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「喜びも悲しみも幾歳月」 [映画]

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〔1957年/日本〕


昭和7年。
神奈川県の観音崎灯台に勤務する佐田啓二は、
父の葬儀の休暇から帰った際、
新妻・高峰秀子を連れて帰り、
上司や同僚に祝福される。


その直後に佐田の転勤が決まる。
今度は北海道の石狩灯台だ。
雪深い北海道での生活だったが、
高峰は妊娠、
産婆が間に合わず、佐田が女の子を取り上げる。
さらに、次には男の子も授かる。


次の転勤は、
五島列島の女島燈台。
寒い北海道から、暖かい南への移動だったが、
島には何の楽しみもなく、
夫婦のストレスは溜まりがち。
北海道の方がまだ良かったと、喧嘩もする。


次は佐渡の弾崎燈台。
戦争の色が濃くなり、
高峰は、東京から疎開してきた主婦と親しくなる。
その出会いが、
その後の一家の運命に大きな影響を及ぼす事になる・・・。





ある灯台守の夫婦の生涯を描いた大河ドラマ。
灯台での仕事は殆ど描かれていないと言ってよく、
160分という長い時間は、
全て家族の歴史物語。


大河ドラマに有りがちな事だけれど、
話の流れが大味で、
どうしても、エピソードの羅列になってしまい、
心の機微を深くは感じ取れないのは、
仕方のない事か。
でも、それでも、この長さを飽きずに観ていられるのだから、
とても良い映画には違いないと思う。


高峰秀子の登場シーンがいい。
彼女は佐田啓二に連れられて灯台にやって来る。
「恥ずかしいわ」とか言いながら。
2人は佐田の父が亡くなった直後に、
たった一回見合いしただけだと言う。


今では考えられないような結婚だけれど、
当時はそんなものだったのだろう。
逆に私は、そんな出会いに、
人と人との縁、運命を感じる。
互いによく知らぬ同士が、
生涯、苦楽を共にしてゆく。
特に高峰は、普通の家庭では考えられない、
転勤ばかりの灯台での生活だ。
不安も大きかっただろうに、
それでも昔は、他に選択肢もなかったのだろう。


佐田啓二がとってもハンサムで素敵。
「彼の妻になれるなら、灯台守でもなんでもいいわ」、と、
高峰は、案外そう思ってたりして、
という考えが頭に浮かんだ私は、
やっぱり馬鹿だ(笑)。


観る前は、
灯台守というのは、
夫婦が一組しかいない孤独な仕事なのかと思っていたけれど、
そういうわけではなく、同僚が何人かいる。
全国を転勤しながら、知り合いも増え、
「〇〇さんは、どこそこへ転勤になったそうだ」などと噂したり、
同僚の恋愛相談に乗ったり、
人間関係は、そう悪くはなさそうだ。
すぐお別れになってしまうのが、
淋しいんだけれど。


途中、様々な事があり、
大変な悲しみにも見舞われる場面もあるけれど、
ラストは幸せに終わる。
やはり親にとって、
子どもの成長こそ喜びなのだと、
強く感じる。


評価 ★★★☆☆

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いっぷく

話の流れが大味と思われましたか。
私もそう思いましたが
一方では、原作が実在の人物の手記なので
エピソードの羅列になってしまうのかとも
思っていました。

東映の仁義なきたたかいも非作家(稼業人)の日記が原作ですが
それを飯干晃一が自分の考えでノンフィクション小説にして
さらに映画化するにあたって笠原和夫と深作欣二の2人の
意向を反映させて脚色したので
原作があるといっても全然別物になりましたから
この作品も手記と木下監督の間に半フィクションのような
ものがあると、また違う展開もあったのかもしれませんね
私の勝手な思い込みですけど
by いっぷく (2012-12-24 21:49) 

青山実花

いっぷくさん
コメントありがとうございます。

映画の中で、
主人公夫妻が体験する、
大きな悲しみの出来事がありますよね。
あの場面なども、割とスッと、
長い人生の中の一つのエピソードとして
流れていったような気がしまして。
あの部分を切り取って、膨らませて、一つの物語を作っても、
十分成立するような気がして。

なるほど、この映画の原作は手記でしたか。
長い人生の物語ですから、
観ている方は大味に感じても、
監督にしたら、切り捨てた部分も多かったのかもしれませんね。

「仁義なき戦い」のお話し、
とても興味深く読ませていただきました。
ありがとうございました。
日記と映画の間にワンクッションあるとは全然知らず、
ただただ、ヤクザの実録物だと思っていました。
飯干さんの小説も、
おそらくとても面白く脚色されていたのだと想像します。

by 青山実花 (2012-12-25 23:43) 

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