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「ノー・マンズ・ランド」 [映画]

noman'sland.jpg
〔2001年/イギリス・フランス・イタリア・ベルギー・スロベニア〕 


ボスニアとセルビアの激しい戦争のさ中、
両国の中間地点“ノー・マンズ・ランド”の塹壕に、
ボスニア軍のチキとツェラ、
セルビア軍のニノと彼の上官の、
四人の兵士が入り込んでしまう。


ニノの上官は、ツェラを撃ち殺し、
遺体の下に地雷を仕掛けるが、
チキに殺される。
ところが、死んだと思っていたツェラが生きていた事から、
事態は思わぬ方向へ進んでゆく・・・。





戦争映画には違いないが、
その滑稽な様子はコメディ映画といっても良い。
戦争が、どれほど愚かで馬鹿馬鹿しいことなのかを
表現しようとしているなら、
その狙いは成功しているといえる。


例えば、チキとニノは、塹壕で話すうちに、
どちらの国がこの戦争を仕掛けたかで、
言い争いになる。
銃を持ったチキが、無理矢理ニノに、
「セルビアが始めた」と言わせるのだが、
その後、銃を奪い取ったニノが、
今度はチキに逆の事を言わせるのである。


私の文章では、このニュアンスは上手く伝わらないのだが、
銃を持って、話すのはそれかよ!みたいな、
微妙な可笑しさがあり、
このような可笑しさが続くのである。


なにより、戦地で、敵と話す言語が同じだという事が、
日本人の私には、とても不思議な事に感じられる。
言語が同じという事は、
もともと、とても近しい国という事じゃないか。
しかも、偶然にも、この二人には、
共通の知り合いがいたことが分かるのだよ。
そんな近しい国と国が争うのは、
変な言い方だけど、なんだかとても勿体無い。


さらに二人は、反目し合いながらも、
互いに何らかの情が芽生えるような、
そんな様子が見受けられる。
二人が出会ったのが戦場でなかったら、
きっと親しい友人同士になれただろうにと思うと、
残念でならない。


それにしても、ツェラの立場は辛いだろな。
横たわった自分の体の下には地雷があって、
少しでも動けば爆発する。
私ならもう、面倒臭くなって、
チキとニノを追い払ってから、寝返りうっちゃうかもしれないな。


評価 ★★★★☆

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「ぼくのエリ 200歳の少女」 [映画]

bokunoeri.jpg
〔2008年/スウェーデン〕


ストックホルムに住む、オスカー(カーレ・ヘーデブラント)は、
学校でのイジメに苦しむ、12歳の少年。
彼はそのウサを、ナイフで樹木を傷つける事で晴らしていた。


そんな彼のマンションの隣室に、
エリ(リーナ・レアンデション)という少女が引っ越してくる。
同じ12歳だというエリは、
どこか不思議な少女で、
学校に通っている様子もない。
しかし、オスカーがいじめられている事を悟ったように、
「やり返さなければダメだ」と言う。


エリが来てから、
近所で、おぞましい事件が連続して起こる。
実はエリは、人の血を吸って生き長らえるヴァンパイアだったのだ・・・。





全編、スウェーデンの雪の中の物語のせいか、
とても美しく、
ホラーには違いないが、気分が悪くなるような事はない。


エリの正体を知ったオスカーも、
特に怯える事なく、
その事実を、割とすんなり受け入れており、
ちょっと変わった初恋物語みたいだ。


二人の年齢が大人と子どもの境界線にいる事が、
雰囲気をさらに良いものにしている気がする。
オスカーはまだ性に目覚めた感じがなく、
でも年齢的には、もうすぐだろうという、
ギリギリの感じがする。


エリの瞳の黒目の部分がとても大きくて、
それが不思議な雰囲気を醸し出すのに一役買っているように思えた。


スウェーデンには、
「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」や「ロッタちゃん」や
「やかまし村」や「サッカー小僧」や「長くつ下のピッピ」のような、
良質の子ども映画や文学が多数あるが、
(そういう物が、たまたま日本に入ってきているだけかもしれぬが)
やっぱり、どんな国にもイジメがあって、
それに苦しむ子どもがいるかと思うと、
なんとかならないものかと、こちらの方が辛かった。


それから、この映画で話題になった事の一つに
「ボカシ」の問題があるようだ。
私は観るまで知らなかったのだが、
オスカーがエリの着替えのシーンを覗いてしまった時、
映された股間にボカシが入っているのだ。


しかし、ここは大変に重要なシーンで、
大きな秘密があるのだ。
それが見えない事には、
この映画も味わえないといっていい。
なぜ、そのような無粋な事をしたのか。
やはり子どもという事が、問題なのだろうか。


私はネットでボカシを取った画像を確認したが、
映画を観た方の全員が、
それを確認できるわけではないだろう。
とても残念だ。


評価 ★★★★☆

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「ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える」 [映画]

Hangover2.jpg
〔2011年/アメリカ〕


今月1日から上映が始まった、この「ハングオーバー」の続編。
「前作も面白かったし、今回も観に行かなくちゃなぁ」と、
上映劇場の確認をする為に、公式サイトを開いた所、
読み捨てならない(そんな言葉あるのか?)文字が!!


