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「病院坂の首縊りの家」 [映画]

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〔1979年/日本〕


原作は横溝正史の同名小説。


横溝正史の小説も、とても好き。
江戸川乱歩が大正ロマンなら、
横溝正史は、昭和初期の匂いが感じられる。


この作品を知らない方でも、
題名を見ただけで、
おどろおどろしい内容である事は、
簡単に想像がつくであろう。
でも、原作の味は出ていない。
もっともっと怖がらせてほしかった。


文庫本で上下巻、
登場人物の多いこの原作の映画化は、
やっぱり難しいのかな。


桜田淳子が一人二役で出ているのだが、
思っていた以上に綺麗だし、
演技も悪くない。
変なスキャンダルがなかったら、
女優として、今でも活躍していたかもしれないな。
本当に勿体ないと思う。


草刈正雄も本当にハンサムだったのね。
知ってはいたけれど、
あらためて再確認。


冒頭、石坂浩二演じる金田一耕助と語り合う作家先生役を、
横溝さんご本人が演じておられて、
なんだか嬉しかった。
セリフは棒読みだったけど(笑)。


評価 ★★★☆☆

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「巌窟の野獣」 [映画]

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〔1939年/イギリス〕


18世紀。
イギリスの田舎町、コーンウォール。


そこの宿屋、「ジャマイカ亭」を根城に、
極悪人たちは、毎度、通りかかる船を故意に難破させ、
金品を強奪、乗組員を一人残らず殺すという、
非道な行為を繰り返していた。


そんなコーンウォールに、美しい女、モーリン・オハラがやって来る。
彼女は母を亡くし、たった一人の身内で、
ジャマイカ亭を経営する、叔母を頼ってきたのだ。
しかし、叔母の夫こそ、極悪人たちのボスであり、
ジャマイカ亭が悪の巣窟であろう事など、
彼女は知る由もなかった。


馬車に乗ったオハラだが、
御者がジャマイカ亭の前に馬車を止めるのを嫌がり、
地元の領主で、治安判事でもある、
チャールズ・ロートンを家の前で彼女を降ろす。
怒った彼女は、ロートンに助けを求め、
ジャマイカ亭まで送ってもらう。


しかし、この紳士然としたロートンこそ、
極悪人たちを仕切る黒幕であり、
船から奪った金品を巻き上げていたのだ。


オハラが部屋に入ってすぐ、
男たちが、内輪揉めから、
仲間の一人、ロバート・ニュートンを殺そうとしており、
それを見てしまったオハラは驚き、
彼を助けるが、
二人とも追われる身になってしまう。


ジャマイカ亭の悪が世間に暴かれる日は来るのか、
そしてオハラとニュートンの運命は・・・。





ヒッチコックの初期の作品。
岸壁で荒れ狂う海の描写が凄い。
モノクロの映画だが、かえって、その恐ろしさが増すような気がする。
ヒッチコックって、この頃から映像に凝っていたのだと、
感心するような思いだ。


船を故意に難破させる事なんて出来るのかと、
訝しい思いで観ていたら、
悪人どもは、岸壁に、灯台を模した明かりを点け、
そこに船を誘導するという方法で悪を行っており、
なるほどと思った。


善人だと信じ切って、頼った治安判事が、
実は一番の悪だったと、
単純な話ながら、それでもハラハラできるし、
いかにもヒッチコックらしい。


美しいモーリン・オハラが、
単身、ジャマイカ亭に入っていく様子が恐ろしくて。
狼の群れに放たれた、羊のようだったよ。


評価 ★★★☆☆

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「ヒトラーの贋札」 [映画]

