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「カサンドラ・クロス」 [映画]

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〔1976年/ドイツ・イタリア・イギリス〕


スイス・ジュネーブにある、
アメリカの極秘細菌研究所に3人のテロリストが忍び込む。
しかし、警備員に見つかり銃撃戦となり、
その際、テロリストの1人が、
非常に伝染性の強い細菌を浴びてしまう。


そのまま逃げたテロリストは、
乗客1,000人が乗る大陸横断列車に乗り込む。
それを突き止めた、アメリカ陸軍大佐、バート・ランカスターは、
列車の行き先を、ストックホルムから、
検疫所のあるポーランドのヤノフへの変更を命令する。


しかし、ヤノフへ向かう途中には、
戦後30年間も使用されていない、
“カサンドラ・クロス”と呼ばれる老朽化した鉄橋があり、
そこを通るのは非常に危険だと、
乗客の1人、リー・ストラスバーグが言い出す。


テロリストは発見されたが発病し、死亡。
そして、既に何名かの乗客が感染し発病。
途中の駅で、武装した警備隊が乗り込み、
車内は物々しい雰囲気に包まれる。


列車に乗っていた医師、リチャード・ハリス、
彼の元妻、ソフィア・ローレンが、
乗客たちの先頭に立ち、
発病した者の面倒をみたり、
指示を出していたが、
様々な出来事により、無線が使えなくなり、
ランカスターとの通信ができない。


列車はどうなるのか。
1,000人の乗客の運命は・・・。





35年も前のパニックものだが、
それなりに楽しめる。
特撮や合成だと明らかに分かるが、
それでも当時は、凄い映像だったのではないかと想像できる。


可笑しいのは、
乗客1,000人というわりに、
活躍するのが、メインの5~6人だものだから、
乗っているのはせいぜい20~30人くらいにしか
見えないところ。


どうでもいい事だけれど、
これをきっかけに、
列車って何人くらい乗れるのか計算してみたら、
たとえば、新幹線で全部の席が埋まっているとしたら、
1,000人以上乗っている事を知った。
今まで考えた事がなかったけれど、
そんな数の人が一斉に移動するって、
凄い事だわ。


ソフィア・ローレンがとても綺麗。
今まで、強い顔の女というイメージしかなかったけれど、
なんだか印象が変わったな。


牧師に化けた刑事というカッチョいい役で、
O・J・シンプソンが出ていた。
例の事件については、
裁判で決着がついているので何も書かないが、
2007年に別の事件で逮捕され、
有罪判決を受けている事を、観終わってから知った。
なんというか、もう・・・。


評価 ★★★☆☆

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◆テティスの逆鱗◆ [本]


テティスの逆鱗

テティスの逆鱗

  • 作者: 唯川 恵
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/11
  • メディア: 単行本


美容整形クリニックの女医と、
彼女の患者、4人の女性の物語。


女優、
キャバクラ嬢、
働く主婦、
資産家の娘。


どの女も、自分の美に執着する、
いわば整形依存症のような状態で、
ホラーにも近いような内容。


女優に関しては、実在の○○さんを、
資産家の娘に関しては、ピート・バーンズを、
それぞれ頭に思い浮かべながら読んだ。


私自身は、整形には全く興味がないが、
(必要ないわけではなく、痛そうなのがイヤで(笑))
やっぱり一度取り付かれてしまうと、
抜け出せないんだろうなというのは分かる。


美容整形と芸能界の内幕が垣間見られるのが楽しい。
簡単に読める。

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「扉をたたく人」 [映画]

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〔2007年/アメリカ〕


リチャード・ジェンキンスは、コネティカット州に住む、
62歳の大学教授。
妻を亡くし、落ち込みがちな彼は、
偏屈で融通が利かない、孤独な男だった。


ニューヨークでの学会に出席する為、出掛けた彼が
マンハッタンに所有するマンションの鍵を開けると、
アラブ系の男、ハーズ・スレイマンと黒人の女、ダナイ・グリラのカップルが、
そこで暮らしていた。
彼らはその部屋がジェンキンスのものだと知らず、
騙されて借りていたのだ。


