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「黒い画集 ある遭難」 [映画]

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〔1961年/日本〕


同じ銀行に勤務する、
伊藤久哉、児玉清、和田孝の3人は、
鹿島槍ヶ岳に登山に出掛ける。
伊藤はベテランでリーダー、
児玉は経験者、
和田は初心者だ。


三等車でロクに寝ないで山に臨むのは良くないと、
伊藤は自分の奢りで、
寝台車の切符を買う。
十分睡眠を取り、3人は山に登り始めるが、
なぜか児玉の体力の消耗が激しい。


目的地まであと30分という所で、
霧が発生、
児玉は前に進もうと言うが、
伊藤は、これ以上は危険だと下山を決意する。
ところが、下山途中で道を間違えた一行。
児玉はもう一歩も歩けない状態となり、
伊藤が救援を頼みに行くが、
その間に児玉は凍死してしまう。


一連の出来事は、全て偶然に起こった事であり、
人為的なものなど、何もなかったはずだった。


しかし、事故から少し経った頃、
児玉の姉・香川京子と従兄・土屋嘉男が
銀行に伊藤を訪ねてくる。
土屋が児玉の遭難現場に花を手向けたいから、
もう一度一緒に同じコースを登ってくれないか、と言うのだ・・・。





これも松本清張の短編小説の映画化。


原作は、まず、
山岳雑誌に投稿したという、
和田孝の文章で、
遭難時の一部始終が
読者に分かり易く説明され、
その後、謎解きとなる。


映画は、
遭難時と、
もう一度同じコースを辿る伊藤と土屋の場面が交互に描かれ、
分かり易さからいえば、
小説の方が上かな。


それにしても、
ある人間を殺したいほど憎んだとしても、
この物語のような方法で、
それほど上手くいくものなのか、
ちょっと疑問。


多少のダメージを与える事はできたとしても、
死なせるのは
大変だと思うのだけれど。
しかも、凍死とは。
崖から突き落とす方が、まだ確実なんじゃないか。


まぁ、そこさえ納得できれば、
山岳映画として、とても面白い。
誰もが一番知りたいのは、
動機と、
なぜ児玉がそこまで体力を消耗したのか、という点だと思う。


ラストは、小説とは微妙に変えてある。


評価 ★★★☆☆

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「黒い画集 第二話 寒流」 [映画]

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〔1961年/日本〕


安井銀行の課長・池部良は、
常務の平田昭彦の、半ば強引な推薦により、
池袋支店長に抜擢される。


挨拶回りで行った料亭の女将・新珠三千代から、
融資の相談を受けるうちに、
一線を越えてしまった池部。
新珠は夫に死なれ、
池部だけが頼りだ、と言う。


ところが、平田に新珠を紹介した際、
新珠の美しさに平田の目が光った。
以来、平田は、口実を作っては、
新珠に近付くようになる。


池部が地方に飛ばされる事が決まった。
全ては平田の采配だ。
池部が興信所を使って調べると、
やはり平田と新珠は出来上がっている。


このままでは終わらせない。
池部は、平田を失脚させるべく、
作戦を練るが・・・。





松本清張の短編シリーズ第二弾。


小説では、
オチに多少の無理がある気がしたけど、
映画は、その無理を通したあと、
まだその先が描かれている。


しかし、どう描かれようと、
池部良の惨めな感じは変わらない。
やっぱり世の中は弱肉強食。
力の有る者は、
どこまでも権力を振るい、
弱い者は去るしかない。
理不尽だけど、
それが現実なのかもしれない。


平田昭彦の憎たらしい事ったら。


彼は、池部良と新珠三千代と3人で、
1泊でゴルフ旅行に出かけた際、
深夜、新珠の部屋に行って、布団に入ってくる。


新珠が驚いて逃げると、
「一緒に寝るだけ」って、
うーん、気持ち悪い。
私だったら、もう二度と会いたくないと思うけど、
その後、いつの間にか
二人が出来上がっているところを見ると、
新珠も、能力のない池部より、
力を持っている平田の方に魅力を感じたという事か。
いや、利用するためかもしれないけど。


平田は、
池部が色々と小細工して、
自分を陥れようとするのを、
ことごとく阻止してくる。


池部をヤクザの宴席に呼んで、
「これ以上何かすれば痛い目に遭わせる」と
暗に匂わせる場面など、「ひゃ~」って感じ。
そのヤクザの親分も、
最後まで顔だけは笑っているから余計に怖い(笑)。


