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「さよならモロッコ」 [映画]

sayonaramorocco.jpg
〔1974年/日本〕


CMディレクターの岡田(愛川欽也)と、
スタッフ一行は、
モロッコのマラケシュに、
新しいCM撮影のためにやって来た。


岡田が、撮影の合間に、
一人車で砂漠を走っていると、
ピストルを頭に向け、
今まさに自殺しようとしている
フランス人の女・マリーテレーズと出会う。


マリーテレーズを車に乗せ、
街に戻った岡田は、
彼女の可憐な愛らしさにすっかり参ってしまい、
2人は恋人同士となる。


しかし、マリーテレーズに、
パリから手紙が届く。
それは、彼女の元恋人からで、
そこには、
「もう一度やり直そう」と書かれており・・・。





すごいなぁ、
恋のパワー。
全編通して、恋でみなぎってる、この映画。


異国で出会ったパリジェンヌに恋してしまった
愛川欽也扮する主人公・岡田は、
腑抜けのようになってしまい、
もう、なーんにも手に付かない。


彼女からの「死にたい」と書かれた手紙を受け取れば、
仕事そっちのけで、
彼女の元に駆け付け、
スタッフはカンカン。


彼女にのめり込む彼は、
翌日、仕事の遅れを取り戻すため、
一度は車で出発するが、
途中まで行った所で、「もうロケやめた」とつぶやき、
スタッフから離れ、
また彼女の元へ。


挙句の果てに、
日本に帰るために、
空港に向かう途中の車を降り、
「やっぱり帰らない、彼女とこの地で一緒にいたい」と。
どんだけ惚れちまったんだよって(笑)。


けれど、
元々が不安定な関係、
当然の事ながら、破局はすぐにやって来る。


彼女が元恋人からの手紙に、
悩み、苦しんでいるのを知った岡田は、
「パリに帰っていいんだよ」と。
その時の、
2人で抱き合って泣くシーンの切ない事ったら。
たったこれだけのお話しなのに、
私はもうすっかり、
岡田の気持ちに寄り添ってしまったようだ。


この映画、
愛川欽也さんが、
監督、製作、音楽、主演まで、
全てをこなした、
ほぼ、プライベートフィルムとの事だけれど、
それだけで、ここまでの作品が作れるって、
やっぱり凄い人だったんだなぁと、
今更ながらに思う。


彼女がどんなに我儘言っても、
勝手な事をしても、
決して怒らず、
全てを許す主人公。
ラストも切なかった。


評価 ★★★☆☆

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「ムーンライト」 [映画]

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〔2016/アメリカ〕


マイアミで暮らす黒人少年・シャロン(アレックス・ヒバーグ)は、
学校でいじめに遭う、辛い日々。
ある日、いじめっ子たちに追われたシャロンは、
麻薬の売人・ファン(マハーシャラ・アリ)に助けられ、
以来、親切なフアンを父のように慕うようになる。


高校生になったシャロン(ジャハール・ジェローム)。
フアンは既に死んでいたが、
フアンの恋人・テレサとの交流は続いていた。
学校では相変わらず孤独だったが、
唯一の友達・ケヴィンには心を開いている。


しかし、ある日、ある事件が起こる。
シャロンは、今までの鬱積した気持ちをぶつけるように、
ある行動に出て、
逮捕される。


大人になったシャロン(トレヴァンテ・ローズ)は、
子供のころとは別人のように
体を鍛え上げ、
逞しい男に成長していた。
麻薬の売人をする彼のところへ、
ケヴィンから突然の電話が入り・・・。





今年のアカデミー賞作品賞受賞作。


有力と言われた、
エンターテイメント性ばっちりの
「ラ・ラ・ランド」と比べて、
とても地味な作品。
まさに、「月の光」のような。


けれど、だからと言って、
退屈するわけではない。
一人の黒人男性の、
幼少期から青年期までの出来事が、
じっくりと描かれる。
まるで自伝のように。


私の記憶違いでなければ、
ほぼほぼ、出てくるのは黒人だけ。
学校も、街も。
「もしも世界が黒人だけだったら」という
仮定の映画を観ているみたいだ。
(白人がはっきり映るのは、ケヴィンのレストランの数人の客だけだったと思う)
 


