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「三兄弟の決闘」 [映画]

sankyodainoketto.jpg
〔1960年/日本〕


府中刑務所で5年間服役していた、
立花宗太郎(長谷川一夫)が出所してきた。
宗太郎は、
やくざの親分・権田(志村喬)の命令で、
罪を被ったのだ。


宗太郎には、2人の弟がいた。
すぐ下の弟・圭二郎(川口浩)は、
正義感溢れる新聞記者。
そして末っ子の錬三郎(藤巻潤)は大学生だ。


宗太郎は、出所してすぐ、
恋人・朱美を訪ねたが、
朱美の妹・晴美(叶順子)から、
朱美が自殺したことを知らされる。


権田は、5年間の「お勤め」を果たした宗太郎に、
褒美として、経営するホテルの権利を任せると、
実印を預けるが、
それを快く思わない手下の兵頭は、
錬三郎を騙し・・・。





先日の、「三人の顔役」に引き続き、
「三」シリーズ。
 ↓
https://aomikamica.blog.ss-blog.jp/2020-07-21
(って、そんなシリーズはないが、勝手に(笑))。


二日連続で、
川口浩様の新作映画が観られるとは、
なんとも幸せ。
(私にとって、初めて観る浩様の映画は、旧作でも新作(笑))


「三人の顔役」では、
親分と舎弟、という関係だった、
長谷川一夫さんと浩様だけど、
本作では、実の兄弟。


いや、しかし、3兄弟役の公開当時の実年齢、
長谷川一夫さん → 52歳
浩さま → 24歳
藤巻潤さん → 24歳


・・・って、
ちょっと設定に無理がない?(笑)。


さらに変なのは、
志村喬さん、55歳。
志村さんと長谷川さんとは、
3歳しか違わないのに、
志村さんったら、
長谷川さんを、まるで小僧扱い(笑)。


これ、映画の最初に、
「長谷川一夫さんを、26歳に脳内変換してご覧ください」
と、テロップ流した方がいいくらい(笑)


さらに、
タイトルが、「三兄弟の決闘」とあるから、
私はてっきり、
三兄弟が、
親の財産を巡って、
骨肉の争いでもするもんだと思っていたら、
(財産の部分は嘘ですが(笑))、


それほど滅茶苦茶な大喧嘩は起こらずに、
映画は終わった。


「三人の顔役」の方が、
面白度はずっと上かな。


評価 ★★★☆☆

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「透明人間」 [映画]

toumeiningen.jpg
〔2020年/アメリカ〕


科学者で、大富豪の夫・エイドリアンから、
DVを受けていたセシリア(エリザベス・モス)は、
要塞のような家から、
やっとの思いで逃げ出す事に成功する。


セシリアは、妹の恋人の家に身を寄せながら、
夫がいつ、自分を探し出すかと思うと、
恐怖で外に出る事もままならない。


ところが、そんなある日、
エイドリアンが自殺したとの連絡が入る。
残された莫大な遺産は、
セシリアのものになるという。


しかし、セシリアは、
不安な気持ちを拭えない・・・。





冒頭から手に汗握る。
女性が、眠っている男から、
見つからないように逃げようとしている。
理由は分からないけど、想像はつく。
早く早く。
男が起きないうちに、早く!


なんとか逃れた女性・セシリアだけど、
男から相当な事をされていたのだろう。
妹の恋人宅に身を寄せるも、
郵便受けまで郵便を取りに行くのもやっと。
なんて気の毒な。


けれど、男は死ぬ。
普通なら、胸をなでおろす場面だけど、
事はそう簡単にいくものか。
あの男が自殺なんてするわけがない。


ここからが、いよいよ本題だ。
エイドリアンの死後、
セシリアの周囲でおかしな事ばかり起こる。
エイドリアンは生きている、
これは彼の仕業だと、どんなに訴えても、
周囲の人は、
誰も取り合ってくれない。
それどころか、セシリアの頭がおかしくなったと、
思われるだけ。
彼女はどんどん追いつめられる。


