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「きっと、星のせいじゃない。」 [映画]

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〔2014年/アメリカ〕


ヘイゼル・グレイス(シャイリーン・ウッドリー)は、
甲状腺のガンを患い、
現在は肺にも転移しているため、
酸素ボンベを転がしながら歩く17歳の女の子。


ヘイゼルの母は、友達のいない彼女を心配し、
ガン患者が集まるサークルに行かせる。


その会で、骨肉腫を患い、
片足が義足の少年・ガス(アンセル・エルゴート)と知り合ったヘイゼル。
会話をするようになった2人は、
互いの家を行き来するようになる。


ヘイゼルは自分の愛読書「大いなる痛み」をガスに薦め、
ガスもその本を好きになる。
ガスはヘイゼルに内緒で、
著者のピーター・ヴァン・ホーテン(ウィレム・デフォー)にメールし、
ヴァン・ホーテンが住むアムステルダムに招待されたことを伝え、
ヘイゼルを狂喜させる。


一度は頓挫しかけたアムステルダムへの旅が
やっと実現する事になり、
憧れのヴァン・ホーテンの家のベルを鳴らした2人だが・・・。





難病物には違いないのだけれど、
大変に爽やかで、素敵な物語。


これは主人公のカップルの
清潔感によるところが大きい。
2人は病気という事もあり、
出会ってすぐ、恋に落ちるわけではなく、
じっくりと時間をかけて、お互いを知っていく。
その過程に好感を持ちながら観る。


友達から恋人になった場面も、
久し振りに美しいカップルを見たという思いで、
この汚れきった私の心まで
洗われるような気がしたよ(笑)。
いいねぇ、10代の恋愛は。


もちろん、難病物だから、普通の恋愛映画のようなわけにはいかない。
健康な男女なら想像もしないような出来事があり、
相手を思うあまり、
言い出せない事があったり、
もう会わないと決めたり、
観ていて、辛くなる場面もある。


ただ、だからといって、
空気は決して澱みはしない。
観客は2人の病気を自然に受け入れながら、
話の進行を見守る。


ヘイゼルとガスの両親の気持ちが、
私には一番心に来た。


おそらく、
ヘイゼルの親はガスに、
ガスの親はヘイゼルに、
大変な感謝をしているに違いないと想像する。
病気を抱えて生きる我が子が、
こんなにキラキラした恋愛を体験して、
人生を豊かなものとした事に、
ありがとうと何度言っても、
言い尽くせない思いでいるのではないかと、
そんな風に思う。


いい映画だった。


評価 ★★★★☆

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「好きだ、」 [映画]

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〔2005年/日本〕


高校生のユウ(宮崎あおい)は、
野球部を辞めてギターを弾き出したクラスメイトのヨースケ(瑛太)のそばに
いつもいる。


河原で、お世辞にも上手いとは言えないヨースケのギターを聞く。
ヨースケが作曲している途中の曲を覚えて、
家で口ずさむ。


ユウの姉がその曲を真似して口ずさむようになった。
姉は大切な人を亡くしたばかりで、
落ち込んでいたが、
ヨースケの曲の話をする時だけ、少しだけ笑うようになった。


ヨースケも、姉の事が気になるようで、
ユウに、何かと尋ねてくる。
ユウは自分の気持ちを隠し、姉とヨースケが河原で会うように画策する。
それが思いもよらぬ事故を引き起こしてしまうとは想像もせずに。


17年後。
34歳になったヨースケ(西島秀俊)は、
事故以来、一度も会っていなかったユウ(永作博美)と
偶然再会し・・・。





宮崎あおいたん、大好き。
なぜだか分からないけれど、
彼女からは禁断の匂いがする(気がする(笑))。


なんだろう、映画「害虫」の印象が強いのかな。
見た目は可愛い少女の彼女の中に、
なにかとんでもない怪しさや秘密を感じてしまう。
そして、そんな部分に、
強く心惹かれてしまう。


