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「ヘンダーソン夫人の贈り物」 [映画]

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〔2005年/イギリス〕


1930年代、ロンドン。
金持ちの夫に死なれ、未亡人となったヘンダーソン夫人(ジュディ・デンチ)は、
多少、気の抜けた日々。


しかし友人から、
「これからは好きなようにお金を使っても、
 誰からも文句は言われない。自由を謳歌しなさい」と言われ、
街で売りに出されている劇場を丸ごと買い取る。


劇場の運営と演出家として、
ヴィヴィアン・ヴァンダム(ボブ・ホスキンス)を雇い、
ミュージカルを上演させ、ヒットするが、
他の劇場に同じ事を真似され、客足が減ってしまう。
何か新しいものを考えなければ、
経営が行き詰ってしまうのは必至。


そこで思い付いたのが、
舞台で女性のヌードを見せる事。
しかし、当時は人前で裸で踊る事など御法度。
では、踊るのではなく、
裸で舞台に立つだけなら問題あるまい、
それなら絵画と同じ、と、
法律の抜け道を考え出す。


そのアイデアが当たり、
劇場は、連日大入り満席。


しかし、戦争の影は次第にロンドンの街にも迫ってきていた。
そして、ヘンダーソン夫人が、
観客にヌードレビューを見せる本当の理由も明らかになる・・・。





なんといっても、ジュディ・デンチが良い。
この映画が上映された時、70歳か。
確かにおばあさんなんだろうけれど、
とてもカッコ良くて、素敵で、そして可愛い。


デンチとボブ・ホスキンスとの掛け合いも、
軽妙で実に面白い。
実はヘンダーソン夫人は彼にちょっとだけ惚れているのかと
思わせる場面があり、
しかし、彼には愛する妻がいる事もあり、
関係は特に進展はしない。
当たり前の事だけれど、
なんでもかんでも男女がくっつけばいいと思っている映画と違って、
二人の距離感が良かった。


踊り子さんたちがヌードで舞台に立つのは知っていたけれど、
ホスキンスまでが全裸になる場面があってビックリ(笑)。
しかもモザイク無しの完全版(笑)。
俳優の仕事というのも大変だなぁと思ったよ。


残念なのは、ヌードショーを上演する理由というのが、
なんとなく、後付けって感じがした事。
そんな思いがあるなら、
劇場を買い取った時点でやってるはずだしね。
ただ、理由自体はとても悲しくて、
聞いていて辛かった。


評価 ★★★☆☆

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「殺人!」 [映画]

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〔1930年/イギリス〕


深夜のロンドン。
ある劇団の女優が殺害される。


遺体の横には、呆然と立ち尽くすノラ・ベアリングがおり、
そばには血の付いた火かき棒が落ちていた。
ベアリングは現行犯逮捕される。


裁判。
陪審員の一人、ハーバート・マーシャルは、
事件には不審な点が多いと、
他の陪審員相手に、熱弁を振るうが意見は却下。
ベアリングは死刑判決を受けてしまう。


マーシャルは独自に事件を調査を開始する。
やはり真犯人は他にいたのだが・・・。





ヒッチコックの初期の作品。
まだ科学捜査など無かった時代の裁判って怖い。
指紋を調べるわけでもなく、
靴跡を調べるわけでもなく、
ただ状況のみで、疑わしい人を逮捕。
陪審員の、「なんとなく」みたいな判断で、
死刑にされてしまう。


映画だから大げさに描いてあるにしても、
きっと冤罪も多かったんじゃないかなぁと、
そんな風に思った。
この映画は、ベアリングが美人だから、
マーシャルも必死になってくれたけどさ(笑)。


陪審員の話し合いで孤立するマーシャルの様子は、
「十二人の怒れる男」を彷彿とさせるが、
あの映画より27年も前に、
ヒッチコックは本作を作っていたのかと思うと、
やっぱり凄い人なんだとあらためて感心。


それから、真犯人の殺人の動機がちょっとショック。
今なら考えられないような理由なのだが、
昔は、大変な事、隠したい事だったのだなぁと、
可哀想な思いで観ていた。


評価 ★★★☆☆

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「パーマネント野ばら」 [映画]

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〔2010年/日本〕


娘を連れ、海辺の田舎町の実家に出戻ってきた菅野美穂。
母、夏木マリは、町で一軒しかない美容院、
「パーマネント野ばら」を経営している。


美容院は、町のおばちゃんたちの社交の場となっており、
女たちは全員、チリチリのパンチパーマをかけている。
(夏木マリも(笑))。


菅野美穂は同級生で親友の、
小池栄子、池脇千鶴とよくつるんでいる。
彼女たちの男運の悪さ(というより、男を見る目の無さ)は相当で、
いつもいつも、男に悩まされる日々。


