「青い野獣」 [映画]
〔1960年/日本〕
雑誌社「婦人春秋」の組合員たちは、
賃上げ要求のため、
社長の小川(田崎潤)と激論を交わす。
ところが、その後、
組合副委員長の黒木(仲代達矢)は、
社長に無期限ストを報告する。
実は黒木は、社長の犬で、
会社側に、組合の情報を流しているのだ。
黒木は次に、
財界の大物・江藤(千田是也)の娘・文子(司葉子)に狙いを定めた。
お嬢様の文子が、
実は学生時代、男出入りがあった事をネタに、
強引に彼女に迫り、
ついに、彼女を手に入れた。
文子との婚約が決まり、
順風満帆に思えた黒木の人生だったが・・・。
「野獣死すべし」という映画があって、
タイトルを言うと、
松田優作さんを思い出される方が多いと思うのだけれど、
松田優作さんより、
21年も前に、
仲代達矢さんが、既に演じている。
この「青い野獣」は、
「野獣死すべし」の翌年に公開された作品のようで、
「野獣」繋がりと考えていいのだろうか。
どちらも、ギラギラとした野心に燃える男を、
仲代さんが、
イメージぴったりに演じておられるのだけれど。
この映画の仲代さんは、
自分の出世のためなら、
仲間を裏切る事など、
なんとも思わない。
彼はとにかく、
強い方に付く。
組合の雑魚どもよりは、社長、
社長よりは、財界の大物、という具合に。
それで、実は彼、
雑誌社への入社のためのコネ作りとして、
学生時代から、
小川社長の妻・頼子と関係しているのだけれど、
もう頼子に用はないとなった途端、
彼女を捨てる。
その場面の酷さったら、
女なら誰でも、
耳を塞ぎたくなるだろう。
彼は、ことが終わって甘えてきた頼子に、
「もうこれ以上、お付き合いさせられるのは御免だよ。
てめぇのツラをよく見ろよ、
愛だの恋だの、言ってんじゃねーよ、
薄汚いババアのくせに」だと。
ひゃ~~~。
これでも、まだ、マイルドに書いてるのよ。
実際は、もっと凄いのよ。
当然、頼子は泣き崩れ、
そんな彼女を置いて、
仲代さんは部屋を出てゆく。
組合だ、出世だ、より、
一番強烈だった場面。
評価 ★★★☆☆
「恋は緑の風の中」 [映画]
〔1974年/日本〕
純一(佐藤佑介)は、
子供と大人の間にいるような、
中学2年生。
風呂上りに、全裸で両親の前を歩いたかと思えば、
エロ本を立ち読みしたりもしている。
純一は、クラスメイトの雪子(原田美枝子)に
密かに片思いしている。
雪子の父が交通事故に遭い、
家業の八百屋の人手が足りないと知ると、
店の手伝いを買って出たりもする。
ある日、2人が町はずれの林で
語り合っていると、
3人組のチンピラが現れ・・・。
佐藤佑介くんと原田美枝子さんのカップルが
とても可愛くてお似合い。
今、佐藤さんは映画で見ないけど、
原田さんは全然変わってないなぁと思う。
物語は、
中学生の性の目覚めを描いた、
という事らしいけど、
私から見ると、
中学生目線というより、
オッサン目線なような(笑)。
原田さんの、
映画初出演にして、初ヌードという事だけれど、
脱ぐのは、
佐藤君の夢の中で、という設定で、
絶対脱がなきゃならない場面、というわけではない(笑)。
それに、佐藤君に片思いする女の子が、
「私を抱いて」と部屋でいきなり裸になったり。
それって、男の願望なんじゃ(笑)。
あと、気持ちの悪い場面も。
佐藤君が、
モヤモヤが高じて、
なんと、母親の水野久美さんに、
激しいキスを。
いくら性欲が余ってるからって、
母親にそんな事しないでしょ。
うげー、となって、
直視できなかったわ(笑)。
原田さんが、チンピラに襲われた時、
佐藤君が体を張って守ってくれた場面は、
心底、ホッとする。
たとえ映画の中でも、
女の子が悲しい思いをするのは、絶対観たくない。
評価 ★★★☆☆
「愛の砂丘」 [映画]
〔1953年/日本〕
湘南の辻堂駅の近くに、
相沢聴一(滝沢修)と、歩(高島忠夫)父子が、
引っ越してくる。
聴一は体が弱く、
生活は、
サラリーマンの歩の稼ぎに頼っている。
一方、近所で暮らす田島家は、
主の要と、妻の秋子、
年頃の娘・薫(島崎雪子)、
就職活動真っ最中の息子・要一郎(和田孝)の
4人家族。
ある日、秋子に会った聴一は驚く。
2人は28年前、恋人同士で、
