◆曾根崎心中◆ [本]
初。
二十一歳。
この本の主人公の遊女。
なんてなんて可愛い女。
初の心は、生まれて初めての恋に、
打ち震えている。
相手は徳兵衛。
客としてやって来た男。
物語の出だし、
初の恋心は、初の心の中で描かれる。
「あの人に会えますように」
「あの人が来てくれますように」
「あの人と一緒になれますように」
女が男を、心で「あの人」と呼ぶって、
物凄く意味深だって、初めて気付いた。
あの人。あの人。あの人。
男は沢山知っているはずなのに、
徳兵衛に初めて会った時の衝撃を、
初は「長い爪で背中をすっと引っ掻かれたような」と表現する。
徳兵衛は初に初めて会った時の気持ちを、
「氷をひとかけ、背中に入れられたような」と、
後に初に告白する。
運命の2人が出会った瞬間。
もう離れられない。
愛しても愛しても、愛し足りない。
近松門左衛門の原作を、
角田光代氏が翻案したもので、
ラストまで引き込まれる。
原作が良く出来ているせいもあるだろうし、
角田氏の筆力のせいもあろうだろう。
1978年の映画も傑作。
初を梶芽衣子が、
徳兵衛を宇崎竜童が、
それぞれ演じていた。
近松門左衛門が書いたものも読んでみたいけど、
どうなんだろう、
古い本だから、やっぱり難しいのか。
現代語訳があるようなので、
そちらを読んでみようかと思う。