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「クリスチーネ・F」 [映画]

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〔1981年/ドイツ〕


ベルリンで暮らす13歳の少女・クリスチーネは、
自分の居場所がどこにもないと感じていた。
両親は離婚し、
母と住んではいるが、
家には母の恋人が出入りしており、
妹は、父親の方がいいと出ていった。


クリスチーネは、ディスコ「サウンド」に通うようになった。
そこは、ジャンキーたちの溜まり場でもあり、
彼女も、薬中毒のデトレフと付き合うようになり、
興味本位でLSDの錠剤を飲むようになる。


ある日、デヴィッド・ボウイのライブに行った帰り、
クリスチーネは、初めてヘロインを自分の体に打つ。


以来、ヘロインは彼女の体を蝕み、
薬なしではいられない体になってゆく。


薬を買う金がなく、
見知らぬ男に、
性的な奉仕をして、金を貰うようになるクリスチーネ。
それはデトレフも同じで、
彼は男に体を売って、
金を稼いでいる。
幼い2人は、どこまで堕ちてゆくのか・・・。




年端もいかない少女が、
自分の腕に薬を打とうとする。
このショッキングなDVDのジャケット写真は、
この映画の内容そのものだ。


家庭に居場所がなく、
深夜、繁華街を徘徊する少女。
彼女が行き着いたのは、ドラッグ。


「自分は中毒者にはならない」
そう豪語していたクリスチーネだけれど、
どんなに強い意志より、
薬物の力は勝っているようで、
たちまち中毒者となってゆく恐ろしさ。


薬物中毒の人のニュースを見る度に、
この人の最初の1回目は、
どんなきっかけだったのだろう、
1回が2回、2回が3回、
そして100回になるとは思わなかったのだろうかと、
いつも思うけれど、
そうか、そういう過信が原因なのかと、
理解できたような気持ち。


映画の作りが、
ドキュメンタリーのようで、
より、リアル。
本当にクリスチーネという少女がそこにいて、
彼女の日常を追っているような感覚で観てしまう。


一度彼女は、デトレフと一緒に、
「薬抜き」をする。
その場面は壮絶で、
「こんな思いをしたのだから、もう二度としないよね」という
私の甘い考えは裏切られ、
2人また繁華街へ出かけてゆく。


子供の深夜徘徊の危険性については、
最近のニュースでも
かなり話題になっているけれど、
どうすればいいかと考えてゆくうちに、疲れ、
考えるのをやめてしまう。
親が悪い、社会が悪いと、
様々な意見が出るけれども、
結局、結論が出るはずもなく、
事件は風化してゆく。


子供への声掛けとは言っても、
実際、夜の暗がりで、
たむろしている中学生に、
「帰りなさい」と言える勇気は、私には無い。


本当に、どうすればいいのだろう。


評価 ★★★★☆

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「滝の白糸」 [映画]

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〔1952年/日本〕


明治時代。
旅芸人一座・「滝の白糸」の座長で、
女水芸師でもある、滝の白糸太夫(京マチ子)は、
大変に美しいと評判の女。


ある日、太夫は、
ひょんな事から、馬丁の村越欣弥(森雅之)と知り合い、
彼が、法律学校へ行くために、
金を必要としている事を聞く。


知的で優しい村越に惹かれた太夫は、
自分が学資を出すから、
学校へ行けと申し出る。
驚いた村越だったが、
太夫の熱心な口説きに、
最後はその厚意を受け入れる。


その後3年間、
太夫は村越にせっせと金を送り続け、
村越も勉強に励み、卒業の日を迎えた。
さらに、就職の口まで決まったと言う。


初めての職場に、
みっともない恰好をさせてはならないと、
太夫は、高利貸しの松永に金を借りに行く。
しかし、松永に手籠めにされそうになり、
逃げようとして、出刃包丁で彼を刺し殺してしまう・・・。





以前に、
若尾文子さん版と、入江たか子さん版の
「滝の白糸」についてのレビューを書いたけれど、
こちらは京マチ子さん版。
ずっと観たいと思っていた所に、
やっとソフトを見つけ、借りられたのがとても嬉しい。


京さんは、若尾さんとはまた違う魅力で
大好き。
私のように平凡な生活をしていたら、
おそらく一生出会う事がなさそうな
持って生まれた妖艶な雰囲気を纏った、
素晴らしい女優。


