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「幽霊暁に死す」 [映画]

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〔1948年/日本〕


小幡小平太(長谷川一夫)と美智子(轟夕紀子)は、
今、まさに、教会で結婚式を挙げている最中。
親戚も友人も参列しない式だが、
それでも幸せいっぱいだ。


すると、式の最中、
教会のドアが開き、
風が吹き込んでくる。
不思議な風だ、なんだろう。


新婚生活を始めた2人だが、
小平太は、あることが原因で、
勤務していた小学校の教師を解雇されてしまう。
兄に就職を頼みにいった小平太だが、相手にされず、
仕方なく、当面の間、
夫婦で軽井沢の別荘で暮らすことにする。


「幽霊屋敷」と呼ばれている、
その別荘の、
蜘蛛の巣と埃を払い、
怖々暮らし始めた2人の前だが、
なんと、小平太の父(長谷川一夫・二役)の
幽霊が現れた。


父は自分の残した財産を、
親戚の者が横領しているため、
成仏できないと言う・・・。





タイトルに「幽霊」と付いているけれど、
ホラーではなく、
ロマンティックコメディ。


出だしから、とても可愛い。
長谷川一夫さんと、轟夕紀子さんが、
結婚式を挙げたあと、
どちらからプロポーズしただの、
新婚旅行はどうするだの、
甘い会話が繰り広げられる。


轟さんは、旅行先が熱海だと聞いて、
5泊ほどできると思っていたのが、
なんと、日帰り(笑)。
でも、それでも、怒らない。
彼の事が好きだから、
日帰りだって楽しい旅行。


その後、紆余曲折あって、
2人は、軽井沢の山奥にある別荘に行くのだけれど、
そこで遭遇するのが、
長谷川さんの父親の幽霊。


これ、長谷川さんのファンにはたまらないんじゃないだろうか。
幽霊を演じているのも長谷川さんで、
まだ若く、
美しい長谷川さんを、
これでもかと堪能できる。
私でいえば、
妻夫木君か、斎藤工くんが、
2人出てきたようなものだ(笑)。


しかも、幽霊の父親は、
死んだ時のままなので、
年齢は息子と同じくらいで、
轟さんに恋心を抱いたようなフシがあり、
絶妙な三角関係となるのも、
味わいがあっていい。


彼らの別荘というのが、
これまた素敵。
最初は、蜘蛛の巣だらけで怖いけれど、
綺麗にすると、
それはそれは、モダンな洋館に。
あんな家に住んでみたい。


評価 ★★★☆☆

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◆壺中美人◆ [本]


壺中美人 (角川文庫)

壺中美人 (角川文庫)

  • 作者: 横溝正史
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1976/10/30
  • メディア: 文庫


高級住宅街・成城で、
高名な画家が殺害される。


犯人はチャイナドレスを着た女のようだ。
女は、逃げる途中、
不審尋問しようとした警察官をも、
刃物で刺し、
重傷を負わせる。


そこで登場するのが、
金田一耕助。


彼は凄いな。
だって、
この事件が起こる50日前、
テレビで、
犯人のチャイナドレスの女が、
口の狭い壺の中に入ってしまうという
曲芸を見ていたのだ。


テレビで見たばかりの女が、
殺人事件を起こし、
事件解決のため、呼び出されるって、
凄い確率だ(笑)。
・・・って、
いやいや、
少し前に書いたけど、
私だって、
前日、ネットで見た人が、
ライブ会場で隣の席だった、なんて、
凄い偶然があったではないか。
 ↓
https://aomikamica.blog.ss-blog.jp/2021-02-13
人生、何があるか分からない。


物語が進むにつれ、
この事件は、
同性愛のもつれが原因だという事が分かってくる。


同性愛は、
太古の昔からあった事だと思うので、
珍しくはないんだろうけど、
ただ、この作品が書かれたという、
昭和35年の世の中の空気ってどうだったんだろう。
同性愛に、それほど寛容ではなかったのではなかろうか。


