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◆結婚失格◆ [本]


結婚失格

結婚失格

  • 作者: 枡野 浩一
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2006/10/31
  • メディア: 単行本


これは難しい本だね。


別に読むのが難しいわけではなく、
その内容が。
著者・枡野浩一さんは、漫画家・南Q太さんの2番目の夫で、
ある日突然、Q太さんから見限られて、
離婚する事になったという。


名前も職業も変えてあるけれど、
枡野とQ太さんのゴタゴタが書かれている事は明らかで、
彼の思いが綴られている。


枡野さんは誓って暴力など振るっていないのに、
裁判で子どもを殴ったとQ太証言されたとか、
メールをしただけで、ストーカー法に抵触すると言われたとか。
そんなエピソードだけで埋め尽くされた本。


一番辛いのは、子供さんに会わせてもらえない事だそうだ。
どうしても子供に会いたい枡野さんは、
保育園のお散歩の日に、
行き先で子どもを待つ。


人と人との揉め事話は、
どちらか片方の意見を聞いても駄目なわけで、
何も知らずにこの本だけを読むと、
Q太さんの仕打ちが、いかに酷いかのような印象を受ける。


ただ、この本のあとがきが凄い。
穂村弘さんや、長嶋有さんが、
枡野さんの、ちょっと特異な性格について書いてある。


文庫本に至っては、
町山智浩さんがあとがきで、
枡野さんをこき下ろしているのだよ。
「離婚されても当然な、空気の読めなさ感」みたいな内容で。
あとがきって、無理してでもその本を褒めるものだと思っていたから、
ちょっと衝撃。
さらに、それを載せてしまうのも凄いし。


南Q太さんは、
映画、「さよならみどりちゃん」の原作者で、
その漫画は、エロ場面も多いけれど、
女の本質を突いている、
切ないお話を描く、
好きな漫画家さんの一人だ。


これはもう、南さんのお話も聞かなければ、
私には、どちらの言い分が正しいのかの判断がつかないよ。
南さんがこの件で、
何らかの意見を表しているのかどうかは、知らないけれど。

「続 夜の大捜査線」 [映画]

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〔1970年/アメリカ〕


サンフランシスコのあるマンションで、
娼婦が殺される。
遺体を発見した掃除人は、
現場から神父・マーティン・ランドーが立ち去るを
見たと言う。


捜査に当たる刑事・シドニー・ポワチエ。
彼はランドーの親友の為、
捜査から外れるか否かが、
署内でも問題になる。


容疑者はランドー以外にもいる。
マンションの持ち主のアンソニー・ザーブは
特に怪しい。
彼は売春の斡旋や、麻薬取引の噂があり、
ポワチエは彼を追う。


また、事件とは別に、
ポワチエは、反抗期の息子に手を焼いていた。
妻との仲は良好だが、
息子は、なかなか思う通りにはいかず、
心配は尽きない。


事件解決に向け、奔走するポワチエ。
真犯人には見つかるのか・・・。





先日観た、「夜の大捜査線」の続編という事だが、
オリジナルのテーマであった、
人種問題などはどこかへ行ってしまって、
全く平凡な、昭和の刑事ドラマみたいな内容だった(笑)。


そもそも、前作の続きを作るのは無理がある。
“通りすがり”のシドニー・ポワチエ刑事が、
事件を解決するというのが面白かったわけで、
普通に警察に勤務するポワチエを観ても、
普通なだけだ。
しかも、前はフィラデルフィア警察勤務と言っていたのに、
こちらはサンフランシスコ。
何だか印象が変わってしまう。


それに、彼の家族の問題を見せられてもなぁ(笑)。
何というか、会社で見せる顔しか知らなかった上司の、
家庭での顔を見せられた感じ。
生々しいから別に知りたくもなかったのに、
偶然、見かけちゃった、みたいな(笑)。