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〔2007年/ドイツ・オーストリア〕


1930年代、カール・マルコヴィクスは、
贋札や偽造パスポートを作製した罪で逮捕される。


ユダヤ人の彼は、強制収容所に入れられるが、
その絵画の才能から、看守の肖像画や外壁への装飾画などを任され、
他の囚人たちより、良い目を見ていた。


ナチスドイツは、米英経済の混乱を狙って、
贋札を大量に流通させるという、
「ベルンハルト作戦」を敢行。
贋札作りの責任者に、マルコヴィクスを任命する。


マルコヴィクスとその仲間の作り出す偽ポンド札は完璧で、
銀行家が30分調べても、
見抜けないほど精巧に出来ており、
彼らは、次に偽ドル札の製作に着手する。


しかし、その行為は、
ナチスの政策に加担するものだと主張する、
仲間のアウグスト・ディールは、
殺された方がマシだと、サボタージュするようになる。


ディールの手がなければ、
偽ドル札は完成しない。
ナチスは、4週間以内に完成しなければ、
仲間のうち5人を殺すと宣言。
ディールのサボタージュを密告しようと言う仲間たちとの間に立って、
マルコヴィクスは苦悩する・・・。





大変に複雑な気持ちになる映画。
特に、カール・マルコヴィクスの作った偽ポンド札を、
ビジネスマンに成りすましたナチスの党員が銀行に持ち込んで、
預ける場面。


観ているこちら側は、
マルコヴィクスの贋札がどうかバレませんようにと祈り、
実際、銀行で本物と認められたとの報告を聞いた場面は、
とても嬉しかったのだが、
でも、それは同時に、ナチスの作戦成功を喜ぶ事になるのだ。


しかも、もし銀行で紙幣が贋物だとバレたら、
マルコヴィクスが殺されるのは必至で、
どちらに転んでも、いい事はない。


生きる為に、ナチスの作戦に加担するか、
そこまでして生きたいか、人間としての尊厳はないのかと葛藤する
二つの考え方には、
観ているこちらまで悩んでしまう。


自分自身は高潔に生きたいと願ったとしても、
では、それが大切な家族や恋人や友人だったら?
「贋札作りでもなんでもいいから、
 とにかく相手の言う事を聞いて、生き延びてほしい」と願わないだろうか。


月並みな感想だけど、
戦争は嫌だ。


評価 ★★★☆☆

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「女囚さそり 701号怨み節」 [映画]

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〔1973年/日本〕


警察の目を逃れて、結婚式場に潜伏していたさそり(梶芽衣子)だが、
居所を突き止められ、逮捕される。


刑事(細川俊之)は、さそりを車に乗せ移送するが、
さそりは運転手を負傷させ、脱走。
ストリップ劇場に身を隠す。


ストリップ劇場の照明係をしている男(田村正和)は、
さそりを匿う。
彼はかつて、学生運動の革命家であり、
逮捕拘留された際、激しい拷問を受け、
足を引き摺るようになり、
またその際、股間に熱湯をかけられた為、
陰茎に酷い火傷を負っているのだ。


そして、この拷問を行ったのが、
奇しくも、現在さそりを追っている細川俊之というわけなのだ。


互いにシンパシーを感じたさそりと田村は、
愛し合うようになる。
しかし、二人に嫉妬したストリッパー、渡辺やよいが
警察に密告。
田村は、さそりの居所を吐くように拷問される。


一度目は屈しなかった田村だが、
二度目は、取調室に最愛の母が呼ばれており、
母に泣かれた彼は、さそりの居所を話してしまう。


収監されたさそり。
そこでは死刑を待つ女囚が、
残り少ない人生を過ごしており、
さそりも死刑間近となる。
彼女の運命は・・・。





シリーズ4作目にして、最終章。
しかし、今までの中では一番インパクトが弱い。


このシリーズの見所は、
荒唐無稽なストーリーであろうが、
本作は、そういった場面が少なく、
有り得ない感がない。
(もちろん、全く無いわけではないが)


ただ、観て良かったと思うのは、
細川俊之と田村正和の競演。
スカしまくった、この二人の男が、
拷問する側と、される側で、
同じ画面に納まってるいる絵は、
今では絶対に見られないであろう。
(細川さんが亡くなっていなくても)