金田一耕助の発言にしても、
それを、令和の今言ったら、
世間の顰蹙を買うのでは、と思われるような
箇所がある。


それほどの深みはないけれど、
犯人が気になって、
一気に読んだ。

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「野良人間 獣に育てられた子どもたち」 [映画]

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〔2018年/メキシコ〕


1987年。
メキシコの、人里離れた山奥にある
民家が火事になり、
大人と、3人の子どもの焼死体が見つかる。


さらに、焼け跡から、
1本のビデオテープが見つかり、
驚くべき映像が記録されていた。


そこに映っていたのは、
野生で育った子供3人と、
子供たちを発見し、
育てている男。


子供たちが野生で育った理由は何なのか。
どうやって生きてきたのか・・・。





このテーマには、
ずっと以前からめちゃくちゃ興味があって、
映画の公開を楽しみにしていた。


私がまだ中学生かそこらの頃、
「狼に連れ去られ、育てられた人間の赤ちゃんがいる」事を知り、
大変な興味を持って、
「狼に育てられた子」という
本を読んだ事を思い出す。

野生児の記録 1 狼に育てられた子

野生児の記録 1 狼に育てられた子

  • 出版社/メーカー: 福村出版
  • 発売日: 1977/01/01
  • メディア: 単行本


私たちが今、
「人間」として暮らしているのは、
環境や教育に依るものが大きいのか、
獣に育てられた人間は、人間にはならないのか、
実に興味深い。


ただ、大人になって、
ネットをするようになって調べてみると、
”狼に育てられた”とされる、インドの姉妹・アマラとカマラの物語は、
実は眉唾なのだと知った。


アマラとカマラが狼に育てられたと主張しているのは、
たった一人の伝道師だそうで、
確たる証拠があっての事ではないらしい。


なぁんだ、そうか。
でも、興味は興味として、ずっと残っている。
もしも、本当に人間が獣の育てられたら、
どんな風に成長していくのかと。


一つ、疑問。
もし、本当に人間の赤ちゃんが狼に育てられるような事が
あったとしたら、
その子は、狼を真似て、
4つ足で歩くのだろうか。


私は、そうではない気がする。
人間は、1歳前後になったら、
誰に教えられる事なく、
自然に立ちあがり、
二足歩行になるのではないだろうか。


さらに、狼とは違い、
自然に手を使って、
食べ物を採ったりするようになるのでは・・・。
違うのかな。


で、この映画。
そんな野生児を描いた、
ドキュメンタリータッチの映画なんだけど、
正直、肩透かし(笑)。


3人の野生児の映像記録は、
ビデオテープに収められているという設定なんだけど、
テープが劣化していて見づらいし、
なんだか、ダラダラしている。


もっと踏み込んだ物が観たかった。
ちょっと残念。


評価 ★★☆☆☆

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「流れる星は生きている」 [映画]

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〔1949年/日本〕


第二次世界大戦が終わり、
中国にいた日本人は、
大変な思いで港を目指して進んでいた。
3人の幼子を連れたけい子(三益愛子)もその一人。
何としても生きて日本に帰らねばならない。
思いはそれだけだ。


やっと日本に着いたけい子は、
叔母の家に行くが、
思いの外、叔母は冷たく、
引き上げ寮で暮らしながら、
夫を待つ事にした。


一緒に引き上げてきた節子と幸枝は、
キャバレーでの仕事を見つけ、
けい子は、製本所で働くことになった。
しかし、中国で引き上げる途中、
子供を亡くした幸枝は、
自暴自棄となり、転落してゆく。