不法滞在の彼らは、通報される事を恐れ、
部屋を出ていくが、
行き場のない彼らを不憫に思ったジェンキンスは、
数日間の滞在を許す。


スレイマンとグリラは、素直で真面目なカップルで、
アフリカの太鼓、ジャンベ奏者のスレイマンは、
ジェンキンスにジャンベを教え、
ジェンキンスも、その音や奏法に魅了されてゆく。


すっかり打ち解けあったジェンキンスとスレイマン。
しかし、二人が地下鉄の改札に入ろうとした時、
料金を払っていないと勘違いした警察に、
スレイマンが逮捕されてしまい、
不法滞在も発覚する。


ジェンキンスは、自分の弁護士に頼んで、
なんとかスレイマンを刑務所から出してもらえるように奔走するが、
事は、中々思うように進まない。
数日後、連絡が取れなくなった事を不審に思った、
彼の母、ヒアム・アッバスがニューヨークにやって来て、
息子の逮捕を知るのだった・・・。





孤独な初老の男と、不法滞在のカップルの交流が、
心温まる秀作。
ジャンベという楽器を通して、
心を開いてゆくリチャード・ジェンキンスの様子を、
ホッとしたような思いで観ていた。


ハーズ・スレイマンが実に良い。
フレンドリーで明るく、
とても気持ちの良い青年だ。
こんな良い若者が、
刑務所に入れられる、その現実。
もちろん、法律があるのだから仕方ないが、
何とかならないものかと、もどかしい。


それで、もしかしたら間違った考えかもしれないけれど、
一つ、思い立った事がある。
スレイマンの母親、ヒアム・アッバスは、
美しく、理知的な女性で、
しかも、夫とは死に別れている。
もう、こうなったら、
ジェンキンスとアッバスが結婚しちゃうってのはどう?って。


偽装結婚は摘発されるけれど、
二人はとても打ち溶け合って、
一緒にニューヨーク観光したり、
同じベッドに入ったりしているのだよ。
れっきとした恋愛結婚なら、誰にも文句はあるまい。
法律の事は分からないから、
絶対とは言えないけれど、
結婚しちゃえば、アメリカ国民になれるんじゃ?
息子は扶養家族って事で(駄目?)。


もちろん、事は私の思う通りには進まない。
そんな簡単な事じゃないものね。


評価 ★★★★☆

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「『女の小箱』より 夫が見た」 [映画]

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〔1964年/日本〕


現在、新文芸坐で上映されている映画のテーマは、
「若尾文子 鮮烈と可憐」。
未見の若尾作品が上映されるのは、とても嬉しい。
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若尾文子は、結婚8年目の人妻。
夫、川崎敬三は、ここ半年仕事が忙しく、
午前様や外泊もしょっちゅうだ。
若尾は子供を望んでいるが、
そんな願いは、とても叶いそうにない。


川崎の会社は、
クラブやバーを手広く経営する男、田宮二郎に乗っ取りをしかけられており、
悪戦苦闘の毎日であった。
野心家の田宮は川崎の会社の株の買占めに走っており、
このままでは、株の50%を田宮が所有する事になってしまうのだ。


川崎は、田宮が経営するクラブのホステスと懇意になり、
情報を聞き出そうとしていた。
帰ってこない川崎を待つ若尾は、
親友の女医に連れられ、夜遊びに出掛けるが、
奇しくも、出向いた先は田宮のクラブであった。


田宮は、若尾が川崎の妻だと知り、
株主名簿をなんとか手に入れようと、彼女に近づく。
田宮は、その潤沢な資金源に、
「金の成る木を持っている」などと不思議がられていたが、
それは、彼を深く愛する長年の恋人、岸田今日子が、
自分の体を金持ち爺さんに売って得たものであった。


田宮は長年の夢、会社経営にあと一歩の所まで近づくが、
若尾と会っているうちに、
彼女を本気で愛し始める。
しかし、若尾には川崎がいるし、
田宮には岸田がいる。
田宮の夢はどうなるのか、
若尾との関係は・・・。





大変に面白く観た。
前半は、クールでニヒルな田宮二郎が、
会社の乗っ取りを企てる様子と、
夫から愛されない淋しい主婦、若尾文子の生活が面白く、
この先どうなるのかと、ワクワクする。


