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「ニューヨーク・ストーリー」 [映画]

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〔1989年/アメリカ〕


マーティン・スコセッシ、
フランシス・フォード・コッポラ、
ウディ・アレンが、
ニューヨークを舞台に描いた、人間模様。
同じ街で繰り広げられる出来事なのに、
監督によって、印象が全く異なるのが面白い。


<ライフ・レッスン>


画家のニック・ノルティは、
個展を目前に控えた画家。
しかし、恋人で助手でもあるロザンナ・アークェットが、
スティーヴ・ブシェーミと旅行に行ってしまった事に
ショックを受け、仕事が手につかぬ状態。


ところがアークェットが一人で戻ってくる。
ブシェーミと旅先で喧嘩別れしたというのだ。


アークェットを失いたくないノルティは、
自分と恋人同士には戻らなくてもいい、
ベッドを共にもしないと約束し、
また同じアトリエで暮らし始める。
しかし、彼女の行動が気になって仕方ない・・・。





マーティン・スコセッシ監督作品。
ブシェーミに捨てられたロザンナ・アークェットが、
「田舎に帰る」と行った時、
ニック・ノルティが、
「田舎のガレージで絵を描くのか、世に出るチャンスを失うぞ」
みたいな事を言う。


彼女はその言葉に、めっちゃ揺れる。
その気持ち、すんごくよく分かる。
自分に才能が有るか無いか、
それは分からない。
でも、チャンスは、
田舎に帰るより、ニューヨークに居た方が、
格段に上だ。
しかも、ノルティが住居を提供してくれると言うのなら、
残りたくもなるよね。





<ゾイのいない生活>


両親が仕事で多忙な為、
ニューヨークの高級ホテルで、
執事に身の回りの世話をさせながら暮らす、
小学生の女の子・ゾイ。


彼女の小学校に、インドの王様の息子が転校してくる。
彼はゾイ以上に大金持ちだ。


ある日、ホテルに強盗が入り、
父親の宝物である、
ダイヤのイヤリングが盗まれそうになるが、
ゾイの機転で難を逃れる・・・。





あまり印象に残らない。
ただ、ゾイの生活は羨ましい(笑)。


少女が主人公のせいか、
フランシス・フォード・コッポラ監督作品というより、
娘のソフィア・コッポラの作品みたい。





<エディプス・コンプレックス>


弁護士のウディ・アレンは、
口うるさく干渉してくる母親にウンザリの日々。
恋人・ミア・ファローを紹介しても、
結婚に反対されるばかり。


ある日、奇術ショーを観に行った彼らだが、
奇術の実験台になった母親が、
忽然と姿を消してしまう。
アレンがホッとしたのも束の間、
巨大な母親がニューヨークの空に現れ、
アレンの情報を市民に語り出す・・・。





息子を思う母親が、
息子の幼い頃のエピソードから、
結婚を反対する理由までを、
空から人々に知らしめるなんて、
息子には最悪だろうけど、
ちょっと楽しんだ。


この母親というのが、
空気の読めない人で、
アレンの職場にまでやって来ては、
会議中でもお構いなしで、
呼び出してしまうような人。
確かにあれじゃ、身内は困ってしまうわ(笑)。


評価 ★★★☆☆

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「不信のとき」 [映画]

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〔1968年/日本〕


銀座シネパトスの現在のテーマは、
「生誕百年 今井正監督特集 第二部」。

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結婚10年の田宮二郎・岡田茉利子夫妻には、
子供がいなかった。
医師の診断によると、
岡田が妊娠しにくい体質だと言う。


田宮は、銀座のホステス・若尾文子と懇意になる。
若尾のアパートに初めて行った際、
田宮は彼女から、ある提案を受ける。


「田宮の子供を生ませてほしい。
 結婚を迫ったりはしない」と。
子供を持つことは半分諦めていた田宮は、
その提案をなんとなく受け入れてしまう。


ほどなくして、若尾は妊娠。
女の子を産む。
ところが、妊娠しないと思っていた岡田から、
子を宿していると知らされた田宮は驚く。
その後、岡田は男の子を出産。
かくして、田宮は、
同じくらいの年の子を2人持つ父親となり、
2つの家庭を行ったり来たりするようになる。


