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「包帯クラブ」 [映画]

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〔2007年/日本〕


高校3年生の石原さとみは、
彼女が幼い頃に離婚した母・原田美枝子と弟の3人暮らし。
生活に余裕がない為、
卒業後は進学せずに働こうと決めている。


ある日彼女は、誤って包丁で手首を切ってしまい、
処置を受けた病院で、風変わりな高校1年生・柳楽優弥と知り合う。
石原の傷をリストカットと勘違いした柳楽は、
屋上のフェンスに包帯を巻き付ける。
その意味のない行動に反発を覚えながらも、
石原は、自分の心が柔らかくなってゆくのを感じる。


石原の友人・貫地谷しほりが失恋した時、
石原は柳楽がしてくれたのと同じように、
ブランコに包帯を巻き付ける。
貫地谷は涙を流し、
自分たちも、傷ついている人たちの為に、
包帯を巻いてあげようと、
ここに「包帯クラブ」が発足する。


メンバーは、石原、貫地谷、貫地谷の知人・田中圭、そして柳楽。
その活動とは、
ネットで閲覧者から、包帯を巻いて欲しい理由と、
場所を指定してもらい(市内限定)、
彼らがそこへ出向き、包帯を巻き、
証拠写真を撮るというもの。
サッカーゴール・プール・鉄棒など、指定された場所は様々で、
それは無償で行われる。


石原と貫地谷は、中学時代の友人で、
現在はギクシャクしてしまっている、
佐藤千亜妃と関めぐみもクラブに誘うが、
再会の席で、佐藤と関はますます険悪になり、
佐藤だけがクラブに入る。


ところが、彼らの事が話題になり始めると、
掲示板が「偽善者」などの文字で荒らされるようになり、
警察まで出てくる騒ぎになってしまう・・・。


また、メンバーたちがそれぞれに抱える問題も、
次第に明らかになり・・・。





声を上げて泣いてしまった。


石原さとみが夜のデパートの屋上で、
自分の親について柳楽優弥に語る場面。
石原の演技が上手いという事もあるが、
離婚した両親に対する、
子供の気持ちがあまりに強く胸に迫ってきて、
泣かずにいられなかった。


他人の心の傷を癒す為に、包帯を巻くだなんて、
いつもの私なら、「勘弁して」と言いたくなるその内容も、
全く違和感なく観た。
それはおそらく、その行為をしている、
石原も、柳楽も、その他のメンバーも、
本気で他人を癒せるとは思っておらず、
どこか醒めた気持ちが透けて見えるからではないかと思う。


ネットで募集した、
包帯を巻いて欲しい、各人の理由は、
軽いものもあれば、想像を絶する重いものもある。
本当の意味で他人の傷を理解する事も不可能だ。
それを彼らは知っている。


突き詰めて考えれば、
彼らの行為に意味はない。
悪い言い方をすれば、
ある種の暇つぶしと言ってもいい。
自分たちのしている事を楽しんでいる節も窺える。
けれど、観ていて不快じゃない。
逆に、彼らが本気で、
「自分たちは人を救ってるんだ」なんて思っていたら、
全く入り込めなかった気がする。


柳楽が実にいい。
進学校に通う彼は、
おかしな関西弁を喋り、
学校に裸足で行ったり、ポケットに生ゴミを入れたり、
その行動は不可解だが、
彼は彼なりの理由があって、それをしており、
その理由も次第に分かってくる。
「誰も知らない」の頃から見ると、
ずいぶん成長したものだ。


石原さとみも素晴らしい。
リアルにイマドキの女子高生を演じている。
ねちゃねちゃした喋り方をしないのもいい。


貫地谷しほり、
彼女は、主人公の親友という役が本当に上手い。
「夜のピクニック」の時も、
多部未華子のクラスメイトを演じていたけれど、
彼女が本当に友達だったら、
とてもホッとできるのではないかと、そんな気持ちにさせられる。


ラストも、何がどうというわけではないのに、
涙なしには観られなかった。
甘いかもしれないけど、青いかもしれないけど、
本当に観て良かったと思う。


評価 ★★★★★

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