「悪女」 [映画]
〔1964年/日本〕
家政婦紹介所に所属する、
田中姫子(小川真由美)は、
誰も行きたがらない、
円城家に、自らすすんで働きにいった。
円城家は、
寝たきりの主人・礼次郎
芸者あがりの後妻・由紀(高千穂ひづる)、
テレビライターの長男・英介(梅宮辰夫)、
短大生の長女・冬子(緑魔子)
そして、ばあやのしの(浦辺粂子)の5人が暮らしており、
鼻もちならない、金持ちの家であった。
姫子には、
将来を誓い合った、
トラック運転手の鈴木亀吉がいた。
2人は深く愛し合っていたが、
結婚までは清い関係でいようと決めている。
ところが、ある日、
英介が姫子に襲い掛かり・・・。
タイトルの「悪女」。
これは誰を指すのだろう。
小川真由美さん演じる、姫子?
いや、絶対違う。
姫子は、
貞女だ。
そして、聖女だ。
頭は多少ゆっくりだけど、
純朴で、懸命で、
たった一人の男との愛を貫こうとしている。
確かに、彼女は、
貧しさゆえ、
パンパンをしていた過去がある。
でも、心まで売ったわけじゃない。
パンパンをしていたから、聖女ではない、
という定義は成り立たない。
けれど、そんな彼女の純粋さは、
金持ち家族の、
異常さに汚されてしまう。
特に、後妻、長男、長女は、
家政婦なんて、人間とも思っちゃいない。
自分のために働く下僕、
そして、性欲の処理係・・・。
緑魔子さんと、高千穂ひづるさんのバトルが
凄いよ。
この2人こそが、悪女だ。
悪女同士が、
いつも対立している、
その図が、たまらなくいい。
そのくせ、
自分たちにとって、
不都合な事が起こると、
途端に結託するのも、笑える。
まぁ、理由は同じでなく、
それぞれが、自分の利害だけで動いてるだけなんだけど。
ラスト、
姫子は、
聖女から、聖母になる。
そのお姿は、
後光が差すように、神々しい。
評価 ★★★★★
〓
「ロマンスドール」 [映画]
〔2019年/日本〕
美大卒業後、フリーターをしていた北村哲雄(高橋一生)は、
先輩の紹介で、就職の面接を受けに行った先の会社が、
ラブドールを製作する工場だと知る。
採用された哲雄は、
社長の久保田(ピエール瀧)や、
ベテラン社員の相川(きたろう)に仕事を教わり、
次第にラブドール作りの楽しさに目覚めてゆく。
そんな中、哲雄は、
あるきっかけで知り合った小沢園子(蒼井優)に、
自分がラブドールを作っていると
どうしても言い出す事ができないまま、
交際し、結婚に至る。
幸せな結婚生活を送っていた2人だが、
ある日、
園子が3日間ほど無断外泊をし、
戻ってきて、理由を聞く哲雄に、
ある秘密を打ち明ける・・・。
ラブドールを作る工場で働く青年・哲雄と、
哲雄は医療関係の会社で働いていると
信じ切っている妻・園子の物語。
ただ、哲雄の本当の仕事を知った園子が、
怒ったりとか、
そのような事はない。
彼女はそんな器量の小さい女ではない。
この映画の問題はそこではない。
2人が、秘密を打ち明け合う場面で、
少し笑ってしまった。
2人には、各人2つずつ秘密がある。
そのうちの1つが、同じ秘密だったのが、
何だか可笑しくて。
今どきのカップルらしい。
お互いがその事で、特に怒ったりもしない。
一番重要なのは、
園子の、もう一つの秘密。
それをきっかけに、
何となく倦怠期だった二人の絆が強くなる。
物語としては、
それほど突出した秘密ではなく、
驚く事もなかったけど、
そこから、哲雄のラブドール製作という仕事が、
重大な意味を持つようになる。
それから、
物語の本筋とはちょっと違うけど、
私は、哲雄が、
ラブドールを作るという仕事を、
次第に好きになり、
懸命になる姿勢がとてもいいなと思った。
彼は、最初からラブドール作りが好きだったわけじゃない。
何も知らないまま、工場に来て、
仕事を教わっていくうちに、
仕事にのめり込んでゆく。
仕事って、案外そんなものなんじゃないかって気がする。
誰も彼もが、自分の好きな事や、
したかった事を職業にできるわけではないだろう。
たまたま採用されて、
一生懸命やっていくうちに、
それが天職のようになってゆく。
それはとても素敵な事だと思う。
ラブドール作りを見られたのも楽しかった。
ラブドールを作っているからと、
工場は別に卑猥な空気などはなく、
普通の物作りの会社と一緒。
まぁ、一々反応していたら、
仕事にならないしね(笑)。
私は数年前に、
ラブドールのメーカーである、
オリエント工業のショップに、
友人と行った事がある。
