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「浪花の恋の物語」 [映画]

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〔1959年/日本〕


浪花の飛脚問屋・亀屋の養子、忠兵衛(中村錦之助)は、
真面目いっぽうの堅物男で、
店の娘・おとく(花園ひろみ)とは許嫁の仲であった。


ある日忠兵衛は、同業者の丹波屋(千秋実)に、
無理矢理、遊郭に連れて行かれる。
遊女・梅川(有馬稲子)の部屋に入った忠兵衛は、
最初はそっぽを向いていたが、
結局、一泊し、梅川に夢中になり、
その日から遊郭通いが始まってしまう。


亀屋の女主人・妙閑(田中絹代)は、
最近の忠兵衛の金使いの荒さに気付き、
彼を江戸に集金に行かせ、ほとぼりを冷まそうとする。


一度は改心したかに見えた忠兵衛だが、
結局梅川を忘れられず、
集金した金を持って、遊郭に行ってしまう。
ところが、梅川を身請けしたいというお大尽(東野英治郎)の命令で、
彼女は今日から客を取らないと聞かされる。


逆上した忠兵衛は、
集金してきた金を遊郭の主人に手付けとして預け、
足りない分は、あとから払うと言ってしまう。





近松門左衛門原作の映画を何本か観ているけれど、
どれもこれも、どうしてこんなに面白いんだろう。


話の骨格は大体同じで、
遊女と、彼女に入れ込んだ男の物語が殆どなのだけれど、
2人の愛情が深すぎて、
つい本気で見入ってしまう。


さらに遊女といえば、金、
金といえば、身請けといった感じで、
必ず金銭的な事がついて回る。
遊ぶだけならともかく、
(それでも、入れ込めば相当かかりそうだが)
身請けとなれば、大金を用意せねばならず、
それができない、一介の商人は苦しむ。


有馬稲子演じる、梅川という遊女が、
とても綺麗なうえに、物凄く優しくて、
男にとって、理想の女のように描かれている。


彼女は、あかぎれを作って泣いている、
遊郭の下働きの少女の指に、
懐紙を巻いてやるなど、
天女のような女で、
男も女も、誰もが彼女を好きになる。


遊びを知らなかった忠兵衛が、
初めて女を知って、
のぼせてしまったという図式に見えるけれど、
彼女を見れば、それだけではない事が分かる。
それに梅川だって、忠兵衛に惚れてしまうのだ。
忠兵衛の独りよがりでは、決してない。


もう絶対、不幸になるのは、
話の流れで分かるけれど、
それがまた、惹きつけられる理由なのかもしれない。


この映画の、ちょっと変わったところは、
近松門左衛門自身が、
2人の恋を、いつもどこかで見ているという点だ。
2人の会話をメモ(とは言わないか(笑))しながら、
次の狂言の案を練っているという設定。
近松を演じているのは、片岡千恵蔵。


評価 ★★★★☆

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「レ・ミゼラブル」 [映画]

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〔2012年/イギリス〕


貧困ゆえ、妹の子供のパンを与えようと、
盗みを働いてしまった主人公・ジャン・バルジャン(ヒュー・ジャックマン)。


19年の刑期を終え、仮出獄した彼だが、
どこへ行っても世間の目は冷たい。
そんな彼を、ある教会の神父が家に招き入れ、
食事と寝床を提供する。
しかし、心身共に疲れて切っていたバルジャンは、
教会の銀の食器を盗み、逃走する。


翌日、警官に連れてこられた彼に、
神父は言った。
「その食器は私が彼にあげたものです。
 そうそう、一番高価な銀の燭台を忘れていきましたね」と、
さらに彼に、それを与えた。


神父の心に打たれたバルジャンは改心し、
努力を重ねた結果、数年後、ある町の市長となっていた。
ところが、町に赴任してきた警察官・ジャベール(ラッセル・クロウ)は、
バルジャンが囚人だった事に気付き、
また、仮出所中は刑務所に戻らなくてはならないのに、
それを果たしていないバルジャンを捕まえようと躍起になる。


