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「ビリー・ジョー 愛のかけ橋」 [映画]

BILLYJOEainokakehashi.jpg
〔1976年/アメリカ〕


1953年。ミシシッピー州。
18歳のビリー・ジョー(ロビー・ベンソン)と
15歳のボビー・リー(グリニス・オコナー)は幼馴染。


田舎町に住む2人は、
保守的な街の空気の中で、
互いを意識しながら、
付き合いを深めようとしていた。
ボビー・リーの父親は、
娘のボーイフレンドが家に訪ねてくるのを、
快く思ってはいなかったが、
母親の説得もあり、認めてくれるようになる。


ところが、夏祭りの晩から以降、
ビリー・ジョーの姿が見えなくなる。
人々は心配するが、
3日後、彼はボビー・リーの前に現れる。


ビリー・ジョーに全てを許してもいいと決めたボビー・リーだったが、
彼女は、彼から夏祭りの夜に起きた、
衝撃の出来事を告白される。
彼が姿を隠したのも、
彼自身がその事にショックを受けたからに他ならなかった。
結局2人は、結ばれずに家に帰る。


その後、町ではボビー・リーが妊娠したとの噂が立つ。
それは有り得ない事であったが、
ボビー・リーは噂を肯定も否定もせず、
自ら町を去ってゆくのだった・・・。






ビリー・ジョーとボビー・リーの会話の場面が多く、
また、その話があまり面白くないので、
正直、ちょっと退屈する。
10代の頃の恋愛って、
あんなにつまらない会話で成立していたのかと思うが、
まぁ、その時はその時で楽しかったのだろう。


町の中心とも言えるタラハッチー橋で、
ボビー・リーの父親の車と余所者チンピラの車が、
あわや大惨事という争いをし、
それが物語のあとになって効いてくるのかとも思ったけれど、
大筋とは殆ど関係なく、肩透かし。


夏祭りの夜の出来事の告白内容があまりに唐突で、
「え?そうなの?」と、
何の予備知識もない私は、
目を白黒させてしまった。
そんな事、想像もしていなかったから。


妊娠を噂されたボビー・リーだけど、
彼女がそれを否定しない理由を、
私は、ビリー・ジョーの為だと解釈したのだけれど、
違う見方もあるようだ。


ビリー・ジョーと結ばれる事のなかった彼女は、
自分のプライドを守ったのだ、と。


いずれにしても、15歳にしては、
物凄く大人な決断(笑)。


もし私がボビー・リーだったら、
噂を力一杯否定しそうな気がする(笑)。


他の事ならともかく、
妊娠・出産などという、
命にも関わる人生の大切な事を、
他人に間違った情報を与えたまま、
面白おかしく語られるなんて、
耐えられない気がするから。


まぁ、そういう噂は、
否定しても否定しても、
根強く残ってしまうのも事実だけどね。


評価 ★★★☆☆

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「金色夜叉」 [映画]

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〔1954年/日本〕


明治時代。
間貫一(根上淳)と鴫沢宮(山本富士子)は許婚同士で、
大変に仲の良いカップル。
貫一の父親は、宮の父親の恩人だったが、今は亡くなり、
貫一は宮の家で学資を出してもらい高校に通っている。


正月、2人は揃って宮の級友の家で催されたかるた会に出席する。
そこには、富豪の男・富山唯継(船越英二)も参加していたが、
男には不似合いなくらい大きなダイヤの指輪をつけ、
香水をプンプンさせた彼の評判は悪かった。


ところが、その富山がかるた会の席で、
美しい宮を見初め、嫁に欲しいと言ってくる。
貫一を深く愛する宮は、固く拒否するが、
金に目が眩んだ宮の両親は、
「富山家の財産があれば、
貫一を大学にもやってやれる、洋行もさせてやれる、
全ては貫一の為」と宮を説得、
宮は泣く泣く富山との結婚を承諾する。


