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「眠狂四郎 多情剣」 [映画]

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〔1966年/日本〕


呼び出しの手紙を受け取った眠狂四郎(市川雷蔵)は、
書かれた場所に出向く。
娼家が立ち並ぶその町で、
狂四郎は、客引きの男たちに取り囲まれ、
15歳の生娘を買わないかと言われる。


承知した狂四郎だが、
その娘、はるは、狂四郎を憎しみの目で見ていた。
彼女の父親は、侍に殺されたのだ。


そこへ刀を持った男たちが狂四郎に襲いかかってきた。
相手をなぎ倒した狂四郎は、
自分を狙う大物の正体は、
将軍家の娘、菊姫だと知る。


菊姫は、顔にある火傷の痕を能面で隠し、
淫蕩な遊びを繰り返す女で、
そんな彼女の仮面を
狂四郎が剥ぎ取った過去があり、
辱めを受けたと、
激しい憎悪に燃えているのだ。


菊姫は、あの手この手で狂四郎を狙い、
ついには、はるを拉致し、狂四郎をおびき出す・・・。





シリーズ第7作。


狂四郎を執拗に追い、
命を狙う菊姫だが、
実は彼女は、狂四郎に恋慕しているのではと、
家臣に指摘され、ハッとする場面がある。
愛と憎しみは紙一重という事か。
なかなか興味深い。


娼家に売られた15歳の少女を買戻し、
働き口まで見つけてやる狂四郎。
彼は色好みだが、
子供に手を出したりはしない。
そういった、どこか潔癖な所が彼の魅力なのね。


「円月殺法」の本当の意味が分かった。
(遅い?(笑))
敵の前で刀を回すのは、
相手の心を惑わせるというか、
ある種の催眠術のような効果があるのかと。
そういう理解でよろしいのだろうか。


評価 ★★★☆☆

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「砂と霧の家」 [映画]

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〔2003年/アメリカ〕


ジェニファー・コネリーは夫と別れ、
現在は無職の、落ち込みがちな日々。
しかし、その事を母親には言えず、
電話では、幸せな風を装っていた。


彼女は父親が残してくれた海辺の家に住んでいたが、
ある日、突然、税務署の係員が訪れ、
税金が滞納しているので、家を差し押さえると言う。
それは税務署の間違いであったが、
時すでに遅く、家は競売にかけられ、
すぐに売れてしまう。


買い取ったのは、イランから亡命してきた元軍人、
ベン・キングズレー。
彼はイランでは裕福な暮しをしていたが、
今は、肉体労働から、コンビニのレジを掛け持ちする、
貧しい生活。
窓から海が見えるコネリーの家は、
かつて住んでいたイランの別荘と環境が似ており、
相場の1/4の値段で買えた事を、妻も喜んでいた。


しかし、住む家を失ったしまったコネリーは、
この家は自分のものだと主張、
双方の争いは激化してゆく。
コネリーは、この件で知り合った警官、
ロン・エルダードの力を借り、
キングズレーに詰め寄るのだった。


互いに歩み寄れない事に絶望したコネリーは、
家の前で自殺を図るが死に切れず、
しかし、キングズレーの妻や息子の暖かい心に触れる。
なんとか折衷案を出してきたキングズレーだったが、
思いもかけぬ事件が起こる・・・。





とにかく暗く、救いのない話。
笑える場面は一つも無く、
シリアスで、シャレにならないエピソードばかり。


こんな八方塞の状態じゃ、
ジェニファー・コネリーも辛かろうなぁ、
でも、ベン・キングスレーだって、
格安で買った家を手放したくはないだろうし、と、
どちらの気持ちも分かるから辛い。


ただ、こんなシリアスな内容でも、
必ず男女問題を絡ませてくるのがお約束。
淋しいのは分かるけど、
すぐに出来上がってしまう、コネリーとエルダード。
しかもエルダードは妻子持ちで、
警官とはいえ、どうも胡散臭く、
案の定、こやつのせいで、
より事が大きくなってゆく。


