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「シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム」 [映画]

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〔2011年/アメリカ〕


19世紀末のヨーロッパ。
各地で連続爆破事件が起こり、
人々はテロリストの仕業と噂するが、
シャーロック・ホームズ(ロバート・ダウニーJr.)は、
そうではないと睨んでいた。


彼の推理では、
犯人は数学者のジェームズ・モリアーティ教授(ジャレッド・ハリス)。
そして、事件の鍵を握り、
教授から狙われる占い師の女・シム(ノオミ・ラパス)を
助けた彼は、捜査を進める事になる。


一方、婚約者と結婚式を挙げたワトソン(ジュード・ロウ)は、
汽車で新婚旅行に出掛けるが、
なぜか同じ汽車に女装したホームズが乗っており、
またまた新妻と引き離される。


ホームズ・ワトソン・シムの3人は、
大陸横断をしながら、
捜査を進める。
3人は教授の怖ろしい陰謀を阻止する事ができるのか・・・。





前作同様、いや、それ以上に、
ホームズとワトソンが愛し合っとる(笑)。
ホームズの愛の方が強いのは分かるけれど、
ワトソンも満更ではないようだ(笑)。


この2人の関係をどう表現すればいいのか。
友情とは勿論違うし、
でも、愛情ともちょっと違うしなぁ(笑)。


この映画の好きな所は、
種明かしを丁寧に教えてくれる所。
時間を遡って、再現フィルム風に、
別の角度から見せてくれたりして、
「そうだったんだぁ」と、
満足できるような作りになってるのが良いよ。


それから、好きなのは、
ホームズの観察眼。
瞬時にして、入った部屋の様子やら、
人の身に着けている服や靴の付着物で、
相手の職業から性格まで言い当てる、
その能力は、観ていて気持ちいい。
観察眼も凄いけど、視力もいいんだろう。
目の悪い私には羨ましいような能力だよ。
嗅覚で犯人が部屋にいる事を当てた場面も、
ちょっと動物的で可笑しかったな。


「シャーロック・ホームズ」自体は、
小学生の頃読んだきりなので、
知ったかぶりな事は書けないのだけれど、
おそらく世間が抱いているホームズ像とは、
かけ離れてる気がする(笑)。


もちろん、名前を借りた別物だと思ってるから、
何ら支障はないのだけれど。
天国でコナン・ドイルも苦笑いしているような気がする。


評価 ★★★☆☆

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「下町の太陽」 [映画]

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〔1963年/日本〕


東京の下町の石鹸工場で働いている倍賞千恵子。
母を亡くし、父と祖母、そして2人の弟と、
貧しいながらも、それなりに明るく暮らしている。


彼女には同じ会社に勤務する恋人・早川保がいる。
早川は、臨時雇用だが、
合格者1名の正社員昇格試験を控え、
この1年間遊びも控えて勉強していた。
丸の内の本社勤務になり、
下町を出てゆく事こそが、早川の夢だった。


通勤電車の中でいつも会う不良グループと口をきくようになった倍賞は、
彼らが鉄工場で懸命に働いている事を知り、
心惹かれるものを感じる。
特に、リーダー格の勝呂誉は弟と友人だと言い、
彼女に気があるようだ。


早川の試験結果が発表されるが、
彼は次点で、同僚の待田京介が合格する。
自信があった分、意気消沈も激しい早川。


ところが、発表の直後、
待田が近所の老人・東野英二郎と接触事故を起こす。
東野の怪我は大したことはなかったが、
これが会社に知られたら合格取り消しは間違いない。
待田は「会社には言わないでくれ」と早川に懇願するが、
早川は、会社に通告。
案の定、待田は合格取り消し、
早川が繰り上げ合格となる。


大喜びで倍賞にプロポーズする早川だったが、
倍賞の気持ちは晴れず、
「あなたは一人で丸の内に勤めればいい。
 私はここに残るわ」と告げる・・・。





とっても優等生な映画。
タイトルには「太陽」とあるが、
「太陽」なんてどこにも感じられず、
昭和の貧しさと、今とは違う価値観があるだけだ。


倍賞千恵子がとっても真面目で、
誰かが発する言葉の一つ一つを、
自分の中で反芻し、考える。


例えば、
新婚の友人の団地に遊びに行った際、
友人が、「夫が望むから、夜は夫の為に化粧して、帰りを待つの」と言えば、
(なぜ女は化粧して男を待たなければいけないの?)
と心で疑問に思う。


