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「もらとりあむタマ子」 [映画]

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〔2013年/日本〕


東京の大学を卒業したタマ子(前田敦子)は、
甲府の実家に戻って来て、
母に逃げられた父と2人暮らしを始めた。


就職するわけでもなく、
家業のスポーツ用品店を手伝うわけでもなく、
毎日毎日、食っちゃ寝、
あとは漫画とゲームの日々。


最初は軽く諌めていた父も
何も言わなくなり、
時間だけが、
ただひたすら過ぎてゆく。


一度だけ、
やる気を出したタマ子が
履歴書を書き、写真を撮り、
応募したのが、芸能人になるためのオーディション。
冗談なのか、本気なのか。


そんなある日、
父に縁談が持ち上がる。
「父が結婚したら、自分はどうなるの!?」
焦ったタマ子は・・・。





モラトリアムを猶予期間と訳すならば、
この映画の主人公・タマ子こそ、
人生の猶予期間そのもの。
毎日を、なーんにもする事なく、
ただぼんやりと暮らす、
1年とちょっとの物語。


仕事をせず、
親の脛をかじりながら、
ひきこもって生活をする若者の話を聞くと、
ちょっと心が重くなってしまう私だけれど、
タマ子に対しては、
「それほど心配いらないんじゃ」という気持ちにさせられる。


彼女は、
世の中に出るのが怖いとか、
そんなんじゃなくて、
ちょっとのんびりしたら、
そのうち働くから、と言いたげな風に見える。
それほど、弱い女じゃない。
むしろ強かなんじゃないだろうか。


父の縁談の相手が、
アクセサリー教室の講師だという事を知ったタマ子が、
子分にしている近所の男子中学生に
偵察に行かせる、
その場面で声を上げて笑ってしまったよ。
中学生の男の子が、
中年のおばさんに混じって、
ブレスレットなんか作っちゃう、
そんなコントみたいなシチュエーションが可笑しくて。


その後、彼女は、
自分も、アクセサリー教室に行き、
講師から教わってアクセサリーを作る。
彼女が心を病んだ引き篭もりだったら、
そんな元気が湧くとは思えない。
とっても積極的で、
好奇心旺盛じゃないか(笑)。


なーんにも事件も起こらない、
どうって事のない映画だけれど、
なんだかダラダラと楽しんで観てしまう。


評価 ★★★☆☆

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「赤い帽子の女」 [映画]

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〔1982年/日本〕


1923年。
私(永島敏行)は、先輩(泉谷しげる)に誘われ、
パリからミュンヘンにやって来た。


私がミュンヘンの街をブラブラしていると、
赤い帽子をかぶった魅力的な女(クリスチーナ・ファン・アイク)と出会った。


その後、電車の中で彼女を再会した私は、
彼女を家まで追いかけた。


それから、男と女の、
奇妙な物語が始まる・・・。





よくは分からないけれど、
この、「赤い帽子の女」は、
芥川龍之介が別のペンネームで書いた
ポルノ小説と言われているらしい。


ただ、それにも諸説あって、
芥川だ、いや違う、と、
いまだに決定的な決め手はないらしい。


まぁ、真面目な議論はともかく、
「これは芥川なんだ」と自分に言い聞かせながら、
読んだり、観たりした方が面白いことは面白いけど。
どうせ真実など、永遠に分かりはしない。
どんな事だって、面白がった方が勝ちだ。


でも、正直、
映画は全然面白くなかった(笑)。
きっと私に、
この作品を理解する能力がないのだろう。


特に、“赤い帽子の女”がいつも怒ってるのが解せない。
なんでそんなに怒るのかと思うくらい怒る。
ドイツ人の気質なのか、
原作通りなのかは分からないけど、
あまりいい気分ではない。


永島敏行のセリフは、ボソボソボソボソ、
何を話してるんだか、
ドイツ語かと思っていたら、
日本語だったり、
あんまり上手くない。


字幕も最悪。
明るい空に、白い字幕を乗せちゃって、
文字が潰れて、全く読めない箇所がいくつかある。


エロ映画としても、
あれくらいなら、
今なら、一般映画として通るんじゃないかってくらい、
それほど凄いものではない。
色んな物を観すぎちゃってるから、
仕方ないんだろうけど(笑)。


まだ若い泉谷しげる氏が
3人のドイツ女と性交する場面が
何度もあるんだけれど、
泉谷氏の4Pを見せられてもなぁ、と、
あまりありがたくない気分(笑)。
なんで、あの役に泉谷氏をもってきたのか、
よく分からない。


評価 ★★☆☆☆

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「鶴八鶴次郎」 [映画]

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〔1938年/日本〕


大正時代、
新内語りのコンビ、
三味線の鶴八(山田五十鈴)と太夫の鶴次郎(長谷川一夫)は、
その優れた芸で、絶大な人気を誇っていた。


兄妹同然で育った2人は、
普段はとても仲が良かったが、
芸の事となると、互いに一歩も退かず、
大喧嘩をしては、
コンビ別れする、しないの騒ぎは毎度の事。


そんなある日、
鶴八が、大きな料亭の息子・松崎からプロポーズされる。
それを鶴八から告げられた鶴次郎は、
自分が鶴八を深く愛していた事に気付き、
また、鶴八も、
鶴次郎からのプロポーズをずっと待っていたのだと告白、
ついに2人は結ばれる。


2人はかねてからの夢である、
寄席の経営の為に、
資金をかき集めるが、
鶴八が、母の遺産だと言っていた金が、
実は松崎からの借金だったと知った鶴次郎は激怒、
激しく罵倒しあった2人は、
本当に別れてしまう。