タイトルにちょっと笑える。
ポワチエが犯人を捜す場面の殆どは、
昼なんだもの。
昼なのに、「夜の大捜査線」(笑)。
そう考えると、邦題を付けるのも、
結構難しいのかも。
1作目の時点では、
まさか続編ができるとは思っていなかったのかもしれない。


評価 ★★★☆☆

「ル・アーヴルの靴みがき」 [映画]

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〔2011年/フィンランド・フランス〕


フランスの港町・ル・アーブルで靴磨きを生業とする、
初老の男・アンドレ・ウィルム。
彼は愛する妻・カティ・オウティネンと、
つつましいが、幸せな生活を送っている。


ある日、妻は体調を崩し、入院する。
妻は医者から、
もう長くない事を告げられる。
妻は、その事を夫に告げないでほしいと、
医者に頼み込む。


そんな中、アフリカのガボンから、
コンテナに隠れて密航してきた黒人家族が発見されたと、
ニュースになる。
家族は移民局に連れて行かれるが、
12歳ほどの少年だけが逃げ出し、
警察は、少年を探し回る。


数日後、ウィルムは川に隠れている少年と出会い、
家に連れ帰る。
彼は、ロンドンにいるという少年の母の元へ、
少年を行かせてやろうと決める。


その為には金が必要だ。
近所の人々と協力しながら少年を匿い、
金の工面に奔走するウィルム。
しかし警察は、ウィルムが少年を匿っている事に気付く。


少年は無事、ロンドン行きの船に乗れるのか。
そして妻の病はどうなるのか・・・。





フィンランドのアキ・カウリスマキ監督の作品。
名匠といわれる監督だけれど、
以前、DVDで「マッチ工場の少女」を観た時、
なんだかピンと来なかった事から、
他の作品には手を出さずにきた。


今回、時間が合ったので観てみたのだが、
これは中々良かった。
とても地味な映画だけれど、
こういう映画こそ、
劇場で観た方が良いのかもしれない。


フランスの港町に住む主人公・アンドレ・ウィルムの生活ぶりは、
意外なくらいに質素。
先進国とはいっても、
一般の人の暮らしって、
こんなものかもしれないなぁと、
そんな思いでスクリーンを観る。


彼は、妻を深く愛している。
周囲の人も「できた妻だ」と言うし、
彼自身も、そう思っている。
妻も、おそらくウィレムを深く愛している。
だからこそ、自分の余命を知らせて、
ウィレムがショックを受ける事に耐えられない。


ウィルムが、
不法移民局に、
少年の祖父に会いに行く場面が笑える。
どう見ても白人のウィレムなのに、
自分は少年の祖父の弟だと言い張る。
「私はアルビノなんだ。差別する気か!」と。
そんな無理矢理な言い訳を言う方も可笑しいが、
それで通してしまう、役人も可笑しい(笑)。


ラストは結構ハラハラできる。
そして、さらにその後、
素敵なラストが待っている。


評価 ★★★★☆

「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」 [映画]

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〔2005年/アメリカ〕


メキシコの国境に近い、
テキサス州の田舎町。
ここで、メキシコ人・メルキアデス・エストラーダの
射殺体が埋められているのが発見される。


犯人は割とすぐに判明する。
しかし、それは事件と言うより事故に近く、
犯人に殺意は無かった事が分かる。
また、メルキアデスが不法入国者だった事や、
その他の理由から、
犯人は何となく不問に付され、
遺体はすぐに埋葬されてしまう。


しかし、それに納得のいかない人物がいた。
メルキアデスの親友・ピート(トミー・リー・ジョーンズ)だ。
彼は、メルキアデスが生前、
「万が一、自分が死んだら、故郷のヒメネスという村に埋めてほしい」と
言っていた事を思い出し、
約束を実行する。


犯人を半ば拉致するように連れ出したピートは、
墓から遺体を掘り起こし、
犯人を連れて、国境越えの過酷な旅に出る・・・。





タイトルの「埋葬」という言葉から、
ポーの小説のような怪奇物か、
もしくは、「3度の」という言葉から、
ヒッチコックの、「ハリーの災難」のような、
ブラックな喜劇かと想像したが、
全く違っていた。
男の友情を描いた秀作だ。


