SSブログ

「真珠の首飾り」 [映画]

shinjunokubikazari.jpg
〔1936年/アメリカ〕


自動車会社に勤めるアメリカ人・ゲイリー・クーパーは、
2週間の休暇を得て、
子供の事からの夢だったスペイン旅行へと出発する。


同じ頃、フランスで、
女泥棒・マレーネ・デートリッヒは、
実に巧妙な手口で、
宝石店から、最高級の真珠のネックレスを騙し取る。


偶然知り合ったクーパーとデートリッヒは、
互いに反発し合いながらも、
何となく一緒に行動する。


フランスとスペインの国境で、
荷物検査を受ける際、
デートリッヒは騙し取ったネックレスの隠し場所に困り、
咄嗟にクーパーの上着のポケットにそれを入れてしまう。


検査は無事に終わるが、
何も知らないクーパーは、
上着をスーツケースにしまってしまい、
焦るデートリッヒ。


なんとかネックレスを取り戻さねばならない。
彼女はあの手この手と作戦を練るが・・・。





タイトルだけでは、どんな映画なのか、
ちょっと想像がつきにくいが、
マレーネ・デートリッヒとゲイリー・クーパーの、
コミカルなラブコメディ。
と言っても、
前半はコメディ、
後半はラブの要素が強いわけだが。


この2人の組み合わせと言えば、
この作品の6年前に作られた「モロッコ」の方がずっと有名であろうが、
あちらが戦争の絡んだお話しに対して、
こちらはずっと軽い。


デートリッヒが真珠のネックレスを騙し取る手口が、
それはもう巧妙で、
言葉で説明するのは難しいが、
とにかく、クスクス笑ってしまう。


こんな風に宝石を騙し取る方法があったかと、
私がデートリッヒのように美人で魅力的だったら、
実践してみたいような気分(笑)。


その後の、デートリッヒとクーパーの出会いや、
2人のちょっとした口争いも、
軽妙で楽しめる。
2人は特に恋に落ちなくてもいいかなと私は思ったけれど、
まぁ、それはお約束なのだろう。


ゲイリー・クーパーのハンサムっぷりには、
いつもながら驚く。
本作の中で、短い時間だが、
彼がカジュアルなセーターを着る場面があるのだが、
あまりにハンサムすぎて、
それが似合っていなくて、
物凄い違和感だった(笑)。
あの顔には、スーツや軍服のような、
フォーマルな物の方がしっくりくる。
画像検索しても、出てくるのは殆どネクタイのスーツ姿。


良かった、ハンサムにも弱点があるって分かって(笑)。


評価 ★★★★☆

nice!(17)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

「僕達急行 A列車で行こう」 [映画]

bokutachikyukou.jpg
〔2011年/日本〕


松山ケンイチは、大手不動産会社の営業マン。
鉄道に乗りながら音楽を聴くのが大好きで、
そのせいか、モテないわけではないのに、
フラれてばかり。


瑛太は、町工場を経営する父親の下で働く、
奥手で純情な青年。
こちらも鉄道オタクである。
父親の会社は、技術はあるのに、
経営が上手くいかず、
銀行からの融資を断られるなど、
不安定な状態だ。


2人は、旅先での出会い、
東京で偶然の再会をし、意気投合する。


ほどなくして、松山の福岡転勤が決まり、
2人は分かれ分かれとなる。
松山は福岡での仕事に悪戦苦闘するが、
瑛太が遊びに来た事で、
話が大きく展開する。


2人が小旅行に出掛けた先で知り合った、
鉄道マニアの中年男こそが、
松山の仕事に関わる重大人物であった事から・・・。






昨年亡くなられた森田芳光監督の遺作だそうだ。


とにかく悪人が出てこない。
主人公の2人はもちろんの事、
彼らを取り巻く人々も良い人たちばかりで、
安心して観ていられる。


松山ケンイチも瑛太も、鉄道オタクという事だが、
だからといって、
それほど難しい用語が出てくるわけではないし、
鉄道の話ばかりに終始するわけでもないので、
それほどマニアックな印象は受けないし、
私のような、鉄道を知らない者でも楽しめる。


むしろ私は、松山のサラリーマンとしての仕事ぶりと、
瑛太の町工場の跡取りとしての手先の器用さに、
大変に興味を惹かれた。
真面目な松山は、
同僚や上司に好かれてはいるが、
福岡での仕事の成果はイマイチだ。
しかし、鉄道マニアだった事が幸して、
大きなチャンスがやってくる。


