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◆明日の風◆ [本]


明日の風

明日の風

  • 作者: 梁 石日
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2010/09/17
  • メディア: 単行本


梁さんが山本周五郎賞を受賞した名作、
「血と骨」の焼き直しと言おうか、ダイジェスト版と言おうか。


ほぼ同じ内容の本をなぜ出版したのか、
ちょっと分からないけれど、
「血と骨」を再読したいと思いつつ、
あのページ数に躊躇していた所だったから、
まぁ、よしとするか。


戦中、戦後の在日コリアンの暮しは、
やはり何回読んでも面白い。
同じ言葉を話しながら、
日本人の私には理解できないような、
その暮らしぶり、考え方。


これが外国の話なら、
そういうものかで終わってしまうのだろうが、
この日本で、このような文化があった事に、
いつも、強い興味を感じる。

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「眠狂四郎 魔性剣」 [映画]

nemurimashoken.jpg
〔1965年/日本〕


ある雨の日、眠狂四郎(市川雷蔵)は、
傘で顔を隠した女から声を掛けられる。


「自分を買ってほしい」と言う女だが、
その言葉遣いや物腰から、
身分が高いと悟った狂四郎。
女に連れられ、彼女の閨に行くが、
女は面を付けた状態で、着物を脱ぎ始める。
面を付けた女と関係する気はないと、
金だけ渡して別れる狂四郎。


ところが翌日、大工の娘が少年を伴って、
狂四郎の家にやって来る。
昨日の女は自害し、
狂四郎に向けた遺書があると言う。
遺書には、渡した金が挟まれており、
女のプライドを傷つけてしまったと知った狂四郎は、
激しい後悔の念に襲われる。


さらに、娘の連れている少年は、
自害した女が面倒をみていた子、鶴松で、
岩代藩の城主の妾腹だという。
本妻の子でない鶴松は養子に出されたのだが、
世継ぎに恵まれない城主が、
鶴松を連れ戻しに来ると言うのだ。


勝手な城主のやり方に腹を立てた狂四郎は、
鶴松を匿うが、
見つかり、連れ去られる・・・。





シリーズ6作目。


いつもはクールで、
誰が死んでも心を動かさない狂四郎が、
たった一人の女が自害した事を気に病む様子が、
なんだか珍しい。


さらに、鶴松を匿ったり、
彼に、「これが侍だ、よく見ておけ」と、
敵との刀争いを見せるなど、
どこか父性本能に目覚めたような、その様子が、
可愛いと思ってしまった。


毎度毎度の事だけれど、
狂四郎を騙す手段は、
なぜに、いつも女?(笑)
彼はよほど女に弱いと思われているのか?


それから、今回は、
“黒ミサ”と呼ばれる、気持ちの悪い儀式があった。
女が生贄のようにされて、
人々が熱心に祈っている所に乗り込む狂四郎。
やっぱり女がらみ(笑)。


評価 ★★★☆☆

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「ジャングル・フィーバー」 [映画]

junglefever.jpg
〔1991年/アメリカ〕 


ウェズリー・スナイプスは、建築デザイナーの黒人エリート。
妻と可愛い娘がおり、生活は順調だ。


ある日、派遣会社から、イタリア系白人、アナベラ・シオラが、
彼の秘書としてやってくる。
黒人女性を希望していたスナイプスだったが、
シオラと毎日一緒に仕事をしてゆくうちに、
彼女の能力と人柄に惹かれ始め、ついに二人は一線を越えてしまう。


この事は、彼の妻にすぐに知られる事となり、
怒り狂った妻は、彼を家から追い出す。
シオラの父親も、娘が黒人と関係した事へのショックで、
シオラを激しく殴打し、最後はベルトで彼女を打つ。


また、スナイプスはシオラを実家に連れてゆくが、
両親も、息子が白人と付き合う事に激しい嫌悪感を示すのだった。


シオラには、恋人、ジョン・タトゥーロがいたのだが、
黒人に彼女を奪われたショックは大きく、
タトゥーロの父親も、そんな息子の不甲斐なさを嘆く。


スナイプスとシオラは一緒に暮らし始めるが、
しかし、次第に齟齬が生じ始める・・・。





黒人男性と白人女性の恋愛に切り込んだ、
スパイク・リー監督の社会派映画だが、
ウェズリー・スナイプスを独身と設定した方が良かったように、
私には思えた。
この内容では、異人種間の恋愛がタブーなのか、
不倫がタブーなのか、焦点がぼやけてしまっている。


まぁ、それはさて置き、
黒人であるスパイク・リー監督だから描けたと思われる、
数々のセリフがきわどい。


自分の恋愛を女友達に相談したアナベラ・シオラだが、
女友達は相手が黒人と知るや驚き、
「私は絶対イヤ。気持ち悪い」と言う。
スナイプスの友人たちも、
彼が白人女と出来上がった事に驚きを隠さない。
白人監督が作った映画だったら、シャレにならない。


また、路上で二人がケンカをしていると、
パトカーが駆けつけてくる。
「黒人男が白人女をレイプしていると通報があった」、と。
ああ、これこそが黒人に対するアメリカ社会の意識なんだなと、
私には、その場面が一番印象に残った。


アメリカ人でない私に、
本当の意味でこの映画が理解できたかは分からないし、
分かったような事も言いたくない。
日本だって、差別が全く無いかと言えば、
そうじゃないしね。