特に理由はない。
100%興味本位(笑)。
ラブドールの実物がどんなものなのか、
見て、触ってみたかった。
してみたい事があると、
居ても立っても居られなくなる性分で(笑)。
本物のラブドールは、
とても可愛く、
そして柔らかかった。
肌の質感は、人間そのもの、というと大げさになってしまうけど、
それに近いものがあった。
楽しい体験だった。
一般的な女の子より、
小柄な子が多かったと記憶しているけれど、
映画を観て、その理由が分かった。
ラブドールに使われるシリコンは、
水より比重が重く、
あまり大きいと、
持ち運ぶのが大変なのだそうだ。
エンドロールで、
「協力 オリエント工業」との名前が見えた時、
なんだか知り合いに会ったようで、嬉しかった(笑)。
評価 ★★★☆☆
「顔」 [映画]
〔1960年/日本〕
アメリカへの転勤を控えた
田能村耕(池部良)の家に、
病弱な耕の母の世話をするために、
遠縁の娘・衿子(京マチ子)がやって来る。
耕と衿子は、互いに強く惹かれ合うが、
その気持ちを打ち明ける事がないまま、
耕はアメリカへ出立する。
ところが、その後、
耕の母親が亡くなると、
耕の父親は、
衿子を凌辱し、
有無を言わさず、衿子を妻にしてしまう。
数年後。
帰国した耕は、
父の妻となった衿子と同じ家にいる事が耐えられず、
苦しむ。
しかし、ほどなくして、父が死ぬ。
耕と衿子は、
納骨のため、
2人で京都の宿に泊まるが・・・。
おぞましい。
45歳も年下の、
遠縁の娘を手籠めにして、
強引に妻にする爺さん。
自分に全く愛情が無いと分かっている、
孫のような年恰好の女を
妻にして、
一体、何が嬉しいのか。
それでも、昔の女は、
男の言いなりになるしかなかったようで、
京マチ子さん演じる衿子は、
黙って、結婚生活に耐えるばかり。
アメリカに行っていた、
池部良さん演じる耕は、
なぜ、そのような流れになったのか、
経緯までは知らない。
衿子に尋ねても、
ハッキリとは答えない。
昔の女は偉いんだか、奥ゆかしいんだか。
私が衿子だったら、
全部ぶちまけそうだ。
「あなたのお父さんに酷い事をされた」と。
でも、その後、
父親の納骨のために行った京都で、
ついに衿子は、耕に結婚までの経緯を話す。
父親の行状を知らされて、耕は大変な衝撃を受ける。
そりゃそうだ。
立派だと尊敬していた父が、
女を暴行するような下衆野郎だったなんて、
ショックに決まっている。
で、まぁ、そこまでは、
私も衿子に肩入れして観ていたわけだけど、
その後が良くない。
耕と一緒に泊まった旅館で、
衿子は、とっても無神経なのだ。
耕は何とかして、
衿子から、父親の影を拭い去りたいと思っているのに、
衿子は、
会話の中に、父の名前を何度も出す。
やっと、本当に好きになった男と、
一夜を共にするという時に、
その気遣いのなさったら。
なんだかもう、こちらは、
衿子を応援する気も失せた。
評価 ★★★☆☆
この作品で、
京マチ子さんの出演映画、100本中76本を観た事となりました。
(★は観た作品)
化粧 (1984)
★男はつらいよ 寅次郎純情詩集 (1976)
妖婆 (1976)
金環蝕 (1975)
★ある映画監督の生涯 溝口健二の記録 (1975)
★華麗なる一族 (1974)
★玄海遊侠伝 破れかぶれ (1970)
★千羽鶴 (1969)
小さい逃亡者 (1966)
★沈丁花 (1966)
★他人の顔 (1966)
★甘い汗 (1964)
★現代インチキ物語 ど狸 (1964)
★女系家族 (1963)
★女の一生 (1962)
★仲よし音頭 日本一だよ (1962)
★黒蜥蜴 (1962)
★釈迦 (1961)
小太刀を使う女 (1961)
★女の勲章 (1961)
★濡れ髪牡丹 (1961)
★婚期 (1961)
★お傳地獄 (1960)
★顔 (1960)
★足にさわった女 (1960)
三人の顔役 (1960)
★ぼんち (1960)
★流転の王妃 (1960)
★女経 (1960)
★浮草 (1959)
★鍵 (1959)
★次郎長富士 (1959)
★夜の闘魚 (1959)
★女と海賊 (1959)
★細雪 (1959)
★あなたと私の合言葉 さようなら、今日は (1959)
★娘の冒険 (1958)
★夜の素顔 (1958)
★赤線の灯は消えず (1958)
★大阪の女 (1958)
★忠臣蔵 (1958)
★母 (1958)
★悲しみは女だけに (1958)