なので、
そこに人種間の争いや軋轢は皆無で、
全ては、
黒人vs黒人で話が進行する。


同じ肌の色だからって、
全員が互いに連帯意識や、同胞意識を持っているわけじゃない。
どんな世界にもいじめがある。


そうした設定には、
もちろん何か理由があるのだろうけど、
何が言いたいのだろう。


黒人は、黒人社会の枠の中だけでも、
別に生きられない事はないんだぜ、視野は狭いけどよ、
って事だろうか。


もちろん、日本に住んでる私だって、
日本人の知り合いしかいないのだから、
同じじゃないかと言われればそれまでだけど、
でも、やっぱりそれとは違うよね。


3点か4点かで迷ったけど、
シャロンとケヴィンの再会の場面が好きなので、4点。


詳しくは書けないけど、
シャロンがケヴィンに対する思いを表すセリフがあって、
すごいな、
見た目からは想像できないな、と。


国も、人種も、性別も、生活も、
私とは全く違う世界で生きている主人公だけど、
人を思う気持ちは万国共通、同じだ、と思ったり。


評価 ★★★★☆

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万里の長城 [旅行]

昨日感想を書いた、映画「グレートウォール」。


スクリーンを見つめていたら、
10年ほど前に、
女ともだちと中国(北京・西安・上海)を旅した事が
懐かしく蘇ってきました。


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家に帰って、
その時の旅行で撮った写真を
探してみましたので、
特に万里の長城だけを、
何枚か、アップしてみようと思います。


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この地球上に、
行ってみたい国、見てみたい建造物は沢山ありますが、
万里の長城も、その一つでしたので、
この目に偉大な城壁が飛び込んできた時の感動といったら
なかったです。


どこまでもどこまでも続く城壁。
まさしく、グレートなウォール。
宇宙から目視できるというのも、分かる気がします。
昔の中国は、
何もかも桁が違う。


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映画と違うのは、
実際のそこは、
とにかく人が多い。
世界各国からの旅行者でごった返し、
まるで原宿の竹下通りみたい。
(例えが小さいですか(笑))。


ただ、それには理由があります。
ここは、八達嶺長城(はったつれいちょうじょう)という、
万里の長城の、見学可能な数か所の中でも、
一番一般的な観光地なのです。
万里の長城だからと、
どこへ行ってもいい、というわけではなさそうです。


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物売りも多いです。
ガイドさんから「絶対買わないでください」と言われていたので、
買いませんでしたが、
そうやって生計を立てている中国人のかたも、
沢山おられるのでしょう。
万里の長城だけでなく、
どこへ行っても、
バスを降りると、
必ず駆け寄って来られましたので。


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映画のような、
化け物はいませんでした。
(当たり前だ(笑))。



写真を見ているうちに、
楽しかった事が数々思い出され、
友人に、
「中国旅行、楽しかったね」とLINEしましたら、


「あの時、中国に行っておいてよかった」
との返信がありました。


確かに、世界は、
今より、もう少し穏やかだった気がしますし、
中国自体も北京オリンピックの直前で、
国全体が一生懸命という印象でした。


難しい事は分からないけど、
空を見上げて不安になるような、
そんな世界は嫌です。

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「グレートウォール」 [映画]

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〔2016年/中国・アメリカ〕


宋王朝時代。
火薬(ブラックパウダー)を求め、
世界を旅していた
ウィリアム(マット・デイモン)とトバール(ペドロ・パスカル)ら一行は、
宋に辿り着く。


その夜、
正体不明の怪物に襲われたウィリアムは、
怪物の腕を切り落とし、
何とか助かる。


翌日、馬賊に追われた2人が行き着いたのは、
巨大な城壁、「万里の長城」であった。


長城防衛の命を受けている禁軍は、
捕らえたウィリアムたちを
処刑するか否かで意見が分かれる。


戦略を司るワン(アンディ・ラウ)は、
ウィリアムが持っていた、
怪物の腕に興味を示す。
この怪物こそ、
60年に一度現れる、
饕餮(とうてつ)と呼ばれる化け物集団で、
万里の長城を築いた理由でもあるのだ・・・。





宇宙から地球を見た時、
肉眼で確認できる建造物は、
唯一、万里の長城だけだ、と聞いた事があるけれど、


その、偉大なる万里の長城を築いた理由が、
饕餮(とうてつ)と呼ばれる化け物を侵入させたないため、
という、
トンデモ映画。


チャン・イーモウ監督は、
北京オリンピックの演出を行っただけあって、
映像は凄い。


有り得ない数で襲い掛かってくる化け物は、
大変に不気味だし、
万里の長城もセットには見えない。


でも、だから何?と言われると、
何も無い(笑)。
化け物と人間が、
ワーワーワーワー戦っている以外の場面が、
よく思い出せない(笑)。


化け物が、万里の長城を登ってこようとする様子が、
「ワールド・ウォーZ」にソックリだなと思っていたら、
 ↓
http://aomikamica.blog.so-net.ne.jp/2013-08-12
やはり、同じ原作者の構想らしい。