ストーリーは、若尾さん版とほぼ同じだけれど、
色っぽい京さんが、
惚れた苦学生・村越に、
これでもかと献身的に尽くす姿が美しい。


この物語の良い所は、
村越が、決して太夫を裏切らない所であろう。


遠距離恋愛の2人、
特に太夫は、
時間もままならないものだから、
アポなしで、
急に村越の下宿を訪ねる事がある。


村越が不実な男だったら、
部屋に女の子を引っ張り込んだり、
合コンしたり(そんな言葉、当時はないだろうが(笑))して、
太夫を不安にさせる所であろうが、
彼にやましい所がないので、
こちらも安心して観ていられる。


それだけに、太夫が松永を殺してしまうのが、
本当に悔しくて。


「高い木に登って、下りてくる際は、
 地上に近付いた時こそ、より注意をしろ」という言葉を思い出す。


終わりが近づいて、
気が緩んだ時こそ、事故が起こりやすいという意味であろうが、
村越が卒業してホッとした太夫が、
よりにもよって、悪党の松永に金を借りに行くなど、
最悪も最悪。
なぜそんな男の家に行ったのか。
就職のとき、村越に良い服を着せてやりたいと言うけれど、
村越だって子供じゃない、
そんなもの自分でなんとかするだろうよ。


ラストが原作と違っているのが、
せめてもの救い。


評価 ★★★☆☆

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「UDON」 [映画]

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〔2006年/日本〕


アメリカでビッグなコメディアンになると、
父親に啖呵を切って出ていった香助(ユースケ・サンタマリア)だったが、
現実は厳しく、
借金だけが増えて、故郷の香川県に戻ってくる。


ある日、山奥を車で運転中、
ガス欠になった香助は、
道迷っている女・恭子(小西真奈美)の車に乗せてもらう。


仕事を探していた香助は、
友人の庄介(トータス松本)から、
タウン誌の編集部を紹介され、
勤め始めるが、
そこの記者に恭子がいたことに驚く。


職場で、讃岐うどんのコラムを載せると、
それが大反響となり、
タウン誌はバカ売れ。
それが全国へ飛び火し、
讃岐うどんは、大ブームとなる。


実は香助の父は、
香川県でも有名なうどん職人で、
香助は家業を嫌って、
家を飛び出したという経緯があったのだ・・・。





四国は日本で行ってみたい場所ベスト5に入るとは、
ずいぶん前から、
友人と話してはいるのだけれど、
未だに実現できていない。


それにしても、
あー、うどんが食べたくなる(笑)。
これを観て、
そう思わない人はいないであろう。


ちょっとよく分からないのが、
讃岐うどんの定義。
讃岐うどんとは、麺を指す言葉であって、
味付けは何でもいいという理解で
正しいのだろうか。


映画そのものは、
つまらなくはないけれど、
この内容に134分は長いというのは感じる。


予算が余っていたのだろうか、
ニューヨークロケから始まって、
チョイ役の出演者まで大変に豪華だし、
意味のないCGが入るし、
そんな事にお金をかけなくても、って場面が多い。


それがかえって不必要で、
もっとすっきり、
90分くらいの映画にしたら、
エキスがギュッと詰まった、
良い作品になりそうなのに、残念。


明日はうどんにしよう。
そして、四国に旅行する事を
本気で考えよう。
(すぐ影響される女(笑))。


評価 ★★★☆☆

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「死刑台のエレベーター」 [映画]

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〔2010年/日本〕


ある大企業の会長(津川雅彦)の妻・芽衣子(吉瀬美智子)は、
グループ傘下の病院で働く医師・時藤(阿部寛)と
不倫関係にあり、
会長を自殺と見せかけて殺し、
彼と一緒になろうと計画を立てていた。


時藤が会長を射殺し、
拳銃を握らせる。
芽衣子は、カフェで時藤を待つ。
それはたった15分で終わるはずだった。


計画は上手く行ったかに思われたが、
犯行の際に使ったロープを
取り戻った時藤は、
警備員にビルの電源を落され、
エレベーターの中に閉じ込められてしまう。


一方、警察官の赤城(玉山鉄二)は、
チンピラといざこざを起こした際、
自分の拳銃を奪われてしまう。
奪われた拳銃が、
ヤクザの組長(平泉成)の手に渡った事を知った赤城は、
恋人の美加代(北川景子)と共に、
路上に止めてあった時藤の車を盗み、
組長の車を追う。


