨっとした感じで、
中性的な雰囲気がすんごく上手く出ていた。


アカデミー賞の主演男優賞は、
ノミネートだけで終わったけど、
プリオがいなかったら、
受賞していてもおかしくない演技だと思ったな。


なんだかんだ言っても、
今はいい時代になったものだ。
トランスジェンダーに対して、
今でも差別はゼロではないけど、
この映画のような90年前に比べたら、
ずっとマシになってきている。
むしろ、マイノリティに対して、
気を使い過ぎでは?と思われるようなニュースも
たまにある。


マイノリティもマジョリティも、
バランスよく、
お互いを尊重し合える社会が理想なんだろうけど、
このバランスというのが難しい。
そこに行き着くには
まだまだ時間がかかるような気がする。


評価 ★★★☆☆

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◆「柔らかな頬」と「木下闇」◆ [本]


柔らかな頬

柔らかな頬

  • 作者: 桐野 夏生
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1999/04
  • メディア: 単行本


押入れのちよ

押入れのちよ

  • 作者: 荻原 浩
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2006/05/19
  • メディア: 単行本


先日、
映画、「虹蛇と眠る女」のレビューで、
http://aomikamica.blog.so-net.ne.jp/2016-03-21
「神隠し」の事を書いたけれど、
「神隠し」と聞いて、
私がまず最初に頭に浮かぶのが、
桐野夏生さんの小説、「柔らかな頬」。


ある日、旅行先の山荘で、
主人公の幼い娘が忽然といなくなる。
懸命な捜索も空しく、
娘は見つからない・・・というストーリー。


直木賞を取ったこの小説は大変に面白く、
夢中になって読んだものだが、
有名な事なのでネタばれしてしまうと、
結局、ラストまで犯人は分からない。


桐野さんは犯人を書いたのだけれど、
編集者が、「そこは明確にしないほうが」と進言したと
何かで読んだ事がある。
それが本当だとしたら、
まったく余計な事をしてくれたものだよ(笑)。
推理は読み手に任せるって、
任されても困る。
こちらは真実が知りたいというのに・・・。


・・・それから数年後。


萩原浩さんの短編集、「押入れのちよ」を読んでいた私は、
そこに収録されている一編、「木下闇」を読んでいるうちに
胸が高鳴り出した。
幼い少女が、
片田舎の母の実家でかくれんぼをしているうち、
忽然といなくなる。
そして、彼女の姉が15年後に、
事件以来のその家を訪れる、という物語。


これは・・・「柔らかな頬」に似ている。
もちろん完全に同じではないけれど、
シチュエーションがなんとなく似ている。


そしてこちらには、
犯人と、
動機と、
遺体の隠し場所が、
明確に記されてあった。


「柔らかな頬」で、ずっと消化不良気味だった、
私のモヤモヤが一気に解決したような気持ちになった。
そっか、少女はそんな所に隠されていたのか、
それでは誰にも分かるまい。
見つかって良かった、
犯人が分かってホッとした・・・
・・・って、この2冊に、
何ら関連がないことは分かっては
いるのだけれど。


荻原さんが、
「柔らかな頬」を意識して、
この短編を書かれたのか、
それとも偶然なのかは分からない。
ただ私は、
荻原さんに感謝したい気持ちでいっぱい。
「解決してくださって、ありがとうございます」と。


「柔らかな頬」を読んで以来、
ずっとモヤモヤされている方、
そして、これから読もうと思っている方、
もしお時間があるなら、
続けて、この「木下闇」を読まれるのも
一興ではないかと思います。

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「女が眠る時」 [映画]

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〔2016年/日本〕


2作の小説を発表し、
賞は取ったものの、
3作目が全く書けなくなってしまった、
小説家・清水健二(西島秀俊)は、
妻の綾(小山田サユリ)と伊豆のリゾートホテルにやって来る。


初日、清水がプールサイドでぼんやりしていると、
綾から、対岸に異様なカップルがいると教えられる。
盗み見ると、
初老の男が、若い女の体にオイルを塗ってやっており、
確かに普通ではない雰囲気だ。


以来、そのカップル、
佐原(北野武)と美樹(忽那汐里)が
気になって仕方のない清水は、
2人の部屋を覗き見、
また、何気ない風を装って、
佐原と近付きになる事に成功する。


