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「バティニョールおじさん」 [映画]

Batignoleojisan.jpg
〔2002年/フランス〕


1942年。
パリで総菜屋を営むバティニュールおじさん(ジェラール・ジュニョ)は、
ある朝、地下の倉庫からハムが盗まれて気付き、騒ぎになる。
窓の大きさからして、犯人は子どもではないかと思われる。


同じ時刻、
総菜屋の上階に住む、ユダヤ人家族は、
ナチスからの迫害を逃れスイスに旅立つため、
今、まさに、車に乗り込もうとしていた。


おじさんの娘の婚約者はナチスの支援者で、
ユダヤ人家族の息子がハムを盗んだと言い出し、
警察に通報する。
おじさんがハムの事で父親を追及している間に、
収容所行きの車が着てしまい、連行されてゆく家族。
父親は、格子のかかった窓から、
憎しみとも悲しみとも取れる目でおじさんを見つめ、
おじさんも、あまりの展開に言葉も出ずに見つめ返すだけであった。


ところが数日後、連行されたはずの家族の12歳の息子が、
一人戻ってくる。
驚いたおじさんは、少年を屋根裏部屋に匿う。
少年は、汽車に乗せられる際、
隙を見て逃げ出してきたと言う。
さらに、数日後、
少年の従姉妹の少女二人もやって来てしまう。


なんとかして、三人の子どもをスイスに連れて行かねばならない。
おじさんは、金を作り、偽造パスポートを作り、
4人の国境越えの旅が始まる。
果たしておじさんは、
子どもたちを無事スイスまで送りとどけられるのか・・・。





牧歌的なタイトルとは裏腹に、
内容は思っている以上にシリアスであり、
けれど、笑える場面もあるという、
とても良く出来た映画だ。


冒頭からスリリングな展開で、
おじさんには、本当にイライラさせられる。
証拠もないのにハムを盗んだと、
ユダヤ人の子どもを疑い、
父親とモメている間に、警察の車が来てしまう。
父親も、おじさんなんか突き飛ばしてでも、
行ってしまえばいいのにと思うが、もう遅い。


おじさんは、決して良い人ではないのだよ。
逃げてきた少年に対しては迷惑そうだし、
優しい言葉を掛けるわけでもない。
子どもが増えた時も、
「あちゃー」といった感じで、
ますます困り果てる。


でも、なぜか、おじさんは、
子どもたちを逃がす為に奔走する。
旅立つまでに、様々な罪を背負ってまでも。
それは何故なのか、
自分のせいで、ユダヤ人一家が連行される事になってしまった、
罪の意識からなのか。


観ている私にも、これだ!という明確な理由は分からない。
ただ、人間としてなんとかしなければという思いに
突き動かされての事だとは感じられる。


後半の、スイスへの旅は笑える。
珍道中といってもいい作りで、
おじさんと子どもたちのやり取りや、
途中で起こる様々な出来事を乗り越えてゆく様子が可笑しい。
そして、ラストは泣ける。


評価 ★★★★☆

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◆明日の風◆ [本]


明日の風

明日の風

  • 作者: 梁 石日
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2010/09/17
  • メディア: 単行本


梁さんが山本周五郎賞を受賞した名作、
「血と骨」の焼き直しと言おうか、ダイジェスト版と言おうか。


ほぼ同じ内容の本をなぜ出版したのか、
ちょっと分からないけれど、
「血と骨」を再読したいと思いつつ、
あのページ数に躊躇していた所だったから、
まぁ、よしとするか。


戦中、戦後の在日コリアンの暮しは、
やはり何回読んでも面白い。
同じ言葉を話しながら、
日本人の私には理解できないような、
その暮らしぶり、考え方。


これが外国の話なら、
そういうものかで終わってしまうのだろうが、
この日本で、このような文化があった事に、
いつも、強い興味を感じる。

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