まぁ、しかしそれは、
町の女たちも大差なく、
夏木マリも例外ではない。


菅野は、高校時代の教師、江口洋介と付き合っているが、
彼の様子も、どうもスッキリしない。
実は二人の交際には、
観る者の想像を遥かに越える秘密があったのだ・・・。





ものすごく淋しい映画。
表現自体はコミカルではあるが、
人が心に抱える淋しさが、
そのまんま、描かれているといった感じ。


淋しさって理屈じゃないものね。
どんなに愛する者が傍にいても、
友人と楽しい時間を過ごしていても、
心の奥底にある淋しさは消えない。
それが私だけなのか、
人がみんなそうなのかは分からないけれど、
この映画の淋しい感じは、すごくよく分かる。


美容院に集うおばちゃんたちの下ネタが凄いよ(笑)。
私もその手の話題は嫌いじゃないけど(笑)、
あの中にいたら、圧倒されると思う。
っていうより、彼女たちは男の事以外、娯楽がないみたい。


菅野美穂と江口洋介のラブシーン、というか、
イチャつくシーンが、とにかく可愛い。
二人の年齢を考えたら、
可愛いって変なんだろうけど、
でも可愛い。
大人だってイチャつきたいよね(笑)。


評価 ★★★★☆

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「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2」 [映画]

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〔2011年/イギリス・アメリカ〕


2001年に始まった「ハリー・ポッター」シリーズも、
10年が経ち、本作で最後となる。


正直、「いつまで続くんだろう」と思った事もあった映画だが、
終わるとなるとやっぱり淋しい。


続けて観ていると気付かないが、
今、第一作目の「賢者の石」の写真を見ると、
ダニエル・ラドクリフ、エマ・ワトソン、ルパート・グリントの3人、
そして、その他の子供たちが、
いかに幼く、小さかったかが分かる。
彼らを成長を10年も見てきたのだと思うと、
なにか、感慨無量といった面持ちになる。


本作のラストで、
19年後の彼らが描かれているのだが、
そこで涙が出た。
よもや、自分がハリー・ポッターで泣くとは予想しておらず、
自分で自分がビックリだ。


最近のニュースで、
ラドクリフ君がアルコール依存症だった事を告白したと読んだ。
子役だった人が辿る道は、どれもよく似ていて、
プレッシャーに負けて、駄目になるケースが多い気がする。
(リバー・フェニックス然り、ブラッド・レンフロ然り、
 マコーレー・カルキン然り、ハーレイ・ジョエル・オスメント然り)。
どうかどうか、
ハリー・ポッターに関わった全ての子供たちが、
幸せに暮らしてゆけますようにと、願わずにはいられない。


詳しい内容については、
様々なメディアが取り上げているようであるし、
楽しみにしている方の為にも、
ここには書かない。


今は、「10年間ありがとう」という気持ちだけ、
記しておきます。

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「クロッカーズ」 [映画]

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〔1995年/アメリカ〕


ニューヨーク、ブルックリン。


麻薬の密売をしている黒人青年、メキー・ファイファーは、
元締めのデルロイ・リンドから、
別の売人、ダリルを殺害しろと命じられる。



ダリルの遺体が発見され、
捜査に乗り出す刑事、ハーヴェイ・カイテルとジョン・タトゥーロ。
しかし自首してきたのは、
ファイファーの兄で、
高潔な人物で知られるイザイア・ワシントンであった事から、
話は混乱してゆく・・・。





アメリカの黒人社会が抱える、
麻薬・銃・暴力・犯罪の低年齢化等を描いた問題作。


しかし、監督がスパイク・リーのせいか、
視線はあくまでも黒人側であり、
観る者の共感が得やすい作りになっていると思う。


街は酷い状態だが、
そんな中で男の子を育てている母親が、
自分の息子だけは、
なんとか悪の道に入らないようにと、
道端にたむろするファイファーたち麻薬の売人に、
「この子には絶対に関わるな!」と食ってかかる場面に、
子を思う母の強い心を感じて、不思議な安堵感があった。


ハーヴェイ・カイテルも大変に良い。
黒人社会の中で、
なんとか彼らを真っ当にしようと、
動き回る白人、という設定がピッタリ合っている。
悪徳警官を演じることもある彼だが、
それとはまるで別人のようで、
さすがに上手い俳優だなぁと感心。


ラスト近く、ファイファーはカイテルに、
「なぜそんなに一生懸命なんだ。  
 黒人同士の殺し合いなんて、あんたにはどうでもいいだろう」と、
悪態をついたのに対して、
カイテルはやはり悪態で返す。
しかしカイテルは、
「お前は街を離れろ」とファイファーを駅まで送る。
それはカイテルがファイファーにやってやれる、
最後の、そして唯一の仕事であり、
環境を変える以外、更生の道はないという、
スパイク・リーの答えでもあるのだろうかと思う。


評価 ★★★★☆

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