もちろん、実際の彼女がどんな人かは知らないけれど。
意外と屈託のない、普通の人なのかもしれない。
これからもずっと、
彼女の映画は観続けていきたい。


この映画も、そんなあおいたんの魅力でいっぱいの、
詩のような作品。
深い物語はなく、
淡々と過ぎる時間の流れを追っている。


あおいたんと瑛太が17年経つと、
永作博美と西島秀俊になるって、
なんとも贅沢なキャスティング。
他にも、加瀬亮が、殆ど通行人みたいな役で出ていたり、
(重要な役ではあるが)
大森南朋が高校の担任役で出ていたりと、
なかなか豪華。


ヨースケは、17年後に再会したユウに、
最初は気付かないんだけど、
ユウは、ある行為をして、彼に自分だと気付かせる。
その場面が素晴らしく良い。


エンドロールがこれまた良い。
なるほど、と思わせられる味わいのある終わり方。


評価 ★★★☆☆

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「アメリカン・スナイパー」 [映画]

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〔2014年/アメリカ〕


テキサス州で生まれ育ったクリス・カイルは、
父に射撃を教わり、
鹿を仕留めるような、
銃に慣れ親しんだ少年。


大人になったクリス(ブラッドリー・クーパー)は、
レバノンでのアメリカ大使館爆破事件をテレビで見て、
愛国心から軍人となり、
特殊部隊ネイビー・シールズに配属される。


私生活ではタヤ(シエナ・ミラー)と結婚し、
順風満帆な生活であったが、
アメリカ同時多発テロをきっかけに、
イラクに派遣される。


彼のスナイパーとしての腕は一流で、
狙った敵は必ず仕留める事から、
「レジェンド」と呼ばれるようになるが、
敵からは「悪魔」と呼ばれ、
懸賞金をかけられるようになってしまう。
また、中々会えない家族との間に溝ができ、
彼自身の精神も次第に蝕まれてゆく・・・。





イラク戦争に4度も従軍し、
その天才的な射撃の腕前で名を馳せた
実在のスナイパー・クリス・カイルの物語。


監督はクリント・イーストウッド。
一昨日発表されたアカデミー賞は惜しくも逃したけれど、
戦争映画として、
「プライベート・ライアン」の記録を抜いて、
アメリカ歴代1位の記録を立てたそうだ。


それにしても、今の時代、
この内容はシャレにならない。


アルカイダとイスラム国の違いも
ハッキリとは分からない私だけれど、
とにかく、地球の「あの辺り」が、
常に「嫌な感じ」にモヤモヤしているのは分かるし、
その、モヤモヤした辺りの人たちにとって、
最大の敵国がアメリカだというのも、
当然分かる。


人材豊富なアメリカの事だから、
カイルのようなスナイパーは当然いるだろうし、
味方にとっては、
必要な人間なのも分かるんだけど、


やられたから、やりかえす。
その繰り返しは、
いつになったら終わりになるんだろう。


こちらの味方は、相手には敵。
こちらの英雄は、相手には悪魔。
簡単すぎる図式。
敵としている相手にも家族がいる。
敵を1人殺したって、
残された息子が成長すれば、
報復のために、銃を手にするだろう。
連鎖は止まらない。


イラクの街の様子も恐ろしい。
常にどこかで銃や爆撃音が聞こえ、
荒れ果てた建物が並び、
兵隊たちや、彼らを乗せたトラックが
行き来する中で暮らす人々。
あんな中で育った子どもたちの大半が
どんな大人になるのか、
簡単に想像がつきそうだ。


イーストウッド監督は、
決してアメリカ万歳と言っているわけではなく、
戦地で人を殺した人間が、
国に帰って何事もなかったように暮らす事は
到底無理なのだと、
そこを一番に言いたいのだと思う。


なんだかもう、上手い事が書けない。


評価 ★★★★☆

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上村遼太くんと「静人日記」 [時事]


静人日記―悼む人〈2〉 (文春文庫)

静人日記―悼む人〈2〉 (文春文庫)

  • 作者: 天童 荒太
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2012/10/10
  • メディア: 文庫