2年間は平穏に過ぎたが、
盲腸で入院した田宮の病室で、
岡田と若尾が鉢合わせしてしまう。
驚く岡田に慌てふためく田宮。


岡田と若尾は、若尾のアパートで対峙する。
その後、岡田は、ある驚愕の事実を暴露する・・・。





以前、有吉佐和子さんの原作を読んだ時、
ずいぶん俗っぽい内容だなと思ったが、
映画もやっぱり俗っぽかった(笑)。


しかしそれは、有吉さんの、
痛烈な社会風刺であろうし、
子供にとって父親とは何なのか、
「あなたの子供だ」と言われれば、
それを信じきって、子供をあやす男に対する、
揶揄が見えて、可笑しい。


田宮二郎が笑える。
2人の女の間で右往左往して、
忙しいったらありゃしない(笑)。
一見クールなイメージの彼だけど、
古い映画を観ていると、
コミカルな役も沢山演じていて、
私の中の印象が変わってしまった(笑)。


でも、岡田茉利子と若尾文子という、
あんなに美しい2人を
妻と愛人に持つなんて、
役の上とはいえ、ものすごい果報者だ(笑)。
しかも岡田は、有名な書道家という才色兼備な女、
田宮はどこへ行っても羨ましがられる。


田宮が親しくしている、取引先の社長・三島雅夫も可笑しい。
彼は60歳を過ぎて、
20歳そこそこの不良娘・加賀まりこを愛人にする。
遊びたい盛りの加賀は、囲われ生活にうんざりするが、
妊娠する。
三島は、自分が男としてまだまだ現役な事に狂喜する。
最悪の結末が待っている事を、その時は知るよしもなく。


今なら、男性が不信に思えば、
DNA検査などで、自分が父親であるか否かを明らかにするのであろうが、
そんな概念さえない昔は、
女の言い分を信じるしかなかった。
医学があんまり発達するのも、
幸なのか不幸なのか(笑)。


評価 ★★★★☆

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「Black&White ブラック&ホワイト」 [映画]

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〔2012年/アメリカ〕


クリス・パインとトム・ハーディは、
CIAの辣腕コンビ。


しかし、香港での作戦に失敗し、
犯人を取り逃がした為、
2人揃って内勤にされてしまう。


一方、リース・ウィザースプーンは、
恋人に捨てられたばかりの、
淋しい独身女性。
彼女を可哀相に思った女友達が、
勝手に、ネットに恋人募集の広告を載せてしまう。


最初は怒った彼女だが、
応募してきたハーディの写真を見て、デートする事にする。
会話もそれなりに盛り上がり、
これから上手くいきそうな予感。


しかし、その帰り、
ウィザースプーンは、パインとDVDショップで知り合う。
ウィザースプーンの魅力に参ってしまったパインは、
彼女とデートの約束を取り付ける。
まさか、彼女がハーディとデートしたばかりとは知らずに。


かくして、ハーディとパインは、
どちらが彼女を射止めるか、
争うようになる。
CIAの最新のハイテク機器を駆使しながら・・・。





CIAの2人の男が、一人の女を巡ってバトルを繰り広げるという内容から、
一応、それなりにアクションシーンもあるが、
基本はラブコメディ。


疲れた頭と体には、ちょうどいい、
お気楽で楽しい映画。


女の側からすると、
クリス・パインとトム・ハーディの2人から、
あれほど愛されるリース・ウィザースプーンを
自分に置き換えて観ると、
より楽しめる。


男2人を、脳内で別の人間に置き換えるのも可(笑)。


それに2人は、CIAの情報網を使って、
ウィザースプーンの趣味や好きなものを、
全てリサーチ、
彼女が口に出さなくても、
魔法のようにそれが差し出される。
羨ましいようなお話し(笑)。


ウィザースプーンが、
とびきりの美人でも、
スタイル抜群でもないところに、
また、親近感が湧いて、
「わ、私だって」と思わせてくれるのが楽しい。
(いや、彼女はハリウッドでは相当稼ぐ女優で知られているから、
実際はそんなもんじゃないんだけど(笑))


ウィザースプーンは、パインとハーディの事を、
逐一、親友のチェルシー・ハンドラーに相談し、
アドバイスを受けるのだが、
その会話があけすけで、露骨で、笑ってしまう。


