「楡の木陰の愛」 [映画]
〔1974年/イタリア〕
やっと観られた。
大好きな「小さな恋のメロディ」。
そして主演のマーク・レスター。
彼が成長してから出演した本作の事が、
ずっと気になって、観たくて仕方なかったのだが、
ビデオ時代にも、レンタル店で見かけた事はなかったし、
DVD化もされておらず、
殆ど諦めていたのだ。
今回、何とかビデオが見つかり、やっと願いが叶ったわけだが、
驚いた事が一つ。
このレビューを書こうとして、
公開年を調べた所、
なんと、「小さな恋のメロディ」から、
たった3年後の映画である事が分かったのだよ。
あんなに小さかった男の子が、
たった3年でこんなに大きくなってしまうなんて、
なんだかショック。
映画の内容が内容なだけに、余計にそう感じたのかも。
ジャケット写真を見れば分かるように、
これは10代の男の子の初体験物。
それ以上でも、それ以下でもなく、
深みもなければ、キレもないお話。
ビデオパッケージの裏側には、
「あの“小さな恋のメロディ”のマーク・レスター少年が、
初体験にチャレンジ」とある。
チャレンジて(笑)。
当たり前の事だけど、
子役の時の印象が強ければ強いほど、
その後、こういった映画に出ると、
昔の作品を引き合いに出されて、
センセーショナルに扱われてしまうのね。
そういう私だって、
この映画を観るにあたって、
邪な気持ちが全く無かったかと言えば、嘘になるしね(笑)。
マーク・レスターは、
「あの人は今」的な番組で、
何度か見た事があり、
その時は、とても嬉しかったが、
最近では、マイコーの子供の父親は自分だと名乗り出て、
話題になった。
あーあ。
そういう事で出てきてほしくはなかった。
彼のファンだった人は、
みんなそう思っていると思うなぁ。
評価 ★★★☆☆
「河内カルメン」 [映画]
〔1966年/日本〕
河内の山奥から、
麓の工場まで通勤する野川由美子は、
美しく、肉感的な娘で、男たちからも注目の的だった。
野川は、工場主のお坊ちゃん、和田浩治に惚れており、
和田もまた、まんざらではない様子だ。
しかし、仲の良さそうな二人に嫉妬した村の若い衆に、
野川は乱暴され、
さらに家に帰ると、母親が近所の住職と関係している姿を見てしまう。
家出した野川は大阪に出て、キャバレー勤めを始める。
キャバレーの客で、信用金庫をクビになった冴えない佐野浅夫は、
野川に惚れてしまい、
二人は同棲を始めるが、
ファッションモデルにならないかとの誘いを受け、
佐野と別れる。
モデルクラブのオーナー、楠侑子の家で暮らす事になった野川だが、
楠の同性愛の相手をさせられそうになり、
そこを飛び出し、
楠の友人、川地民夫の家に行く。
しかし、偶然、和田と再会した野川は、
今度は和田の家へ。
しかし、和田は借金を抱えており、
今度は、高利貸しの爺さんの囲われ者になり・・・。
今東光原作。
小説の方は知らないが、とにかく、野川の変わり身が早く、
話がどんどん進む。
上記に書いた先にも、まだまだ転身が続く。
野川はとにかく、あっちが駄目ならこっちといった、
物事にこだわらない性格で、
辛い話も湿っぽくはならない。
しかし、たった一箇所だけ、
しんみりと、そして大きくうなずける場面があった。
野川がファッションモデルになると決め、
佐野に別れを告げた時、
佐野は、「今までありがとう、楽しかったよ」と言うのである。
佐野が半狂乱になるのを覚悟していた野川は驚き、
「そんな風では、逆に別れる事ができない」と言う。
大喧嘩になって、その勢いで家を出るくらいでないと、
はずみがつかないと。
確かにね。
一度懇意になった男女は、
修羅場を見ないと別れられないという事か。
佐野は、「じゃあ怒った方がいいんだね」と、
言われるがままに、野川に怒ったセリフを吐くが、
そのままそっと、部屋を出てゆく。
淋しい最後であった。