ラストも救いようがない。
一番、そうなってほしくなかった展開。
この映画には、なにかメッセージがあるのだろうか。
アメリカ社会とアラブ系移民の問題?
私にはよく分からない。


「衣食住」とはよく言うが、
やっぱり「住」は大切だよなぁと、
そちらの方を思い知らされる内容。
普段はあまり考えないけど、
雨風凌げる場所があるって、
とても重要な事なのね。


評価 ★★★☆☆

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「人のセックスを笑うな」 [映画]

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〔2008年/日本〕


美術学校に通う松山ケンイチは、
ひょんな事で知り合った女、永作博美が、
学校の臨時講師だった事を知る。


永作の奇妙な魅力に惹かれた松山は、
彼女の教室に出入りするうちに、
絵のモデルになってほしいと言われ、
彼女のアトリエに行く。
ところが、そこでヌードにされてしまい、
そのまま永作と関係する。


以来、二人は恋人同士のようになるが、
松山に片思いしている蒼井優は、
永作のような年上の女に松山が夢中になっている事に
ショックを隠しきれない。


ある日、松山は永作の自宅を突然訪問する。
応対に出た初老の男を、
永作の父親だと思い込んだ松山だったが、
彼女の口から、あれは夫だと知らされ驚く。


永作との付き合いをやめようと決めた松山だが、
思いは募る一方で、
見兼ねた蒼井は、
松山を連れ出し、観覧車の中で彼をどやしつける。


永作と再会した松山だったが、
その直後、永作は松山に告げずに学校を辞めてしまう・・・。





原作は、山崎ナオコーラの同名小説。
とても面白く読んでいたので、
映画も楽しみだった。
タイトルに、「笑うな」とあるが、
誰も、他人の恋愛に笑う描写はない。
みんな自分の恋に一生懸命だ。


年下の、可愛い男の子好きの女にとっては、
たまらない映画であろう。
(私もその一人(笑))。
蒼井優より、永作博美を選ぶ松山ケンイチ。
いくら松山が蒼井の気持ちに気付いていないとはいえ、
それは蒼井にとって、かなり残酷な選択だと思われる。


蒼井は、若さゆえの常識で、
永作と向き合う。
永作の方は、
「まぁまぁ、世の中、常識通りにはいかないよ」と
言いたいように私には思えた。
やっぱりそこは、大人。


永作博美が、「魔性の女」然としていない「魔性の女」というのが
面白い。
セクシーな下着をつけているわけでもないし、
豊満な体でもない。
タヌキのような童顔で松山とイチャつく。
年齢を言わなければ、
年上と言っても、ちょっとだけ?と思わされそうだ。


ただ、不満あり(笑)。
ラブシーンがあんまり綺麗じゃないんだな。
私には、そこが今一つ。
いくら永作が色気の無い女という設定でも、
その場面は、もう少し現実を離れて・・・
っていうのは、私の願望か(笑)。


それから、ダラダラと長い。
無駄な場面が多い。
もう少し、贅肉を削ぎ落として、
スッキリした内容にした方がいいように思える。


評価 ★★★☆☆

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「スパングリッシュ 太陽の国から来たママのこと」 [映画]

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〔2004年/アメリカ〕


メキシコで生まれ育ったパス・ベガは、
夫に出ていかれ、
一人で娘を育てる真面目な女性。


娘の事を考え、ロスに移住したベガだが、
ヒスパニック系の人々が多く暮らす街で、
数年間仕事をしていた為、
英語は話せないままだった。
しかし、より高い報酬を求めて、一念発起し、メイドの仕事に就く.