結婚の日取りまで決まっていたのに、
聴一の実家が破産したせいで、
泣く泣く別れた経緯があるのだ。
歩と薫は、いつしか親しくなり、
結婚を夢見るようになる。
秋子は、
かつて自分が味わった、
辛い思いを
子どもたちにさせたくないと願い、
2人の恋愛を喜ぶ。
聴一も、大変に喜んだが、
体の弱い自分がいては、
息子たちの邪魔になってしまう。
何とか2人を結ばせてやりたいと考えた聴一は・・・。
二重の意味で、
素晴らしい作品だった。
一つは映画として。
それから、私個人として。
まずは、映画。
心安らかな気持ちになる。
登場人物全員がいい人で、
人を傷つけたり、
嫌な気持ちにさせたりする人がいない。
互いが互いを思いやり、
みんなが親切で、優しい。
私は「綺麗事」など嫌いだけど、
これは「綺麗事」ではなく、「綺麗」。
だから感動する。
近所に引っ越してきた事がきっかけで、
知り合い、
愛し合うようになった歩と薫。
けれど、歩の家は、
決して裕福とは言えず、しかも病身の父がいる。
一方、薫の家の生活向きは、
豊かそうで、
さらに、エリートとの見合い話が
何件もあるらしい。
この、一見、不釣り合いな二人の恋愛は、
描き方によっては、
いくらでもドロドロしたものにできるだろう。
でも、そうはならない。
薫が母・秋子に、
歩との事を打ち明ける場面が大好き。
母は反対するどころか、
それはそれは嬉しそうに娘の話しを聞く。
あぁ、なんて聡明な母なんだ。
薫の弟・要一郎。
彼は、就職のことで頭がいっぱいだ。
ちょっと鬱々としている。
そして、試験に落ちてしまい、
母の優しさが申し訳なくて、
海岸で一人、泣いている。
そして、そこで、
聴一とバッタリ会う。
その時、なんと、聴一も泣いていた。
聴一は、病院の帰りで、
ついさっき、重い結核だと診断されたのだ。
息子の重荷にしかならない、
不甲斐ない自分に涙を流している。
家族を思いやるがゆえに、
二人の男が、海で共に泣く。
それだけ聞くと、女々しいようだけれど、
決してそのような事はない。
素晴らしい場面だった。
さらに、その後の聴一の決断に、
胸が締め付けられる。
次に、
個人的に、この映画を素晴らしいと思う理由は、
先日、書いたけれど、
私が以前住んでいた事のある、
辻堂が舞台になっているから。
↓
https://aomikamica.blog.so-net.ne.jp/2019-03-24
辻堂の景色が何度も映る。
1953年頃の辻堂って、
こんなだったんだ、と、
目を凝らして観てしまう。
辻堂駅もバッチリ映る。
「つじどう」と書かれたホームの駅名表示板の所で、
薫たちが会話する。
昔の辻堂駅が見られるなんて、
本当に嬉しい。
こちらは、現在の辻堂の駅名表示板
何度も出てくる海は、
江の島の位置や距離からいって、
辻堂海岸で撮影している事は間違いなく、
このような映画がある事に驚いたし、
記録として素晴らしい。
タイトルの「砂丘」が大袈裟過ぎるのが
ご愛敬だけど(笑)。
評価 ★★★★☆
「お達者コメディ シルバー・ギャング」 [映画]
〔1979年/アメリカ〕
ジョー(ジョージ・バーンズ)
アル(アート・カーニー)
ウィリー(リー・ストラスバース)の3人は、
年金生活をする老人。
日々、公園のベンチでボンヤリしている3人は、
ある日、ふと、
「銀行強盗でもしてみないか」
という話になる。
見事、強盗に成功し、
大金をせしめた3人。
しかし、疲れたせいか、
ウィリーが死んでしまう。
分け前が増えたジョーとアルは、
金の使い道に困り、
ラスベガスへ行き、賭けをするが、
大勝ちし、さらに金が増えてしまう・・・。
以前、
「ジーサンズ はじめての強盗」を観た時、
↓
https://aomikamica.blog.so-net.ne.jp/2017-09-24
オリジナルが、この、
「お達者コメディ」だと書いた。
で、「ソフトが見つからない」とも書いたのだけれど、
何とかして、発見。
やっと観る事ができたというわけで。
3人の老人が銀行強盗をするという、
基本の設定は同じだけれど、
その動機が全然違う。
「ジーサンズ」は、年金が受け取れなくなり、
苦肉の策で、という事だったけど、
こちら、「お達者」の方の3人は、