なんと、日本で六本木でだけ、
「オトナ限定 R18+無修正バージョン」と書かれてあるのだよ。
じゃ、じゃあ、同じ映画なのに、
「修正」と、「無修正」があるわけ!?と、
ものすごく気になり、
一度それを知ってしまうと、同じ料金を払うなら、
「無修正」の方を観ないと、なんとなく損したような気になるじゃないか、と思い、
昨日、のこのこ六本木まで出掛けてしまった私は大馬鹿者だと
あらためて思った次第。


しかし、大馬鹿者は私だけではないらしく(ごめんなさい)、
上映が始まって、結構日にちが経っているにも関わらず、
私が観た回も、その前の回も、ソールドアウトになっておった(笑)。





今回は、エド・ヘルムズがタイで結婚式を挙げるという設定で、
式に参列する為にタイに渡った、
ブラッドリー・クーパー、ザック・ガリフィアナキス、ジャスティン・バーサの
お馴染みの面々は、
バチェラーパーティの途中から記憶を失い、
タイの怪しげなホテルで目を覚ます、という、
前作と全く変わらないワンパターンな展開。


ちょっと違うのは、
行方不明になったのが、花婿ではなく、
花嫁の弟で、優秀で一族の自慢の16歳の少年、テディだって事。
テディを無事に連れて帰らなければ大騒ぎになるのは必至で、
クーパーたちはバンコクの街を走り回る。


問題の「無修正」の箇所は、
タイのオカマバーのニューハーフたちの全裸のシーンに、
モザイクがかかっているか否かだったらしい事を、
「修正」の方を観ていた友人と確認し合った。


確かに、珍しいものを観たよ。
上半身は巨乳で、下半身は男という、
なんとも不思議な人たちが動き回る様子は、
今まであんまり(というより一度も)見た事なかったから(笑)。





物語とは全然関係ないのだけれど、
この映画、ビリー・ジョエルにとても拘っているように思えて、
ビリー大好きの私は、それがとても気になった。


まず、ガリフィアナキスの部屋に貼られていたのが、
ビリーのアルバム、「グラスハウス」のポスター、
船の上でエド・ヘルムズがギターを引きながら替え歌で歌った曲が、
「アレンタウン」、
そして、結婚パーティの夜、バックから聞こえてくるのが、
「素顔のままで」。
偶然なのか、何か意味があるのか、
それとも制作者の中に、ビリーファンがいたのか。


評価 ★★★★☆

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◆夜を賭けて◆ [本]


夜を賭けて (幻冬舎文庫)

夜を賭けて (幻冬舎文庫)

  • 作者: 梁 石日
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 1997/04
  • メディア: 文庫


めちゃくちゃ面白い。
この本を、日本中のみんなが読めばいいのになぁと思うくらい、
面白い。


舞台は昭和30年前後の大阪。
現在は大阪城の周辺も、
綺麗な公園になっているようだが、
当時は、大阪造兵廠跡として、
35万坪の広大な廃墟には、
莫大な量の鉄屑が埋まっていた。


そして、川を挟んで向かい側に、
在日朝鮮人の貧民窟があり、
彼らは、鉄屑を売ればかなりの儲けになる事を知り、
毎夜、掘り起し作業に出掛ける。


しかし、放置されているとはいえ、
それはれっきとした国有財産で、
彼らと警察との激しい攻防が始まる。


そして後半。
逮捕された一人、金義夫が、
長崎の「大村収容所」に収監される。
「大村収容所」とは、在日朝鮮人を収容する、
刑務所とは似て非なる施設で、
収監された者は、筆舌に尽くしがたい劣悪な環境で、
暮らす事になる。
果たして金義夫の運命は・・・。



何がこんなに面白いんだろう。
シリアスな内容なのに、
在日朝鮮人たちの会話が可笑しくて可笑しくて、
クスクス笑ってしまう。


梁さんの本はいつもそうだ。
在日朝鮮人を主人公にした小説が殆どなのに、
自分たちを殊更卑下するわけではなく、
かといって、声高に被害者面するわけでもなく、
そこにある事実のみを、
力強い文章で描いてある為、
悲壮感が無い。


逃げるわけではないけれど、
私には、日本と朝鮮の関係の難しさは、
正直、よく分からない。
ただ梁さんの本が好きなだけ。
それじゃ駄目なんだろうか。


この本を映画化したDVDを借りたので再読してみた。
こんな濃い内容をどうやって映像化したのか、
そこに興味があって。
映画の出来が大した事なかったとしても、
それはそれで構わない。
観るのが楽しみだ。

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「眠狂四郎 女妖剣」 [映画]

nemurijoyouken.jpg
〔1964年/日本〕


眠狂四郎(市川雷蔵)は、二人の女の遺体が浮かんだ川に居合わせる。
それは大奥の女で、
菊姫という残酷な姫君に阿片中毒にされた挙句、殺されたのだ。


また狂四郎は、鳥蔵と名乗る男から、
自分は隠れ切支丹で、
浜松にいるビルゼン志摩という聖女が、
狂四郎と血の繋がりがあり、
また、出生の秘密を知っていると教えられる。
興味を持った狂四郎は、浜松へと旅立つ・・・。





シリーズ4作目。
ついに狂四郎の出生の秘密が明かされるわけだが、
想像以上の衝撃。


っていうか、その事実って、私が物知らずなだけで、
世間の方々は普通に知っているのだろうか。
その辺からよく分からないのだけれど。


このシリーズを見始めた時から、
狂四郎は、こんな時代になぜに茶髪?と、
ずっと疑問に思っていたのだが、
ちゃんと理由があったのね。
私はまた、他の時代劇とは別格感を出すための演出かと,
勝手に決めつけていたのだけれど、
これでスッキリ。


今回もまた、女関係に忙しい狂四郎(笑)。
何人もの女に誘惑されておった。
サブタイトルも、ジャケット写真も、そのまんま。
(ちなみに、ジャケット写真で横たわっているのは、春川ますみ)
なんだか私も、市川雷蔵が好きになってきたよ(笑)。


評価 ★★★☆☆

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