箱根まで組長を追った赤城は、
すったもんだの末、
組長を射殺。
しかし、赤城の乗った車が時藤の物だった事から、
警察は時藤を犯人と断定してしまう・・・。





ビックリするくらい評価低いわねぇ(笑)。


まぁ、仕方ないか。
ジャンヌ・モロー主演の
フランスの名作映画を
日本を舞台にリメイクしたってんだから、
むしろ、その企画を考えた人の勇気を讃えたい(笑)。


ただ、もし、これがオリジナルの映画で、
フランス版と比べる事がなければ、
それほど酷いってわけでもないんじゃない?と
私は思う。


ほんの数秒の差で、
人生が少しずつズレていって、
最後には取り返しのつかない事になるって、
誰の身にも起こりそうな出来事で、
そんな破滅への道を歩む主人公を中心とした
時の流れを、それなりに楽しめる。


変だなぁと思う場面もあるけどね。


例えば、玉山鉄二のキャラ設定。
彼がチンピラ相手に、突然キレる、
その場面が唐突で、
よく意味が分からない。
彼は警官だ。
あんな世捨て人みたいな警官がいたら怖いよ。
(いや、昨今のニュースを見ていると、
警官だからと理由だけで人格者と判断するのは
大いに間違っているのは分かるけれども)


たしかオリジナルでは、
玉山鉄二の役は、
警官ではなかった気がする。
どうして警官という設定にしたんだろう。
日本では、一般人が拳銃を持つ事は有り得ないので、
そう設定するしかなかったのか。


吉瀬美智子が、
誰に対しても、命令口調で、
偉そうな態度を変えないのが可笑しい。
以前、ネットで、
彼女の元ヤン時代だという写真を見て以来、
そのイメージがずっと抜けずにいるので、
なんだかこの役がピッタリな気がして。
いや、馬鹿にしているわけではない。
アイドルでもない彼女が元ヤンであろうと、
何も困った事はないわけだし、
若い頃は、誰でも色々あるだろうし、ね。


阿部寛が閉じ込められたエレベーター内が
暗すぎるのがちょっと不満。
電気を落されたのだから仕方ないけれど、
もう少し、見やすくても良かったかも。


評価 ★★★☆☆

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「薔薇合戦」 [映画]

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〔1950年/日本〕


百合化粧品の乗っ取りを企んだ里見剛三と
妻・真砂(三宅邦子)だったが、
その事実を掴まれた上に、
剛三は病気で亡くなってしまう。


百合化粧品への復讐を誓った真砂は、
新会社・ニゲラ化粧品を設立、
百合化粧品の社員の中から、
選りすぐりの者たちを
引き抜いてしまう。


さらに、映画会社の宣伝部から、
園池(鶴田浩二)を招聘する。
真砂の次妹・雛子は、園池に好意を持つが、
真砂は雛子(若山セツ子)を、
社員の日夏(永田光男)と結婚させてしまう。


一方、出版社に勤める末妹の千鈴(桂木洋子)は、
その進歩的な考えから、
「別居婚」を実践する。


しかし、
元々、愛のなかった雛子の日夏の結婚は上手くいかず、
また、千鈴の「別居婚」の相手には、
妻子がいた。
さらに、ニゲラ化粧品は、
経営がうまくいかなくなり・・・。





夫に死なれた女が、
設立した会社をなんとか軌道に乗せようとし、
彼女の2人の妹も、
それぞれ結婚するわけだけれど、


3人とも、
どうにも男運が悪くて、
観ていて、「あちゃー」と独り言が出ちゃったくらい。


次女の雛子は、
姉に言われるがままに、
好きでもない男と結婚するのだけれど、


やっぱりそういう気持ちは相手に伝わるようで、
雛子の夫は、次第に苛立ち、
彼女を罵倒した挙句、浮気に走る。


さらに、極めつけ。
雛子が入っていた風呂の扉に鍵をかけ、
薪を次々くべて、
彼女を殺そうとする。


そして、そのせいで雛子は流産までしてしまう。
いくら夫婦仲が悪くても、
そこまでいくとシャレにならん。


三女の夫ってのが、また最悪の男で。


こやつは、「別居婚」している三女のアパートにやって来ては、
金の無心をする。
三女が断ると、
なんだかんだと屁理屈をこねるんだな。
まぁ、要約すると、
「夫婦なんだから、助け合うのが当たり前」。


で、こやつに妻子がいる事がバレると今度は、
三姉妹の私生活を暴いた文章を書き、
それを売られたくなければ金を出せだと。


この映画、何が言いたいんだろう。
女がどんなに頑張っても、
男選びを間違えると、
その努力も無駄に終わるよ、って事?(笑)


嫌な男ばかりの中、
鶴田浩二だけが、
かっちょ良かったのが救い(笑)


評価 ★★★☆☆

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