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「シンプル・プラン」 [映画]

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〔1998年/アメリカ〕  


ビル・パクストンは、村でも正直者で通っている真面目な男で、
妻、ブリジット・フォンダと、幸せな日々を送っていた。
フォンダは臨月を迎えており、子供と対面するのも楽しみだった。


パクストンには、兄、ビリー・ボブ・ソーントンがおり、
仲は悪くはないが、
パクストンが大学を卒業し、正業に就いているのに比べると、
学歴もなく、失業中のソーントンが、
弟に強いコンプレックスを抱いている事は明らかだった。


ある日、パクストンが、ソーントンとソーントンの親友、ブレント・ブリスコーと一緒に、
雪の中、村はずれの森で車を走らせていると、
雪に埋もれている、墜落した小型飛行機を発見する。


中を調べてみると、大きな鞄があり、
なんと、440万ドルもの大金が入っていた。


すぐに警察に届けようと提案するパクストンに、
失業中のソーントンとブリスコーは強く反対する。
二人に押し切られたパクストンは、
金を盗む事を渋々承知し、
ただ、ほとぼりが冷めるまで自分が預かると宣言、
自宅に持ち帰る。


フォンダは大金を見て驚くが、
「少額だけ飛行機に残しておいた方が疑われない」と言い出し、
翌日、パクストンとソーントンは、飛行機に金を置きに行く。
その行為が、この先、どんな事件に発展するかも知らずに・・・。





私がよくする妄想の一つに、
もしも大金の詰まった鞄を拾ったら、というのがある。
警察に届けなくちゃ駄目かな、
いやいや、どうせ真っ当な金ではあるまい、 
誰も困りはしない、
車に積んで、なるべく遠くまで走って、
発信機その他の有無を調べて、
そうだ、鞄も絶対買い換えなくては、
家に持ち帰ったら、どこに隠そう・・・などなど、
妄想はどこまでもキリなく続く。


この映画は、そんな私の妄想を、
そのまま映像にしてくれちゃってるわけだが、
拾った現場に戻ってはいけないという鉄則を破った事から、
話が破綻してゆくのである。


雪の中の事件、3人組、拾った大金という設定は、
「ファーゴ」や「シャロウ・グレイブ」や「ノーカントリー」などを思い出すが、
どれも面白かったし、
本作も、とても楽しめた。


でも、最初からこの計画は上手くいくわけがないよね。
だって、現場に戻る戻らない以前に、
共犯者があってはならない、というのが、
大金強奪だけでなく、完全犯罪の大鉄則だもの。


共犯者が多ければ多いほど、
仲間割れの確率も、
事件を他人に知られる確率も高くなるのは当然。
どうか、私が大金を見つけるのは、
一人の時でありますように(笑)。


評価 ★★★★☆

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◆ぶどう酒びんのふしぎな旅◆ [本]


ぶどう酒びんのふしぎな旅

ぶどう酒びんのふしぎな旅

  • 作者: 藤城 清治
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/04/13
  • メディア: 単行本


ガラス工場で作られたぶどう酒びんは、
美しいお嬢さんと船乗りの若者の婚約式の場で、
皆に、中身のぶどう酒を振る舞うという、
幸せな場に居合わせる。


その後、ぶどう酒びんは、
数奇な運命により、
長い長い旅のあと、
今はおばあさんになってしまった
あのお嬢さんが飼っている、
鳥の水飲みびんになっている。


おばあさんは、この水飲みびんが、
あの幸せな婚約式を演出してくれたぶどう酒びんだとは
知らない・・・。



アンデルセン童話に、
藤城清治さんがつけた影絵は、
繊細で物悲しく、
この物語にピッタリだ。


1950年に出版された時、
藤城さんの影絵は、
モノクロだったそうだが、
60年経った2010年に、
カラーとなり、再出版されたそうだ。


婚約式でお嬢さんがかぶっていた、
レースの帽子の美しさ。
強そうで脆そうなぶどう酒びんの質感。
どの影絵も飾っておきたくなるくらい魅力に溢れ、
何度でもページを繰りたくなる。

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「ピーウィー・ハーマンの空飛ぶサーカス」 [映画]

