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「共犯者」 [映画]

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〔1958年/日本〕


福岡の丸堀屋は、
ここ数年で急成長した家具のデパート。
経営者の内堀彦介(根上淳)は、
今は地元の名士となっている・・・。


5年前。
内堀は、しがない食器のセールスマン。
重い鞄を下げ、足を棒にして、
全国に食器を売り歩く日々。


こんな生活から抜け出したい。
彼は、漆器のセールスマン・町田武治(高松英郎)と組んで、
銀行に押し入り、金を得た。
町田とは二度と会わない約束で、
郷里に帰り、現在の地位を築いてきたのだ。


しかし、成功するにつれ、
内堀の心に不安が渦巻く。
町田はどうしているだろう。
彼のことだ、
盗んだ金を使い果たし、
自分をゆすりにくるのではないか、と。


内堀は、電話局から、
町田の居所を突き止め、
調査員・竹岡(船越英二)を雇い、
その動向を逐一報告させるが・・・。





行き過ぎた取り越し苦労は、
身を滅ぼす、という事ですな。


もちろん、誰にだって、
まだ起こってもいない不幸な出来事を想像して、
不安になり、
憑りつかれたように、その事で頭がいっぱいになってしまう事も、
時にはあろう。
私だって、人の事は言えない。


それに、そういった不安は、
悪い事ばかりではない。


いつか来るかもしれない災難には、
シミュレーションはとても大事だ。
ああなった場合、こう対処しよう、
こうなった場合は、こう対処しようと、
常に最悪の事態を想定しておけば、
本当に何かあった時、
慌てずに済む。
転ばぬ先の杖、
備えあれば憂いなし。


でも、この映画の根上さん、
やりすぎじゃない?(笑)


昔の共犯者に強請られるのではないかと、
恐れる余り、
調査員を雇うとは。


原作は、松本清張の短編。
映画もとても面白かったけれど、
原作も大好き。
時間があると、
何度も読み直してしまう。


短い小説なので
詳しい事を書くと、
全部の内容になってしまいそうだ(笑)。
ただ、もちろん映画なので、
結構膨らませてはある。


評価 ★★★★☆

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「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」 [映画]

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〔2019年/ポーランド〕


1933年。
ヒトラーへのインタビュー経験を持つ、
イギリス人ジャーナリスト・ガレス・ジョーンズ(ジェームズ・ノートン)は、
強い疑問を持っていた。


世界恐慌で、どの国も大変な中、
ソ連だけがなぜ、
繁栄しているのか、と。


その謎を解くため、
単身ウクライナに赴いた彼は、
想像を絶する光景を目にする・・・。





試写会で観た。


実在のジャーナリスト・ガレス・ジョーンズが、
実際に体験した出来事の映画化。


「我が国は繁栄している」。
「我が国はこの世の楽園だ」。


そんな風に標榜している国は、
何も、こんな古い時代じゃなくても、
今でもあるし、
日本だって、他国を笑えるのか、と思う。


ただ、映画の時代とは違って、
これだけ通信が発達した今、
何かを隠すのは、昔より楽ではない、というのはあるけど、
逆に、ネットを利用してフェイクニュースを流す事もできるという
側面もあるわけだし。


世界恐慌の嵐が吹き荒れる中、
スターリンが統治するソビエト連邦だけが、
繁栄していると聞けば、
誰だって、疑問を持つのは当然だし、
もしそれが本当なら、
その理由や、コツをご教示願いたいと考えるのも、
当然の事と思う。


そんな思いで、
監視の目をくぐり、
決死の覚悟でウクライナ入りした、
若きジャーナリスト・ジョーンズは、
目にした光景に、言葉を失う。


酷寒としか言いようのない世界で、
人々の飢えは極限に達し、
駅や道端で人が死んでいても、
皆、虚ろな目をして、
それをよけて歩くだけ。


ジョーンズが、電車の中で、
オレンジを食べ始めると、
乗り合わせた人々は、
今にも飛び掛からんばかり。
食べ物に向けるギラギラとした、その視線の恐ろしさ。


さらに、ジョーンズは、
最悪の体験をする。
ある家で、子供たちが食べていた肉をもらい、
一緒に食べている時、
ふと、気付く。
「君たちの兄さんは?」と。


この映画と、
今の世界情勢の苦しさは、
種類が違うけど、
先がまるで見えないのは同じ。


貧すれば鈍する。
世界はこの先、どこへ向かうのか。


評価 ★★★☆☆

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シャープのマスク。 [できごと]