今なら、
「専業主婦なんだから、夫のそれくらいの願いは聞いてやりなよ」
と思うだけだが、
時代が違うんだろう。


会社の昼休み、
倍賞たちは、バレーボールや卓球で汗を流している。
(それも、ものすごく一生懸命に)
昔の映画ではよく見る場面だけれど、
今は、少なくとも、私の周りでは見ない光景。
みんな、そんな事をする気力もなさそうだ。
高度成長期って、
経済も元気だけど、人間も元気だったんだなぁと、
ある意味、感心するような気持ちで観ていたよ。


早川と倍賞は、よく早川のアパートでデートしてる。
そこは、二人が座るだけでいっぱいになってしまうような狭い部屋で、
早川は、倍賞にキスしようとするが、
彼女は断固拒否する。
あんな体がくっつきそうな部屋に、
恋人と呼ぶ相手と一緒にいて、
何も起こらないなんて、
ああ、やっぱり今なら考えられない事だわ(笑)。


評価 ★★★☆☆

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「大菩薩峠」 [映画]

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〔1957年/日本〕


風光明媚な大菩薩峠を旅する、
祖父と孫娘。
美しい霊峰富士に感嘆の声をあげた2人は、
一休みしようと腰をおろすが、
孫娘が水を汲みに行っている間に、
祖父は理由もなく切り殺される。


犯人は机竜之介(片岡千恵蔵)。
彼の心は常に荒れ、
空しさに苛まれる心を、彼自身も持て余しているようだ。


家に帰ると、一人の女が彼を待ち受けていた。
字津木文之丞の妹・お浜と名乗る、その女は、
今度の奉納試合で、兄の対戦相手である竜之介に、
手加減をしてほしいと言う。


しかしお浜を、宇津木の妹でなく許婚だと見抜いた竜之介は、
水車小屋で彼女を手篭めにし、
それを知った宇津木の心は乱れ、
奉納試合で竜之介に負け、死亡してしまう。


お浜と一緒に江戸に出た竜之介だが、
そこに、お浜の夢描いた結婚生活はなく、
子供こそもうけたものの、
竜之介とは口争いの絶えない日々。


さらに竜之介を追って、
宇津木の弟・兵馬(中村錦之助)が江戸にやって来た。
竜之介・お浜・兵馬はこれからどうなるのか・・・。





先日観た、市川雷蔵版「大菩薩峠」。
今度は違うバージョンが観たいと思い、
片岡千恵蔵版の方を借りてみた。


しかし、市川の机竜之介を見慣れた目には、
片岡のルックスが、それほど虚無的に見えない(笑)。
痩身で、どこか病的な市川と違って、
恰幅のいい片岡は、とても元気そうだ(笑)。


竜之介に手篭めにされながらも
彼に惚れてしまい、
一緒に江戸まで行くお浜の気持ちも、
市川なら、なんとか理解できるものの、
片岡だと、なんだかおじさんに付いていく娘みたいな、
そんな印象(笑)。


と、ここまで書いて、
片岡と市川の映画公開時の年齢を調べてみたら、
片岡は54歳、
市川は29歳だった。
これでは、片岡がおじさんに見えるのも仕方あるまい(笑)。


ただ、若い頃の片岡の写真を見ると、
本当にいい男だね。
市川と同じくらいの時、
この映画を撮っていたら、印象も変わるだろうに。


あーあ、年齢とルックスの感想ばかりの私(笑)。
しかし、映画自体の作りは、こちらの方が丁寧な気がする。
物語は、市川版の1作目を通り越して、
2作目の途中まで進む。
竜之介が盲目になってしまう辺りまで。
2作目を楽しみにしていよう。


評価 ★★★☆☆

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「ザ・ロード」 [映画]

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〔2009年/アメリカ〕


人類滅亡の危機に瀕した未来。
空は常に曇り、大地は荒れ果てている。


そんな中を歩く、父(ヴィゴ・モーテンセン)と息子(コディ・スミット・マクフィー)。
2人はひたすら南に向かっていた。
南に、何か目的があるわけではないが、
なんとなく、今いる場所よりはマシだろうと、
その程度の理由だった。


生き残っている人々の、
食糧や燃料も残りわずかで、
一部の人間たちは、人肉を食べていた。
そやつらに見つからないように旅する事は大変だが、
仕方のない事だった。


ある日、彼らは、
他人の家の地下倉庫に、
大量の食糧が残っているのを見つける。
久し振りに腹を満たす2人。
しかし、そこも安全ではなく、
外に人の気配を感じた2人は、
リヤカーに食糧を積めるだけ積んで、
また歩き出す。


