「巌窟の野獣」 [映画]
〔1939年/イギリス〕
18世紀。
イギリスの田舎町、コーンウォール。
そこの宿屋、「ジャマイカ亭」を根城に、
極悪人たちは、毎度、通りかかる船を故意に難破させ、
金品を強奪、乗組員を一人残らず殺すという、
非道な行為を繰り返していた。
そんなコーンウォールに、美しい女、モーリン・オハラがやって来る。
彼女は母を亡くし、たった一人の身内で、
ジャマイカ亭を経営する、叔母を頼ってきたのだ。
しかし、叔母の夫こそ、極悪人たちのボスであり、
ジャマイカ亭が悪の巣窟であろう事など、
彼女は知る由もなかった。
馬車に乗ったオハラだが、
御者がジャマイカ亭の前に馬車を止めるのを嫌がり、
地元の領主で、治安判事でもある、
チャールズ・ロートンを家の前で彼女を降ろす。
怒った彼女は、ロートンに助けを求め、
ジャマイカ亭まで送ってもらう。
しかし、この紳士然としたロートンこそ、
極悪人たちを仕切る黒幕であり、
船から奪った金品を巻き上げていたのだ。
オハラが部屋に入ってすぐ、
男たちが、内輪揉めから、
仲間の一人、ロバート・ニュートンを殺そうとしており、
それを見てしまったオハラは驚き、
彼を助けるが、
二人とも追われる身になってしまう。
ジャマイカ亭の悪が世間に暴かれる日は来るのか、
そしてオハラとニュートンの運命は・・・。
ヒッチコックの初期の作品。
岸壁で荒れ狂う海の描写が凄い。
モノクロの映画だが、かえって、その恐ろしさが増すような気がする。
ヒッチコックって、この頃から映像に凝っていたのだと、
感心するような思いだ。
船を故意に難破させる事なんて出来るのかと、
訝しい思いで観ていたら、
悪人どもは、岸壁に、灯台を模した明かりを点け、
そこに船を誘導するという方法で悪を行っており、
なるほどと思った。
善人だと信じ切って、頼った治安判事が、
実は一番の悪だったと、
単純な話ながら、それでもハラハラできるし、
いかにもヒッチコックらしい。
美しいモーリン・オハラが、
単身、ジャマイカ亭に入っていく様子が恐ろしくて。
狼の群れに放たれた、羊のようだったよ。
評価 ★★★☆☆
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