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「マイ・バック・ページ」 [映画]

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〔2011年/日本〕


1969年。
東都新聞社の雑誌部門に配属されている沢田雅巳(妻夫木聡)は、
「東京放浪日誌」なるルポを書くべく、
身分を隠し、1ヶ月間、ホームレスのような生活をする。
記事にした、その体験談は、
心優しい彼は、どうしてもセンチメンタルになりがちで、
雑誌記者に必要な冷酷さが無いと、上司に言われるのだった。


世の中は、学生運動真っ盛りで、
安田講堂事件は終わっていたが、
東大出身の沢田は、自分の母校で起きた事件を、
切ない思いで見つめている一人だった。


そんな彼に、運動家を名乗る梅山(松山ケンイチ)という男が接近してくる。
過激派でありながら、
宮沢賢治を愛読し、ギターを奏でる梅山に、
沢田はシンパシーを抱き、
梅山を「胡散臭い、関わらないほうがいい」という先輩の忠告を聞き入れられず、
少しずつ、のめり込んでゆく。


梅山から、「自衛隊駐屯地に潜入し、武器を奪う」という計画を聞かされた沢田は、
雑誌部を馬鹿にする新聞部を見返す為にも、
スクープが取れると、それを誰にも話さず、
実行を見守る。
実際、行動したのは梅山の仲間だったが、
彼らは駐屯地内で、自衛隊員の一人を殺してしまい、
計画を知っていた沢田は窮地に追い込まれる・・・。





あらすじを書くのが難しいな。
リアルタイムであの特別な時代を生きていない私のような人間に、
あの時代の空気感は、
どんなに理解しようとしても、しきれないし、
知ったような事を言えば、お叱りを受けそうな気がする。


例えば、三田誠広氏の「僕って何」など、学生運動を扱った小説を、
私はとても面白く読んだが、
それでも、同じ時代を生きた方々からは批判があるそうだし、
私が名曲だと思っていたユーミンの、「いちご白書をもう一度」なども、
「ゾッとする。何も分かっちゃいない」と酷評された文章を読んだ事もある。
(計算すると、確かにユーミンは、リアルタイムで学生運動の世代ではない)


話は逸れたが、この映画、
妻夫木聡も松山ケンイチも、
それぞれの役を、とても上手く演じているように感じられた。
妻夫木の実家の、自室として使っている離れで、
松山の弾くギターに合わせて二人が一緒に歌う場面が、
物凄く好き。


その日初めて会った二人は、まだ互いの事なんか何も知らず、
大学生が与太話をしているだけみたいだ。
そのうちに、松山ケンイチは正体を現してゆくわけだが。


そう、松ケンは本当に嫌な男だった。
それが最後に分かる。
自分でどう思っていたのかは分からぬが、
彼は、上っ面だけの、ニセモノの革命家だった。
そして妻夫木はそれを見抜けなかった。
互いに甘く、若かった。


ラストに妻夫木が流す涙は、
色々な解釈があるだろうが、
何か一つ、自分に区切りがついたのであろう。
生きるって大変だよ。


評価 ★★★★☆

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