「必死剣 鳥刺し」

〔2010年/日本〕


江戸時代、東北の海坂藩の武士・兼見三左ェ門(豊川悦司)は、
穏やかな人柄と評判の男であったが、
ある日突然、物も言わずに藩主・右京太夫（村上淳）の側室・連子（関めぐみ）の
心臓を一突きし、周囲の者たちを驚かせる。


連子は右京太夫を骨抜きにした上で、
藩政に口を出し、贅沢三昧、
気に入らぬ者には切腹を命じ、
自分の父親の為に、寺を普請するなど、
やりたい放題であり、
その為、農民たちは年貢の取り立てに苦しんでいた。


右京太夫に物申せるのは、
彼の従兄・帯屋隼人正（吉川晃司）だけであったが、
しかし、連子に夢中の右京太夫は、
帯屋の苦言に耳を貸すはずもなく、二人の対立は深まるばかりだった。


兼見が連子を刺殺したのは、
この状況を見るに見兼ねての事であり、
打首は覚悟の上の決断であったが、
下された判決は意外にも、
一年間と幽閉と、降格だけという甘さだった。


兼見は、亡くなった妻の姪・里尾（池脇千鶴）に身の回りの世話をしてもらいながら、
一年を過ごす。
その後、また右京太夫に仕える身となった兼見だが、
彼を生かしておくのは
ある理由があっての事だった・・・。





なんという緊迫感。
あっという間の2時間だった。


特に、兼見と帯屋が対峙する場面の、
2人の刀さばきの美しさ、激しさは、
息苦しいほどで、
私は、体も動かせず、
もしかしたら、口も半開きのままで
見入っていたような気がする。


タイトルである、「必死剣　鳥刺し」とは、
豊川演じる兼見が、自分で編み出した剣術で、
それを使うのは、あるシチュエーションに限られた時だけ、と話す。


あまり詳しくは書けないが、
ラスト、彼はその秘剣を使う。
彼を陥れた張本人に対して。
そうなるのは話の流れから分かってはいたが、
それでも緊張は止まらない。
兼見の強い精神力にも驚く。


それにしても、武士とはいえ、
上に仕えているのは、サラリーマンと同じ。
配属された部署を拒否する事もできなければ、
命じられた仕事を断る事もできない。
高潔な人物である帯屋と相対する事など、
当然、兼見の本意であるはずもないのだが、
従わねばならぬ、辛さ。
観ているこちらまで苦しくなる。


兼見と里尾は、
口には出さぬが、互いに惹かれあっており、
けれど、兼見はその気持ちを隠している。
それが、あるきっかけで2人は気持ちの確認をして、
その後、ラブシーンに突入する。
（結構、激しい(笑)）
ストイックなだけかと思っていた兼見だけど、
やっぱり恋する気持ちは止められない。
人間らしい、良い場面だと思ったな。


評価　★★★★★