「ツリー・オブ・ライフ」 [映画]
〔2011年/アメリカ〕
これは何と書いたらいいものか。
カンヌ映画祭でパルムドール賞受賞、
ブラピ主演とくれば、
もう少し評価が高くても良さそうなものだが、
日本ではそれほど盛り上がっていないように思える。
で、昨日、劇場に出向いたわけだが、
私が気が付いただけで、
二人のお客さんが途中で帰っていった。
(映画館のトレイを持って出ていかれたので、
戻ってくるつもりはないと思われる)
三人の息子を育てるブラピだが、
躾が厳しすぎて、
息子から嫌われるというストーリー、
という知識はあったが、
前半の1時間くらい、
観念的というか、宗教的というか、哲学的というか、
イメージ映像のような場面が延々と続く。
これにハマれれば、
意外と心地良く観ていられるが、
「こんなものを観にきたんじゃない」と思ってしまうと、
どうにも許せなくなってしまうかもしれない。
ブラピの、高圧的だと言われる息子への態度も、
この程度の親父なら、
昔は多数いたという感じがして、
それほど衝撃は、私にはなかったな。
親なんて、元々理不尽なものでしょ。
酒に酔って暴れたり、
妻子に暴力を振るう父親を描いた映画も多数ある中で、
このブラピなんか、まともな方だ。
結論から言えば、
私はそれなりに楽しめた。
理解できたとは言い難いが、
前半の映像に意外と乗れたからかもしれない。
もう一度観ろと言われたら、
躊躇するかもしれないけど(笑)。
評価 ★★★☆☆
「ゴールデンスランバー」 [映画]
〔2010年/日本〕
堺雅人は、仙台在住。
運送会社でドライバーをする30歳の青年。
ある日、彼は大学時代の友人、吉岡秀隆と久し振りに再会するが、
吉岡の様子がおかしい。
吉岡は、路地に止めた車の中で、
「お前はオズワルドにされる。とにかく逃げろ」と言う。
意味が分からない堺。
同じ時間、すぐそばの大通りでは、
初めての仙台出身の首相が、
凱旋パレードの真っ最中だった。
が、首相は何者かに狙われ、爆死。
堺は吉岡に促されるままに車を降りるが、
その直後、吉岡を乗せた車が、爆発炎上。
近づく警官を振り切って、なんとか逃げた堺だが、
首相殺しの犯人に仕立てられてしまう。
また、首相を暗殺された日本は大騒ぎとなり、
容疑者の堺の写真やビデオが、
連日、テレビで放送される。
そんな中、堺は逃げ切れるのか。
なぜ彼は、首相暗殺の犯人にされたのか・・・。
本来なら緊迫した内容なのだろうが、
登場人物たち全員が、
どこかほんわかとした雰囲気なので、
なんとかなるんじゃないか、と思ってしまう。
一番は、もちろん主人公の堺雅人。
彼って面白いね。
半笑いというか、泣き笑いというか、
笑ってんだか困ってんだか分からないその表情が、
どんな映画でも、いい意味で空気を緩くしてしまう。
彼は一度、極悪人を演じてみたらどうだろう。
連続殺人犯とか。
(私が知らないだけで、演じた事があるのかもしれないけれど)
そんな彼を助けてくれるのが、
堺の元恋人の竹内結子や大学の後輩の劇団ひとり。
そして、知り合ったばかりの柄本明。
堺は二年前に、
強盗に襲われた人気アイドル、貫地谷しほりを助け、
テレビ出演した事があり、
全くの無名人ではないのだ。
彼が犯人に選ばれたのも、
その辺から来ているようなのだが。
貫地谷の話題になると、
堺の友人たちは必ず、
「彼女と関係したのか?(劇中はもっと露骨な言葉だが)」と
聞いてくるのが可笑しい。
なぜに、人の興味の着地点はそこ?