今までにも、透明人間の映画は、
何度も観ているけれど、
これは精神に来る。


それは、透明人間になった奴が、
元々、自分に異様な執着をする男というのが大きい。
そんな男が透明人間になったら、
どんな事になるか。


ストーカーってだけでも怖いのに、
それが透明なのよ。
見えない奴から、
嫌がらせされるのよ。
悪い事は全部、
自分のせいにされるのよ。


もし私が透明人になれたとしたら、
「透明人間になれちゃう自分」をいうのを
ひた隠しにしつつ、
色々楽しむけどな。
タダで、映画観たり、
タダで、公共交通機関を利用したり(笑)。


でもこの映画の透明人間は、
嫌がらせが目的だからタチが悪い。


そもそも、ストーカーって一体何がしたいの?
相手に、辛い思いをさせたり、怖い思いをさせたりって、
どういう心理なの?


評価 ★★★★☆

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「三人の顔役」 [映画]

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〔1960年/日本〕


ある大雨の夜、
バー「マドンナ」に、津村隆太郎(長谷川一夫)がやって来る。
津村は、2年前、殺人教唆で逮捕されたのだが、
脱獄して、
「マドンナ」のママで情婦の千鶴(京マチ子)のところに
逃げ込んだのだ。


津村は、千鶴の態度や、部屋の様子から、
男ができたのではないかと睨む。
そして、その相手は、
舎弟の修吉(川口浩)か、達也(菅原謙二)の
どちらかではないかと。


さらに、2年前、自分を裏切り、
警察に密告したのも、
修吉か、達也、
もしくは、実行犯で服役中の内藤ではないかとも、
疑っている。


津村は修吉と達也に会うが、
二人とも、
裏切りなどは絶対にしていない、と激しく否定。
そんな事より、今は、
迫ってくる警察の捜査網から、
津村を隠さねばならない。


津村は疑心暗鬼のまま、
大阪に逃げるための手筈を整えようとするが・・・。





私が大映贔屓という事を
差し引いても、
この映画は面白い。


脱獄してきたヤクザの親分と、
その情婦や、子分たちを巡る、
24時間の物語。


親分は、娑婆に出て、
皆に会えるのを楽しみにしている。
皆が、自分の出獄を喜んでくれ、
大阪に逃げるための協力を
惜しまないと信じている。


けれど、そんな事は、
甘い夢だったと思い知る。
2年も経てば、人は変わる。
勢力図も変わる。
女だって、いつまでも自分を待っていてくれるわけじゃない。
そんなこんなを、強く思い知る物語でもある。


長谷川一夫さんは、
おそらく当時、
大映の中でも、別格のスターだったと思うけど、
ことごとく手下に裏切られる役を、
可哀想なくらいに、演じきっている。


川口浩さまと、菅原謙二さんは、
同じ親分を持つ兄弟分だなんだと
言ってはいるけれど、
結局は、自分の事しか考えておらず、
いざとなると、
互いに責任を押し付け合うばかりの
ヤクザにあるまじき、情けない役なんだけど、
不思議とそれがハマっている。


そして、なんといっても、
京マチ子さん!
京さんったら、
もう、「ヴァンプ」って言葉がピッタリな感じの、
情婦の中の情婦。


勝新太郎さん、野添ひとみさんも出演されていて、
とっても豪華。


煙草など、
小道具の使い方も、
とってもいい。
この映画、すごく好き。


評価 ★★★★☆





この作品で、
京マチ子さんの出演映画、100本中80本を観た事となりました。


(★は観た作品)