2年後。
鶴八は、松崎と結婚し、
幸せな生活を送っていたが、
鶴次郎の生活は荒み、
場末の劇場で、
お粗末な芸を披露するだけの男に成り下がっていたが・・・。





第一回直木賞の受賞作である、
川口松太郎さんの小説の映画化。


古い映画を観ていると、
「これも川口さんが原作なんだ」としょっちゅう思うくらい、
沢山の作品が映画化されているけれど、
その中でも、本作は大傑作。
ずっと後に残る作品であろうし、
もっと多くの方が観ればいいのになぁと、
勿体無いような気持ちにもさせられる。


山田五十鈴と長谷川一夫の、
演技の素晴らしさ。
特に、芸の事で
言い争う場面の激しさったらない。


2人の掛け合いがあまりに見事で、
観ているこちらは本気でハラハラしてしまう。
そして同時に、
芸の道に生きる人は違うのだなぁと痛感させられる。
私だったら、他人の少しのミスなら、
「ま、いっか」と流してしまうと思うわ(笑)。


そんな2人が、
初めて互いの恋心を打ち明けう場面は、
今の言葉でいえば、
「胸キュン」って感じ?(笑)


いいなぁ、
喧嘩ばかりしていた2人が、
実は互いに好きだったって、
恋愛の王道じゃないか。
普段の激しい争いとのギャップがいい。
とても可愛い場面。


ラストは詳しくは書かないけれど、
なるほどなぁと、
考えさせられる。


評価 ★★★★★

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「復讐捜査線」 [映画]

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〔2010年/アメリカ〕


ボストンの刑事・トーマス・クレイブン(メル・ギブソン)は、
帰省した愛娘・エマ(ボヤナ・ノヴァコヴィッチ)と
久し振りの再会を喜び合う。


しかし、エマの体調が悪そうで、
夜、鼻血を出しながら嘔吐した彼女は、
病院に連れて行ってほしいと、
泣きながら訴えた。


驚いたトーマスが、エマと玄関を出た途端、
何者かが、ショットガンでエマを撃った。


警察は、トーマスに恨みを持つ者が、
トーマスとエマを間違えて撃ったという線で捜査を始めるが、
トーマスは刑事の勘で、
最初から狙われていたのは娘ではないかと考える。


エマの仇は自分が討つ。
そう誓った彼は、
独自に捜査を進めるうちに、
彼女が勤務していた軍需企業の
巨大な陰謀に気付き始める・・・。





目前で最愛の娘が射殺され、
怒りに震える刑事、という単純な話、
かと思っていたら、


さすがにメル・ギブソン主演映画で、
そんな手垢に付いたような話なわけがなく、
そこに企業、それも軍需産業が関わっているという、
2015年の今の日本にして、
何か他人事ではないような物語。


軍需産業といっても、
作られているものは、様々あるであろうが、
この映画でのそれは、
観ているだけで恐ろしい「モノ」。


しかも、
メル・ギブソンがそれに気付く場面に
ゾッとする。
とてもリアルで、
とても怖い。


タイトルの通り、
メルギブは、首謀者を射殺し、復讐は終る。
けれど私は、
そやつを射殺するのではなく、
メルギブがその直前に彼にした、ある行動の後、
生かしておいて、経過観察してやればいいのに、と、
もしかして問題発言?と思われるような事を思ってしまった。


観られていない方には、
何がなんだか分からないと思うのですが・・・
まぁ、とにかくそう思ったわけですよ。
思っちゃったのだから、仕方がない。


評価 ★★★☆☆

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「限りなき舗道」 [映画]

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〔1934年/日本〕


銀座のカフェで女給をする杉子(忍節子)は、
恋人からプロポーズされ、
有頂天になる。


しかし、舗道を歩いていた彼女は、
金持ちの息子・山内弘(山内光)が運転する車にぶつかってしまい、
そのまま山内の車に乗せられ、
病院に運ばれる。


その事故が原因で、
恋人とはすれ違いが続き、
破局を迎えるが、
一方、山内はすっかり杉子に夢中になってしまい、
身分の違いを乗り越えて、2人は結婚する。


やっと幸せになれると思われた杉子だが、
上流を気取る、山内の母と姉にいじめられ、
苦しみの日々。
間に入った山内も苦しみ、
酒に逃げるようになる。


もう無理だと、婚家を出た杉子の所へ、
山内が交通事故に遭ったとの連絡が入り・・・。





成瀬巳喜男監督のサイレント映画。
昭和9年に撮られたこの映画は、
物語と同時に、
当時の銀座や、カフェのメニューなども楽しめる。


幸せを求めて、紆余曲折の末、
金持ち男・山内弘と結婚する、
主人公の杉子。


しっかし、山内の母と姉の意地の悪い事ったら。
特に姉。
よくもここまで
弟の嫁を苛められるものだよ。


杉子が山内を「弱い」と言う場面があるけれども、
私は、特別そうは思わなかった。
彼は、自分の妻を苛める母と姉に、
結構、言い返してくれている。
そういった時、何も言えない男もいる中で、
頑張ってくれている方ではないかと。


現代の感覚なら、
「別居すれば解決するじゃん」と思ってしまうけど、
当時、それはできなかったのかなぁ。


この映画には
2組の、姉と弟が出てくる。


1組は、この、山内と姉、
そしてもう1組は、杉子と弟。


私はきょうだいの組み合わせでは、
姉と弟が一番好きで、
羨ましく思うのだけれど、
杉子と、彼女の弟の関係は、
私の理想そのもの。
二人とも優しくて、
互いが互いを思い遣る。


なので、余計に、
山内と姉の関係が醜悪に見える。
弟の嫁を愛する事は、
結局は、弟の幸せに繋がるという事が分からないのか。


評価 ★★★☆☆

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