私だったら、
諦めて、もう大人しく、静かに暮らすかな。
だって痛いのは嫌だし(笑)。


評価 ★★★☆☆

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「黒い画集 あるサラリーマンの証言」 [映画]

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〔1960年/日本〕


サラリーマンの小林桂樹は、
仕事も順調、
妻と2人の子供にも恵まれ、
順風満帆の人生だ。
しかし、彼には秘密がある。
同じ会社の事務員・原知佐子と不倫の関係なのだ。


仕事が終わると小林は、
新大久保の原のアパートに行き、情事を重ねる。
その夜も、全てがいつも通りのはずだった。
ところが、原のアパートを出て少し行った所で、
自分の家の近所の男・織田政雄とバッタリ会ってしまい、
思わず会釈してしまう。


「なぜ知らん顔しなかったんだ」
小林は悔やむ。
そして数日後、会社に刑事が訪ねてきた。
なんと、織田が殺人事件の容疑者として逮捕されたが、
その日、小林と会ったと供述している。
本当に織田と会ったのか?と。


自分が証言しなければ、
織田は死刑になってしまう。
しかし、証言すれば、
原との関係が晒される事なる。


保身のため、小林は、
「織田には会っていない」、と証言する。
誰に何度聞かれても、
「会っていない」と・・・。





松本清張さんの短編小説の映画化。


原作からして、大変に面白く、
何度も読んでしまうので、
映画もつまらないはずがない。


不倫をしているサラリーマンが、
不倫相手のアパート近くで、
顔見知りの男に会うという、
絶妙な設定。
こういった、時間や場所の微妙な差で、
主人公が窮地に追い込まれるのが、
松本清張さんらしく、
素晴らしい。


具体的な地名もリアル。
不倫相手のアパートが新大久保。
殺人事件が起こったのが向島。
そして、彼が嘘の証言をした、
その日は映画を観ていたという渋谷。
(さらに原作では、
 主人公の住まいは大森、
 会社は丸の内)。


向島で起こった殺人事件の容疑者が、
犯行時刻に、本当に新大久保にいたとするなら、
絶対に犯人ではない。
この距離感が何とも言えず良い。


それにしても、
主人公が咄嗟に、
容疑者に会わなかったと言ってしまった事が悔やまれる。
たしかに、大森に住んでいて、
丸の内に勤めている人が、
会社帰りに新大久保などは、
よほどの用事がない限り行くことはないだろうが、
何か、適当な事が言えなかったのだろうか。
「韓流ショップに行こうとして近くまで行ったけど、やめた」とか(笑)。


現在、不倫をしている方は、
こういった時の為にも、
愛人の家の近くにあるお店の名前でも、
何軒か覚えておいたほうがいいですな(笑)。


これ、今だったら、
街中にあるカメラのおかげで、
すぐに容疑が晴れるのに、とも思う。
容疑者が新大久保にいたと供述したなら、
駅でも、コンビニでも、パチンコ店でも、ガソリンスタンドでも、
それらに設置されたカメラの一つにきっと、
姿が映っていると思うし。


その後も、色々あるのだけれど、
主人公はいつも「映画を観ていた」と言って、
刑事に怒鳴られる。
「あんた、いつも映画映画って」と。


それには笑ってしまった。
私も同じ事を言われそうで。
でも私の場合、
本当に映画館にいる確率が圧倒的に多いのだから、
仕方がない(笑)。


評価 ★★★★☆

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23区内全駅制覇・JR総武線 [23区内全駅制覇]

〔快速〕

JO19.東京駅
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JO20.新日本橋駅
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JO21.馬喰町駅
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JO22.錦糸町駅
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JO23.新小岩駅
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〔各駅停車〕

JB18.御茶ノ水駅
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JB19.秋葉原駅
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JB20.浅草橋駅
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JB21.両国駅
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JB22.錦糸町駅
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JB23.亀戸駅
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JB24.平井駅
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JB25.新小岩駅
     sobukakueki25.JPG

JB26.小岩駅
     sobukakueki26.JPG
     


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全駅制覇、58回目の掲載は、
JR総武線です。


やっぱりJRは難しいです。
中央線を掲載した時、
沢山のコメントをいただいたのですが、
私にはいまだに、
中央線と総武線がどうなっているのか、
よく分かっていません。


