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「龍三と七人の子分たち」 [映画]

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〔2015年/日本〕


70歳の高橋龍三(藤竜也)は、
昔はヤクザとして恐れられていたが、
今は、息子・龍平(勝村政信)の家で暮らす、しがないただの老人。


ある日龍三は、
龍平からの電話を受け取る。
「会社の金500万円を失くして困っている」、と。
慌てた彼は、なんとか50万円を都合し、
約束の公園へと出向いた。
まるで疑う事なしに。


実はその電話は、最近台頭してきた、
暴走族あがりの集団・京浜連合の仕業だった。
京浜連合は、表向きはヤクザらしくない、
税金まで納めている連中で、
しかし、その分、
やり方が阿漕で冷酷だ。


龍平は、京浜連合のやり方が、
どうにも許せず、決意した。
昔のヤクザ仲間を招集し、
新たな組を作ろうと。


組の名前も「一龍会」と決まる。
以来、一龍会と京浜連合の諍いは激化してゆき・・・。





以前に何度か書いているけれど、
「日本の芸能界で誰が一番好きか」と尋ねられたら、
北野武と答えるくらい、私は彼が好き。


といっても、
もう以前のように、彼の出ているテレビを必ず観るとか、
そういった事はしなくなっている。
なんというか、
生涯たった一人愛した男を
今でも忘れられないと言うのが、
一番近い感情かもしれない。
彼以上の男が現れないので、
愛情の上書きができず、そのままになっているといったような。
(とはいえ、他の男と付き合わないかといえば、
それは別問題(笑))。


で、その北野の監督最新作。
彼の今までの映画は、
既存の映画の流れを無視した作品が多いように
感じてきたけれど、
この映画には、むしろ既視感を覚える。


それは、今までの北野氏の笑いを
深く愛してきた者には分かる、
彼の言いたい事がなんとなく「分かっちゃう」といった感じ。


冒頭からクスクス笑いが止まらない。
元ヤクザの爺さん・龍三が、
派手な彫物を見せびらかすように、
玄関先で素振りの稽古をしているけれど、
息子夫婦は、それがもう恥ずかしくて、
「みっともない真似はするな!」とキツイ言葉を投げる。


そのやり取りは、
北野氏が昔テレビで描いていたコントそのもののようで、
本当に可笑しい。
「これよね、これ」と言いたくなるの(笑)


その後、龍三と「七人の子分たち」が出揃って、
様々な事をしでかすわけだけど、
やっぱり笑ってしまう。
詳しい事は書かないけれども。


私は、昔ながらのヤクザが是だとは決して思わないけれども、
若者で構成される京浜連合のやり方で、
とても恐怖を覚えた場面があった。


彼らは、独居老人の家にやって来て、
無理矢理キッチンに浄水器を取り付け、
「これは無料です」と言いながら、
「買ってほしいのはこれ」と、布団を運び込む。


その、有無を言わせない圧力が本当に怖くて、
「私が年を取って、同じような事をされたらどうすればいいんだろう」と
本気で不安になる。
「要らない」と突っぱね、
それでも執拗なら、
警察を呼べばいいんだろうか。
年老いて、判断力や瞬発力がなくなっていたら、
咄嗟に行動できるんだろうか。


コメディ映画として、
後々まで残るとは思わないけれど、
ひととき笑って、楽しい時間を過ごすには
もってこいの作品だと思う。
3点と4点の、本当に真ん中くらい。
でも北野氏だから、四捨五入(笑)。


評価 ★★★★☆

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