生活には特に困っていない。
それどころか、
万が一、強盗に失敗して逮捕されても、
出所した時、年金が〇〇ドル貯まっているぞ、という
計算までしている。
ただ、
金に困ってはいない「お達者」の方が、
老人特有の悲哀が全面に出ているというのが、
皮肉なものだ。
金があっても、退屈な時間は無限。
今の日本の高齢化社会を思っても、
彼らを笑える人なんて、いるんだろうか。
真面目に生きてきたと思われる彼らは、
銀行強盗して、大金を得たあとも、
その金を何に使っていいのか分からない。
「映画でも観るか」って、
それって、強盗した金の使い方じゃないでしょ(笑)。
で、ラスベガスに行き、
遊びのつもりで賭けをするも、
さらにその金が増えてしまうという、
「こち亀」のような展開。
やっぱり、賭けっては、
欲を出さない方がいい結果が出るのね、と、
変なところで感心してしまう。
オチが好き。
完全犯罪ではなかったけど、
半完全犯罪と言っていいのでは。
私は、映画の中の、
人を傷つけない犯罪なら、
結末は完全犯罪を望んでしまう。
犯人側の立場に立って、
共犯者のような気持ちになる。
だから、詳しくは書けないけど、
この結末はいい。
評価 ★★★☆☆
「幻の殺意」 [映画]
〔1971年/日本〕
高校の教師とラグビー部の監督を兼任する
田代圭策(小林桂樹)は、
美しい妻・多佳子(若尾文子)と、
息子・稔の3人家族。
稔は、圭策が勤める高校の生徒で、
また、ラグビー部にも所属している。
成績優秀、ラグビーも有望な稔は、
夫妻の自慢の子だ。
ところが、ある日、
新宿の雑踏を歩いていた稔は、
ある光景を目にし、
激しい衝撃を受ける。
その日から、
稔は人が変わったように荒れ、
ラグビーもやめてしまう。
そしてついに、警察から、
稔が人を殺した容疑で逮捕されたと、
連絡が入る。
稔は一体、何を見たのか・・・。
若尾文子さんが大好きで、
若尾さんの映画は死ぬまでに全部観たいと思っているのだけれど、
この映画は、
私の知る範囲では、
名画座にかかった事もなく、
諦めかけていた。
ところが、友人・Aちゃんが、
この映画のソフトを持っているというではないか。
なんだか夢のようだ。
Aちゃん、本当にどうもありがとう。
で、映画。
若尾さんがとっても綺麗。
それに、私の記憶違いでなければ、
若尾さんが、高校生の男の子の母親役をしたのを
映画で観たのは初めて。
こんな綺麗な母ちゃんだったら、
息子も自慢だろうなぁ(笑)。
ただ、
美しいのと、態度が好ましいのとは別。
息子が殺人容疑で逮捕されたというのに、
若尾さん、
メソメソぐにゃぐにゃしていて、
どうにもイライラする。
恋愛でぐにゃぐにゃしているのなら、
まだ許せるけど、
可愛い息子の一大事じゃ。
もっとしっかりせんかい。
物語の焦点は、
・息子は一体、何を見たのか
・本当に人を殺したのか
の2点で、
まぁ、なんとなく察しはつくけれど、
サスペンスとして、
まぁ、それなり。
評価 ★★★☆☆
この作品で、
若尾文子さんの出演映画、161本中126本を観た事となりました。
(★は観た作品)
★春の雪 (2005)
★竹取物語 (1987)
★ある映画監督の生涯 溝口健二の記録 (1975)
★幻の殺意 (1971)
★男はつらいよ 純情篇 (1971)
★スパルタ教育 くたばれ親父 (1970)
座頭市と用心棒 (1970)
★天狗党 (1969)
★千羽鶴 (1969)
★濡れた二人 (1968)
★積木の箱 (1968)
★不信のとき (1968)
★鉄砲伝来記 (1968)
★華岡青洲の妻 (1967)
★砂糖菓子が壊れるとき (1967)
★妻二人 (1967)
★夜の罠 (1967)
★雪の喪章 (1967)
処女受胎 (1966)
★赤い天使 (1966)
★雁 (1966)
★氷点 (1966)
★処女が見た (1966)
★刺青 (1966)
★妻の日の愛のかたみに (1965)
★不倫 (1965)
★清作の妻 (1965)
★帯をとく夏子 (1965)
★女めくら物語 (1965)
★波影 (1965)
★花実のない森 (1965)
★幸せなら手をたたこう (1964)
悶え (1964)
★卍(まんじ) (1964)