調べてみると、田村正和って、
映画の出演数が意外と少ない。
私が本作以外に映画で彼を観たのは、
「痴人の愛」だけだが、
あの時も、下着姿で女の周りを右往左往する、
物凄く情けない男を演じていたよ(笑)。


彼も、最初からスターだったわけじゃないのね。
いつの間に、今のようなポジションに立ったんだろう(笑)。


評価 ★★★☆☆

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「家族シネマ」 [映画]

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〔1998年/韓国〕


AV女優で、在日韓国人三世の松田いちほは、
ひょんな事から、自分の家族のドキュメンタリー映画を撮る企画に乗る。


撮影初日、
父(梁石日)、母(伊佐山ひろ子)、姉(柳愛里)、弟(中島忍)、松田の5人は、
柳のマンションに集まる。
家族全員が集まるのは数年ぶりの事で、
食卓を囲んでの会話が撮影されてゆくが、
気性の激しい父と母は、カメラの前で罵り合い始める。


母は、生活費もくれずに自分だけ贅沢をし、
さらに、毎日のように家族に暴力を振るってきた父を恨んでいたし、
また父は、キャバレー勤めで、男出入りの激しい母を、
これまた恨んでいるのだ。


その日の撮影が終わるが、
柳は母から、相談があると呼び出される。
母は、現在、父が一人で住んでいる一軒家を担保に、
なんとか金を借りられないか、
いや、いっその事、売ってしまったらどうか、と言うのである。


二回目の撮影は、父の家で行われるが、
その時、母は、家の売却の話を父に持ち掛ける。
しかし、父は承諾しない。
それどころか、またこの家で家族みんなで暮らさないかと言う。


三回目の撮影は、
なぜか家族がキャンプに行くという設定に決まる。
ロケバスで山奥に行き、
バーベキューをし、温泉につかる家族。
その間も、カメラはずっと彼らを撮影していた。
果たして映画は出来上がるのか、
そして家族は・・・。





愉快だ。
ただ、この愉快な気持ちを、私の文章力では、説明するのが難しい。
まず、このDVDを借りた理由というのが、
私の大好きな、在日韓国人作家、
梁石日さんが主演しているからなのだよ。


なぜに作家の梁さんが映画で主演?と思ったのだが、
この映画の原作が、やはり在日の柳美里の同名小説で、
だから、日本人の私には分からない、
何か繋がりみたいなものがあるのかと、
そんな風に解釈したのであるが。


で、梁さんの演技がもう、笑っちゃうくらい棒読みで(笑)。
しかし、素人の家族が映画を撮るという設定であるからして、
これでいいのかと思ったりもして。
なにより、大好きな梁さんを初めて映像で見られた事が嬉しい。


梁さんの本は、一時はどっぷり浸かるくらい読み、
友人たちにもかなり勧めた作家だ。
殆どが、在日韓国人を主人公としている内容で、
日本人にはない人間関係が、
力強い文章で描かれている為、
この映画の登場人物たちの世界観も、少しは理解できる。


そして、なにより面白かったのは、
柳美里の自伝的小説、「水辺のゆりかご」に描かれている、
彼女の育った家族が、
そのまま、この映画で表現されていた事。
「水辺のゆりかご」の内容の強烈さは、
とても言葉では表現できない。
あまりに強烈な為、
逆に、時々読み返してしまう、麻薬のような作用がある。
だから、あの本の世界が映像化された事が、
なんだか可笑しかったのだ。


ただ、基本的に、柳美里は苦手だけど(笑)。


長女を演じる柳愛里は、柳美里の妹だそうで、
柳美里にソックリだ。


ものすごく個人的な好みで、この点数。
梁さんが出ていなかったら観なかったと思うけど(笑)。


評価 ★★★★☆

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