これはトミー・リー・ジョーンズ初の監督作品なのだそうだ。
途中までは、時間の経過が前後して、
ちょっと分かりにくいのだが、
話が繋がってくると俄然面白くなってきて、
夢中になって観てしまう。


メルキアデスは、
どこまで本気だったのかは分からないけれど、
彼と約束した埋葬場所に、
なんとかして辿り着こうとする、
ピートの友情がいい。


旅の途中、彼らが崖の淵ギリギリの道を通る場面がある。
見ているだけで、目が眩みそうだ。
自分だけならともかく、
馬に遺体を積んでいるわけだし、
歩きにくそうな事、この上ない。


彼らは途中で、
盲目の老人が一人で住む家で、
食事をもらう。
老人は大変に孤独で、
ある願いを口にする。
それは、メキシコだけでなく、
この日本も決して他人事ではないエピソードで、
どこの国も、高齢者の事情は似たり寄ったりだと
思い知らされる。


やっとヒメネスの当たりに到着した2人だけれど、
そこで、思わぬ展開がある。
うーん、そうくるかぁ、
一体どうすればいいんだと、
観ているこちらまで途方に暮れそうになるが、
ピートの判断で、
メルキアデスの遺体は埋葬される。
そしてラストもいい。


評価 ★★★★☆

「ぱいかじ南海作戦」 [映画]

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〔2012年/日本〕


失業と離婚がダブルでやって来た阿部サダヲは、
自分の全財産を鞄一つにまとめて、
南の島にやって来た。
何もかも忘れて、一から出直すのが目的だった。


ある島に辿り着いた阿部は、
砂浜で暮らす、ホームレスのような4人組と出会う。
俗世間とはまったく無縁で、
魚や海藻や植物を食べて暮らす彼らに、
阿部は憧憬の念を抱き、
仲間に加わる事を決意する。


ところが、ある朝目覚めてみると、
阿部の荷物が全て無くなっており、
4人は姿を消していた。
信じたくはなかったが、
阿部は彼らに裏切られたのだ。


途方に暮れていると、
そこへ、都会暮らしに疲れた若者・永山絢斗がやって来る。
阿部をサバイバルの達人と勘違いした永山は、
阿部を師として崇め、
そこに住みついてしまう。


さらに数日後、
女子二人組・貫地谷しほりと佐々木希が、
キャンプにやってくる。
最初はぎこちなかったが、
次第に意気投合した4人は、
サバイバル生活を謳歌する。


やがて、阿部は、
自分の荷物を持ち去った4人組の噂を聞き、
彼らのいる別の島に向かう事を決意するが・・・。





何だか可笑しくて、
何度も声を上げて笑ってしまう。
ストーリーが、というより、
阿部サダヲのセリフ回しや、
ちょっとした動作に、
何ともいえない可笑しみがあって。


キャンプとは無縁の私だけれど、
浜辺で暮らす面々が、
あまりにも楽しそうで、
無意識にも、
「こういう生活もいいなぁ・・・」と、
自分まで南の風に吹かれているような気にさせられる。


しかし、そんな気の緩みが駄目なんだろうなぁ(笑)。
阿部サダヲが全財産を盗まれるのも、
分かる気がする。
こんな所でゆったり暮らしている人たちが、
悪い事なんか出来るわけないって、
勝手に決め付けてしまうもの。


貫地谷しほりと佐々木希がメンバーに加わった事で、
場の空気がパーッと明るくなった気がする。
もともと明るい浜辺だけれど、
むさ苦しい男だけの生活とはまるで変ってくる。
女の子って、なんで居るだけであんなに華やぐんだろう。


阿部サダヲは佐々木希から告白されるシーンまである。
彼は、「舞妓Haaaan!!!」では、
柴咲コウから、めっちゃ惚れられる役をしていた印象が強くて、
また美女から?なぜに彼が?(笑)と、可笑しくて。


評価 ★★★☆☆