どうしても書かずにいられなくて、
書きます。


先日、映画「悼む人」を観て、
主人公・静人が会った事もない死者を、
何の見返りもなく「悼む」という行為が、
自分にはよく理解できないと書きました。


静人の気持ちをもっとよく理解するために、
続編ともいえる、
「静人日記」を現在読んでいます。


これは全て、静人の日記という形の本で、
日付と、
亡くなった人が、
誰かからどれだけ愛されていたか、
どれだけ必要とされていたかを
彼の言葉で綴られています。


私が今、書かずにいられないのは、
川崎市で起こった、
中学1年生の男の子の死です。


今現在、正式な発表がないので、
犯人については言及しませんが、
亡くなられた上村遼太くんが、
どれほど、辛く、悲しく、恐ろしい思いでいたか、
彼の心の内を想像すると、
悲しくて悲しくて、
手が震えて、涙が出てきます。


今回のこの事件について、
知れば知るほど、
上村くんの為に、
私も静人のように悼みたいと、
ほんの少しだけ、
静人の気持ちが分かったような気がしました。


なぜ、このような事件が起こるのか、
専門家でもない私が分析するのは違うかもしれませんが、
現代の子供が抱えているストレスって、
私の子供の頃のストレスとは、
質が違うという事だけ感じています。


報道されているように、
犯人が少年であるとするなら、
きちんとした処罰をするべきだとは思いますが、
現代の子供が抱えているストレスを解決しない限り、
同じような事件はまた起こる、
そんな風に感じて仕方ないのです。


もちろん、それは理想であって、
現実には無理だと分かっています。
世の中がそうなんだ、仕方ないさ、という思いの
無力感、脱力感が私の中にあるのも事実なんです。


上手く書けない。
救いようのないこの事件に、
結論なんて出るはずもありません。
ただ、上村遼太くんが、
どうかどうか安らかに、
天国があるとするなら、
そこでは元気で過ごしほしいと祈っています。


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「恋と太陽とギャング」 [映画]

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〔1962年/日本〕


網走刑務所から出てきた石浜伸夫(高倉健)は、
女房・典子(小宮光江)と帰る途中、
見知らぬ男・常田(丹波哲郎)に声を掛けられる。


典子と、彼女の母・真佐(清川虹子)が暮らすアパートに
転がり込んだ伸夫は、
次の「仕事」の計画を立て始める。


都内の秘密クラブで開催されている、
国際的な賭博場の金をいただこうというのが、
その計画だ。


伸夫と常田は手を組み、
綿密な計画の元、
仲間を各部所に配置し、
まんまと金を手に入れるが・・・。





ちょっとほめ過ぎだとは思うけど、
古いフランス映画の犯罪物みたいな雰囲気があって、
なかなか面白かった。


特に、賭博場の金を奪う場面などは、
結構ハラハラできる。
もちろん、現代のようにコンピュータを駆使するわけでもなく、
笑っちゃうような手作業での強奪ではあるけれども、
私の能力では、これくらいの方が、
理解もしやすいってもんだ(笑)。


金の強奪に成功したあとも、
共犯者たちが裏切り、裏切られ、
最後に誰が勝利者になるのか、
その駆け引きも面白く、軽妙で。


オチがまたすごい。
そう来たか、って。
アラン・ドロンの、ある犯罪映画を思い出したけど、
その映画より、こちらの方が公開が先。
日本の映画だからって、馬鹿にしたもんじゃない。


高倉健さんは、このころはまだ「不器用」ではなく(笑)、
饒舌で、コミカル。
出所後、妻と妻の母が住むアパートに行ったものの、
妻とイチャイチャしたくても、
母が気になってできない男という役を
笑える演技で見せてくれる。


そういえば、
高倉さんが出所してくる刑務所ってのが、
網走というのが可笑しい。
この映画は、まだ「網走番外地」の前。
そんな時から、高倉さんと網走は、
やっぱり何か結びついていたのね。


妻の母を演じる清川虹子さんが、
カッコいい。
彼女は貫録十分の悪女で、
現金強奪計画の1人として、
ちゃんと加わっている。
頼りになる女傑って感じで。


評価 ★★★☆☆


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