「潜水服は蝶の夢を見る」 [映画]
〔2007年/フランス〕
47歳、ファッション雑誌ELLEの編集者、
ジャン=ドミニク・ボビー(マチュー・アマルリック)は、
眠りから目を覚ます。
ここは病院らしい。
医師や看護師から、名前を尋ねられ答えるが、
なぜか相手には聞こえていないようだ。
医師らの話を総合すると、自分は脳溢血で倒れ、
一命は取り留めたが、
全身に麻痺が残る“ロックト・インシンドローム”をいう状態で、
かろうじて動かせるのは、左目の瞼だけらしい。
言語療法士のアンリエット・デュラン(マリー・ジョゼ・クローズ)は、
ジャンとコミュニケーションを取るための、
ある方法を思い付く。
それは、ジャンが何かを伝えたい時、
アンリエットがアルファベットを読み上げ、
ジャンの話したい頭文字まできたら、
瞬きをしてそれを伝えるという方法だった。
日本語で言うなら、
「わたし」という言葉を伝えるのに、
「あいうえおかきくけこさしすせそ・・・」と読み上げ、
「わ」まできたら、瞬きをして合図し、
次の「た」もまた、「あいうえお・・・」から繰り返すという、
気の遠くなるような方法。
(アルファベットは、使う頻度の多い順に並べてはあるが)
ジャンは倒れる前に、本の執筆契約を結んでいる事を思い出し、
その方法で、本を出版する事を思い付く。
生きる気力を取り戻した彼は、
本を作りながら、
様々な過去の出来事を思い出したり、
見舞いに来てくれた人々と交流する。
ある日、彼はほんの少し、頭を動かせる事に気付く。
それは希望の光だったが、
また別の症状が彼を襲う・・・。
これは、実話だそうで、
ジャンが闘病中に執筆した本も、
出版されているそうだ。
最初からショックな展開。
最初、彼の目は両方とも開いているのだが、
何らかの理由(医学的な事はよく分からなかった)で、
右の目は使わないようにした方がいいとの判断から、
なんと、瞼を縫い付けるという処方をされる。
ジャンは「瞼を縫うだって!? や、やめてくれ!」と、
心で叫ぶが、その思いは誰にも通じず、
カメラはジャンの右目の視点で、
縫われてゆく様子を映し出す。
しかし、その後の展開は、難病物だからといって、
不思議と悲壮感はない。
本の出版を決めたジャンは、
病室に電話を取り付ける。
セッティングに来た電話局の職員2人は、
ジャンが話せない事に気付き、
「じゃあ、何で電話が必要なんだ?」
「無言電話する為じゃないのか?」と、
ブラックなジョークを言い、笑い合う。
それを聞いたアンリエット・デュランは怒るが、
ジャンは心で大爆笑。
ああ、そこなのよ。
意外とそんなものなのかもしれないな、と思う。
病気や障害はもちろん悲しいし、
周囲の人たちが気を使う事も大切だけれど、
案外本人は、時に、その事を自体を笑い飛ばしてしまいたいと
思っているのかもしれないなぁ、と。
ELLEの編集者をしていただけあって、
倒れる前のジャンは、
オシャレで女遊びも激しかったようで、
妻がいる病室に、愛人から電話がかかってくる。
愛人は、数分でいいから、
部屋から出て欲しいと妻に頼み、
スピーカーで「愛している」と伝える。
その切羽詰った気持ちは分からなくはないけれど、
妻にしたら、それってどうなのって感じなんだけどね。
評価 ★★★☆☆