古い映画を観ているといつも、
野川由美子がとても美しかった事に驚く。
目が大きくて、スタイルも良く、魅力的。
この映画の役にも合っていた。
評価 ★★★☆☆
「男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 特別篇」 [映画]
〔1997年/日本〕
映画好きとして、
いつかは着手せねばなーと思いつつ、
なかなか実行できなかった「男はつらいよ」鑑賞。
せっかくギネスに載るくらい長いシリーズなのだから、
どうせ観るなら、絶対に公開順に、
一本も飛ばす事なく、という思いから、
テレビで放映されていても、
一度もチャンネルを合わせた事はなかった寅さん。
だから、私が寅さんについて持っている知識といえば、
「いつも旅してる人」
「失恋ばかりの人」
くらいだった。
一念発起して、一昨年の11月、初めて第1作目を観て以来、
10日に1本くらいのペースで、寅さんと一緒に旅してきた。
そして、昨日、全48作プラスこの「特別篇」、合計49本で、
約一年半の旅が終わった。
楽しかった。
寅さんは、私が最初にイメージしていた人とは全然違っていた。
ただのお人よしのおじさんなのかと思っていたら、
ワガママで、自分勝手で、自己中で、空気読めなくて、
最初の頃は、「こんな人が本当に国民的有名人なのか!?」と思ったものだ。
でも、ずっと観ていくうちに、
寅さんの優しさや、不器用な感じにホッとするようになっていったんだ。
さくら、博、おいちゃん、おばちゃん、タコ社長、御前様、源ちゃんなどなど、
レギュラー陣もみんな大好き。
何より、第一作目から観て、一番意味があったのは、
さくらの息子で、寅さんの甥っ子の満男の成長が見られた事。
一人の人間を、
生まれた時から、
大人になって恋に悩む青年になるまで、
リアルに段階を踏んで見られるなんて、
シリーズが長いから出来た事であり、
観るたびに感慨深かった。
もし渥美清さんが生きていたら、
山田洋次監督は、次回作で、
満男を結婚させようと思っていたそうだ。
満男の花婿姿、見たかったよ。
出演者が本当に恋に落ちて、
結婚してしまった例もある。
沢田研二&田中裕子
長渕剛&志穂美悦子
これらのカップルの回は、
どちらも、二人がキスなんかするもんだから、
もう、こっちまでドキドキ、緊張したものさ。
映画の冒頭に、出演者たちが、
本編とは関係のない寸劇をするという作品が多く、
(必ず寅さんの夢オチ)
大抵は、時代劇や西部劇だったが、
「スターウォーズ」が公開された直後は、
渥美さんが宇宙人という設定になったりと、
遊び心も満載だった。
わたし的に一番好きなのは、
32作目の「口笛を吹く寅次郎」。
寅さんが岡山で、
なぜかお坊さんになってしまうというお話。
満男がそれを発見する場面が可笑しくて、
その部分を何度も巻き戻して観た。
爆笑だった。
この「特別篇」は、渥美さんを偲んで作られたそうで、
内容は25作目の「寅次郎ハイビスカスの花」のリニューアルだが、
満男が伯父さんを回想する作りになっており、
CGで渥美さんの姿が見られる。
全て見終わって、
今は淋しい気持ちでいっぱいだけれど、
また寅さんに会いたくなったら、
DVDを観ればいい。
気軽に映画が手に入る時代で、
本当に良かった。
◆わたしを離さないで◆ [本]
繊細で哀しい内容。
映画も美しかったが、
この原作を読んで、さらに主人公の心の葛藤を知った。
描き方によっては、
大変にセンセーショナルになりそうなストーリーだが、
そうならないのは、
物語が、あくまでも主人公であるキャシーの
一人称で語られているからではないかと思った。
この本の中の世の中は、
“キャシーたちの側”の人間と、
“それ以外”の人間で構成されている。
キャシーたちは、生まれた時から、
ある運命が定められており、
それに逆らう事はできない。