4年後。
宮は最悪の結婚生活を送っていた。
富山は、いつも上の空の宮に苛立ち、
彼女が何をしても気に入らず、
嫌味と嫌がらせの毎日。
実家で涙を流す宮に、
母親は、「一時の気の迷いで結婚させた自分が悪かった」と後悔し、
泣いて詫びるのだった。


一方、貫一は、
あれほど愛し合っていた宮に裏切られたショックから、
冷酷な高利貸しになっていた。
人間を誰も信用しない貫一は、
取立ても容赦がなく、
人の恨みを買う。


2人の運命はどうなるのか・・・。





尾崎紅葉原作の本作で、
私が知っている事といえば、
かるた会の場面と、
熱海の海岸で、貫一が宮を足蹴にしながら放つ、
あの名ゼリフだけであったが、
いやはや、これほど面白いストーリーだったとは。
やっぱり後世に残るものには、
ちゃんと理由があるのね、と思った次第。
映画化も20回以上されているようで驚いた。


まず、私はこれを観るまで、宮という女性を誤解していた。
富山の金に目が眩んで、貫一を裏切ったのは、
宮の意思だと思っていたのよ。
でも、全然違ってた。
宮は、熱海の海岸で、
貫一に激しく詰られるのだけれど、
「富山の金で、あなたを大学にやれる」とは、
言えるはずもなく、ただ泣くばかり。
宮の本心を知らない貫一が怒るのは当然で、
宮自身が金に目が眩んだと思われても仕方ない展開。


女に裏切られたくらいで、そこまで激昂するかと
思われそうだが、
結婚話が持ち上がる前の2人の仲の良さったら、
もう、所かまわずイチャイチャイチャイチャ、
路上でキスまでしてる(笑)。
明治時代にこんなカップルがいたのかと思うくらいで、
現代の高校生と大して変わらない(笑)。


でも、見ていて不快感はなく、
とても可愛いカップルだと思える。
あんなに仲良しだったのに、
いきなり別の男と一緒になると聞かされた日には、
そりゃあ、ショックも大きかろう。


その後の2人の不幸、
特に宮の結婚生活は、
こちらまで辛くなるくらいだが、
富山の気持ちを分からなくはないよ。


妻がいつまでも、他の男を思って泣いてるんじゃ、
面白くないに決まってる。
富山が冷酷になる原因の殆どは、
宮が作っていると言える。
かといって、宮にしても、
自分の気持ちをどうする事もできないし、
全てが八方塞。


映画は一応、綺麗に終わるが、
小説は、尾崎紅葉が創作途中で亡くなった為、
未完だそうだ。
どんな終わりを考えていたのだろう。





観終わったあと、ネットで色々調べていたら、
熱海の海岸に実際にあるという、
「貫一と宮の銅像」を見て、吹き出してしまった。
貫一が宮を足蹴にしている場面が、
そのまま銅像になっている。
私も今まで生きてきて、
あんな平和的でない像を見たのは初めてだ(笑)。
もし、物語を何も知らない外国人があれを見たら、
日本がDVを容認している国、
女性蔑視の国だと思われても仕方ない感じ(笑)。
そう想像すると、逆に可笑しくて笑える。


評価 ★★★★☆

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「怪談 蚊喰鳥」 [映画]

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〔1961年/日本〕


東京の下町で常磐津の師匠をする菊治(中田康子)は、
年若い情夫・孝次郎(小林勝彦)に惚れ抜いていたが、
彼は菊治を金づるとしか思っておらず
金の無心に来る時だけは優しいが、
どうも他の女との結婚話が持ち上がっているらしかった。


ある日、菊治の家に、ここのところ姿を見せなかった、
盲目の按摩・辰の市(船越英二)がやって来る。
久し振りに彼に体を揉んでもらった菊治は、
彼の冷たい手に驚く。


翌日また菊治の家に、辰の市に瓜二つの盲目の按摩が訪ねてきて、
驚くべき事実を告げる。
自分は徳の市(船越英二・二役)という名で、辰の市の弟。
兄は3日前に菊治に恋焦がれながら死んだ、と。
では、昨日来たのは幽霊だったのかと、
菊治は背筋が凍る思いがする。