それが一転、後半はメロドラマだ。
冷静だった田宮が若尾に惚れてしまう。
それも田宮の作戦の一つで、
「フリ」をしているのかと思ったが、
どうもそうではないらしい。
二人は本気になる。
前半と後半のギャップが可笑しい。
一本で二度楽しめる。


しかし、岸田今日子の気持ちを思うと、
事はそう簡単にはいかない。
若尾が夫を捨てるのは簡単だ。
川崎敬三は、自分の事しか考えていない嫌な男だから、
観ているこちら側も、離婚大賛成だが、
けれど、岸田が払ってきた犠牲はあまりにも大きい。
田宮の為に体を売り、手にした大金は、
全て田宮の夢の為に使ってきたのだ。
「他に女ができた」「はい、そうですか」では済まされない。


若尾さんの入浴シーンが何度もある。
あのムチムチの体は、
当時、魅力的だったのでしょうね。
(ヌードは吹き替えらしいけれど)。
しかし、そんな肉体も、
夫に触れられずに悩む様子は、
痛々しく、まさに宝の持ち腐れ。
田宮二郎と初めて関係した時は、
演技とはいえ、
枯れかけた花が生き返ったようだった。


色と欲が渦巻く傑作。
ラストは壮絶。


評価 ★★★★☆

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「ディア・ドクター」 [映画]

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〔2009年/日本〕


山あいの小さな農村。
ある日の夕方、バイクで診療所を飛び出したまま帰ってこない、
村でたった一人の医師、笑福亭鶴瓶を心配した村人たちは、
警察に通報、
二人の刑事、松重豊と岩松了が捜査を担当する事になる。


鶴瓶は、数年前に無医村であるこの地にやって来た。
優しく、熱心な鶴瓶は村人の信頼を得、
診療所はいつも満員だ。


鶴瓶が失踪する2か月前には、研修医、瑛太もやって来て、
鶴瓶の仕事を手伝う。
瑛太は開業医を父に持ち、
真っ赤なスポーツカーを乗り回すようなドラ息子で、
初めは、老人しかいないこの僻地の診療所に抵抗を感じていたが、
鶴瓶の、村人に対する態度に触れてゆくうちに、
この村に留まりたいと思うようになるまで、成長してゆく。


ある日、鶴瓶は、村の老女、八千草薫を診察する。
彼女の胃は、相当に悪い状態のようであった。
八千草の娘、井川遥は東京で医者をしており、
しかし、娘に迷惑をかける事を嫌った彼女は、
鶴瓶になんとかしてほしいと願い出る。


夏休みを利用して帰省してきた井川は、
母の具合が悪そうである事に気付き、
鶴瓶に、どのような治療をしているのか質問攻めにする。
最初は鶴瓶の治療に懐疑的だった井川だが、
彼の説明に納得、礼を言う。


ところが、その時である。
不意に立ち上がった鶴瓶が、
診療所を飛び出し、そのまま二度と帰ってこなかったのは。
なぜ彼は急に失踪したのか。
松重と岩松が調べるうちに分かってきた、彼の正体とは何だったのか・・・。





「ゆれる」の西川美和監督の映画。
たしか「ゆれる」も明確な答えのないラストであったが、
この映画も、
鶴瓶の正体を明かしてはいるが、
彼がそうなった明確な理由までは、明かされていない。


深いんだか、浅いんだか、
よく分からない内容。


しかし、彼が失踪するきっかけとなった、
井川の言葉には重みがあった。
彼女は鶴瓶に、母への適切な診療の礼を言い、
「次に帰省するのは多分一年後になると思われます。
 その時まで母の診察をよろしくお願いします」と頭を下げる。


私が鶴瓶の立場でも、
そんな事を言われた日には、
逃げ出したくなるだろう。
詳しく書けないのがもどかしいが。


瑛太が医師として、この村で診療を続けたいと、
鶴瓶に打ち明けた時の、
会話の噛み合わなさが笑える。
日本語っていいな、面白いな、と思わされる、
とてもいいシーンだと思う。


ラスト、ある出来事があり、
笑い出す八千草薫。
その、なんとも言えない微妙な笑い顔の演技が素晴らしくて、
そこだけDVDを戻して、
もう一度観てしまった。
やっぱりベテランね。


評価 ★★★☆☆

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