キャシーたちは集団で暮らしており、
“それ以外”の人間たちと交流する事は殆どない。
だから、“それ以外”の人たちが、
キャシーたちの存在をどう思っているのか、
本からは全く伝わってこない。
(教師など、一部の人間を除いて)
これは仮定であり、想像でしかないけれど、
この本で、“それ以外の”人々の描写があったら、
もっと俗っぽい、
綺麗事では済まされない内容になっていたのではないかと、
そんな気がする。
もしできるなら、
同じ世界を、今度は“それ以外”の人々の側から、
描いた内容のものを読んでみたい。
“それ以外”の人々とは、
つまりは私たちの事であり、
この本のような事がまかり通る世の中になったとしたら、
その時、私たちはどう感じるのか、
それを知りたい。
「ジュリエットからの手紙」 [映画]
〔2010年/アメリカ〕
ニューヨークの雑誌記者、アマンダ・セイフライドは、
婚約者、ガエル・ガルシア・ベルナルと、
プレ新婚旅行にイタリアに出掛ける。
しかし、レストラン開店直前のベルナルは、食材の買い付けに夢中で、
心ここにあらずといった様子だ。
仕方なく一人で観光に出かけたセイフライドは、
ヴェローナの街で、「ロミオとジュリエット」のジュリエットの生家に行く。
そこでは、恋に悩む多数の女性たちが、
ジュリエットに向けて手紙を書き、石垣に貼り付けていた。
そして、貼り付けられた手紙は、
“ジュリエットの秘書”と名乗る四人の女性が回収し、
全てに返事を書いているという事だった。
興味を持ったセイフライドが取材を兼ねて、手紙の回収を手伝った所、
石垣の奥から、気付かれずに残っていた50年前の手紙を発見する。
そこには、15歳のイギリス人少女が、
恋に落ちたイタリア人男性を残してイギリスに帰る苦しい気持ちが綴られており、
セイフライドは、50年前の少女に向けて返事を書いた。
すると数日後、返事を読んだヴァネッサ・レッドグレーヴが、
孫の青年、クリストファー・イーガンを伴ってヴェローナにやって来る。
ヴァネッサは、15歳の時に別れたきりの恋人を探しに来たと言う。
セイフライドは、ぜひ取材をさせてほしいと、
二人の旅に同行する事になった。
しかし、昔の恋人探しは、簡単ではなかった。
探す範囲の場所には同姓同名が74人もおり、
一人一人当たってゆくのだが、全て別人。
レッドグレーヴの50年前の恋のお相手は見つかるのか。
そして、旅を続けている間に、互いが気になり出した、
アマンダとイーガンの恋の行方は・・・。
いい話だった。
イタリアの地方を、昔の恋人を探して巡る旅。
「どうなるのだろう」という、期待と不安で胸が一杯で、
観ているこちらまでワクワクする。
ヴァネッサ・レッドグレーヴが大変に美しく、
品格のあるおばあさんになっている事に驚いた。
若い頃よりずっとずっと綺麗。
あんな風に素敵になれるのなら、
年を取るのも悪くない。
ジュリエットの生家と言われる場所が
イタリアにある事も知らなかったし、
ジュリエットに恋の悩みを相談する女性からの手紙が、
年間5,000通も来る事も知らなかった。
しっかし、その家の前で、必死に手紙を書く女たちの姿、
同じ場所に、同じ目的を持った女が多数集う、その様子に、
なんだか目眩がしたよ(笑)。
女が、たった一人の男に振り回される恋とは、一体なんぞやと。
“ジュリエットの秘書”たちが、全ての手紙に返事を書いているというのは、
本当なのだろうか。
日本語の手紙にも返事をくれるのかしら。
満足感でいっぱいの映画だが、
たった一つ、悲しい設定。
ガエル・ガルシア・ベルナルの扱いがショックでショックで。
これじゃ彼は、ピエロじゃないか・・・。
ガエルは私が長い間、ハリウッドで一番好きな俳優で、
この映画を観たのだって、
彼が出ているからなのに・・・。
主役じゃなくてもいいけど、
この役は淋しすぎる・・・。
評価 ★★★★☆