一方、自分の不手際から、
経営する工場の女工・ファンテーヌ(アン・ハサウェイ)を
解雇に追いやってしまったバルジャンは、
ファンテーヌの娘コゼットを助けてほしいと懇願され、
約束を果たす為、コゼットを迎えに行くが・・・。。





昨日、この映画を観たら、
夜中に夢に出てきた。
そんなことはあんまりない。
そんなに影響受けたんだろうか(笑)。


ここで「レ・ミゼラブル」のレビューを書くのは、
今年、3度目。
それだけ何度も映画化されている、
素晴らしい物語なのだろう。


確かに、過去の出来事が、
未来に大きな影響を及ぼしているという点で、
物語にうねりが生まれているし、
「人間は変われるんだ」という人生訓としても、
分かりやすい。


今回、劇場公開されたこの作品は、
今まで観た過去の作品と違い、ミュージカル仕立て。
ヒュー・ジャックマンも、
ラッセル・クロウも、
アン・ハサウェイも、
アマンダ・セイフライドも、
想像していた以上に歌が上手く、
心に入り込んでくる。


何かで読んだけれど、
たいていのミュージカル映画は、
事前に歌を吹き込んで、
現場は口パクなところを、
この作品は、演技をしながら実際に歌っているそうだ。
どおりで臨場感がある。


3作品を観て、
なぜか私は毎回、ジャベールの気持ちが気になるのだけれど、
この映画で、やっと彼の気持ちが分かった気がした。
観客に、そう仕向けるように演出しているからかもしれないけれど、
最後に、彼はジャン・バルジャンの心に触れたのね。
いや、今までも、気付いてはいたんだろうけど、
気付かぬフリをして生きてきたんだろうけど、
もうどうしようもなく、彼の心に触れた。


そして、ジャン・バルジャンが神父の心に触れた時とは違う方法で、
自分をああいった方向に向けた。
やっぱり考えさせられる。


これって、イギリス映画なのね。
家に帰って調べるまで、
てっきりハリウッド映画だと思っていた。
メインの2人、
ヒュー・ジャックマンとラッセル・クロウが、
オーストラリア出身というのは、
偶然なんだろうけど、面白いと思ったな。
イギリスとオーストラリアの関係といえば、
最近は、あの最悪の「電話事件」を思い出すけれど、
国と国って、やっぱりどこかで繋がってる。
どんな国同士でも、良い関係が築ければいいのだけれど。


「夢やぶれて」を聞くと、
どうしても、スーザン・ボイルさんが浮かんできてしまうのは、
仕方がない事か(笑)。
でも、どうでもいいけど、
私は、彼女が最初に出てきたあの番組が大好きで、
ネットで時々観てしまう。
彼女が歌い始めた時の、
審査員や、お客さんの驚く顔が可笑しくて。


評価 ★★★☆☆

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「喜びも悲しみも幾歳月」 [映画]

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〔1957年/日本〕


昭和7年。
神奈川県の観音崎灯台に勤務する佐田啓二は、
父の葬儀の休暇から帰った際、
新妻・高峰秀子を連れて帰り、
上司や同僚に祝福される。


その直後に佐田の転勤が決まる。
今度は北海道の石狩灯台だ。
雪深い北海道での生活だったが、
高峰は妊娠、
産婆が間に合わず、佐田が女の子を取り上げる。
さらに、次には男の子も授かる。


次の転勤は、
五島列島の女島燈台。
寒い北海道から、暖かい南への移動だったが、
島には何の楽しみもなく、
夫婦のストレスは溜まりがち。
北海道の方がまだ良かったと、喧嘩もする。


次は佐渡の弾崎燈台。
戦争の色が濃くなり、
高峰は、東京から疎開してきた主婦と親しくなる。
その出会いが、
その後の一家の運命に大きな影響を及ぼす事になる・・・。