以来、徳の市はしょっちゅう菊次の家にやって来るようになる。
追い払っても追い払っても、自分の家のように、
いつの間にか入り込んでいる徳の市の図々しさに、
菊治は辟易する。


しかし、徳の市が金を持っていると知った菊治と孝次郎は、
それを何とか自分たちのものにしようと企む。
徳の市に身をまかせた菊治は、
彼を愛しているフリをしながら、機会を窺うが・・・。





タイトルは「怪談」となっているが、
オカルト的な場面は、最初に辰の市の幽霊が出てきたくらいで、
あとは、菊治・孝次郎・徳の市の心理戦で、
それがめちゃくちゃ面白い。


特に船越英二の演技には感心してしまった。
彼ってこんなに上手かったっけと思うくらい、
盲目の按摩の役が素晴らしく板についている。


目が見えないという、
弱者の立場を装ってはいるが、
3人の中で一番強かなのは間違いなく彼である。
その図々しさ、しつこさ、
そして、妙に口が達者で、
また、盲目ゆえの冴えた勘にはゾッとするくらいの
怖さを感じる。


彼は手に入れた菊治を絶対他の男に取られまいと、
必死になる。
常磐津の生徒だと偽って、
菊治の家にやって来る孝次郎にも、
今後は出入り禁止だと言い渡す。


その言い方は、多分に人の神経を逆撫でするものがあり、
金を手に入れるまでの辛抱だと我慢していた孝次郎も、
仕舞いには怒り出す。


オチも、オカルト的ではなく、
ちゃんと筋の通った、私の好きな終わり方。
「幽霊より、生きている人間の方が怖い」という、
ラストのセリフには、大きく肯ける。


評価 ★★★★☆

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「スコルピオンの恋まじない」 [映画]

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〔2001年/アメリカ〕


1940年。
保険会社で調査員をするウディ・アレンは、
勤続20年のベテラン社員。
彼は自分の仕事ぶりに自信を持っていたが、
数か月前に入社してきたリストラ担当重役ヘレン・ハントとソリが合わず、
犬猿の仲。
しかし、社長のダン・エイクロイドは彼女を気に入っているようだ。


ある日、仕事帰りに職場の仲間と行ったナイトクラブで、
マジシャンから催眠術ショーの舞台に上げられたアレンとハントは、
簡単に催眠術にかかり、一通りのパフォーマンスの後、
目覚める。


しかし、このマジシャンが悪党であった。
彼は催眠術を解いたと見せかけて、
その後は電話一本で、
彼が命令する全て事柄に従うように、
2人に仕掛けておいたのだ。


ある夜、マジシャンはアレンに、
「某富豪の家の宝石を盗め。盗んだ品は部屋に隠せ」と
命令する。
夢遊病者のようにフラフラと言いなりになってしまうアレン。


翌日、保険会社は大騒ぎ。
多額の保険金を掛けた宝石が盗まれたとあっては、
会社の損害も多大で、
アレンは早速調査に乗り出す。
自分がした事とはまるで記憶がないままに・・・。





ウディ・アレン監督・主演のコメディ。


アレンとヘレン・ハントの組み合わせは初めて見た気がするが、
そのギャップが可笑しくて。
なにせ、「ヘレン・ハントってこんなにガタイよかったっけ?」と
思うくらい、二人の体格に差がある。


それはハントが特別大きいわけでなく、
アレンが白人男性としては、とても小柄なのだと分かってはいても、
(ダン・エイクロイドと一緒にいる時の彼女は、大きくは感じない)
一回り体の大きいハントに、
あの口の達者なアレンが言い負かされる様子は、
観ているこちらまで圧迫感を感じてしまう(笑)。


