◆人もいない春◆ [本]
また西村賢太氏。
すっかり馴染んだ気がして、
昔からの知り合いのような気さえする。
6編の短編が収録された本。
鼠を主人公にした、
寓話のような話があって、
西村氏の作品は、私小説しか読んだ事のない私には、
ちょっと珍しかった。
他は、西村氏の読者にはお馴染みの、
北町貫太が主人公の小説なのだが、
正直、私は、この北町貫太を嫌いになりそうだよ。
彼は、これまた読者にはお馴染みの恋人・秋恵と同棲しているのだが、
この本での彼女の扱いの描かれ方は特に酷い。
秋恵は、幼い頃のトラウマから、
ある食べ物をどうしても食べられないと貫太に打ち明ける。
それから数日後、
貫太は、全く理不尽な理由で、一人怒り、
秋恵が食べられないその料理を、
わざわざ出前で取り寄せ、
秋恵が仕事から帰る前に食卓に並べ、
「全部食え。残したら痛い目に遭わせてやる」と脅す。
読んでいるだけで気分が悪い。
カッとなって、前後の見境なく殴ってしまったならともかく、
(それでも嫌だが)
これって明らかなイジメじゃないか。
私なら、その場で出ていく。
他にも、
他人に対するあまりに酷い言動のオンパレード。
なんでそうなってしまうかなぁ。