★化粧 (1984)
★男はつらいよ 寅次郎純情詩集 (1976)
 妖婆 (1976)
★金環蝕 (1975)
★ある映画監督の生涯 溝口健二の記録 (1975)
★華麗なる一族 (1974)
★玄海遊侠伝 破れかぶれ (1970)
★千羽鶴 (1969)
 小さい逃亡者 (1966)
★沈丁花 (1966)
★他人の顔 (1966)
★甘い汗 (1964)
★現代インチキ物語 ど狸 (1964)
★女系家族 (1963)
★女の一生 (1962)
★仲よし音頭 日本一だよ (1962)
★黒蜥蜴 (1962)
★釈迦 (1961)
 小太刀を使う女 (1961)
★女の勲章 (1961)
★濡れ髪牡丹 (1961)
★婚期 (1961)
★お傳地獄 (1960)
★顔 (1960)
★足にさわった女 (1960)
★三人の顔役 (1960)
★ぼんち (1960)
★流転の王妃 (1960)
★女経 (1960)
★浮草 (1959)
★鍵 (1959)
★次郎長富士 (1959)
★夜の闘魚 (1959)
★女と海賊 (1959)
★細雪 (1959)
★あなたと私の合言葉 さようなら、今日は (1959)
★娘の冒険 (1958)
★夜の素顔 (1958)
★赤線の灯は消えず (1958)
★大阪の女 (1958)
★忠臣蔵 (1958)
★母 (1958)
★悲しみは女だけに (1958)
★有楽町で逢いましょう (1958)
★穴 (1957)
★夜の蝶 (1957)
★地獄花 (1957)
★女の肌 (1957)
★踊子 (1957)
★いとはん物語 (1957)
★スタジオはてんやわんや (1957)
★八月十五夜の茶屋 (1956)
★月形半平太 (1956)
★赤線地帯 (1956)
★虹いくたび (1956)
★新・平家物語 義仲をめぐる三人の女 (1956)
 新女性問答(1955)
★藤十郎の恋 (1955)
★楊貴妃 (1955)
★薔薇いくたびか (1955)
 春の渦巻 (1954)
 馬賊芸者 (1954)
★千姫 (1954)
★浅草の夜 (1954)
★春琴物語 (1954)
★愛染かつら (1954)
★或る女 (1954)
★地獄門 (1953)
★あに・いもうと (1953)
 黒豹 (1953)
★雨月物語 (1953)
 彼女の特ダネ (1952)
★大佛開眼 (1952)
★美女と盗賊 (1952)
★瀧の白糸 (1952)
★長崎の歌は忘れじ (1952)
★浅草紅団 (1952)
★踊る京マチ子 歌う乙羽信子 (1952)
 恋の阿蘭蛇坂(1951)
 情炎の波止場(1951)
 馬喰一代 (1951)
★源氏物語 (1951)
 牝犬 (1951)
★自由学校 (1951)
★偽れる盛装 (1951)
 美貌の海(1950)
 復活(1950)
★火の鳥(1950)
★羅生門 (1950)
★浅草の肌 (1950)
 遙かなり母の国 (1950)
★続蛇姫道中 (1950)
★蛇姫道中 (1949)
 最後に笑う男(1949)
★痴人の愛 (1949)
 三つの真珠 (1949)
★地下街の弾痕 (1949)
★花くらべ狸御殿 (1949)
 天狗倒し(1944)
 団十郎三代 (1944)

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「17歳のウィーン フロイト教授人生のレッスン」 [映画]

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〔2018年/オーストリア〕


1937年。
オーストリアのアッター湖畔で、
母親と暮らしていた17歳のフランツ(ジーン・モルツェ)は、
タバコ店で働くため、
ウィーンにやって来る。


店には様々な客がやって来るが、
常連客の一人で、
「頭の医者」だという、フロイト教授と親しくなったフランツは、
”人生を楽しみ、そして恋をしなさい”と言われる。


ほどなくして、
ボヘミア出身の女性と知り合ったフランツは、
彼女と懇意になるが、
けれど、
彼女には謎が多い。


そんな日々の中、
時代は、激動の時を迎えようとしていた・・・。





試写会で観た。


オーストリアの田舎町から、
首都ウィーンのタバコ店に就職した、
17歳の男の子が、
あの実在の精神分析医・フロイトと出会い、
成長してゆく物語。


原作は、2012年にオーストリアで出版されて、
社会現象にまでなった小説だそうで、
元のタイトルは、「キオスク」。


そう、主人公のフランツが働く店は、
メインの商品は、タバコや葉巻だけれど、
他にも、文房具や新聞、
そして、当時ご法度だったエロ本が、
秘密で売られているなど、
まさしく、「キオスク」といった感じの、
街の萬屋さんといった趣。