ある灯台守の夫婦の生涯を描いた大河ドラマ。
灯台での仕事は殆ど描かれていないと言ってよく、
160分という長い時間は、
全て家族の歴史物語。


大河ドラマに有りがちな事だけれど、
話の流れが大味で、
どうしても、エピソードの羅列になってしまい、
心の機微を深くは感じ取れないのは、
仕方のない事か。
でも、それでも、この長さを飽きずに観ていられるのだから、
とても良い映画には違いないと思う。


高峰秀子の登場シーンがいい。
彼女は佐田啓二に連れられて灯台にやって来る。
「恥ずかしいわ」とか言いながら。
2人は佐田の父が亡くなった直後に、
たった一回見合いしただけだと言う。


今では考えられないような結婚だけれど、
当時はそんなものだったのだろう。
逆に私は、そんな出会いに、
人と人との縁、運命を感じる。
互いによく知らぬ同士が、
生涯、苦楽を共にしてゆく。
特に高峰は、普通の家庭では考えられない、
転勤ばかりの灯台での生活だ。
不安も大きかっただろうに、
それでも昔は、他に選択肢もなかったのだろう。


佐田啓二がとってもハンサムで素敵。
「彼の妻になれるなら、灯台守でもなんでもいいわ」、と、
高峰は、案外そう思ってたりして、
という考えが頭に浮かんだ私は、
やっぱり馬鹿だ(笑)。


観る前は、
灯台守というのは、
夫婦が一組しかいない孤独な仕事なのかと思っていたけれど、
そういうわけではなく、同僚が何人かいる。
全国を転勤しながら、知り合いも増え、
「〇〇さんは、どこそこへ転勤になったそうだ」などと噂したり、
同僚の恋愛相談に乗ったり、
人間関係は、そう悪くはなさそうだ。
すぐお別れになってしまうのが、
淋しいんだけれど。


途中、様々な事があり、
大変な悲しみにも見舞われる場面もあるけれど、
ラストは幸せに終わる。
やはり親にとって、
子どもの成長こそ喜びなのだと、
強く感じる。


評価 ★★★☆☆

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「アドレナリン」 [映画]

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〔1996年/アメリカ〕


殺し屋・ジェイソン・ステイサムは、
自室で目覚めるが、
なぜか体がフラつき、上手く動けない。
その場にあったDVDを再生すると、
驚くべき記録がなされていた。
同業者のホセ・パブロ・カンティーロが、
中国製の毒物を、彼に注射していたのだ。


自分の症状を、電話で知り合いの医者に話すと、
「それは、脳内にアドレナリンを放出し続けなければ、死んでしまう薬だ」
と言われる。
アドレナリンを出すには、
常に動き回り、自分を興奮状態に追い込むしかない。


車を飛ばし、
刺激物を食べ、
医者から教わった、
アドレナリンを出す薬を求めて、
病院の薬局に行くステイサム。
しかし、警備員に追いかけられ、
病院内は大変な騒ぎに。


さらに、恋人・エイミー・スマートの命まで狙われていると
知ったステイサムは、
彼女の家へと急ぐ。
彼は助かる事ができるのか・・・。





ストーリーからも分かるように、
とにかくB級の有り得ない設定(笑)。
アドレナリンを出し続けなければ死ぬって、
誰が考えたのか、
凄いアイデアだわ(笑)。


ショッピングモールの中を、
車で走り回るジェイソン・ステイサム。
モール内はもうめちゃくちゃで、
警察がすぐに出動する。
警察に追われながら、
ホセ・パブロ・カンティーロを探して、
さらにエイミー・スマートを守らなくちゃならない彼は、
もう、忙しいったらありゃしない(笑)。


しかも、だ。
アドレナリンを放出させる一番の方法は、
自分を興奮させる事だと、
ステイサムはスマートと、とんでもない行為に出る。
エロビデオ以外で、
あんな場面、初めて観たわ(笑)。


