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「無法松の一生」 [映画]

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〔1958年/日本〕


九州小倉の人力車夫、富島松五郎(三船敏郎)、通称、無法松は、
あだ名通りの暴れん坊。


今日も、芝居小屋で入場を拒否された彼は、
その仕返しにと、
桟敷でにんにくやニラを炊き、
小屋は大混乱。
結城重蔵(笠智衆)親分から叱られるが、
そんな時は、自己を省み、きちんと謝罪する素直な心を持った彼は、
どこか憎めず、
またその茶目っ気から、彼を嫌う人間はいなかった。


ある日、松五郎は、
怪我をした少年、吉岡敏雄を家に送り届けた事がきっかけで、
少年の両親、吉岡小太郎(芥川比呂志)、良子(高峰秀子)と親しくなる。
小太郎は大尉で、
松五郎の男気のある、その性格に惚れ込み、
家族ぐるみの付き合いをしていたが、
体調を崩し、急死してしまう。


突然、一家の主を亡くした良子は、
以降、なにかと松五郎を頼りとし、
松五郎も、陰になり日向になり、
良子と敏雄を支え続ける。


良子は、内気で大人しい敏雄を心配していたが、
彼は松五郎の影響を受け、
元気で闊達な少年へと成長する。
ついには、他校の生徒と集団で喧嘩するまでになり、
それはそれで、良子をハラハラさせるのだった。


敏雄は高校進学の為、小倉を離れる事になり、
淋しさを募らせる良子。
夏休み、教師を伴って帰郷した敏雄は、
本場の祇園太鼓を聞きたいという教師と、
祭りに出掛ける。
松五郎は、飛び入りで太鼓の腕前を披露し、
教師を、そして町の者皆を喜ばせるのであった。


しかし、そんな松五郎の、
本当の胸の内を知る者はいなかった・・・。





実に爽やかな物語である。
見返りを求めず、
良子と敏雄に尽くす松五郎の男気が
本当に気持ちいい。


松五郎の、敏雄に対する接し方も、
子育ての見本になりそうなくらいに素晴らしい。
例えば、学芸会。
独唱をする内気な敏雄の為に、
ちゃぶ台を舞台に見立て、練習させる松五郎。
本番当日、上手く歌えた敏雄を、
これ以上はない褒め言葉で称える松五郎の様子は、
観ているこちらまで気分が良くなる。
いい年のくせに私も、たまにはこんな風に褒められてみたいと
思うくらいに。


太鼓の場面も良かった。
出来る人が少なくなってしまったという、祇園太鼓の乱れ打ちを、
三船が熱演。
豪快だった。


それだけに、ラストに分かる松五郎の心が切ない。
泣けてきそうだった。


「無法松の一生」は、
私が知っているだけで4回、映画化されている。
本作は、稲垣浩監督が、1943年に阪東妻三郎で作ったものが、
検閲でカットされてしまった事に納得がいかず、
三船で作り直したのだという。
阪妻バージョン、
そして、三国連太郎、勝新太郎バージョンも、
いつか観てみたい。

評価 ★★★★☆

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「地獄門」 [映画]

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〔1953/日本〕 


平安時代。
平清盛(千田是也)を倒し、天下を取ろうと考えた源義朝が起こした平治の乱。
大混乱のさなか、
清盛の家臣、盛遠(長谷川一夫)は、袈裟(京マチ子)という女と知り合う。


激しい戦いだったが、盛遠らの活躍により、都は平穏を取り戻し、
袈裟と再会した盛遠は、
あらためて彼女の美しさと気品に心奪われる。


清盛は、戦で活躍した家臣たちに褒美を授けようと、
彼らが集う席で、一人ずつ希望を聞いてゆく。
盛遠は清盛に、「袈裟と結婚したい」と願い出るが、
なぜか、家臣たちから失笑の声が聞こえる。
盛遠は知らなかったが、
袈裟はすでに、貴族、渡辺渡(山形勲)の妻だったのだ。


清盛の計らいで、盛遠は袈裟と二人だけで会うが、
夫を深く愛する袈裟は、盛遠をきっぱりと拒絶。
また、渡辺と馬の速さを競った盛遠は、
勝つには勝ったが、
そんな事は気にも掛けない渡辺の穏やかさ、懐の深さに、
ますます苛立ちを募らせる。