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一見、何の変哲もないシャープのマスクなのですが、


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え?
あれ?
不良品?(笑)。


いえ、咎めてるとか、
クレーム付けようとか、
そんな気持ちじゃないんです。


むしろ私はこういう事を、
面白がる質で(笑)。


シャープさんほどの会社でも、
こういう事があるんだなぁって。
猿も木から落ちる的な?(笑)。


レア物を手に入れたようで、
なんだか嬉しかったです。


私は不織布のマスクと、
手作りのバンダナマスクを、
いつも必ず2枚重ねするので、
このような状態でも、
全く無問題で使えます。


それが分かっていたので、
私の所にお嫁に来てくれたのかもしれません(笑)。

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「ブリット=マリーの幸せなひとりだち」 [映画]

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〔2019年/日本〕


63歳の専業主婦・ブリット=マリーは、
40年間、
夫のためだけに家事をこなして生きてきた。


ところが、ある日、
夫に愛人がいる事が判明。
スーツケース一つで家を出た。


結婚前にウエイトレスをしたきりの
ブリット=マリーにとって、
できる仕事は少なかったが、
ある小さな町の、
ユースセンターの管理人の職を得る。


しかも、そこに出入りする小学生の子供たちの
サッカーコーチを兼任する事になり、
サッカー未経験の彼女は、
苦戦する事に・・・。





試写会で観た。


出だしのブリット=マリーさんの、
完璧な主婦っぷりが、とっても気持ちいい。


彼女はめちゃくちゃ几帳面で、
食器やカラトリーは全てきちんと同じ向きに収納。
窓も、床も、常にピカピカに磨き上げられて、
夫のワイシャツの洗濯だって手を抜かない。
お料理も本当に美味しそう。


でも、家事が完璧だから、
男に浮気されないか、といえば、
それは別問題なのよねぇ。


夫の浮気がバレた場面というのが、
予告にも描かれてるから書いちゃうけど、
夫が出先で急病になり、
慌てて病院に駆け付けると、
看護婦さんが、
「え? あなたが奥さん? じゃあ、あの人は・・・」
って感じで絶句。
病室には、夫に付き添う、
派手めで、グラマーな女性が(笑)。
この場面は、劇場内でも笑いが起こっていた。


で、ブリット=マリーさん、
とっても潔い。
一度のその事で、
もう迷うことなく家を出る。
まだ夫は入院中だというのに。


40年間のブランクを経て、
得た仕事は、ユースセンターの管理人。
ユースセンターってなんだろうと思ったけど、
日本の、児童館みたいなものか。


管理人だけなら、
専業主婦だった彼女に
ピッタリの仕事だと思うけど、
事は、そう簡単にはいかない。


63歳のサッカー未経験の女性が、
子供たちのサッカーチームのコーチって
無理がありすぎでしょ(笑)。


ところで、迎えに来た夫と再会したブリット=マリーさんは、
今までの結婚生活での不満を、
彼にぶつける。


「脱いだ服は洗濯機に入れてほしかった」
「磨いた床を汚い靴で歩いてほしくなかった」
「食事を美味しいと言ってほしかった」


女性向けの、人生相談のサイトを見ていると、
よく出てくるアドバイスが、
「男に、”察してほしい”は無理」。
あぁ、それがここにも。


日本も、スウェーデンも、
男脳と女脳の違いは、同じらしい。


評価 ★★★☆☆

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「噛みつかれた顔役」 [映画]

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〔1958年/日本〕


風呂屋の三助から、
銭湯を経営するまでになった八十吉(伴淳三郎)は、
ペテン師の泉川(佐田啓二)におだてられ、
市会議員に立候補する事に。


どころが、そんな選挙運動の忙しい最中、
女中の花枝が、体調を崩し倒れてしまう。
どうやら花枝は、妊娠しているようだ。


それを知った八十吉は青くなる。
彼は、数か月前、花枝の貞操を、
無理矢理奪ったのだ。


そんな事が世間に知られたら、
選挙落選は必至・・・。





生娘の女中を妊娠させてしまった、
市会議員立候補中のオッサンが、
右往左往する喜劇。


このオッサンを演じるのが、
伴淳三郎さん。
演じる人によっては、
「なんて酷い事を」を思われるであろう、このお話しも、
伴淳さんだと、
「しょうがないなぁ」って感じになるから、
不思議。


しかも、
伴淳さんの公約というのが、
「風紀粛清 町の純潔化」
というのだから、
大笑い。


それに粗筋は、
実はもっと複雑。


伴淳さんの妻、息子、妹、
女中の兄や伯母、
風呂焚き男、ライバル候補、などなどが入り乱れて、
大騒ぎ。


伴淳さんは勿論、
とってもいいんだけど、
佐田啓二さんって、凄いなぁ、と思う。


真面目で実直な役も似合うんだけど、
この映画のような、
胡散臭い、
詐欺師といおうか、
ペテン師といおうか、
そういう役も、演じると本当に上手くハマる。


そんな佐田さんが、
伴淳さんを騙す構図が面白い。


評価 ★★★☆☆

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