けれど、そこは親友、
最後には的確なアドバイスをくれる彼女は、
頼りになる女なのだ。


ウィザースプーンがどちらを選ぶかは、
ここには書かないけれど、
私が「いいな」、と思う方とは違う方だった。
けれど、全員が幸せになれる終わりになっていて、
その辺は上手く出来ていて、ホッとできる。
(最後の最後のオチは、わたし的にはあまり必要性を感じなかったが)


評価 ★★★☆☆


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「越後つついし親不知」 [映画]

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〔1964年/日本〕


昭和12年。
越後の寒村から、京都の造り酒屋に出稼ぎに来ている、
小沢昭一と三國連太郎。


ある日、三國は、“母危篤”との電報を受け取り、
故郷に帰る。
実家への雪道を歩いていると、
自分の前に、小沢の妻・佐久間良子が歩いている事に気付く。


以前から、冴えない小沢にしては、
佐久間は勿体無いほど美しい嫁だと、
村人からも噂されており、
三國は、彼女の姿に欲情し、
周囲に誰もいないのをよい事に、手篭めにしてしまう。


誰にも言えぬ秘密を抱えてしまった佐久間だが、
三國はふてぶてしくも、人に言わなければ分からないなどと、
たわけた事を言う。


数ヶ月のち、佐久間は妊娠に気付く。
村人たちは、小沢が出稼ぎに行く前にできた子だろうと、
祝福してくれるが、
産婆の診察を受けた佐久間は、
腹の子の大きさからして、
三國の子に間違いないと知る。


小沢も佐久間の妊娠を喜ぶが、
たまたま訪ねた産婆から、
佐久間の産み月を知り、
自分の子でないと気付く。
佐久間に激しく詰め寄る小沢は・・・。





以前観た、若尾文子さんの、
「越前竹人形」にも少し似ているが、
その後の展開は全然違う。
原作は、「越前~」と同じ水上勉。


三國連太郎の非道ぶりには、
気分が悪くなる。
真面目で働き者の小沢昭一に対して、
三國はいつも、ズルそうな目をして、
周囲を眺めている。


小沢が、その働きを認められて、
表彰された時も、
美しい嫁がいる事も、
嫉妬はするが、自分の能力ではどうする事もできない。


だから佐久間良子を手篭めにするくらいしか出来る事のない、
最低の男である。


しかも、京都に戻った三國は、
小沢に、「佐久間が浮気している」などと、
嘘の報告をして、
小沢を苦しめる。


小沢と佐久間は、
見た目には不釣合いだが、
幸せな夫婦であった。
村の女性たちは、手作業をしながら、
佐久間の妊娠をからかうが、
その内容は微笑ましく、
佐久間が皆から好かれているのが分かる。
三國の子でなければ、
これほどの喜びはなかったのに。


その後の小沢の行動は、
大変に悲しい。
しかし、そうするしかないような終わり方であった。


評価 ★★★☆☆

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◆人もいない春◆ [本]


人もいない春

人もいない春

  • 作者: 西村 賢太
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2010/06/30
  • メディア: 単行本


また西村賢太氏。
すっかり馴染んだ気がして、
昔からの知り合いのような気さえする。


6編の短編が収録された本。
鼠を主人公にした、
寓話のような話があって、
西村氏の作品は、私小説しか読んだ事のない私には、
ちょっと珍しかった。


他は、西村氏の読者にはお馴染みの、
北町貫太が主人公の小説なのだが、


正直、私は、この北町貫太を嫌いになりそうだよ。


彼は、これまた読者にはお馴染みの恋人・秋恵と同棲しているのだが、
この本での彼女の扱いの描かれ方は特に酷い。


秋恵は、幼い頃のトラウマから、
ある食べ物をどうしても食べられないと貫太に打ち明ける。


それから数日後、
貫太は、全く理不尽な理由で、一人怒り、
秋恵が食べられないその料理を、
わざわざ出前で取り寄せ、
秋恵が仕事から帰る前に食卓に並べ、
「全部食え。残したら痛い目に遭わせてやる」と脅す。


読んでいるだけで気分が悪い。
カッとなって、前後の見境なく殴ってしまったならともかく、
(それでも嫌だが)
これって明らかなイジメじゃないか。
私なら、その場で出ていく。


他にも、
他人に対するあまりに酷い言動のオンパレード。


なんでそうなってしまうかなぁ。

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