袈裟を諦め切れない盛遠は、
袈裟の伯母を脅し、袈裟をおびき出し、
激しく求愛する。
その後、袈裟の取った行動とは・・・。





舞台は平安時代ではあるが、
話は現代でも通用するような、
女に狂ってストーカーと化した男の物語。


女はもう結婚していて、
夫を愛する貞女で、
他人が入り込む隙なんかないっつーのに、
あのしつこさ、図々しさ。
しかも、女を騙して呼び出して、
どうにかしようなんて、
現代なら犯罪だよ。


盛遠、なんて嫌な男なんだ。
が、彼が嫌な男であればあるほど、
そして、
渡辺が紳士であればあるほど、
その対比が生きてくる。
物語としては大変に面白い。 


京マチ子は、平安時代の女をやらせたら天下一品。
その為に生まれてきたんじゃないかと思われるくらい、
衣装も髪型もハマっている。


撮影当時はまだ、色付きの映画が珍しかったそうだが、
それだけに、制作の側にも力が入ったのか、
衣装もセットも、本当に綺麗。
特に京マチ子が身に纏う、桜色の着物の美しさには
目を見張る。


評価 ★★★★☆

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「陰獣」 [映画]

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〔2008年/フランス〕


フランスの人気作家、アレックス(ブノワ・マジメル)は、
日本の怪奇作家である、大江春泥を敬愛し、
春泥の研究家としても知られていた。


アレックスは、新作小説のプロモーションの為、来日し、
この機会に、春泥と対面したいと望んでいたが、
覆面作家の春泥は、人に会う事を好まず、
その顔を知る者は誰もいなかった。


また、春泥との契約の際に、たった一度、彼に会った事があるという、
元出版社の社員は、
春泥の、人間とは思えぬような病的な様子に影響され、
精神に異常をきたし、
会社を辞め、隠遁生活を送っていた。


京都で接待を受けたアレックスは、
フランス語の堪能な芸妓、玉緒(源利華)と知り合う。
春泥に関わる事で相談があると玉緒から打ち明けられたアレックスは、
彼女から驚くべき事実を聞かされる。


10年ほど前、春泥と玉緒は友人関係だったが、
玉緒が春泥からのプローポーズを断った途端、
彼の態度が豹変、
以来、ストーカー行為を受けるようになったと言うのだ。


アレックスは玉緒との逢瀬を重ねるうちに、
彼女を愛し始めるが、
彼と玉緒の周辺には、
様々な不気味な出来事が起こるようになる・・・。





子供の頃から親しんできた江戸川乱歩。
美しく、また、エログロなあの乱歩世界を
なぜかフランスのバーベット・シュローダー監督が撮ったという、
ちょっと変わった映画。


外国人が日本を撮ると、
何かと意見が分かれそうだが、
私は結構楽しめた。
日本そのものの描写も、
「こんな日本ないよ」的な違和感はそれほどない。
まぁ、舞台が京都で、
芸妓が主人公だからかもしれないが。


玉緒を演じる、源利華という人を、
今回初めて見たのだが、
映画の雰囲気にとても合っている女優さんだと思ったな。
フランス語も上手いと感じた。
あれが付け焼刃なのか、
本当に話せるのかは分からないのだけれど。


江戸川乱歩の小説はかなり読んでいるが、
映画の方は、意外と観ていない。
最近では、「キャタピラー」か。
原作「芋虫」は、何度も繰り返し読むほど好きだけれど、
映画は見逃してしまった。
あの内容の映像化とは、
私の脳では想像がつかないのだけれど、
どうなんだろう。
早く観てみたい。

評価 ★★★☆☆

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「濡れた二人」 [映画]

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〔1968年/日本〕


32歳の女性編集者、若尾文子。
彼女は結婚して6年。
夫の高橋悦史は、テレビ局員で超多忙。
二人は毎年休暇を合わせ、旅行の計画を立てるが、
高橋の仕事のせいで、一度も実行された事がなかった。


今日からの旅行も、準備が整い、
あとは出掛けるだけになっていたが、
高橋はどうしても仕事があると言う。
怒った若尾は、今年は一人で行くと宣言。
西伊豆に向かい、
以前、実家で女中をしていたカツエの家に逗留する。


西伊豆の海辺で、若尾は漁師、北大路欣也と出会う。
北大路は、網元の息子で25歳、
粗野で荒々しく、野生的で、
若尾はそんな彼に惹かれ、
また北大路も、東京から来た美しい人妻、若尾に惹かれるのであった。


