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「八日目の蝉」 [映画]

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〔2011年/日本〕


不倫の末、妊娠した子供を堕胎せざるをえなかった、
野々宮希和子(永作博美)は、
男の妻・恵津子(森口瑤子)が出産した事を知り、
その子の顔を一目見たいと、
男の家に忍び込む。


ベビーベッドに寝かされた赤ちゃん、恵理菜を抱き上げた時、
希和子はある衝動に駆られ、
恵理菜を連れ去り逃亡する。


希和子は、連れ去った赤ちゃんに薫と名付け、
数日、友人の家に滞在した後、
女性たちが多数生活する、
カルト集団に紛れ込み、
薫が3歳になるまでの時間を過ごす。


しかし、カルト集団に警察の捜査が入る事を知った希和子は、
寸前で逃げ出し、
薫を連れ、小豆島に渡り、
素麺工場で働く事になる。
そこでの生活は平穏で、
希和子は薫に、ありったけの愛情を注ぎ、
薫もまた、誰からも可愛がられる、愛らしい女の子だった。
やがて、希和子の居所が知れ、
警察が島にやって来るまでは・・・。


それから約20年後。
大学生になった恵理菜(井上真央)は、
妻子ある男(劇団ひとり)の子供の身篭っていた。
それはかつて、自分を娘と呼び、育てた誘拐犯と同じであり、
男の言い訳も、父親とそっくりだった。


恵津子は半狂乱になり、堕胎を勧めるが、
恵理菜は冷笑する。
「あなたは昔、夫の愛人を、
 “あなたは自分の子供を殺したひと”と罵倒した。
 私にも同じ事をさせるのか」と。


恵理菜は、結局、
恵津子とは、深い心の関係が築けぬまま、
大人になってしまったのだ。


恵理菜は、かつて自分が母と信じた人と過ごした場所を巡る。
そこが現在の自分にとって、
どのような意味があるのかを探るように。





原作は、角田光代の同名小説。
内容が、実際にあった事件を元にしている事は明白で、
あの事件が起きた当初は、
私も友人と、様々な推理をした記憶があり、
だから本も夢中で読んだ。


原作では、1章2章という感じで、
幼児期の薫の生活と、
大人になってからの恵理菜の生活が、
分けて描かれていたが、
映画は、交互になっている。
本は本で、
映画は映画で、とても分かり易く、どちらも正解だと思う。


希和子と薫の場面よりも、
薫が家に戻ってからの生活の方が、
大変に辛い。
我が子でありながら、
なかなか家に馴染めない恵理菜に苛立つ恵津子と、
元々自分に責任があるせいで、
何も言えない、影の薄い父親。


しかし、もちろん誘拐は絶対に許されない行為ではあるけれども、
どうしても、希和子に肩入れして見てしまう。
恵津子の気持ちも分かるが、
ヒステリックで、常にイライラしているその様子は、
見ていて気持ちの良いものではない。
もっと気長に、暖かな気持ちで恵理菜と接していたら、
二人の関係は違ったものになっていたのでは、
と思わずにはいられない。
あの性格では、たとえ恵理菜が誘拐されなくても、
母娘は深い絆で結ばれる事はなかったのでは、
とそんな風に思ってしまう。


井上真央は、どちらかというと、
森口瑶子より、永作博美に似ているような気がして、
そんな事からも、
誘拐犯の方がよほど母親らしい感じられるようになっている。
上手いキャスティングだと思う。


ただ、ラストは小説の方が格段にいい。
ちょっと残念だ。


評価 ★★★★☆

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