「長江哀歌」 [映画]
〔2006年/中国〕
長江の川辺の古都、奉節は、
国家的事業である三峡ダム建設の為、
段階を経て、水の底に沈む予定である街。
ここに、山西省から一人の男がやって来た。
彼・ハン・サンミンは、16年前、出て行った妻子を探しにきたのだ。
しかし、手懸りである住所の場所に行くと、
そこは既に水に沈んでいた。
ハンは解体屋の仕事を手伝いながら、
妻子の行方を探す事にする。
もう一人、別の女。
彼女・チャオ・タオも、2年前に奉節に行くと言って出て行ったきりの夫を
探しにやって来た。
夫は見つかるが、
2人の関係は終わったと直感したチャオは
別れを告げる。
ハンの妻も、やっと見つかる。
2人は会話をするが、
こちらもしっくりいっているようには感じられない。
それに、妻は義兄の借金のカタに売られた身で、
一緒に帰る事はできないという。
そこでハンが決意した行動は・・・。
ダムに沈もうとしている街を舞台に、
2人の男女が、
それぞれの配偶者を探すという話だが、
この2人が絡む場面はなく、
淡々としている。
2人が互いの配偶者と再会する場面も、
例えば、感動的な音楽が流れて、涙を流しながら抱き合うなどの、
ドラマティックな演出は全く無く、
4人は4人とも、ギクシャクしていて、
気まずい感じ。
何か劇的なものを期待してしまうけれど、
現実はそんなものなんだろう。
そもそも、出ていった方の者にしたら、
相手を思う気持ちがあるなら、
マメに連絡するはずだし、
音信不通なのは、関係が破綻しているからだと、
考えざるをえない。
チャオ・タオは、夫からの最後の電話番号を大事に持っているが、
それを人に見せると、
「今は桁が一つ増えて、その番号じゃ繋がるわけない」と言われる。
時の流れが上手く表された、
なんだかとても悲しい場面だった。
ハン・サンミンにしても、
彼は妻を金で買った事が分かってくる。
再会した時も、
「出産後は働かせなかった」などと、
言外に、「何が不満なんだ」と匂わせているようで、
なんだか恩着せがましい感じ。
あまりいい感じはしない。
まぁ、しかし、
この映画の主人公たちの話は、正直どうでもいい。
発展著しい中国の、
その犠牲になる街の様子と人々の心を読み取る、
そんなドキュメンタリーみたいな映画。
評価 ★★★☆☆
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