「ファイナル・カット」

〔2004年/カナダ・ドイツ〕


ロビン・ウィリアムズ。現在51歳。
彼は10歳の時の忌まわしい記憶に、長い間、苛まれ続けてきた。
旅先で出会った同い年の少年を強引に廃墟につれてゆき、
一緒に遊んでいるうちに、少年は高所から転落、
大量の出血があり、動かなくなったが、
恐ろしくなった彼は、そのまま逃げ帰ってしまった過去があるのだ。


現在の彼は、“ゾーイチップ”と呼ばれるチップを編集する仕事をしていた。
そのチップは、両親の希望があれば、
生まれた赤ちゃんの脳に埋め込まれ、
以降、その人間が死ぬまでのあらゆる出来事を記録する画期的な代物で、
今や10人に1人が利用していると言われていた。


チップを埋め込んだ人間が亡くなると、
それを編集者に編集してもらい、
遺族が追悼上映会を開くのが常となっており、
ウィリアムズは編集が上手いと評判だった。


しかし、反対者も多く、各地でデモが起こっているのも事実だった。
ウィリアムズは、法律ギリギリに生きる悪徳弁護士などの
チップの編集も手掛けており、
彼の手にかかると、
どんな悪人でも、清廉潔白な人生を歩んできたような印象を与え、
それは遺族にとっても、大変に都合のいいものに変わってしまうのだ。


そんなある日、ウィリアムズは、依頼者のチップの映像から、
10歳の時の、あの事故の少年にソックリな男を発見する。
「彼は生きていたのか」。
「名前を確認したい」。
そんな思いに突き動かされるウィリアムズ。


さらに彼は、偶然の事から、
自分の脳にもチップが埋め込まれている事を知る。
編集の職に就く絶対条件は、
チップが埋め込まれていない事だというのに・・・。





大変に興味深く観た。
もし“ゾーイチップ”が現実にあって、
それが自分の脳に埋め込まれている事を、今知ったとしたら・・・。


こんな恥の多い、というより恥の塊のような私の人生を、
全て他人に見られる事を想像すると、
恥ずかしさのあまり、悶絶死してしまう。


それに、チップの存在を知ったその瞬間から、
常にそれを意識しながら生きていかざるを得なくなる、
そんな縛られたような人生は真っ平ごめんだよ。


という二つの理由で、
私もチップ反対のデモに参加したいような気持ち(笑)。


そして、他人の膨大な量の記憶（70万時間くらいか？）を編集する、
ロビン・ウィリアムズの仕事も、
私には出来そうにもない。


この映画の中には、
実の娘に、おぞましい行為を繰り返す男の記憶があって、
そんな物まで見なくてはならないウィリアムズ。
彼は常に冷静で、
どんな映像を見ても平常心を保っているが、
私だったら卒倒してしまう。


この映画は、とても嫌な場面も多いけれど、
ラストは意外と爽やかなんだな。
ちょっとホッとできるような、そんな作りになっている。
楽しめた。


評価　★★★★☆

コメント 8

ロビン・ウィリアムズ様は大好きで尊敬してます。　ガープの世界、いまを生きる、レナードの朝・・挙げたらキリないです。　しいて一番と問われれば（問われて無いか　^^;）　グッド・モーニング・ベトナム！
ラヂオ放送DJを通して悲惨なベトナム戦争を描いたもので強く印象に
残っています。
ゾーイチップなんて怖ろしい！　自分の記憶を自分以外が見るなんて・・
そんなさらしモノみたいな恥ずかしい事になる前に、僕は少しづつでも記憶を消して行きたいです。　僕の母のように。
by 坊や (2011-06-14 14:48) 

資格試験の前に一読した参考書などの内容を記憶して、試験の時に必要な
箇所をパッと思い出せるみたいなチップなら良いですね。
ロビン・ウィリアムズも一時期は主演作品が続いたけど最近はちょっとご無沙
汰ですね。
by k_iga (2011-06-14 23:33) 

チップ、埋め込まれてたらどうしよう・・
亡くなった家族の記憶の上映会もやりたくないし、自分が死んでも
やってほしくないし・・・
私も反対デモに参加します！（笑）
でも、映画としてはすごくおもしろそうですね。
ラストが爽やかなら、安心（笑）、観てみたいです。
by yonta* (2011-06-15 00:29) 

坊やさん

ロビン・ウィリアムズ、お好きでしたか。
あぁ、でも、残念な事に、「グッド・モーニング・ベトナム」は未見なんです。いつか必ず観たいと思います。
私が印象に残っているのは、「ガープの世界」、
それから、「インソムニア」、「ジュマンジ」、
「バードケージ」も大好きです。

本当、記憶や思い出は自分だけの物で、
ちょっとだけ他人と共有しているから楽しいのだと思います。
人は死んだら灰になる、それでいいと思う。
by 青山実花 (2011-06-15 10:43) 

k_igaさん

そうですね、試験の時限定ならいいかも。
（それも自分だけ(笑)）。
あと、犯罪の被害者のみ、
チップを見られるとか。

ロビン・ウィリアムズは最近は、
脇役にまわっているのでしょうか。
まだまだ59歳ですので、
突然また、意外な作品で主演したら面白いですね。
by 青山実花 (2011-06-15 10:44) 

yonta*さん

同感です。
家族でも、親しい人でも、
（いや、親しければ親しいほど）
その人の記憶なんか見たくありません。
いくら、美しく編集されていたとしても、です。

それから、ごめんなさい、
爽やかというのはちょっと違うかもしれません。
たぶん好みが分かれる映画だと思うんです。
もしyonta*さんが観られて、
「好きじゃない」と思われたら申し訳なくて・・・。
世間での評価もそれほど高くはないようです（←言い訳ですね(笑)）

by 青山実花 (2011-06-15 18:32) 

お気を遣わせてしまって、こちらこそごめんなさい。
大丈夫です、観てから、もし好きじゃないと思ったとしたら、
思ったままの感想を書きますね。

それと「バードケージ」私も大好き！です。
あのかわいいネイサン・レインを、家族に欲しいくらい（笑）。



by yonta* (2011-06-19 07:14) 

yonta*さん

いつかyonta*さんがこの映画を観られたら、
どんな感想でも、教えて下さいね。

「バードケージ」はいいですよね。
今のオネエブームの先駆けみたいだし(笑)。

by 青山実花 (2011-06-20 11:07)