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〔1988年/アメリカ〕


農場を営むピーウィー・ハーマン。
沢山の可愛い動物たちと暮らし、
野菜を育てる日々。


彼は温室で、ソーセージの成る木を育てているという
秘密があった。


彼は毎日、ランチはフィアンセと一緒にとると決めており、
教師をしている彼女の小学校の校庭で、
彼女の作った不味いタマゴサンドを食べる事が日課になっていた。


ハッピーなはずのピーウィーの毎日だけれど、
変わり者の彼は、村人から嫌われていて、
買い物をするだけでも一苦労。
いつも意地悪されてばかり。


そんなある日、大きな台風がやって来て、
動物たちと地下室に避難したピーウィー。
嵐が去り、外に出てみると、
なんと農場に、サーカスの一団が飛ばされてきており、
象やライオンやカバが跋扈していた。


サーカス団の人々とすっかり仲良くなったピーウィーは、
農場でサーカス公演をしようとするが、
村人から嫌がらせを受ける。


そこでピーウィーは、育てているソーセージを
村人に食べさせる。
すると、村人は全員、子供になってしまったのだ。
子供はみんな、サーカスが大好き。
ピーウィーは子供たちを引き連れ、いざ、サーカスへ!





ピーウィー・ハーマンとは、
俳優、ポール・ルーベンスが作り出したキャラクターで、
いつも蝶ネクタイをし、ユニークな喋り方をするのが
特徴らしい。
アメリカでは人気が高かったようだ。
(日本人が見たら、ちょっと気持ち悪いと感じてしまうかもしれぬが)。


子供向け番組の司会もしていたそうで、
この映画も明らかに子供向けだ。


クライマックスの、サーカス団が演じる様々な曲芸は、
観ている私まで、ワクワクしてしまうくらい楽しく、
子供の頃に観たら、もっと楽しめただろうなぁ、と残念に思うくらい、
なかなか見応えがあった。


しかしルーベンスは、
その後、2度も逮捕されてしまう。
それも性的な軽犯罪で。
私も、1度目は知っていたけれど、
2度までもとは、見終わって調べて、初めて知った。


せっかくのキャリアも、
つまらない理由で崩れていくという、典型的な例か。
馬鹿だなぁと思うけれど、
復帰するという話があると、
これも、検索したら出てきた。


彼の事はよくは知らないけれど、
努力して得た地位は、
ちゃんと守ったほうがいいと、私は思うなぁ。


評価 ★★★☆☆

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「逆転」 [映画]

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〔1963年/アメリカ〕


史上最年少でノーベル文学賞を受賞したポール・ニューマンは、
受賞式出席のため、スウェーデンに訪れる。


ホテルのフロントで、物理学賞を受賞したエドワード・G・ロビンソンを紹介され、
挨拶を交わすが、
翌日、再会したロビンソンは、
ニューマンとは初めて会ったような風で、どこかおかしい。


ロビンソンの姪のダイアン・ベイカーが、
ロビンソンの秘書のような役目をしていたが、
彼女もどこか要領を得なかった。


不審に感じ始めたニューマンの所に見知らぬ男から電話が入り、
どうしても話したい事があるので、来てほしいと、
番地を告げられる。


言われた通りのアパートに行くと、
男が死んでおり、
また、犯人らしき男に、ニューマンも執拗に追いかけられ、
ついには建物の屋上から突き落とされる。


下が運河だった為、助かったニューマンは、
警察官を伴って、さきほどの殺人現場に行くが、
死体は消えており、彼の話を誰も信じてはくれない。


その後、ニューマンは、
事件は、ロビンソンの頭脳を欲する東側の国が仕組んだ事であり、
授賞式に出るのは、偽者のロビンソン、
本物のロビンソンは停泊中の船に監禁されている事を突き止め、
救出に向かう。


受賞式まで時間は少ない。
偽者がスピーチを始めてしまったら、
取り返しがつかない。
果たして間に合うのか・・・。





ノーベル賞受賞者が、
追いかけ追いかけられする、サスペンス。
ポール・ニューマンがノーベル“文学賞”というのが、なんだか可笑しい。


彼は斜に構えた文学者という設定で、
受賞記者会見で、
「賞なんかいらない」
「金がないので、別名で探偵小説を書いて凌いでいる」などなど、
言いたい放題のワガママ男である。


しかし探偵小説を書いているだけあって、
推理力は抜群、
あれだけスカしているのだから、
他人の事なんてどうでもいいのかと思いきや、
意外にも、ロビンソン救出に尽力する。


ポール・ニューマンは、
この映画の3年後にも、
ヒッチコックの「引き裂かれたカーテン」で、
冷戦に巻き込まれた博士の役を演じているのが面白い。
そういうイメージ?