仕事先のアダム・サンドラーとティア・レオーニ夫妻は裕福でフレンドリー、
ベガを温かく迎えるが、
内情は様々なものを抱えていた。
レオーニから、夏の間は、マリブビーチの別荘に住み込んでほしいと乞われ、
熟慮の末、娘シェルビー・ブルースと一緒なら、と承諾する。


初めてブルースに会ったレオーニは、
ブルースの可愛さ、利発さに驚き、
自分の娘以上に彼女を可愛がるが、
自分と他人の生活にきちん境界線を引くベガは、
時に、レオーニのやり方を非難するのだった。


意志の疎通をもっとしっかりしたいと思ったベガは、
英語の勉強を始め、
会話もできるようになった頃、
サンドラーとレオーニ夫妻に、
ある大きな事件が起こる・・・。





娘の事だけを考え、
娘の為に生きるパス・ベガが
大変魅力的に描かれている。


彼女は決してブレない、
強い意志と考え方の持ち主で、
アダム・サンドラーも、
心のどこかで彼女に惹かれていくが、
良識ある大人としての振る舞いは忘れない。


しかし、夫婦に問題が起き、
落ち込んだサンドラーは、
ベガと二人きりになった時、
空気が怪しくなるんだな。
詳しくは書かないけれど。


やっぱりこれは、
ベガとレオーニという
二人の母親をどう捉えるかという事なのでしょうね。
どちらが良いというのは簡単だけど、
育ちも環境も違う二人を比較する事は難しい。


それからレオーニと彼女の母親の関係も、
興味深く描かれている。
親は死ぬまで子供の心配をして生きてゆくんだなぁと、
その愛情の深さを思った。


評価 ★★★☆☆

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「バティニョールおじさん」 [映画]

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〔2002年/フランス〕


1942年。
パリで総菜屋を営むバティニュールおじさん(ジェラール・ジュニョ)は、
ある朝、地下の倉庫からハムが盗まれて気付き、騒ぎになる。
窓の大きさからして、犯人は子どもではないかと思われる。


同じ時刻、
総菜屋の上階に住む、ユダヤ人家族は、
ナチスからの迫害を逃れスイスに旅立つため、
今、まさに、車に乗り込もうとしていた。


おじさんの娘の婚約者はナチスの支援者で、
ユダヤ人家族の息子がハムを盗んだと言い出し、
警察に通報する。
おじさんがハムの事で父親を追及している間に、
収容所行きの車が着てしまい、連行されてゆく家族。
父親は、格子のかかった窓から、
憎しみとも悲しみとも取れる目でおじさんを見つめ、
おじさんも、あまりの展開に言葉も出ずに見つめ返すだけであった。


ところが数日後、連行されたはずの家族の12歳の息子が、
一人戻ってくる。
驚いたおじさんは、少年を屋根裏部屋に匿う。
少年は、汽車に乗せられる際、
隙を見て逃げ出してきたと言う。
さらに、数日後、
少年の従姉妹の少女二人もやって来てしまう。


なんとかして、三人の子どもをスイスに連れて行かねばならない。
おじさんは、金を作り、偽造パスポートを作り、
4人の国境越えの旅が始まる。
果たしておじさんは、
子どもたちを無事スイスまで送りとどけられるのか・・・。





牧歌的なタイトルとは裏腹に、
内容は思っている以上にシリアスであり、
けれど、笑える場面もあるという、
とても良く出来た映画だ。


冒頭からスリリングな展開で、
おじさんには、本当にイライラさせられる。
証拠もないのにハムを盗んだと、
ユダヤ人の子どもを疑い、
父親とモメている間に、警察の車が来てしまう。
父親も、おじさんなんか突き飛ばしてでも、
行ってしまえばいいのにと思うが、もう遅い。


おじさんは、決して良い人ではないのだよ。
逃げてきた少年に対しては迷惑そうだし、
優しい言葉を掛けるわけでもない。
子どもが増えた時も、
「あちゃー」といった感じで、
ますます困り果てる。


でも、なぜか、おじさんは、
子どもたちを逃がす為に奔走する。
旅立つまでに、様々な罪を背負ってまでも。
それは何故なのか、
自分のせいで、ユダヤ人一家が連行される事になってしまった、
罪の意識からなのか。


観ている私にも、これだ!という明確な理由は分からない。
ただ、人間としてなんとかしなければという思いに
突き動かされての事だとは感じられる。


後半の、スイスへの旅は笑える。
珍道中といってもいい作りで、
おじさんと子どもたちのやり取りや、
途中で起こる様々な出来事を乗り越えてゆく様子が可笑しい。
そして、ラストは泣ける。


評価 ★★★★☆

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