もう絶対、
付き合い始めたばかりの恋人とか、
家族と一緒に観ちゃいけない映画だね(笑)。
気まずくなる度100%。
普通のアクション物だと思って借りてしまう人も沢山いそうだけど、
要注意(笑)。


最初から、
クワイエット・ライオットの「メタル・ヘルス」がかかったりして、
音楽がいい。
全体にへヴィメタが流れていて楽しめる。


ただ、たった一箇所、
「それは駄目でしょ」と思ったのが、
ステイサムが、アラブ系のタクシー運転手さんを車から引き摺り出して、
「この男はテロリストだ!アルカイダだ!」と叫んで、
道行く人が、運転手さんを取り押さえている間に、
そのタクシーを盗む場面。


なんか、物凄い偏見。
運転手さんが可哀相で見ていられなかった。
あの後、運転手さんは警察に連れていかれて、
色々調べられるんだよね、きっと。
せっかく面白い映画なのに、
本当に残念。


まぁ、もしこれが日本の映画で、
日本人の大半の人が「嫌いだ」と思っている国の人に
置き換えたら、
そこまで気の毒には思わないのかもしれないけど。
でも、善良な人を巻き込むのは良くないよね。
国と国の問題は、それだけ根が深いという事なんだろうけど。
(こんな映画で、そこまで真面目に考える必要もないんだけどね(笑))。


評価 ★★★☆☆

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「悪名十八番」 [映画]

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〔1968年/日本〕


喧嘩の際、清次(田宮二郎)を助ける為に、
相手を刺してしまった朝吉(勝新太郎)。
逮捕されるが、なんとか執行猶予判決で、
釈放される。


兄・辰吉(金田竜之介)の家にやっかいになる事になった朝吉だが、
辰吉の周囲に不穏な空気が流れているのを感じる。
辰吉は町を浄化させる為、
市会議員に立候補していたが、
同じく立候補者のヤクザ者・中沢(西村晃)に狙われ、
怪我をさせられたのだ。


しかし辰吉は、朝吉になんとか大人しくしているよう説得。
彼に暴れられては、
選挙に不利になるのは明らかなのだ。
けれど、朝吉の存在は、
中沢にとっては好都合。
朝吉を挑発し、スキャンダルを起こせと舎弟に命令する。


夜道、兄の会社の社員・鈴子(安田道代)と歩いていた朝吉は、
中沢の舎弟に絡まれ、
鈴子を守るために、喧嘩になる。
そして、彼らの策略により、
殺人の容疑がかけられてしまう。


窮地に陥った朝吉。
彼は疑いを晴らす事ができるのか・・・。





シリーズ14作。
いよいよ終わりが近づいてきた。


これだけ続くと、もう勢いだけで作られてる感じ(笑)。
町のダニのような悪人がいて、
勝新太郎がそれを成敗するという、
水戸黄門みたいなものか(笑)。


今回、今までとちょっと違うのは、
喧嘩の際、今までは絶対凶器を持った事のない朝吉が、
相手を刺してしまう所。
行きがかり上、仕方なかった事とはいえ、
私にしたら、ちょっとショック。
やっぱり彼は、素手の喧嘩しかしてほしくない。


前作と同様、森光子さんが出てくる。
ただ、前作とは違う人物という設定で。
寿司屋で出会った2人は、
再会を喜ぶのかと期待したから、
その初対面な会話に、ちょっと肩透かし。


森さんのキャラは、前作同様、
気のいい女という設定なのだから、
同じ人物の方が面白いと思うんだけど。
ちょっと残念だ。


京唄子さんと鳳啓助さんが、
夫婦役で出てくる。
京さんは、浮気ばかりする鳳さんを懲らしめてやってほしいと、
朝吉にお願いする。
なんだか本気で言っているようで可笑しい。
それに京さんって、
若い頃は、とっても綺麗だったのね。
素敵な人だと思った。


評価 ★★★☆☆

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