★有楽町で逢いましょう (1958)
★穴 (1957)
★夜の蝶 (1957)
★地獄花 (1957)
★女の肌 (1957)
★踊子 (1957)
★いとはん物語 (1957)
★スタジオはてんやわんや (1957)
★八月十五夜の茶屋 (1956)
★月形半平太 (1956)
★赤線地帯 (1956)
★虹いくたび (1956)
★新・平家物語 義仲をめぐる三人の女 (1956)
新女性問答(1955)
★藤十郎の恋 (1955)
★楊貴妃 (1955)
★薔薇いくたびか (1955)
春の渦巻 (1954)
馬賊芸者 (1954)
★千姫 (1954)
★浅草の夜 (1954)
★春琴物語 (1954)
愛染かつら (1954)
★或る女 (1954)
★地獄門 (1953)
★あに・いもうと (1953)
黒豹 (1953)
★雨月物語 (1953)
彼女の特ダネ (1952)
★大佛開眼 (1952)
★美女と盗賊 (1952)
★瀧の白糸 (1952)
★長崎の歌は忘れじ (1952)
★浅草紅団 (1952)
★踊る京マチ子 歌う乙羽信子 (1952)
恋の阿蘭蛇坂(1951)
情炎の波止場(1951)
馬喰一代 (1951)
★源氏物語 (1951)
牝犬 (1951)
★自由学校 (1951)
★偽れる盛装 (1951)
美貌の海(1950)
復活(1950)
★火の鳥(1950)
★羅生門 (1950)
★浅草の肌 (1950)
遙かなり母の国 (1950)
★続蛇姫道中 (1950)
★蛇姫道中 (1949)
最後に笑う男(1949)
★痴人の愛 (1949)
三つの真珠 (1949)
★地下街の弾痕 (1949)
★花くらべ狸御殿 (1949)
天狗倒し(1944)
団十郎三代 (1944)
23区内全駅制覇・東銀座駅 [23区内全駅制覇]
【23区内全駅制覇・各駅編】
第19回目の掲載は、
・東京メトロ日比谷線
・都営浅草線
「東銀座駅」です。
東銀座駅の周辺は、
日本の伝統芸能の劇場が多いように
感じられます。
歌舞伎座。
ここの前はたまに通るのに、
歌舞伎を観た事は一度もありません。
いつか観てみたい。
新橋演舞場。
ここも入った事がないです。
東劇。
シネマ歌舞伎の上映が多い映画館。
シネマ歌舞伎は観た事がないのですが、
松竹さんの試写室があるので、
たまに行きます。
--------------------
歌舞伎座や新橋演舞場に行った事はないのですが、
私が東銀座に行く目的は、
以前は、映画館「シネパトス」でした。
半地下になっていたここは、
片側が「シネパトス」、
片側が飲み屋さんやアダルトグッズ専門店と、
ちょっと怪しげな雰囲気で、
大好きな場所でした。
けれど、2003年に、
耐震性の問題で、
地下道そのものが埋められることに。
本当に残念でなりません。
保存の可能性を探る会の発足などもあったようですが、
叶わなかったようです。
(地下街の写真2枚は、ネットに落ちていたものをお借りしました)。
--------------------
東銀座に行くと、つい寄ってしまうのが、
カフェ「銀座みゆき館」。
シネパトスのあった地下道のすぐ前です。
こちらは、
「銀座で一番おいしいモンブラン」
と、お店の前に掲げているくらい、
和栗のモンブランが有名です。
当然、この日も食べました。
店内は静かで、落ち着きます。
--------------------
※今まで行った駅のリンク集です。
↓
https://aomikamica.blog.ss-blog.jp/2010-09-22-13
--------------------
※以下に、このカテゴリーの1回目に書いた文章を
貼り付けておきます。
2018年の4月から12月まで、
「23区内全駅制覇」というカテゴリーで、
↓
https://aomikamica.blog.so-net.ne.jp/2010-09-22-12
路線ごとに、駅名表示板を並べて、
掲載していたのですが、
次は「2周目」という事で、
今度は各駅の周辺を、もう少しゆっくり歩いてみたいと思います。
条件は特にないのですが、
駅周辺の雰囲気や建物を見たり、
それから、お食事かお茶ができればいいな、
と思っています。
第19回目の掲載は、
・東京メトロ日比谷線
・都営浅草線
「東銀座駅」です。
東銀座駅の周辺は、
日本の伝統芸能の劇場が多いように
感じられます。
歌舞伎座。