たまたま遊びに来ていた瑛太も、
同じく鉄道マニアだった事、
そして、機械や電気に滅法詳しかった事が幸して、
これまた、父の会社再建への大きなチャンスを掴む。


スクリーンを観ながら、
自然に、「芸は身を助く」という言葉が頭に浮かんだが、
やはり、その後、劇中でもその言葉が出てきていた。


松山の勤務先の女社長を松坂慶子が演じていたのだが、
これがまた、例によって、
こんなんで大都会の不動産屋の経営者が務まるのかと
思われるくらいの、おっとりぶり(笑)。


これは別に文句ではないです。
なんだか面白くて可愛いキャラだなぁと思って(笑)。
彼女のこの役、結構好き。


評価 ★★★☆☆

nice!(18)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

「あゝ声なき友」 [映画]

koenakitomo.jpg
〔1972年/日本〕


第二次世界大戦末期。
中国の部隊にいる渥美清は、
数日後の南方行きを控え、体調を崩す


日本に帰される事になった渥美は、
部隊の戦友全員の手紙を預かる。
南方に行くという事は、
死を意味するのも同じ。
家族や恋人に宛てた、それらの手紙は、
実質、遺書だった。


日本に帰った渥美は、
預かった手紙を配り始める。
戦後の混乱により、
遺族は消息が分からない場合が殆どで、
周囲の人間は、
「何も律儀にそこまでする必要はない」と諭すが、
渥美は配達を止めない。


北海道から九州まで、
渥美は、宛名に書かれた遺族を探して歩く。
その行く先々で彼が見たものとは・・・。





戦友たちの手紙を全国の遺族に配り歩く男。
観る前は、
手紙を受け取った遺族たちは、どれほど驚くだろう、
涙を流して喜ぶに違いないと、
呑気な“郵便屋さんごっこ”を想像していたのだが、
そんな甘いものじゃなかった。
自分の驕った心が情けなくなる。


探し当てた遺族たちは、それぞれ重い人生を抱えている。


空襲で気が触れてしまった妻、
兄が出征中、預けられた家で虐待され、
一家を殺し、死刑になってしまった弟、
夫の弟と暮らしていたのはいいが、
いつの間にか、その弟と出来上がってしまった按摩の女、
恋人からの手紙に、
「だから何?」と何の感慨も見せない芸者。
既に結婚しているのに、
手紙が届いた事により、
上手くいかなくなってしまった夫婦も何組かいる。


手紙には良い事ばかりが書かれているとは限らず、
「お父さんを憎む」との文面に
読んだ父が絶句する場面もある。


どれもこれも、
戦争がなかった起こり得なかった出来事ばかりで、
渥美清も、映画を観る者も、戦争の下らなさをあらためて痛感する。


もちろん映画だから、
不幸ばかりが強調されて描かれているのであろうが、
観終わったあとは、
やり切れない思いでいっぱいになる。


空襲や銃撃戦がなくても、
反戦の気持ちはこんな形で描けるんだと思った作品。
遺族を演じる俳優さんたちも大変に豪華で、
見応えがある。


評価 ★★★★☆

nice!(16)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

「アーティスト」 [映画]

artist.jpg
〔2011年/フランス〕


1920年代のハリウッド。


映画界の大スター・ジョージ・ヴァレンティン(ジャン・デュジャルダン)の
生活は順風満帆。
出演する映画は必ずヒットし、
豪邸に住み、
高価な調度品に囲まれ暮らしている。


ある日、年頃の女の子が、
偶然ジョージと一緒に写真に撮られ、新聞の一面を飾った。
彼女の名前はぺピー・ミラー(ベレニス・ベジョ)。
女優になる事を夢見ている。


楽屋で再会した2人。
ジョージはぺピーに、
「スターになるには何か特徴が必要」と進言し、
彼女の唇の上に、ペンシルでホクロを書いてくれる。


時代は、サイレント映画からトーキー映画への過渡期を迎え、
その波に乗ったぺピーは、
スターへの道を歩み始める。
しかし、観客の心が読めなかったジョージは、
サイレントにこだわり、
人気は凋落してゆく。


落ち目になったジョージは、
妻に去られ、
安アパートに引越し、
持ち物をオークションで売り払うまでになる。
たった一人の味方の運転手・クリフトン(ジェームズ・クロムウェル)の
給料も払えなくなり、
絶望のどん底に喘ぐジョージ。