まったく、
このようなレビューを載せる資格があるのか、
って感じです。


小岩や新小岩に、
もう一度行ってみたいです。


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※以下に、このカテゴリーの1回目に書いた文章を
 一応貼り付けておきます。
 初めて来られたかたは、
 駅名表示板が並べられているのを見ただけでは、
 わけが分からないと思いますので(笑)。


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いつの頃だったか、
都内の初めての駅に降り立った時、
せっかく来たのだからと、ホームの駅名表示板を
写真に撮った事がありました。


そんな事が何回か続いた時、
23区内に駅っていくつあるんだろう、
全て制覇したら面白いだろうな、と考えるようになり、
数年間かけて、
先日、やっと全駅制覇を完了いたしました。


条件は、
駅は、必ず改札を入るか出るかする、
もしくは、
違う路線に乗り換える事。
駅に降りて、写真だけ撮って、また乗るというような
「ズル」はしていません。


駅は、数え方にもよるのでしょうが、
延べにして720ほどあります。
当初はブログにアップしようとは全く考えていませんでしたが、
友人にこの事を話しましたら、
ぜひ見てみたいと言われましたので、
順次、載せていこうと思います。


駅を降りたあと、
周辺を、少し歩いてみたりもしましたが、
とりあえず、「一周目」は全制覇が目標でしたので駆け足で、
「二周目」に、街歩きのような事をしてみたいと
考えています。

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「シモーヌ」 [映画]

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〔2002年/アメリカ〕


過去に2度、
アカデミー賞短編賞にノミネートされた事がある
映画監督・ヴィクター・タランスキー(アル・パチーノ)も
今は落ちぶれ、
元妻が役員をする映画会社から、
解雇通告されてしまう。


そんなタランスキーの前に、
見知らぬ男・ハンクが現れ、
CGで作った
パーフェクトな美人・シモーヌの
ソフトを手渡される。


シモーヌを使って映画を作ると、
それが、なんと大ヒット。
シモーヌは世界の恋人と呼ばれるようになってしまう。


ハンクは既に亡くなり、
秘密を知っているのはタランスキーだけ。
彼はシモーヌの正体を知られぬよう、
四苦八苦する生活を送るようになる。


シモーヌの人気は
とどまるところを知らず、
それはもう、
タランスキーの手には負えない状態となり・・・。





こういう映画大好き。


CGで作られた人間が、
長い間、そうと気付かれずに、
人気を保てるわけがない、などという、
無粋な事は考えずに観た方が楽しい。


最初から可笑しい。
アル・パチーノ演じる主人公の映画監督が、
カラフルなゼリービーンズの中から、
「赤」だけを取り出している。
これはもう、ワガママな女優(ウィノナ・ライダー)から
命令されたのだな、とすぐ分かるし、
案の定、その通り。
そう、これは、ハリウッドの内幕を、
デフォルメした映画でもあるのだ。


そんなダメダメ監督が手に入れた、
CGで作られたパーフェクトな女優・シモーヌ。


そりゃあ、パーフェクトなのは当たり前だ。
過去の大女優、
オードリー・ヘプバーンやグレース・ケリーなどの
良い所を取り入れたシモーヌは、
美人で、スタイルは完璧なうえに、
監督が考える通りの演技をしてくれて、
流す涙の量まで、CGで調整。
やる事なす事全てが、
人間が理想とする女なのだ。


シモーヌが謎めいていて、
人前に絶対姿を現さない事も、
人々の焦燥感を煽り、
人気に拍車をかける。


監督は、世間があまりにうるさいので、
彼女にテレビ中継という形で、
インタビューを受けさせる。
受け答えをするのは、
もちろん、監督自身。
知的で、出しゃばらず、たおやかなシモーヌ。
あんな女優がいたら、
私だって、きっとファンになる。


さらに、シモーヌは、
音楽ライブまでやってしまう。
その正体はホログラム。
けれど、人々は熱狂的な声援を送り、
疑う者は一人もいない。


私は途中まで、
人々が何らかのきっかけで、
シモーヌの正体に気付き、
その驚く顔が見たいと思っていたのだけれど、


段々、考えが変わっていき、
もうこのまま、
永遠にみんなに夢を見させてあげてほしいと
思うようになった。


シモーヌは、映画を愛する全ての者の憧れ。
映画を観る理由の一つに、
現実逃避、というのがあるとするなら、
夢を壊す必要なんてない、
というか、
してはいけないよね。


評価 ★★★★☆

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