って、私も人の事言えないけど(笑)。
そんな貫地谷も、ラストにいい働きをしてくれる。
原作は伊坂幸太郎の同名小説。
本作もつまらなくはなかったけど、
同じ伊坂幸太郎なら、
「フィッシュストーリー」の方が断然好き。
評価 ★★★☆☆
◆ツリーハウス◆ [本]
新宿にある中華料理店、「翡翠飯店」。
物語は、店を経営する藤代家の祖父が
亡くなる所から始まる。
祖父も祖母も、
自分たちの過去を語りたがらない。
戦前、満州へ渡った二人の彼(か)の地での生活と、
引き上げの時の苦労、
そこに、
現代の場面が交互に出てくる。
大河ドラマと言っていい。
469ページの大作で、読み応え十分だ。
過去の物語は、
実際にあった事件
(浅間山荘立てこもりやら、オウム真理教やら)
を絡めながら、現代に近づいてゆく。
一見、何の変哲もなさそう見える、
余所の家庭も、
実は様々な深い物語があるのだという、
当たり前の事だが、
普段、考えもしないことを思い出させてくれる。
祖母は、息子と孫に連れられ、
中国に行く。
満州時代、世話になり、
どれだけお礼を言っても言い足りない、
そして、
どれだけ謝っても謝り足りないくらい、
申し訳ない事をしたと思っている、
中国人家族を探す為に・・・。
「ドライブ・アングリー3D」 [映画]
〔2010年/アメリカ〕
3D映画は、今まで何本か観てきたが、
今回ほど、「3Dで良かった~♪」と思った事はない。
だって、だって、あのニコラス・ケイジが飛び出して見えるという、
有り難いんだか、有り難くないんだか、なんだかよく分からないその映像が、
馬鹿馬鹿しくて、可笑しくて、
私にはとても嬉しかったのだよ。
最近のニコラス・ケイジは、
借金地獄、自己破産、韓国系嫁へのDV疑惑などなど、
スキャンダルまみれ。
そこへきて、今度は息子の暴れん坊ぶりまでもが話題となり、
なんだかもう、どうしようもない感丸出しなのだが、
結局それも、ハリウッドのお話となれば、
所詮は海の向こうの出来事、
なぜか憎めない、不思議な存在。
借金の額が多ければ多いほど、大スター感も増すってもんだ(笑)。
それに、そんな酷い噂の割に、
仕事は途切れていない感じ。
(借金返済の為に、仕事を選んでいる場合ではないという説もあるが(笑))
私は彼が好きだから、
映画に出てくれれば、他の事はもうどうでもいいや。
で、この映画。
カルト宗教の教祖、ビリー・バークに娘を殺され、
孫を誘拐されたニコラス・ケイジが、
復讐の鬼と化すという内容なのだが、
わたし的にウケたのは、
ニコラス・ケイジに孫、というその設定。
ショックなような、感慨深いような(笑)。
話は逸れるけど、
じゃあ、彼と同年代の大スターたち、
ジョニー・デップ、ブラッド・ピット、トム・クルーズ、キアヌ・リーブスなども、
そろそろ孫がいる役をしてもおかしくはないって事か。
で、ケイジは、
途中で拾った若い女、アンバー・ハードと一緒に
ビリー・バークを追いかけるんだけど、
このアンバー・ハードという女優は、
綺麗な上に、元気があって中々よろしい。
女の私が見ても、結構好き。
ところがなぜか、ケイジを追いかけてる男、ウィリアム・フィクトナーがいる。
実はケイジにも、フィクトナーにも、
とんでもない秘密があって、笑えるんだな。
そのとんでもなさこそが、ニコラス・ケイジの持ち味。
やっぱり彼は良いよ。
評価 ★★★☆☆
「エレンディラ」 [映画]
〔1983年/メキシコ・ドイツ・フランス〕
エレンディラ(クラウディア・オハナ)。
14歳。
彼女は、彼女を家政婦のように扱う、
鬼のような祖母(イレーネ・パパス)と二人暮らし。
今夜も、様々な用事を言いつけられ、
返事はしたものの、
疲れ切って、眠ってしまう。
ところが、蝋燭の火がカーテンに燃え移り、
火事を出してしまい、
怒った祖母は、
償いの為だと、彼女に売春を強要。
初めての客は、村で商店を営む中年男。
以来、エレンディラと祖母の、
売春行脚が始まる・・・。
なんとも、有り得ない内容。
14歳の少女が、
砂漠に張ったテントで、客を取り、
それを仕切るのが、実の祖母。
祖母を演じるイレーネ・パパスが強烈。
見た目も怖いし、
全ては自分中心。
次の商売の場を求めて、旅する時も、
エレンディラを歩かせて、
自分は籠に乗って、ふんぞり返ってるよ。
エレンディラの若さと可愛さが、
男たちの間で大評判になって、
テントは連日、長蛇の列。
近所の売春宿は、閑古鳥が鳴く始末。
けれど、そんな内容でも、
エレンディラにそれほどの悲壮感がないんだな。
それどころか、
知り合った同じ年くらいの美しい少年、ユリシス(オリヴィエ・ウェーヘ)に、
自分から体を与えちゃったり。
南米の女は、そんな事では挫けないんだろう。
とにかく強い。
原作は、ノーベル文学賞作家、ガブリエル・ガルシア=マルケスの
中編小説。
評価 ★★★☆☆