佐原は、
美樹が幼い頃から撮り続けている、
彼女が眠っている時の動画を清水に見せ、
「あの子の最期の日を記録したい」などと言う・・・。





ちょっと変わった映画。
起承転結がなく、
主人公・清水の妄想や夢などが
絡み合って、
解りづらいといえば、解りづらい。


リゾートホテルにいたカップル、
北野武と忽那汐里は、
確かに異様で、目立つ。
年の差も、見た目も。


人の固定観念ってやっかいだ。
もし、女が、
ケバい、水商売風の女だったら、
何の違和感も感じなかっただろう。
それが、いかにも清純そうな忽那となると、
ものすごく禁断の匂いがする。
下手したら、犯罪?みたいな。


しっかし、笑えるのは、
その異様なカップルではなく、
西島秀俊の行動よ。


西島は、2人が気になるあまり、
部屋を覗き見る。
そして、それだけでは飽き足らず、
部屋に忍び込む。


何でそこまでする?と思いながら観ていると、
なんと、忽那汐里が帰ってきてしまい、
西島は慌ててベッドの下に隠れるのよ(笑)。
そこまでいくと、
なんだかコントっぽい。


それから、北野武より怖いと感じたのが、
リリー・フランキー。


話をしていると、
どこにスイッチが入ったのか、
突然怒り出す人っているでしょう。
そんな感じ。


見た目が飄々としているだけに、
余計に不気味で。
やっぱり固定観念ってやっかいだ。


評価 ★★★☆☆

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「残菊物語」 [映画]

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〔1956年/日本〕


尾上菊之助(長谷川一夫)は、
歌舞伎の名門・五代目菊五郎の養子として舞台に立ち、
自分の人気に酔っていたが、
その演技は下手で、
人々は彼を、陰で「大根」と言い、笑っている。


そんな噂を薄々感じている菊之助は、
弟の乳母・お徳(淡島千景)に、
正直な意見を聞かせてほしいと迫り、
お徳は、
「あなたの演技は、心に応えるものがない」と、
言いにくそうに言った。


その日から菊之助は、
遊びをスッパリ止め、
芸の勉強に精進する。
そして同時に、
お徳と親しく話をするうちに、
恋心を抱くようになる。


ところが、そんな2人の急接近を危惧した、
菊之助の母親は、
菊之助に内緒でお徳に暇を出してしまう。


怒った菊之助は、
家を飛び出し、大阪歌舞伎の舞台に立つようになる。
1年後、お徳も大阪にやって来て、
夫婦として一緒に暮らすようになるが、
東京での名声は大阪では通用せず、
菊之助の生活は次第に荒み、
お徳に辛く当たるようになる・・・。





やっぱり素晴らしい「残菊物語」。


以前に、1939年版を観た時も
なんて面白いんだと、感動したものだけれど、
17年後に撮られた、このリメイク版も、
全く劣っていない。


特に本作では、
淡島千景さんの演技が素晴らし過ぎて、
涙なくしては観られなかった。


淡島さん演じるお徳は、
身分違いの菊之助を、
全身で愛し抜いていて、
どんなに彼が身を落しても、
決して咎めたり、文句を言ったりはせず、
全ては、「芸の肥やし」だと達観しているようだ。


淡島さんは、
男を立てる演技がめっちゃ上手い。
押し付けがましくなく、
さりげなく、
実は力強く、
男を盛り立てる。
本当にいい女だと思う。


淡島さんと一緒にいるときの長谷川一夫さんは、
まるで子供。
「お徳、お徳」と頼り切ったような様子は、
妻というより、母親と一緒にいるようだ。
そんな男を、
可愛いと思うか、ウザいと思うかは、
映画の出来次第なんだろうけれど、
私は圧倒的に可愛い、と思ってしまった(笑)。


菊之助の荒んだ感じは、
1939年版の方が顕著だった気がする。
本作の菊之助が、
一度だけお徳を殴るシーンがあるけれど、
なりゆきで手が当たったといった感じ。
だからといって、
長谷川さんのイメージではそれで十分で、
物足りないといった感じではない。


「残菊物語」は、
あと1本、市川猿之助さんと岡田茉莉子さんで作られている。
いつか絶対、観てみたい。


評価 ★★★★☆

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