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「ハリーとトント」 [映画]

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〔1974年/アメリカ〕 


マンハッタンに住むハリー(アート・カーニー)は、
愛猫トントと暮らす、72歳の老人。
毎日、トントの首に紐をつけてのお散歩が日課だ。
しかし、ハリーの住んでいるアパートが区画整理にあい、
立ち退かざるをえなくなる。


迎えにきた長男と一緒に、とりあえず、長男の家に行ってはみたが、
嫁は明らかにハリーの存在を迷惑がっており、
仕方なく、シカゴに住む長女(エレン・バースティン)の家に行く事に決める。


ところが飛行場での荷物検査の時、
動物は乗せられないと言われたハリーは腹を立て、
バスでシカゴまで行くことにする。
しかし、トントはバスが嫌いなようで、
途中で降りる事になってしまい、中古車を買うハリー。


ヒッチハイクの16歳の少女、ジンジャーを拾い、
一緒に旅するが、
昔の恋人ジェシー(ジェラルディン・フィッツジェラルド)が老人ホームにいると知り、
ジンジャーのすすめもあって、そこに立ち寄るハリー。
しかし、ジェシーはもう、軽い痴呆が始まっており、
ハリーの名前をきちんと呼ぶ事はできなかった。


やっとシカゴに着き、長女に会うが、
彼女は男遍歴を重ねているらしく、
4回も離婚していると言う。
一緒に暮らそうという彼女の誘いを断り、
またトントと二人だけの旅を続けるハリー。


途中、猫好きの老人、高級娼婦、インディアンの老人など、
様々な出会いと別れを繰り返しながら、ハリーとトントは進む。
行き着いた先は、次男の住むロサンゼルス。
高級車に乗って現れた次男だったが、実は借金まみれで、
相当見栄っ張りな事が見て取れる。
この先、ハリーとトントの運命はどうなるのか・・・。。





冒頭から、様々な老人が映し出される。
マンハッタンは、このような孤独な老人で溢れかえっていますよ、と、
言わんばかりに。
けれどそれは、今の日本だって、他人事ではないだろう。


これは老人のロードムービーのようだけれど、
自分の人生を振り返る旅だと言ってもいい。


育てた三人の子供の家を順番に回るハリーだが、
子供たちは、それぞれ何か抱えているらしい。
三人とも、それなりに生きてはいるが、
決して、人生の成功者とは言えない感じだし、
昔の恋人は、自分を覚えていないほど老いてしまっている。
愛する妻はとっくに死んでいるし、
親しかった友達も亡くなった。


誰だって、その時その時に最善を尽くし、
一生懸命生きてきたはずなのに、
結果はこんなものって、突きつけられたような、そんな気がする。


でもやっぱり、人生捨てたもんじゃない。
子供たちだって、ここまで大きくなったんだ、
自分で自分の始末くらいつけられるだろう。
ロスの海岸で、新しい出会いもありそうだ。
人生は残り少なそうだけど、それでも何とか楽しみを見つけて
生きてゆこう。
そんな声が聞こえる気がする。


評価 ★★★☆☆

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