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「『女の小箱』より 夫が見た」 [映画]

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〔1964年/日本〕


現在、新文芸坐で上映されている映画のテーマは、
「若尾文子 鮮烈と可憐」。
未見の若尾作品が上映されるのは、とても嬉しい。
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若尾文子は、結婚8年目の人妻。
夫、川崎敬三は、ここ半年仕事が忙しく、
午前様や外泊もしょっちゅうだ。
若尾は子供を望んでいるが、
そんな願いは、とても叶いそうにない。


川崎の会社は、
クラブやバーを手広く経営する男、田宮二郎に乗っ取りをしかけられており、
悪戦苦闘の毎日であった。
野心家の田宮は川崎の会社の株の買占めに走っており、
このままでは、株の50%を田宮が所有する事になってしまうのだ。


川崎は、田宮が経営するクラブのホステスと懇意になり、
情報を聞き出そうとしていた。
帰ってこない川崎を待つ若尾は、
親友の女医に連れられ、夜遊びに出掛けるが、
奇しくも、出向いた先は田宮のクラブであった。


田宮は、若尾が川崎の妻だと知り、
株主名簿をなんとか手に入れようと、彼女に近づく。
田宮は、その潤沢な資金源に、
「金の成る木を持っている」などと不思議がられていたが、
それは、彼を深く愛する長年の恋人、岸田今日子が、
自分の体を金持ち爺さんに売って得たものであった。


田宮は長年の夢、会社経営にあと一歩の所まで近づくが、
若尾と会っているうちに、
彼女を本気で愛し始める。
しかし、若尾には川崎がいるし、
田宮には岸田がいる。
田宮の夢はどうなるのか、
若尾との関係は・・・。





大変に面白く観た。
前半は、クールでニヒルな田宮二郎が、
会社の乗っ取りを企てる様子と、
夫から愛されない淋しい主婦、若尾文子の生活が面白く、
この先どうなるのかと、ワクワクする。


それが一転、後半はメロドラマだ。
冷静だった田宮が若尾に惚れてしまう。
それも田宮の作戦の一つで、
「フリ」をしているのかと思ったが、
どうもそうではないらしい。
二人は本気になる。
前半と後半のギャップが可笑しい。
一本で二度楽しめる。


しかし、岸田今日子の気持ちを思うと、
事はそう簡単にはいかない。
若尾が夫を捨てるのは簡単だ。
川崎敬三は、自分の事しか考えていない嫌な男だから、
観ているこちら側も、離婚大賛成だが、
けれど、岸田が払ってきた犠牲はあまりにも大きい。
田宮の為に体を売り、手にした大金は、
全て田宮の夢の為に使ってきたのだ。
「他に女ができた」「はい、そうですか」では済まされない。


若尾さんの入浴シーンが何度もある。
あのムチムチの体は、
当時、魅力的だったのでしょうね。
(ヌードは吹き替えらしいけれど)。
しかし、そんな肉体も、
夫に触れられずに悩む様子は、
痛々しく、まさに宝の持ち腐れ。
田宮二郎と初めて関係した時は、
演技とはいえ、
枯れかけた花が生き返ったようだった。


色と欲が渦巻く傑作。
ラストは壮絶。


評価 ★★★★☆

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