今観ると、とても牧歌的だが、
ニューマンが船内に入ってからの救出劇は、
それなりにハラハラできる。


ロビンソンの頭脳が欲しい東側という、
いかにも冷戦時代に作られたお話で、
しかし、その割に、
ロビンソンの扱いが非常にぞんざいで、
船内の汚い部屋に閉じ込められて、
死にそうになっている彼を見たら、
「何の為に誘拐してるんだか分からないじゃん」と言いたくなった(笑)。


やっぱりポール・ニューマンはいい男だ。
なんというか、
正しい骨格、というか、
正しい頭蓋骨って感じがする。
意外と小柄で、撮影に苦労する事もあったと何かで読んだが、
私は男の身長は気にならないし、
そんな事より、あのハンサムぶりには参ってしまう(笑)。


評価 ★★★☆☆

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「ファイナル・カット」 [映画]

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〔2004年/カナダ・ドイツ〕


ロビン・ウィリアムズ。現在51歳。
彼は10歳の時の忌まわしい記憶に、長い間、苛まれ続けてきた。
旅先で出会った同い年の少年を強引に廃墟につれてゆき、
一緒に遊んでいるうちに、少年は高所から転落、
大量の出血があり、動かなくなったが、
恐ろしくなった彼は、そのまま逃げ帰ってしまった過去があるのだ。


現在の彼は、“ゾーイチップ”と呼ばれるチップを編集する仕事をしていた。
そのチップは、両親の希望があれば、
生まれた赤ちゃんの脳に埋め込まれ、
以降、その人間が死ぬまでのあらゆる出来事を記録する画期的な代物で、
今や10人に1人が利用していると言われていた。


チップを埋め込んだ人間が亡くなると、
それを編集者に編集してもらい、
遺族が追悼上映会を開くのが常となっており、
ウィリアムズは編集が上手いと評判だった。


しかし、反対者も多く、各地でデモが起こっているのも事実だった。
ウィリアムズは、法律ギリギリに生きる悪徳弁護士などの
チップの編集も手掛けており、
彼の手にかかると、
どんな悪人でも、清廉潔白な人生を歩んできたような印象を与え、
それは遺族にとっても、大変に都合のいいものに変わってしまうのだ。


そんなある日、ウィリアムズは、依頼者のチップの映像から、
10歳の時の、あの事故の少年にソックリな男を発見する。
「彼は生きていたのか」。
「名前を確認したい」。
そんな思いに突き動かされるウィリアムズ。


さらに彼は、偶然の事から、
自分の脳にもチップが埋め込まれている事を知る。
編集の職に就く絶対条件は、
チップが埋め込まれていない事だというのに・・・。





大変に興味深く観た。
もし“ゾーイチップ”が現実にあって、
それが自分の脳に埋め込まれている事を、今知ったとしたら・・・。


こんな恥の多い、というより恥の塊のような私の人生を、
全て他人に見られる事を想像すると、
恥ずかしさのあまり、悶絶死してしまう。


それに、チップの存在を知ったその瞬間から、
常にそれを意識しながら生きていかざるを得なくなる、
そんな縛られたような人生は真っ平ごめんだよ。


という二つの理由で、
私もチップ反対のデモに参加したいような気持ち(笑)。


そして、他人の膨大な量の記憶(70万時間くらいか?)を編集する、
ロビン・ウィリアムズの仕事も、
私には出来そうにもない。


この映画の中には、
実の娘に、おぞましい行為を繰り返す男の記憶があって、
そんな物まで見なくてはならないウィリアムズ。
彼は常に冷静で、
どんな映像を見ても平常心を保っているが、
私だったら卒倒してしまう。


この映画は、とても嫌な場面も多いけれど、
ラストは意外と爽やかなんだな。
ちょっとホッとできるような、そんな作りになっている。
楽しめた。


評価 ★★★★☆

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