フランツは、その店で、
店主に仕事や、客あしらいを教わりながら、
暮らしてゆくのだけれど、
フロイトに言われた通り、
一人の女性と知り合い、恋をする。


けれど、彼女と親しくなっても、
「恋人」というほどには、
彼女の心を掴み切れない。
ある日、彼女の後をつけたフランツは、
彼女は、ショーパブ(のような店)で
働いている事を知る。


もし、時代が違っていたら、
彼女はもっと、フランツと真剣に向き合っていたのではないかと
想像する。
不安定な、この時代、
経済的にも、精神的にも余裕のない彼女は、
将来の分からないフランツと
真剣に恋をする事などできなかったのだろう。


彼女の働くショーパブにしたって、
最初は、ヒトラーを小馬鹿にするような出し物をしていたのに、
ナチスが街に台頭してくると、
手の平を返したように、
ナチスが喜ぶような内容に変える。
時代の不安定さがとてもよく表されている場面。


フランツはとても感性豊かで、
「こうありたいと思う、理想の自分」と
「現実の自分」が出てきて、
その描き方が、とても面白い。


慣れてくると、こちらも、
「あぁ、これは理想の自分の方ね」を分かる(笑)。


もの知らずの私は、精神分析医のフロイトが、
オーストリア出身のユダヤ人だと、
この映画で初めて知った。
少しお利口になったような気分(笑)。


評価 ★★★☆☆

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「名探偵明智小五郎シリーズ 怪人二十面相 第三部 怪盗粉砕」 [映画]

kaijinnijumenso3.jpg
〔1954年/日本〕


第二部からの続き。


明智小五郎(若杉英二)は、
秘書・玲子からの伝書鳩を受け取り、
怪人二十面相のアジトを突き止め、
玲子と、羽柴博士の娘を救う。
しかし、二十面相は、
気球に乗って逃げてしまう。


羽柴博士は、
原子炉設計図を、
親友の時計店店主・大島の店頭に飾られている、
置物「黄金の塔」に隠す。


しかし、極秘のはずのそのことが、
二十面相に知れ、
5日後の12時に、盗みに行くと予告される。


大島は、明智に、
店に泊まり込んでほしいと懇願するが、
明智は、なぜかそれを断り・・・。





シリーズ三作目にして、最終章。


どうやら、当時、
この三部作は、一週間の間を空けて、
公開されたようだ。


今観れば、突っ込みどころ満載な内容だけど、
きっと当時の少年たちは、
ワクワクしながら、スクリーンを見つめていたのでしょうね。


今回も、前2作と同様、
一人で観るのが勿体ないような、
凄い内容(笑)。


羽柴博士の大事な原子炉設計図を、
置物の「黄金の塔」に隠したのはいいけれど、
それを二十面相に知られて、
みんな大騒ぎ。
だったら、とっとと別の場所に隠し替えたらいいではないか(笑)。


で、羽柴博士と、親友の大島が、
家の中で話していると、
「設計図は必ずいただくぞ。わーはははは」と、
響き渡る、二十面相の声。


自分の家で、
いきなり、そんな声が聞こえたら、
震え上がるだろうに、
お二人は、
「なんか、声が聞こえたな。空耳かな」て(笑)。
本気で設計図を守る気があるのか?(笑)


まぁ、そんなこんな、
色々あるけど、
時計店の中で起こる、
5日間の出来事は、
それなりに面白く、
ちょっと、ゾッとする瞬間もあったりして、
展開を楽しむ。


ラスト、
二十面相は、一応、捕まったという事だけれど、
明確ではなく、
謎を残したまま終わる。
もしかしたら、
さらなる続編を作るつもりで、
その辺はボヤかしたのかもしれない。


評価 ★★★☆☆

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