「ヒトラーの贋札」 [映画]
〔2007年/ドイツ・オーストリア〕
1930年代、カール・マルコヴィクスは、
贋札や偽造パスポートを作製した罪で逮捕される。
ユダヤ人の彼は、強制収容所に入れられるが、
その絵画の才能から、看守の肖像画や外壁への装飾画などを任され、
他の囚人たちより、良い目を見ていた。
ナチスドイツは、米英経済の混乱を狙って、
贋札を大量に流通させるという、
「ベルンハルト作戦」を敢行。
贋札作りの責任者に、マルコヴィクスを任命する。
マルコヴィクスとその仲間の作り出す偽ポンド札は完璧で、
銀行家が30分調べても、
見抜けないほど精巧に出来ており、
彼らは、次に偽ドル札の製作に着手する。
しかし、その行為は、
ナチスの政策に加担するものだと主張する、
仲間のアウグスト・ディールは、
殺された方がマシだと、サボタージュするようになる。
ディールの手がなければ、
偽ドル札は完成しない。
ナチスは、4週間以内に完成しなければ、
仲間のうち5人を殺すと宣言。
ディールのサボタージュを密告しようと言う仲間たちとの間に立って、
マルコヴィクスは苦悩する・・・。
大変に複雑な気持ちになる映画。
特に、カール・マルコヴィクスの作った偽ポンド札を、
ビジネスマンに成りすましたナチスの党員が銀行に持ち込んで、
預ける場面。
観ているこちら側は、
マルコヴィクスの贋札がどうかバレませんようにと祈り、
実際、銀行で本物と認められたとの報告を聞いた場面は、
とても嬉しかったのだが、
でも、それは同時に、ナチスの作戦成功を喜ぶ事になるのだ。
しかも、もし銀行で紙幣が贋物だとバレたら、
マルコヴィクスが殺されるのは必至で、
どちらに転んでも、いい事はない。
生きる為に、ナチスの作戦に加担するか、
そこまでして生きたいか、人間としての尊厳はないのかと葛藤する
二つの考え方には、
観ているこちらまで悩んでしまう。
自分自身は高潔に生きたいと願ったとしても、
では、それが大切な家族や恋人や友人だったら?
「贋札作りでもなんでもいいから、
とにかく相手の言う事を聞いて、生き延びてほしい」と願わないだろうか。
月並みな感想だけど、
戦争は嫌だ。
評価 ★★★☆☆
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