父は息子で、“善き人”であれと教えていた。
しかしそんな父も、
行き合った老人(ロバート・デュヴァル)に食糧を分ける事に、
良い顔をしなかった。


2人はついに海に辿り着く。
彼らに希望はあるのか・・・。





ヴィゴ・モーテンセン、好きだな。
頭いいんだかチンピラなんだかよく分かんない、
あの雰囲気が(笑)。
「イースタン・プロミス」ではボカシ無しの全裸で大乱闘していたけれど、
この映画でも、全裸になるシーンが多い。
(こちらは後ろ姿だけだったが)
自分の肉体に自信ありと見た(笑)。


・・・って、そんな茶化すような映画じゃないんだけどね。
とってもシリアスで。
とにかく、人に出会うのが怖い。
出会うのはゾンビでもなんでもなく、
人間なんだけど、
人肉を食らう集団なのか、そうでないのかを
見極めなければならない、その緊張感が。


モーテンセンは、自分が息子より先に死ぬ事を想定して、
息子が一人でも生きていけるだけの、
知恵と力を身につけさせねばと思っている。


こんな究極の状態じゃなくても、
おそらく、それは全ての親の願いだろう。
絶対ではないけれど、
高い確率で、子供より自分の方が先に死ぬわけで、
その時、子供が困らないようにって。


だからこそ、モーテンセンのジレンマも分かる。
“善き人”であれと願う気持ちと、
他人の事なんか構ってられない、
食糧を分ける余裕なんかないんだと、
子供に教えなければならない事実と。


息子は、飢えている老人に、
食糧を分けてあげてと父に懇願する、
優しい心の持ち主だ。
この息子が生まれた時、
人類の危機は既に始まっていた。
息子は、豊かな時代を知らないという事だ。
つまりその場面は、人間の性善説を表していると言っていいのであろうか。
それとも、そこまでの深い意味はないのか。


ラストは、少しだけホッとできる。
別に世の中が変わるわけではないのだけれど。


評価 ★★★☆☆

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「長江哀歌」 [映画]

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〔2006年/中国〕


長江の川辺の古都、奉節は、
国家的事業である三峡ダム建設の為、
段階を経て、水の底に沈む予定である街。


ここに、山西省から一人の男がやって来た。
彼・ハン・サンミンは、16年前、出て行った妻子を探しにきたのだ。
しかし、手懸りである住所の場所に行くと、
そこは既に水に沈んでいた。


ハンは解体屋の仕事を手伝いながら、
妻子の行方を探す事にする。


もう一人、別の女。
彼女・チャオ・タオも、2年前に奉節に行くと言って出て行ったきりの夫を
探しにやって来た。


夫は見つかるが、
2人の関係は終わったと直感したチャオは
別れを告げる。


ハンの妻も、やっと見つかる。
2人は会話をするが、
こちらもしっくりいっているようには感じられない。
それに、妻は義兄の借金のカタに売られた身で、
一緒に帰る事はできないという。
そこでハンが決意した行動は・・・。





ダムに沈もうとしている街を舞台に、
2人の男女が、
それぞれの配偶者を探すという話だが、
この2人が絡む場面はなく、
淡々としている。


2人が互いの配偶者と再会する場面も、
例えば、感動的な音楽が流れて、涙を流しながら抱き合うなどの、
ドラマティックな演出は全く無く、
4人は4人とも、ギクシャクしていて、
気まずい感じ。


何か劇的なものを期待してしまうけれど、
現実はそんなものなんだろう。
そもそも、出ていった方の者にしたら、
相手を思う気持ちがあるなら、
マメに連絡するはずだし、
音信不通なのは、関係が破綻しているからだと、
考えざるをえない。


チャオ・タオは、夫からの最後の電話番号を大事に持っているが、
それを人に見せると、
「今は桁が一つ増えて、その番号じゃ繋がるわけない」と言われる。
時の流れが上手く表された、
なんだかとても悲しい場面だった。


ハン・サンミンにしても、
彼は妻を金で買った事が分かってくる。
再会した時も、
「出産後は働かせなかった」などと、
言外に、「何が不満なんだ」と匂わせているようで、
なんだか恩着せがましい感じ。
あまりいい感じはしない。


まぁ、しかし、
この映画の主人公たちの話は、正直どうでもいい。
発展著しい中国の、
その犠牲になる街の様子と人々の心を読み取る、
そんなドキュメンタリーみたいな映画。


評価 ★★★☆☆

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