ここの前はたまに通るのに、
歌舞伎を観た事は一度もありません。
いつか観てみたい。
新橋演舞場。
ここも入った事がないです。
東劇。
シネマ歌舞伎の上映が多い映画館。
シネマ歌舞伎は観た事がないのですが、
松竹さんの試写室があるので、
たまに行きます。
--------------------
歌舞伎座や新橋演舞場に行った事はないのですが、
私が東銀座に行く目的は、
以前は、映画館「シネパトス」でした。
半地下になっていたここは、
片側が「シネパトス」、
片側が飲み屋さんやアダルトグッズ専門店と、
ちょっと怪しげな雰囲気で、
大好きな場所でした。
けれど、2003年に、
耐震性の問題で、
地下道そのものが埋められることに。
本当に残念でなりません。
保存の可能性を探る会の発足などもあったようですが、
叶わなかったようです。
(地下街の写真2枚は、ネットに落ちていたものをお借りしました)。
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東銀座に行くと、つい寄ってしまうのが、
カフェ「銀座みゆき館」。
シネパトスのあった地下道のすぐ前です。
こちらは、
「銀座で一番おいしいモンブラン」
と、お店の前に掲げているくらい、
和栗のモンブランが有名です。
当然、この日も食べました。
店内は静かで、落ち着きます。
--------------------
※今まで行った駅のリンク集です。
↓
https://aomikamica.blog.ss-blog.jp/2010-09-22-13
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※以下に、このカテゴリーの1回目に書いた文章を
貼り付けておきます。
2018年の4月から12月まで、
「23区内全駅制覇」というカテゴリーで、
↓
https://aomikamica.blog.so-net.ne.jp/2010-09-22-12
路線ごとに、駅名表示板を並べて、
掲載していたのですが、
次は「2周目」という事で、
今度は各駅の周辺を、もう少しゆっくり歩いてみたいと思います。
条件は特にないのですが、
駅周辺の雰囲気や建物を見たり、
それから、お食事かお茶ができればいいな、
と思っています。
「プロジェクト・グーテンベルク 贋札王」 [映画]
〔2018年/香港〕
アメリカドル紙幣の偽札製造集団の一人、
レイ・マン(アーロン・クォック)が、
ついに逮捕される。
警察は、レイに、
偽造団のボスで、
「画家」と呼ばれる謎の男について話すよう
説得するが、
レイはひどく怯えている。
「あなたたちは、画家の怖さを知らない。
彼は必ず、ここにやって来て、
自分を殺すし、ここにいる全員も死ぬだろう」と言う・・・。
試写会で観た。
香港映画の犯罪物は、
そう沢山観ているわけじゃないけど、
たまに観ると楽しい。
「男たちの挽歌」とか、
「インファナル・アフェア」とか、
大好き。
香港を拠点とする、
米ドル紙幣偽造集団にスカウトされ、
犯罪に手を染める男・レイ。
ボスは、「画家」と呼ばれる男で、
冷酷無比。
掟を破った者には容赦しない。
偽札作りの場面が、
めっちゃ面白い。
紙幣だから当然の事だけど、
使われている、
紙から、インクから、透かしなどの技術に至るまで、
普通では手に入らないものばかりで、
観ているこちらは、
すごく勉強になった気分にさせられる。
それから、アクション。
「画家」を演じるチョウ・ユンファ、64歳、健在。
全然年齢を感じさせない。
めっちゃカッコいいし、
それにすごくダンディだ。
で、ずっと面白く観ていると、
途中から、
え?
どういう事?
という流れになる。
意味は分かるけど、
自分の理解が正しいのかどうか、
確認したくなる。
というところで、
上映後、
映画コメンテーターの有村昆さんの
トークショーがあり、
その辺りを詳しく解説してくださった。
ただ、それはそれで良かったけど、
上映後、
説明が必要な映画ってどうなのよ、と
思わないでもない。
何回でも劇場に足を運んで、
理解してほしいって事?(笑)。
面白かっただけに、
もう少し分かりやすかったらな、と思う。
いや、私の理解力がないせいか?
いや、有村さんが、
「ストーリーを完全に理解できた方?」と
お客さんに聞いたら、
誰も手を上げなかったから、
私の能力だけのせいじゃない(と思いたい(笑))。
評価 ★★★☆☆