異人種間の恋愛が、
家族や友人まで巻き込んで、大騒ぎになる事だけは理解できた。
そして、そこで生まれた子供は、
白人社会にも、黒人社会にも受け入れられず、
苦しむであろう事も。


スナイプスの妻は、黒人と白人のハーフという設定で、
今は、黒人としてコミュニティに根を下ろしているが、
幼い頃は辛かった事を仄めかしているし、
例えば、オバマ大統領も黒人と白人とのハーフだが、
幼心に、それは違和感だったと何かで読んだ。


人間がいる限り、差別は無くならない。
多分、永遠に。


評価 ★★★☆☆

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「ホワイト・ライズ」 [映画]

whitelies.jpg
〔2004年/アメリカ〕


広告会社で働くジョシュ・ハートネットは、
仕事は順調、結婚も間近に控え、順風満帆な日々。


ところが、仕事の打ち合わせをするレストランの電話ボックスで、
昔の恋人、ダイアン・クルーガーらしき女を見かける。
ハートネットとクルーガーは深く愛し合っていたが、
2年前、クルーガーは突然ハートネットの元から姿を消したのだ。


今でもクルーガーを忘れられずにいるハートネットは、
電話ボックスに残されていたホテルの鍵から辿ってゆき、
ついに、クルーガーの住むマンションを見つける。
ところが、その部屋に住むのは、
クルーガーと同じ名前の別の女だった。
混乱するハートネット。


実はハートネットとクルーガーの2年前の別れは、
ある一人の人物によって仕組まれた事だったのだ。
別れたくないのに、引き離された二人。
二人は再会できるのか。
なぜ二人は、そんな目に遭ったのか・・・。





最初は、ダイアン・クルーガーに何かとてつもない秘密があって、
ジョシュ・ハートネットがそこに嵌められてゆくのかと思ったんだけど、
話は途中から意外な展開に。
そ、そういう事だったの!?
という方向へ、物語が進んでゆく。


時間軸をズラしながら、
次第に真相が明らかになる過程は、
とても面白い。
ただ、めっちゃイライラさせられる(笑)。


ミステリー色が強いので、
あまり詳しくは書けないが、
何故、留守電にメッセージを残さないんだ!とか、
何故、仲介してくれた友人にケータイ番号を言わないんだ!とか、
プロポーズされたら、その場で返事しろ!とか、
待ち合わせの場所くらい、きちんと言え!とか、
そんなのばっか(笑)。


ケータイがある今の時代、
すれ違いドラマを作るのは難しいと思っていたけれど、
作って作れなくはないのね、と思った次第。


フランス映画、「アパートメント」をリメイクらしい。
未見なので、ハッキリした事は言えないが、
1995年にオリジナルが作られた時、
ケータイはまだ、一般的ではなかったと思われるから、
リメイクは辻褄合わせに大変だったんじゃないのかな。


「アパートメント」は評価も高く、
本作とは違った味わいがあるようだ。
いつか絶対観てみたい。


評価 ★★★☆☆

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「深呼吸の必要」 [映画]

shinkokyunohitsuyou.jpg
〔2004年/日本〕


2月の沖縄の離島。
船着場に、香里奈、谷原章介、成宮寛貴、長沢まさみ、金子さやかの5人が
降り立った。
そこへ、ライトバンを運転する大森南朋がやって来て、
老夫婦が生活する家に、彼らを連れてゆく。


彼らは互いに面識はなく、
“きび刈り隊”と呼ばれる、さとうきびの収穫のバイトをする為、
本土からこの島にやって来たのだ。
大森は、この季節には必ずここに来て、収穫を手伝う、
いわばベテランで、毎年バイトに来る若者に仕事を教えている。
その大森から、今後の説明を受ける5人。


収穫は35日間。
日当5,000円。
部屋は一つしかないから、カーテンで仕切って男女で分かれる。
言いたくない事は、言わなくていい・・・などなど。


翌日、さとうきび畑に連れていかれた5人は、
7万本ものさとうきびが茂る、
想像をはるかに越えた広い畑に驚く。


最初は手際も悪く、苛立つ事も多かった彼らだが、
仕事にも慣れてきた頃、
互いの境遇が少しずつ分かってくる。
そんな中、ある事故が起こり、
さとうきびの収穫はピンチを迎える・・・。





話の流れは想像通り。
季節はずれの沖縄に、
わざわざバイトにやって来る若者に、
何か理由がないわけはなく、
それが次第に分かってくるというのも、
よくある展開。


香里奈がとても真っ当で、ホッとできる。
最初からハキハキとした受け答えのできる明るい女性で、
他人への接し方もきちんとしている。
彼女の役が一番平凡だけど、
この手の映画は、誰か真っ当な人がいないと、
めちゃくちゃになっちゃいそうで(笑)。


大森南朋は、野菜や果実の収穫の為、
季節ごとに日本全国を回っていると言う。
それを話す大森の様子は、
どこか、「何ものにも縛られない自由な俺」みたいな空気が感じられて、
案の定、大学生の成宮寛貴から痛烈な反撃を受ける。
何も言い返せない大森。


小心者の私もやっぱり、
大森南朋のような暮しは出来そうにもないな。
サラリーマンを馬鹿にするような物言いも、
どうなんだろう。
一生懸命働いているのは、誰もが同じなんだから。


悪い映画ではない。
やっぱり考えさせられる。
放浪はできそうにもない私でも、
35日間という期間限定なら、
なんとかできそう、という気にさせられるし、
その見慣れない収穫場面も、
なんだか珍しくて、やってみたくなった。


評価 ★★★☆☆

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