でも、ウディ・アレンのいい所はそこなのね。
自分のコンプレックスを逆手にとって、
笑いに変えてしまう。
小柄な事も、髪が薄い事も、
彼にとっては全てが商売道具で、武器でもある。


アレンは、自分が宝石泥棒との自覚は全く無いままに、
ハントが犯人ではないかと思い込み、
彼女のマンションに忍び込む。
実はハントはエイクロイドの愛人で、
2人は連れ立って部屋に入ってきて、
痴話喧嘩が始まり、驚く。
しかも、エイクロイドが帰ったあと、
自殺しようとしたハントを止める為に飛び出してしまい、
またいつもの口争いが始まるという流れ(笑)。


しかし、催眠術って、
あそこまで人を意のままに操る事が出来るのであろうか。
「被術者の倫理感に反する事は、たとえ命令でも従わせる事は出来ない」と、
何かで読んだ気がするのだけれど。
もちろん、この映画はコメディだから、
そこまで考える必要はないけどね(笑)。


と、ここまで書いて、
最近の女性芸人さんのニュースを思い出した。
私は専門家ではないので、下手な事は言えないけれど、
催眠術より洗脳の方がずっと怖い気がする。
心が弱っている時、その隙間に何かが入り込んでしまう事が、
「自分には絶対に無い」って言い切れる人は少ないと思う。
なんとか解決すればいいのだけれど。


評価 ★★★☆☆

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「惜春鳥」 [映画]

sekishuncho.jpg
〔1959年/日本〕


福島県、会津若松。
大きな旅館の跡取り息子・小坂一也、
母のスナックでバーテンをする津川雅彦、
東京の大学に通っている川津祐介、
工場で働く石浜朗、
家業の会津塗を手伝う、足が不自由な山本豊三。


5人は20歳の同級生で、
変わらぬ友情を温めてきた。
今回は川津が帰省してきたのをきっかけに集まる。


しかし大人になった彼らは、
もう子供の頃のように幸せなだけではなく、
それぞれの感情に微妙な行き違いが生まれ始めていた。


川津は東京での生活に疲れているようで、
どこか様子がおかしい。
聞けば女で問題を起こし、下宿を追い出されたと言う。


津川には恋人・十朱幸代がいたが、
彼女は石浜との見合い話が持ち上がっていた。
クールな石浜は友情より、
条件のいい十朱との結婚を選ぼうとする。


また津川の叔父・佐田啓二は、
芸者・有馬稲子との駆け落ちに失敗、
今は半病人のように伏せったきりで、
津川の励ましの言葉も耳には入らない。


そんなある日、小坂の旅館に警察からある連絡が入る。
衝撃を受ける小坂・・・。





5人の若者たちの青春群像劇。
5人の境遇や関係を頭の中で纏めるのが
最初はちょっと大変だが、
分かってくると、すんなり楽しめる。


子供の頃は何も考えずに仲良くしてこられた友達なのに、
大人になって、一人一人の家庭の事情を知ると、
「そうだったんだ」と思う事も多い。
人間は皆平等なんて有り得ない。
生れる家も親も選べない。
与えられた環境で、自分を生きるしかない。


しかし、昔の20歳って大人だね。
実年齢は20歳より多少上のようだけれど、
みんな見た目にも老成した感じがする(笑)。
まぁ、現代の人の精神年齢は、
昔の七掛けと聞いた事があるから、
そんなものなのかもしれないけれど。


木下惠介監督作品。
男同士の入浴シーンや、
握手と称して手を握ったりする場面が多い事などから、
ゲイ映画と解釈する向きもあるようだ。
私はそこまで読み取れなかったけれど、
うーん、映画って奥が深いわ(笑)。


パッケージを見ると、
佐田啓二が主人公のようだが、
彼は津川雅彦の人生に影響を与えるくらいで、
本筋にはあまり絡んでこない。
あくまでも主人公は5人の若者だ。


評価 ★★★☆☆

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