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「あゝ声なき友」 [映画]

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〔1972年/日本〕


第二次世界大戦末期。
中国の部隊にいる渥美清は、
数日後の南方行きを控え、体調を崩す


日本に帰される事になった渥美は、
部隊の戦友全員の手紙を預かる。
南方に行くという事は、
死を意味するのも同じ。
家族や恋人に宛てた、それらの手紙は、
実質、遺書だった。


日本に帰った渥美は、
預かった手紙を配り始める。
戦後の混乱により、
遺族は消息が分からない場合が殆どで、
周囲の人間は、
「何も律儀にそこまでする必要はない」と諭すが、
渥美は配達を止めない。


北海道から九州まで、
渥美は、宛名に書かれた遺族を探して歩く。
その行く先々で彼が見たものとは・・・。





戦友たちの手紙を全国の遺族に配り歩く男。
観る前は、
手紙を受け取った遺族たちは、どれほど驚くだろう、
涙を流して喜ぶに違いないと、
呑気な“郵便屋さんごっこ”を想像していたのだが、
そんな甘いものじゃなかった。
自分の驕った心が情けなくなる。


探し当てた遺族たちは、それぞれ重い人生を抱えている。


空襲で気が触れてしまった妻、
兄が出征中、預けられた家で虐待され、
一家を殺し、死刑になってしまった弟、
夫の弟と暮らしていたのはいいが、
いつの間にか、その弟と出来上がってしまった按摩の女、
恋人からの手紙に、
「だから何?」と何の感慨も見せない芸者。
既に結婚しているのに、
手紙が届いた事により、
上手くいかなくなってしまった夫婦も何組かいる。


手紙には良い事ばかりが書かれているとは限らず、
「お父さんを憎む」との文面に
読んだ父が絶句する場面もある。


どれもこれも、
戦争がなかった起こり得なかった出来事ばかりで、
渥美清も、映画を観る者も、戦争の下らなさをあらためて痛感する。


もちろん映画だから、
不幸ばかりが強調されて描かれているのであろうが、
観終わったあとは、
やり切れない思いでいっぱいになる。


空襲や銃撃戦がなくても、
反戦の気持ちはこんな形で描けるんだと思った作品。
遺族を演じる俳優さんたちも大変に豪華で、
見応えがある。


評価 ★★★★☆

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月夜のうずのしゅげ

見てみたい映画です。様々な種類の映画の御紹介ありがたいです。
by 月夜のうずのしゅげ (2012-04-14 06:22) 

青山実花

月夜のうずのしゅげさん
コメントありがとうございます。

渥美清さんが、手紙を持って、
全国を行脚するという話から、
「寅さん」みたいなものを想像しておりましたが、
全然違っていました。

私も月夜のうずのしゅげさんのブログを
いつも楽しみに拝見しております。
御紹介された本を図書館で借りたりもしています。
これからも宜しくお願いします。

by 青山実花 (2012-04-14 16:53) 

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