そんな中、けい子は、
製本所の経営者から、
次男を養子にくれないか、と言われ・・・。





終戦後、
中国からの引揚者の皆様が、
どれほどご苦労なさったか、
映画、ドラマ、書物などで、
何度か知る機会があったけれど、
これも、辛い物語。


どんな時代でも、
必ず、いい人と、悪い人、というのがいて、
例えば、引き揚げのための行進をしている最中でも、
女性たちの食べ物や金を狙う輩がいる。


こんな非常時に、
いい加減にしろ、と言いたくなるが、
そういう人の思考は、
そういう事にしか向かないのだろう。


そうかと思えば、
日本に帰ってから、
叔母につれなくされ、途方に暮れているときに
出会ったお巡りさん。
彼は、けい子と3人のこどもを家に連れ帰り、
食事を提供し、
泊めてくれる。
涙が出そうなくらい、ホッとした場面。


その後も、同じ。


引揚者を利用して、
金儲けだけを考える人間が多数いて、
彼らは、けい子たちの弱みに付け込み、
追い込んでゆく。


女たちは、
「いつか帰ってくる夫や恋人に会った時、
 顔向けできないような事はすまい」と、
それだけが、心の支え。
それでも、転落してゆく者はいる。


けい子は、
中国から3人の子供を連れ帰ったけれど、
引揚者の中には、
置いてこざるを得なかった人もいて、
その子が、後にいう、
中国残留孤児と呼ばれる人たちなのよね。


で、いっとき、残留孤児たちの
日本への帰国が相次いだけれど、
日本語を話せずに、ご苦労されたとか。


そして、今は、
その二世、三世たちの時代。


そんな風に、戦争は、
いつまでも、その傷が癒えることはなく、
後世にまで影響が及ぶ。
今後、絶対戦争をしてはならないと、
本気で思う。


評価 ★★★★☆

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「明日の食卓」 [映画]

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〔2021年/日本〕


神奈川県在住のフリーライター・石橋留美子(菅野美穂)は、
カメラマンの夫と、
長男・ユウ、次男・タクミの4人暮らし。
最近、立て続けに仕事が入り、
家事と子育てに、
いっぱいいっぱいの日が続いている。


静岡県在住の専業主婦・石橋あすみ(尾野真千子)は、
夫の実家の隣に家を建ててもらい、
一人息子・ユウを育てている。
姑との仲は決して悪くはないが、
どこか緊張を強いられる毎日。


大阪在住のシングルマザー・石橋加奈(高畑充希)は、
バイトを掛け持ちしながら、
息子・ユウを育てるのに必死・・・。





試写会で観た。


全員が、同じ「石橋」という姓で、
全員が、同じ「ユウ」という名前の、
10歳の男の子を育てているという、
一見どこにでもありそうな、
母の姿を描いたオムニバス映画。


観始めた時は、
なんだか軽い印象だったので、
この3人が、それぞれに、
大した問題でもない問題に、
緩く立ち向かっていくのかな、なんて
思っていたのだけれど、


話が進むにつれ、
ズシーンとくる。
重くて、気持ちが暗くなる。


最初は、高畑充希さんのパートが息苦しかった。
他の2人には夫がいる。
多少、何かあっても、
いざという時、頼れるではないか。
高畑さんは、彼女が倒れたら、
全てが立ちいかなくなる、と。


けれど、大変なのは高畑さんだけではなかった。
菅野美穂さんは、
仕事と家庭の両立、
さらに、フリーのカメラマンだった夫が、
無職になってしまい、
ストレスマックスの状態に追い込まれる。


尾野真千子さんは、
生活にはゆとりがある。
むしろ、暇すぎると言っていい。
しかし、息子のユウにイジメ問題が勃発すると、
夫から、
一日中のんきに家にいて一体何をしていたのかと、
責められる。


ありきたりな感想だろうけど、
日本中の誰もが「石橋さん」であり、
全ての子どもが「ユウ君」であり、
映画の中の事は、
全ての人に起こり得る事なのだろうと思う。


殆どのケースが、
大きな事件に発展しないのは、
人に、理性と、我慢と、赦しがあるからで、
あと1センチ踏み出したら、
どうなるか分からない危うさを含んでいるのは、
誰もが同じなのだろう。


評価 ★★★☆☆

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