SSブログ

「骨までしゃぶる」 [映画]

honemadeshaburu.jpg
〔1966年/日本〕


明治33年。
18歳のお絹(桜町弘子)は、
親の借金のカタに、洲崎の遊郭“松風楼”に売られる事になる。


まだおぼこなお絹は、
自分に与えられた部屋や、調度品、
そして初めて食べる鰻に感激するが、
この先に待つ、辛い人生には気付かずにいる。


“松風楼”の主人・松岡定一郎(三島雅夫)とお徳(三原葉子)は、
お絹が生娘である事に高い値を付け、
それを客への売り込み文句にする。


次第に遊郭の仕事に慣れてきたお絹は、
どんなに働いても借金が減らず、
遊女たちは、ここを出ていきたくても
出ていけないシステムに苦しんでいる事を知る。


そんなある日、客としてやって来た職人の甚吾郎(夏八木勲)が
お絹に本気で惚れてしまい、
夫婦になってくれないかと言う。
しかし甚吾郎が考える身請けの額では、
足抜けができるはずはなく・・・。





明治時代の洲崎の遊郭での、
遊女たちの苦悩とわずかな希望を描いた作品。



洲崎を舞台にした物語といえば、
「洲崎パラダイス 赤信号」(大大大傑作!)があるけれど、
時代的にはこちらの方がずっと古い。
むしろ私は、洲崎って、
明治時代から遊郭があったとは知らなかったくらい。
戦後できた赤線地帯の一つだと思い込んでいたから。


物語は、洲崎の一画にある“松風楼”が舞台なんだけど、
この商売の阿漕なやり方に、
憤りを通り越して、悲しくなってしまう。


主人の松岡夫妻は、
客が支払った金の中から、
自分たちの取り分をまず取ったあと、
もう本当に、なんだかんだと理由を付けては、
本来遊女たちに渡す金から天引きする。
部屋代から食事代、箪笥の使用料から、石鹸の使用料等々の名目で。


なんというピンハネ。
遊郭を舞台にした映画は、何本も観てきたし、
遊女たちの借金が不思議に増えてゆくのも、
知ってはいたけれど、
これほど具体的に表された場面を観たのは初めてな気がして、
そのシステムの酷さには、観ているこちらは呆れるばかり。


私は、タイトルの「骨までしゃぶる」とは、
てっきり、遊女が客の男を「骨までしゃぶる」お話かと思っていたのだけれど、
骨までしゃぶられているのは遊女の事なんだと、
途中で気が付いた。


そんな状況の中、
最初は文字も殆ど読めず、
なんだか頭がゆっくりに見えた、桜町弘子さん演じるお菊が、
色々と物を考えるようになってから、
表情まで変わってゆく過程が大変にいい。
目の輝きまで違って見えるのだから、
女優さんの演技というのは凄いものだ。


お菊に、色々知恵を付ける遊女を演じるのが久保菜穂子さんなのだけれど、
この久保さん、
古い映画で、何度もそのお顔は観ているけれど、
こんなに素敵だと思った事は初めて。
久保さんは、元士族の奥様という役柄で、
家族の為に遊女になるしかなかった女を、
知的な表情で演じていて、大変に良かった。


こんな内容だけれど、
決して暗いばかりではないのが救い。
ところどころでコミカルな場面があって、
なんだかホッとできる。


評価 ★★★☆☆

nice!(36)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画