高橋から、西伊豆に向かうと連絡を受けた若尾は喜ぶが、
結局、彼はやって来ず、
その苛立ちから、
彼女は北大路の船に乗り、
船の中で結ばれる。


ところが、夜、カツエの家に戻ると、
高橋が来ていて、驚く若尾。
若尾は高橋に北大路との出来事を伝えるが、
高橋は、一時の気の迷いと彼女を許し、
翌日、朝一番で二人で東京に帰る事を決める。


しかし、朝、バスを待つ二人の所に北大路がやって来る。
若尾はバスに乗るのをやめ、
高橋一人を東京に帰す。


若尾と北大路は将来の約束をするが、
北大路には、親が決めた許婚、渚まゆみがおり、
また、7歳も年上の人妻と一緒になる事など、
親が許すはずもなく、二人は苦悩する。


また、カツエは、
自分の家の客にそのような不始末をされたのでは、
この村にいられなくなると、若尾をなじる。
二人の運命はどうなるのか・・・。




これは一人で観るには勿体無いような作りである。
いや、ストーリーはどうでもいい。
東京で働くオシャレな人妻が、
荒くれ男に惹かれるなんて、よくある話だ。


凄いのは、出演者たちの大仰な演技。
特に、北大路欣也。
アンタ何もそこまで・・・と言いたくなるような、
凄いセリフ回しに、大げさな動き。
瞳の力の入りようもハンパじゃない。


バスを待つ若尾たちの前に現れた北大路は、
バイクで彼女の周りを、
グルグルグルグル、百周くらい回る。
こんな分かりやすい嫌がらせって、見た事ない(笑)。


渚まゆみを、ちょっと押しのけるだけの、どうでもいい場面でも、
思い切り渚を突き飛ばし、
下着が見えるくらい、地面に転がる渚。
コントのようだ。


その渚も、
若尾に敵対心丸出しの、その様子が、
戦隊物の女ボスのようだったよ。
「私はこの女が憎いです」という感情を、
そこまで露にする女って(笑)。


若尾文子様のも負けてはいない。
突然、海に飛び込んだり、
服を脱いだりして、北大路を誘う。
どんなプレイだよ(笑)。


上手く説明できないのがもどかしい。
とにかくこれは、誰かと一緒に、
突っ込み入れながら観た方が、絶対に楽しい。
(でも、ものすごーく親しい人限定(笑))


評価 ★★★☆☆

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「パイレーツ・オブ・カリビアン 生命(いのち)の泉」 [映画]

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〔2011年/アメリカ〕


ロンドンの裁判所。
ジャック・スパロウは、彼の機転で、
友人、ギブスを絞首刑から救い、
なんとか自由と身となる。


そこで、彼は、
自分の名前をかたり、
“生命(いのち)の泉”に向かう乗組員を募集している輩がいることを知る。
そやつを見つけ出し、
正体を暴いた所、
なんとそれは、かつてジャックと愛し合った女海賊、アンジェリカであった。


さらにジャックは驚くべき事実を知る。
アンジェリカの父親は、
残虐な事で名を馳せる海賊、黒ひげで、
“生命(いのち)の泉”探しは、
その黒ひげに、不死の力を授ける為だと言うのだ。


アンジェリカに捕まり、
仕方なく、一緒に泉を探す事となったジャック。
しかし泉を探しているのは、彼らだけではなかった。
ジャックの天敵、バルボッサも、
黒ひげの船を追いかけてきていたのだ。


さらに、不死の力を得るためには、
泉の水だけでなく、
人魚の涙が必要であり、
その為、黒ひげたちは、
人魚の捕獲に乗り出す。


果たして、人魚は捕まるのか。
そして“生命(いのち)の泉”は見つかるのか・・・。




ストーリーに特筆すべき点はないが、
とにかく美しく、魅せられたのが、
人魚の大群のシーン。


もちろんCGではあるが、
あれだけの数の人魚が、
海を泳ぐ様は圧巻で、
まるで彼女たちが実在するかのような錯覚を覚えた。
CGの出来不出来は、私にはよく分からないので、
なんとも言えないが、
物凄く好きな場面だ。


今回から登場したアンジェリカを演じるペネロペ・クルス。
ジャック以上に曲者の女を、
テンポの良い演技で見せていた。
ジャックとの会話の掛け合いも、それなりには笑える。


ただ、この内容なら、
もう少し、「大人な」シーンがあっても良いと思うが、
それだと、ファミリーは楽しめないしね。
ディズニーだから、これが限界って事か。


評価 ★★★☆☆

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