私は監督で映画を語れるほど、詳しくはないけれど、
チャン・イーモウ監督といえば、
「紅いコーリャン」
「菊豆」
「初恋のきた道」
「妻への家路」
などなど、
珠玉の名作を
沢山作ってきた人だ。


もうこれは、私の勝手な希望だけれど、
できれば、今後はまた、
「初恋のきた道」のような、
地味でも、心に響くような作品を作ってほしいなぁ。


ところで、昨日書いた、
「マンチェスター・バイ・ザ・シー」での、
板谷由夏さんと有村崑さんとのトークショーの中で、
「マット・デイモンが、『マンチェスター~』の主演を降りたのは、
 『グレートウォール』への出演を選んだからだそうです」と言っておられた
お二人の、半笑いな表情が可笑しかった。


いや、笑ってはいけない。
どのような形にせよ、
いつも映画に携わり、
面白い作品を届けてくれるマット・デイモンが、
私は大好き。


評価 ★★★☆☆

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「マンチェスター・バイ・ザ・シー」 [映画]

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〔2016年/アメリカ〕


ボストンで便利屋をする、
どこか影のある男・リー(ケイシー・アフレック)の所に、
兄が倒れたとの連絡が入り、
彼は慌てて、故郷“マンチェスター・バイ・ザ・シー”に帰る。


到着したとき、兄は既に死んでおり、
16歳の甥・パトリック(ルーカス・ヘッジズ)の
今後をどうするかが問題になる。


兄の遺言書には、
リーが、パトリックの後見人となり、
“マンチェスター・バイ・ザ・シー”に戻ってほしいと
書かれていた。


リーの脳裏に、
この地で暮らした思い出と、
そして、「二度と戻らない」と決め、街を出て行った、
衝撃の出来事が浮かび上がってくる・・・。





試写会で観た。


珠玉の一作。
冴えない中年男が、
兄の死で故郷に帰り、
甥や、旧友や、元妻と再会し、
自分の過去をなぞってゆく。


「マンチェスター・バイ・ザ・シー」とは、
マサチューセッツ州に実在する街の名前なのだそうだ。


甥のパトリックの存在が、
物語のかなり大きな位置を占め、
彼のおかげで、
ただ暗いだけの話にならずに済んでいる。


なにせ、このパトリック、
高校生にしてモテモテで、
現在、関係しているJKが2人、
他にも、候補がいると言う。
そんなガールフレンドたちとの
ドタバタが可笑しい。


個人的に一番受けたのは、
パトリックが生き別れた母親に会いに行く場面。
母親は、
パトリックを捨てて出て行った当初は、
やさぐれた、
どーしようもない女だったらしいが、
現在は、再婚相手の影響からか、
真面目になっている。


ただ、この真面目がクセモノで(笑)。
なぜ、あんな風に、
極端から極端に走るかな。
中間ってものがないのか?(笑)
別に笑わせるシーンじゃないんだけど、
私一人、クスクス笑いが止まらなかった。


そんなこんなを、
少ないセリフで全て理解させる脚本が凄いと思ったら、
やはりアカデミー賞の「脚本賞」を受賞しているとの事だ。


リーが、故郷を捨てた理由も壮絶。
あんなことがあったら、
街にはいられないわ、確かに。


そして、ミシェル・ウィリアムズ演じる元妻と、
路上でバッタリ会った時、
彼女は再婚相手との間にできた赤ちゃんを
ベビーカーに乗せている。


何もないようでも、
時は確実に流れていて、
新しい命が誕生している。
私がリーだったら、
赤ちゃんを抱き上げていたかもしれない。
私が女だからかもしれないけど。


試写のあと、
女優の板谷由夏さんと、
映画評論家の有村崑さんとの、
トークショーがあった。

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板谷さんは、この映画の応援団との事で、
内容について、
めっちゃ熱く語っておられた。


この映画、マット・デイモンが、
製作に名を連ねているけれど、
最初は彼がリーを演じる予定だったそうだ。


でも、マット・デイモンじゃなくて良かったというのが、
板谷さんと有村さんのご意見で、
私も、そう思った。
マット・デイモンでは、
スタースターしすぎて、
ケイシー・アフレックの雰囲気にはならなかったと思う。
ちなみに、ケイシー・アフレックは、
この映画で、アカデミー賞主演男優賞を受賞している。


映画の前に行われるトークショーだと、
ネタバレしてはいけないと、
中々深い話が聞けないものだが、
今回は面白かった。
映画のトークショーは、
試写後に行うのが正解ね。


評価 ★★★★☆

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