今や大スターになったぺピーだったが、
彼女はいつも、遠くからジョージを見つめていて・・・。





期待通りの、
オシャレで可愛い映画。
嫌味がなく、ストレート。
どなたでも楽しめると思う。


サイレント映画だが、
100%そうではなく、
ほんの一部、音や声が効果的に使われていて、
それがまた、面白い。


ストーリーはいたって簡単。
落ち目のスターと、新進気鋭の女優との対比であるが、
スターの方に嫉妬心はなく、
ただ、彼自身が感じる悲しみが描かれているだけなので、
不快にはならない。


ベレニス・ベジョがとにかく魅力的。
口が大きく、
一般的にいう、いわゆる“美人”ではないが、
笑顔が素敵で、とても可愛い。


ジャン・デュジャルダンの雰囲気も、
古い時代のスターのイメージにピッタリで、
とても良い。
口ひげのせいもあり、
クラーク・ゲーブルにちょっと似ている・・・
と言ったら、褒めすぎか?(笑)


ワンちゃんがびっくりするくらいお利口。
どう教えたら、あんな演技ができるのか、
ただただ、驚くばかり。


サイレント映画からトーキー映画への過渡期を
描いた作品といえば、
名画、「雨に唄えば」を思い出すが、
やはり、どんなものでも、
その過渡期というのは、様々な混乱があったのだろう。


最近、古い映画へのオマージュを描いた作品を
よく観る気がする。
3DやCGを駆使した作品も、もちろん良いけれど、
ちょっとだけ原点に回帰してみようという、
無意識の心の表れと見た。
(勝手に分析(笑))


評価 ★★★★☆

nice!(19)  コメント(6)  トラックバック(2) 
共通テーマ:映画

「海猫」 [映画]

umineko.jpg
〔2004年/日本〕


函館で暮らす、日本人とロシア人のハーフ・伊東美咲は、
信用金庫に勤務していたが、
隣村で昆布漁を生業としている佐藤浩市に見初められ、
結婚する。


昆布漁は夫婦が一組となって行われるのが習わしで、
長男の佐藤に嫁ぐという事は、
当然、伊東にもそれが求められ、
乗り物に酔いやすい伊東は、
不安を覚えながらも、必死に佐藤に従っていく。


佐藤には弟・仲村トオルがおり、
家を出て、工場で働いている。
仲村は、以前から伊東を知っていたと言い、
意味ありげな視線で彼女を見つめていた。


子供も生まれ、生活は軌道に乗ったように思えたが、
なぜか、夫婦は上手くいかなくなってしまう。
そんな時、伊東の支えになるのが仲村で・・・。





世間から酷評されている映画だと言われると、
逆に観てみたくなる作品がある。
(今、頭に浮かんだのは、「模倣犯」と「デビルマン」。
 いつか観てみたい)
そんなに酷いのか、
どんな風に酷いのかが、とっても気になる。


これもその一本だったわけだが、
やっと観られた。
ある意味、嬉しかった(笑)。


世間が駄目でも、自分は感動した作品だって沢山あるけれど、
これは突っ込みどころ満載。


伊東美咲の、兄から弟への心変わり、
これは許すとしよう。
だって、佐藤浩市ったら、
野卑で、女を性の捌け口くらいにしか思っていない。
伊東や、浮気相手とのベッドシーンも満載だけれど、
どれも綺麗じゃなくて、好きになれない。


佐藤は、自分は漁師の家の長男だって思いが
物凄く強いように描かれているけど、
だったらなんで、あんな腰の細い、
どう見ても、昆布漁なんか出来そうにもない、
伊東のような嫁をもらうかな。
もっとドスコイ体型の女が沢山いるだろうに。


そして、一番驚いたのは、
伊東の出産シーン!
佐藤は出掛けてしまって不在なんだけど、
義弟の仲村トオルがいるのに、
部屋の襖は開けられたままで、
仲村は普通に出産の過程を見ているのよ。


いやはや、ビックリ(笑)。
いろんな出産シーンを観てきたけれど、
夫でも恋人でもない男(しかも義弟だから、余計に生々しい)に、
そんな状況を晒すのは初めて観た(笑)。
周囲に誰もいなくて、
どうしようもない状況だったのなら分かるけれど、
姑とお産婆さんがいるのだから、
仲村の出番はないはずだし。


襖を閉めない女たちも変だけど、
部屋から出て行こうとしない仲村はもっと変。
見たかったのか?(笑)


伊東にはチンピラ風情の弟がいるのだけれど、
この弟の接する時の伊東が、
ミョーに「女」で、気持ち悪い。
あんな風に演出する意味が全く分からない。


なんだか違和感だらけの映画。


評価 ★★☆☆☆

nice!(20)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画