★獣の戯れ (1964)
★傷だらけの山河 (1964)
★「女の小箱」より 夫が見た (1964)
★温泉女医 (1964)
★新・忍びの者 (1963)
★越前竹人形 (1963)
★女が愛して憎むとき (1963)
★わたしを深く埋めて (1963)
★女系家族 (1963)
★八月生れの女 (1963)
★雪之丞変化 (1963)
★しとやかな獣 (1962)
★秦・始皇帝 (1962)
★瘋癲老人日記 (1962)
★その夜は忘れない (1962)
★やっちゃ場の女 (1962)
★仲よし音頭 日本一だよ (1962)
★閉店時間 (1962)
★爛(ただれ) (1962)
★雁の寺 (1962)
★家庭の事情 (1962)
★妻は告白する (1961)
★新源氏物語 (1961)
★銀座のぼんぼん (1961)
★女は二度生まれる (1961)
★女の勲章 (1961)
★東京おにぎり娘 (1961)
★好色一代男 (1961)
★お嬢さん (1961)
★婚期 (1961)
★花くらべ狸道中 (1961)
★銀座っ子物語 (1961)
素敵な野郎(1961)
鎮花祭 (1960)
★偽大学生 (1960)
★安珍と清姫 (1960)
★勝利と敗北 (1960)
★ぼんち (1960)
★からっ風野郎 (1960)
★女は抵抗する (1960)
★女経(じょきょう) (1960)
★初春狸御殿 (1959)
★浮草 (1959)
実は熟したり (1959)
★美貌に罪あり (1959)
花の大障碍 (1959)
★次郎長富士 (1959)
★氾濫 (1959)
★山田長政 王者の剣 (1959)
★薔薇の木にバラの花咲く (1959)
★最高殊勲夫人 (1959)
★あなたと私の合言葉 さようなら、今日は (1959)
新婚七つの楽しみ(1959)
★母(1958)
★娘の冒険 (1958)
★夜の素顔 (1958)
嵐の講道館(1958)
★一粒の麦 (1958)
★息子の結婚 (1958)
★口笛を吹く渡り鳥 (1958)
★愛河 (1958)
★忠臣蔵 (1958)
★螢火 (1958)
★東京の瞳 (1958)
妻こそわが命(1958)
★青空娘 (1957)
★夕凪 (1957)
★誘惑からの脱出 (1957)
★永すぎた春 (1957)
★朱雀門 (1957)
★慕情の河 (1957)
続銀河の都 (1957)
★スタジオはてんやわんや (1957)
銀河の都 (1957)
君を愛す (1956)
★四十八歳の抵抗 (1956)
★日本橋 (1956)
★涙 (1956)
スタジオは大騒ぎ (1956)
あさ潮ゆう潮 (1956)
★滝の白糸 (1956)
★処刑の部屋 (1956)
★新婚日記 恥ずかしい夢(1956)
★新婚日記 嬉しい朝(1956)
★赤線地帯 (1956)
★虹いくたび (1956)
★新妻の寝ごと (1956)
★花嫁のため息 (1956)
薔薇の絋道館 (1956)
★弾痕街 (1955)
七人の兄いもうと (1955)
★珠はくだけず (1955)
★長崎の夜 (1955)
★幻の馬 (1955)
娘の縁談 (1955)
★薔薇いくたびか (1955)
★月に飛ぶ雁 (1955)
幸福を配達する娘 (1955)
★螢の光 (1955)
勝敗(1954)
荒城の月 (1954)
★月よりの使者 (1954)
緑の仲間 (1954)
★浅草の夜 (1954)
慕情 (1954)
★舞妓物語 (1954)
★酔いどれ二刀流 (1954)
★或る女 (1954)
★心の日月 (1954)
十代の誘惑 (1953)
無法者 (1953)
続続十代の性典 (1953)
春雪の門 (1953)
★祇園囃子 (1953)
続十代の性典 (1953)
★チャタレー夫人は日本にもいた (1953)
怒れ三平 (1953)
★十代の性典 (1953)
彼女の特ダネ (1952)
街の小天狗 (1952)
秘密 (1952)
明日は日曜日 (1952)
花嫁花婿チャンバラ節(1952)
★母子鶴 (1952)
猛獣使いの少女 (1952)
★死の街を脱れて (1952)
★長崎の歌は忘れじ (1952)